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8. 1‐3 閑話 失意と矛盾
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自分の復讐は、北の大陸の人間をこの手で皆殺しにすること。
南の魔神に、国王と魔神討伐に関わった人物を絶望に叩き落としてから殺したらどうだと打診された。
「いやいや~。全員は無理だってぇ・・・・・・1日に何人の人間が産まれ、何人の人間が死んでいると思ってるの? 体がいくつあっても足りないからぁ・・・・・・」
猫の姿の魔神は耳を倒し、そう呆れていた。
自分は納得できなかったが承諾するしかなかった。
眷族となって体は動かせるのに、動けないこの状況がもどかしかった。
知識を得てから、復讐を果たした者達と自分の復讐が根本的に違うと気づき、自分の復讐は別物に変わっていないかと怖くなった。不安になった。
思い返せば、黒い靄を再び感じるようになったのはこの頃だった。
目を覚まし、眷族の力を得てから9ヶ月が経った頃だ。
大陸中に広がる、とある話もあって、南の魔神と袂を別れた。
自分は本気だったのだが、南の魔神は冗談だと流していたらしい。
自分が単独で王城に侵入し、国王暗殺まであと一歩の所で予期せぬトラブルで重傷を負った。
城の近くにいたそいつがそれに気付いて連絡をして、ようやく自分が本気だったのだと気付き、そいつを救助に向かわせた。と、猫の姿の南の魔神が説明した。
「それがさっきの木製全身鎧の俺。この俺と狼の俺とさっきの俺ともう1体いる俺の合計4体は本体の並行思考。いつもなら本体の中にいて並行して物事に当たっている。今回は手が足りないから本体の体の一部を持って分身体として別行動してるってワケ」
南の魔神とは、見た目も変えられるプラナリアなのだろうか。
「・・・・・・スゲぇ失礼なこと思っただろ今。──それは横に置いといて。随分と派手にやったね~! エラーで右腕と両脚を無くすなんて!」
猫は大口を開けて、ケタケタと笑う。
自分は思い出して気持ちが沈む。
使っていなかったのに、いきなり眷族の力である影が暴走したのだ。
対峙していた城務めの騎士や魔法使いだけでなく、自分にも襲いかかってきた。自分の魔力を勝手に吸い上げ、実体を持って刃を形成し、右腕と両脚を切り落とされた。
それだけでは飽き足らないと言うように、今度は鎌鼬のように周辺にいる全てを切り裂いていった。自分の背中は傷だらけ。それでも、どうにか辿り着こうと奮闘したが、最悪な状況に追い込まれた。
その時に救助された。そのまま連れ戻された。
「腕と両脚はスペアあっからすぐに取り付けられるけど・・・・・・この背中じゃ当分動けないなぁ~」
背後に移動した魔神に背中を触られる。ナイフでズタズタに切り刻まれるような激痛に、悲鳴が上がりそうになる。下唇を噛みしめて強引に抑えた。
腕と脚を切り飛ばされたときに痛みはなかった。義手と義足だからだった。
「あの有名な大賢者様までやって来るとはね~。お前、本当に運がないよなぁ?」
運とかで片付けられるものではない。放っておいて欲しい。
「木製全身鎧の俺が魔物ぶちまけてきたし、お前の姿を見た奴は既に死んでたって言うからバレることはないから安心して大丈夫だろう!」
明るい声で言わないで欲しい。
自分の情けなさと惨めさに泣きたくなってくる。
勝手に出て行った自分が全て悪いのに、袂を別れた魔神に迷惑をかけ、尻ぬぐいまでさせた。穴があったら入りたい。
否。自分が入った後に生き埋めにしてほしい。
「・・・・・・まぁ~、約束破って出て行ったお前も悪ぃが、現王が病気で伏せているって知っていて言わなかった俺にも非があるんだよなぁ。木製全身鎧の俺に言葉とトラウマで心が凹むほどお前は反省しているし、やり過ぎたあっちは現在進行形で痛い目見てる。今回のことは互いに水に流そうぜ! で、計画の変更なんだが───」
猫の姿の魔神は次の話題に移れるほど簡単に言うが、自分は違う。
相談役として雇ってしまったが、魔神は直接関係ない。
方針を決める時点で何度も契約解除を頼んでいたのだが、眷族として力を渡しているのを理由に首を盾に振って貰えず、ずるずるとここまで来てしまったのがいけない。
これは、自分が始めた復讐。
全て、自分独りで引き受けなければならないのだ。
体の内側で、黒い靄がさらに広がっていった。
自分の復讐は、北の大陸の人間をこの手で皆殺しにすること。
南の魔神に、国王と魔神討伐に関わった人物を絶望に叩き落としてから殺したらどうだと打診された。
「いやいや~。全員は無理だってぇ・・・・・・1日に何人の人間が産まれ、何人の人間が死んでいると思ってるの? 体がいくつあっても足りないからぁ・・・・・・」
猫の姿の魔神は耳を倒し、そう呆れていた。
自分は納得できなかったが承諾するしかなかった。
眷族となって体は動かせるのに、動けないこの状況がもどかしかった。
知識を得てから、復讐を果たした者達と自分の復讐が根本的に違うと気づき、自分の復讐は別物に変わっていないかと怖くなった。不安になった。
思い返せば、黒い靄を再び感じるようになったのはこの頃だった。
目を覚まし、眷族の力を得てから9ヶ月が経った頃だ。
大陸中に広がる、とある話もあって、南の魔神と袂を別れた。
自分は本気だったのだが、南の魔神は冗談だと流していたらしい。
自分が単独で王城に侵入し、国王暗殺まであと一歩の所で予期せぬトラブルで重傷を負った。
城の近くにいたそいつがそれに気付いて連絡をして、ようやく自分が本気だったのだと気付き、そいつを救助に向かわせた。と、猫の姿の南の魔神が説明した。
「それがさっきの木製全身鎧の俺。この俺と狼の俺とさっきの俺ともう1体いる俺の合計4体は本体の並行思考。いつもなら本体の中にいて並行して物事に当たっている。今回は手が足りないから本体の体の一部を持って分身体として別行動してるってワケ」
南の魔神とは、見た目も変えられるプラナリアなのだろうか。
「・・・・・・スゲぇ失礼なこと思っただろ今。──それは横に置いといて。随分と派手にやったね~! エラーで右腕と両脚を無くすなんて!」
猫は大口を開けて、ケタケタと笑う。
自分は思い出して気持ちが沈む。
使っていなかったのに、いきなり眷族の力である影が暴走したのだ。
対峙していた城務めの騎士や魔法使いだけでなく、自分にも襲いかかってきた。自分の魔力を勝手に吸い上げ、実体を持って刃を形成し、右腕と両脚を切り落とされた。
それだけでは飽き足らないと言うように、今度は鎌鼬のように周辺にいる全てを切り裂いていった。自分の背中は傷だらけ。それでも、どうにか辿り着こうと奮闘したが、最悪な状況に追い込まれた。
その時に救助された。そのまま連れ戻された。
「腕と両脚はスペアあっからすぐに取り付けられるけど・・・・・・この背中じゃ当分動けないなぁ~」
背後に移動した魔神に背中を触られる。ナイフでズタズタに切り刻まれるような激痛に、悲鳴が上がりそうになる。下唇を噛みしめて強引に抑えた。
腕と脚を切り飛ばされたときに痛みはなかった。義手と義足だからだった。
「あの有名な大賢者様までやって来るとはね~。お前、本当に運がないよなぁ?」
運とかで片付けられるものではない。放っておいて欲しい。
「木製全身鎧の俺が魔物ぶちまけてきたし、お前の姿を見た奴は既に死んでたって言うからバレることはないから安心して大丈夫だろう!」
明るい声で言わないで欲しい。
自分の情けなさと惨めさに泣きたくなってくる。
勝手に出て行った自分が全て悪いのに、袂を別れた魔神に迷惑をかけ、尻ぬぐいまでさせた。穴があったら入りたい。
否。自分が入った後に生き埋めにしてほしい。
「・・・・・・まぁ~、約束破って出て行ったお前も悪ぃが、現王が病気で伏せているって知っていて言わなかった俺にも非があるんだよなぁ。木製全身鎧の俺に言葉とトラウマで心が凹むほどお前は反省しているし、やり過ぎたあっちは現在進行形で痛い目見てる。今回のことは互いに水に流そうぜ! で、計画の変更なんだが───」
猫の姿の魔神は次の話題に移れるほど簡単に言うが、自分は違う。
相談役として雇ってしまったが、魔神は直接関係ない。
方針を決める時点で何度も契約解除を頼んでいたのだが、眷族として力を渡しているのを理由に首を盾に振って貰えず、ずるずるとここまで来てしまったのがいけない。
これは、自分が始めた復讐。
全て、自分独りで引き受けなければならないのだ。
体の内側で、黒い靄がさらに広がっていった。
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