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19.2-3 知らせるためだけの記憶
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とん、と。木の全身鎧の魔神が雪の上に足を着けた。
その場所を、自分は知っていた。
勇者の時に、魔物討伐という名目で滞在していた鉱山の麓の町があった。
その町の建物は全て壊され、雪降る中で人々は寒さに震えていた。
その町の様子を一望できる山の崖の上に、全身鎧の魔神は降り立った。
「ヤッホー!! 元気ぃ?」
全身鎧の魔神の視線の先には、その崖の上に座る狼姿の魔神がいた。
「おうよ! って、全身鎧の俺。こんな所に何用だぁ?」
狼姿の魔神は向きを変えた。
全身鎧の魔神は、狼姿の魔神の正面に座った。
「いや~。俺の分担終わって一段落したら暇になったから来た」
「あっそ・・・・・・」
「で、狼の俺の新着状況は?」
全身鎧の魔神は体を傾けて、町を見下ろす。
「全然駄目・・・・・・。下調べしたいんだが近づけねぇし、大賢者の奴すら現れねぇわ・・・・・・」
「そりゃあれだろ。城勤めか本体ぶっ殺すぅ! で忙しいんじゃねぇ?」
狼の魔神は盛大なため息を吐いた。
「それもそうかもだが・・・・・・表向きには聖剣なくなってんだぜ? 北の魔神の複製体がいないとはいえ、魔物はわんさかいる。さすがにこれで新しい勇者を用意するか、英雄様ご一行を派遣しないと苦情もんだろ?」
全身鎧の魔神が否定するように手を振る。
「しないだろ。ポップコーンのようにぽこぽこと聖剣用意できねぇし」
「現実的に言えばそうなんだが・・・・・・聖剣の苗床があるなら可能かもしれねぇだろ?」
「ああ。あれね。・・・・・・あ。工場破壊中だったから情報共有が上手くいってなくてあまり知らねぇんだわ。頼む!! 教えてくれっ!!」
全身鎧の魔神は必死に頼み込むように、両手を合わせた。
「工場破壊も大変だねぇ~。で、どこから話せばいい?」
狼の魔神は労うような優しい声で尋ねた。
「また抜けてましたは困るから、全部で頼むわ」
「はいよ」
狼の魔神は快諾し、少しだけ考える間を置いた。
「・・・・・・よし。簡単に言えば、攻撃防御に特化した住まい造り。動く要塞だな」
全身鎧の魔神は顎に手を当て、何度も首を傾げた。
「・・・・・・本当に簡単に言ったな・・・・・・詳細くれ」
その催促を待っていたかのように、狼姿の魔神の表情が明るくなった。
「わかってるって! 神の依り代に見合う勇者の魔力と化して内に潜り、神を迎え入れる準備と、その依り代の魔力変換機関を永遠に聖剣を鋳造するものに作り変える。それが聖剣の苗床──白神が直接手を加えて冬の聖剣に付け足した要望だ」
「ほうほう。・・・・・・ん? 勇者の魔力変換機関って壊れたんじゃなかったのか?」
全身鎧の魔神は、再び首を傾げた。
「それもかよ・・・・・・」
狼姿の魔神の目が据わり、耳が横に倒れた。
「大賢者が無理させたらしいぜ・・・・・・本体の俺が処刑場に足を運んで蹴散らした時には、重要なそれがヒートを起こしていたとさ」
「・・・・・・マジで何したいんだあの眷族?」
「さぁ? この大陸の教会設立者の初代法皇なんだろ? 眷族として長く生きすぎて狂い始めたんじゃねぇ?」
「300年ちょっと生きてんだっけ?」
「元人間としては大したもんだよなぁ~」
魔神から聞いた話だと思っていた中で、ありえない数字が出てきた。
それに初代法皇と、狼の姿の魔神は言った。
300年前に白神の眷族になったことは聞いていない。これを信じろと言う方が無理だ。
否。魔神に対して発した大賢者の言葉を思い出せば一致した。信じたくはないが、時代背景的にも当てはまった。
拠点の書斎で読んだ歴史書には、北の大陸は王政国家に異を唱える反乱集団が各地で横暴。その活動が過激となって紛争が起きていた。結果としては王国側が勝利を収めて今に至る。
その中立にいたのが大陸中にあった教会だ。彼らが耳を傾けるのは偉い人間ではなく神。王国派や反乱集団の肩を持つことはなく、紛争によって家や仕事、生きるために必要な食料すら失った人々の避難施設として温かく迎え入れた。
避難した人も含めて、誰もかが平和と幸せを神に願い続けた。
しかし、そのどっちつかずの態度が両方の勢力に疑念を抱かせた。実は裏で繋がっていると疑われ、両方の勢力から攻撃を受けて教会は壊されていった。中にいた関係者だけでなく、避難してきた人々の多くも死んだ。
紛争に終わりが見えない。被害だけが増え続ける。人の屍でいくつもの小山ができあがっていく日々。
そんな時に悪魔が現れた。
その見た目の恐ろしさから、どちらかの勢力が攻撃をしてしまった。
悪魔は大陸中を暴れるだけ暴れ回った。被害はさらに増えた。騎士や魔法使い、反乱集団の屍で城ほどの大きな山が出来上がった。けれど、両方の勢力は争える気力も武器もなくして紛争は集結した。その時に反乱集団の指導者は死亡。王族は生き残っていたことで、王政社会が継続された。
いくつも教会があったから、祈りは届かなかった。
神は1人。なら教会もひとつでなければ神に祈りの声は届かない。
こうして、北の大陸には教会はひとつしかなくなった。
この教会ができたのが、およそ300年前。
これがいつの会話だがわからない。だが、自分の魔力変換機関が壊れたと言っていたから、処刑後から眷族になる前のどこかの記憶かもしれない。
自分の予想でしかないが、唯一の教会を設立したのが初代法皇であり、自分の知るウォール大賢者。そして、その時点で白神の眷族として活動していたのだろう。そうでないと、あの地下の存在が説明できない。
けれど、それを信じろというのは無理がある。
大賢者が生きてきた長い年月もそうだが、それほど昔から白神が依り代を求めてあんな計画を立てていたことが信じられなかった。
魔神はこんな風に言っていた。
たまたま自分が選ばれた、と。
300分の1。そんな奇跡に近い確率を、自分は引いてしまったのだ。
運が悪いにもほどがある。声が出るなら笑いたくなる。
「お。誰か町に来たぞ!」
全身鎧の魔神の言葉に、狼姿の魔神が勢いよく振り返った。
勢いよく振っていた尻尾が、ぱたりと雪の上に落ちた。
「ありゃ賊だよ・・・・・・1日3組以上はやってくるぜぇ・・・・・・」
狼姿の魔神の声はうんざりとしていた。
「うん。これで調べるのは無理だねぇ……」
そこで、このやり取りが途切れた。
そして、景色が一変する。
とん、と。木の全身鎧の魔神が木の床に足を着けた。
そこは、見覚えのある書斎だった。
木の全身鎧の魔神が近づいたのは、ベッドで寝ている自分だった。
否。その自分は過去の自分だった。
手を伸ばして、その自分の顔に触れようとする。
その指と手首と腕に、3匹のモチユキ兎が齧り付いた。小さな目には最大級の敵意が灯っていた。
自分の知っている、兎の姿をした魔族。下級魔族と呼ばれる最初の頃の姿だった。
「・・・・・・なにこの魔族?」
「ああ。この大陸の下級の野良魔族その1。その2とその3もいてな、そいつが気になるみたいで1ヶ月ほど前からよく通って来てんだよぉ」
そう言ったのは、猫の姿をした魔神だ。
本をめくっては、紙の上に羽根ペンを走らせるように文字を書いていた。
気のせいだろうか。やつれているように見えた。
通ってくる。確かにそう言った。
彼らが拠点にいてくれるようになったのは、自分が書斎に運ばれてから。そんな言葉を猫の姿の魔神が言っていたのを思い出す。
この景色は、自分の状態が安定してベッドに移動した直後のやり取りだと察した。
「・・・・・・本体の俺は知ってるのか?」
木の全身鎧の魔神が尋ねると、猫の姿をした魔神が羽根ペンを止めた。
「知らんけど?」
顔を上げて、さも当然のように答えた。
「・・・・・・いやいや。連絡しないと駄目だろ」
兎の魔族を1羽ずつ引き剥がしながら、木の全身鎧の魔神は非難した。
猫の姿の魔神に見られないように、体を使って隠しながら兎の魔族を引き剥がしていた。
その指摘に、猫の姿の魔神の目から光が消えた。
この世は地獄。そう悟ってしまったかのように。
「・・・・・・じゃ、変わってくれよ・・・・・・」
その目と同じように、声に覇気がなかった。
「何を?」
木の全身鎧の魔神は、最後の1羽を引き剥がし終えてから振り返った。
「北の魔神の再生だよ」
猫の姿の魔神の言葉に、自分は耳を疑った。
あのヒトが蘇る。そんな空想の物語のような都合のいいことが起きるはずがない。
「あ? 俺も関わってるだろぅ?」
「全身鎧の俺と本体は北の魔神の複製体を倒してその魔力を送る担当だろ。俺は送られてきた魔力からオリジナルの北の魔神のものと、複製しすぎてバグった魔力を精査して、北の魔神そのものの魔力を集める担当・・・・・・バグが酷すぎて性格歪んでんだよ、あいつ・・・・・・思い出してだけで毛玉吐きそう・・・・・・」
そう言うと、猫の姿をした魔神は盥を取り出して顔を突っ込んだ。「うえっ、ぷ」と声を上げた。
「猫の俺ぇ。本物の猫じゃねぇんだから毛玉吐かないだろうぅ?」
全身鎧の魔神はそう言いながら、自分のベッドの横にあった椅子に座った。
分離した状態で兎の魔族は、その足下で鮫のようにぐるぐると回っていた。
「いいや吐くね!」
猫の姿の魔神は顔を上げると、睨み付けてきた。
「想像してみろ鎧の俺ぇ!! 我ぇと言いお偉いさんみたいな口調の北の奴が、西の奴の第2人格みたいな奴そっくりの話し方で、激甘な性格に変わってるんだぞ!! あああああああ。なんて恐ろしい最終兵器を作り出したんだああああああああああ」
「頭抱えるほど?」
「下手すりゃこの世が終わるぅ~」
「大げさ過ぎだろ?」
「そう思うなら変わってくれぇ~。あとさっさと媒質回収してきてくれぇ~」
「絶賛捜索中だからぁ・・・・・・あぶねぇ。話すり替えられてた!」
猫の姿の魔神は首を傾げながら、盥を横に置いた。
「話すり替えてねぇぞ。最終兵器の残骸に心がやられたこの俺にとっての癒やしはそいつらだし。本体に連絡入れて立ち入り禁止を宣言されたら俺の心が死ぬ・・・・・・」
「そうなる前に役割チェンジってことかぁ?」
「そうそうっ‼」
猫の姿の魔神は、首を激しく縦に振った。
「・・・・・・その姿の俺に言うのもおかしい話だが、アニマルセラピーなんて興味ないだろ?」
「っちっちっち」
猫の姿の魔神は右手を振った。
「聞いてもねぇことを強制的に解説説明してストレス解消してる」
「はた迷惑!!」
「喧しいっ!! そいつが起きたらいっぱい解説説明してやるって決めて頑張ってんだぞっ!!」
そう叫びながら、猫の姿の魔神がふわふわの毛に覆われた右手を突き出した先には、ベッドの上にいる自分だった。
思い返せば、かなりの時間を授業に当たられていた。
「まずは魔神と伝承だろぉ・・・・・・次に人間と魔物の魔法だろぉ・・・・・・城の滞在期間の短さを考えれば政治や歴史、マナー講座もしねぇとなぁ・・・・・・復讐計画開始まで13年もあるんだから一般教育の1段階上の、いや3段階上の教養も教えてもいいなぁ・・・・・・ふっふっふ。楽しみすぎて毛が逆立ってくるぜぇええい!!」
極悪な犯罪を考えるような表情と声音で、猫の姿の魔神は己の野望を口にした。
「目的脱線してるぞ!! 戻ってこい猫の俺ぇ!!」
目的が変わっていないか。ちょうど、自分もそう思っていた。
「目的の範疇内だっ!! 復讐には知識も必要だと教えなければいけねぇからな!!」
「・・・・・・その本音は?」
全身鎧の魔神がは叫び返すのを止め、落ち着いた声で尋ねた。
「思う存分解説説明講座してやらぁ!! あーっはっはっはっはっは!!」
「・・・・・・駄目だ。猫の俺壊れやがった」
全身鎧の魔神はそう言いながら、目があると思われる兜は敵意を向ける兎の魔族に向けられていた。
距離があった。机の上で下の方まで目が届いていなった。その2つの状況によって、猫の姿の魔神は兎の魔族の様子に気付いていなかった。
そこで、このやり取りが終わった。
そして、景色が一変する。
とん、と。ピエロが氷の床に足を着けた。
そこは拠点である氷の洞窟。そのどこか。
洞窟の形状、そして氷の形から、自分が入ったことのない部屋だとわかった。
その部屋に、眠るように瞼を下ろして体を伏せる北の魔神の姿もあった。
なぜ、複製体がここにいるのか。
もしかしたら、先ほど言っていた北の魔神の再生した姿なのだろうか。
そんな不安が頭の中に渦巻いた。
その姿の前に、猫の姿の魔神、狼の姿の魔神がいた。
「狼の俺ぇ。もうちょっと右~」
「はいよー」
左右から布を持って地面に敷こうとしている。
否。その地面は歪に凹凸していた。
先にピエロに気付いたのは、猫の姿の魔神だった。
「おー。ピエロの俺ぇ。どうしたぁ?」
「それはこっちの台詞だ。何してんだよぉ?」
「死体処理」
狼の姿の魔神が答えた。
ピエロは、まだ布がかけられいない木で作られた鎧の右手を見た。
その人差し指には黒い塗料が付着していた。氷の地面に「おのれトリオ」と書かれていた。
「・・・・・・燃やすなら手伝うが?」
ピエロがそう告げると、布が勝手に持ち上がった。
「止めろぅ!!」
そう叫びながら布を取り払ったのは、布をかけられていた木の全身鎧の魔神だった。
「傷心している俺に止めを刺すなっ!! 大丈夫って優しく労って~!!」
抱きつこうとする全身鎧の魔神を、ピエロは右に移動するだけで躱した。
「酷いよ~。冷たいよ~」
全身鎧の魔神は、泣くように両手を顔に添えた。
「猫の俺。北の魔神の状況は?」
「ああ。やっぱり媒質がないから目覚まさない」
「聞けよっ!!」
簡単なやりとりをし始めたピエロと猫の姿の魔神に、全身鎧の魔神が声を荒げた。
あれが、本物の北の魔神なのだ。
「ああ。大変だった……」
突然、全身鎧の魔神が積み重ねてきた努力を噛みしめるかのような声を出した。左手で拳を作ってぎゅっと握りしめていた。
「魔神とは……大陸の維持に必要な基準まで迅速かつ的確にマナを減らしつつ、相手のナーマを減らす量を計りながら適量になるよう誘導する重要装置っ‼ 聖剣の使い手とは違い、替えがきかないっ‼」
「なんか語りだしたなぁ」
「なんで語りだしたぁ?」
「追いかけまわされて、気でも触れたかぁ?」
突然の語りに、なんで、と自分も疑問に思った。
「対処法としては新たな魔神を用立てるか、代役を立てるっ‼ だーが‼ 新たな魔神や代わりの存在などぽこぽこいるわけがないっ‼ 装置の機能は魔力変換機関にすでに刻まれているからだっ‼」
たぶんだが、全身鎧の魔神はかまって欲しいのだと思う。
書斎で読んだ創作小説で、そんな登場人物がいたからだ。
とにかく注目を引きたくて、問題を起こしたり、関係の無いことをして目立つ。全身鎧の魔神の行動に当てはまった。
けれど、妙なひっかかりがあった。
一体化した魔神の中にいて並行して物事に当たる存在。それが並行思考だ。
「じゃあどうするか? 居続けさせるしかない‼ だが、トラブルは常につきもの。何かの拍子で魔神が消滅するのは確認済み。この由々しき事態への対処法として目を付けたのが、装置部分に関係の無い魔力変換機関の一部を上級魔族に貸して魔神代行……眷族にする方法だ‼ 魔神の魔力変換機関にひとつの機能を加え、魔神消滅後に眷族に渡した魔力変換機関を回収してそれらを接続。魔神としての重要装置を最優先に修復して、支障なく儀式を行えるようにしたっ‼」
「儀式以外の記憶は不要って理由で引き継げないのって酷いよねぇ」
「これのせいで狙われやすい眷族たちに、救済措置がないのも酷いよねぇ」
猫の姿と狼の姿の魔神が、小声で言った。
例えるなら、右手と左手で別々のことを書き、それらとは関係ない魔法の詠唱をするようなものだ。
考える脳が1つの人間なら絶対に失敗する。それを魔神は別の脳にそれぞれ任せることで可能とさせている。並行と思考の言葉の意味からそう解釈していた。
人間ができると自信を持ちながらも、できないのではと不安を持つように。分身体は魔神と酷似した思考を持ちながらも、魔神が考えている事に真逆の意見を持つという許容の範囲はあるのだろう。
「だが、北の魔神は眷族を持たずに消滅‼ やむおえず‼ 分裂体を倒しながら北の魔神の魔力を抽出‼ 姿や性格などの情報は本体の記憶を型枠として採用‼ そうして40%の再生を完成させ、残るは重要な魔力変換機関を閉じ込めた媒質のみ‼ もうすぐで、俺らの奮闘も終わるぞぉ‼」
「改めて聞くと、達成比率おかしいよなぁ」
「本来なら99.9%って言いたいところなのになぁ」
猫の姿と狼の姿の魔神が、再び小声で言った。
だが、この記憶の中の全身鎧の魔神はそうではない。
平行思考と偽って、独自の考えや性格をもって発言していた。
あのダイコウという存在は、初めから自分にこれを見せるつもりでいたのかもしれない。
「そういりゃ・・・・・・なんで全員集合してんだよ?」
ピエロが質問すると、2体の分身体が一斉に視線を逸らした。
「・・・・・・本体に聞いてくるかぁ」
くるりと背を向けて歩き出そうとしたピエロに、3体が抱きついて抑えた。
「待って!! 今行ったら駄目ぇ!!」
「本体に殺されるぅ!!」
「ステイステイ!!」
ピエロは足を止め、張り付く3体を無理矢理剥がした。
「で、なんで全員集合してんだよ?」
猫の姿をした魔神が、ふわふわの手をおそるおそるに上に伸ばす。
「えー・・・・・・あいつの重傷を本体の俺が治してるから・・・・・・」
「はぁ? なんでぇ?」
「・・・・・・眷族の力が暴走した・・・・・・」
「たかが暴走だろぅ? 本体も何やってんだよぉ・・・・・・過労で苛立ちが止まらねぇとか愚痴ってただろ……」
「背中の傷が酷くて常備してある薬でも数ヶ月かかるなら、力使った方が早いって判断」
「あっそ・・・・・・」
ピエロは飽きたように素っ気なく言うと、眠っているような体勢の北の魔神に手を当てた。
「それにしても・・・・・・北の勇者は馬鹿だねぇ。たかが分裂体の1体倒しただけで、罪悪感を抱くなんてなぁ。まだまだたくさんいたのになぁ~。1度、あの大群見せた方がいいんじゃねぇ?」
「ピエロの俺。さすがにそれは言い過ぎじゃねぇか?」
猫の姿の魔神が、眉間に皺を寄せた。
「スノーフラワーの特徴を使ってたくさん作られるなんて誰も想像しねぇよ。むしろ、北の勇者が結界を張っている複製体を倒さなかったら、俺達はずっと外の結果で足止めされてた。そっちの方が馬鹿なんじゃねぇの?」
「ま。その高度な結界のせいで、異変に気付けないでいたこっちの落ち度もあるよな~」
全身鎧の魔神は、猫の姿の魔神の肩を持つような含みがあった。
「はいはい。ストップストップ!」
3体の分身体に待ったをかけた狼の姿の魔神は、強引に会話を止めるように体を割り込ませた。
「ここで俺達が何言っても意味ねぇだろ」
「確かにな。だが、狼の俺もあいつの馬鹿さには嫌気あんだろ?」
「馬鹿だろうが阿呆だろうがどっちでもいいだろ。それをサポートするのがこの俺と猫の俺の仕事。その器だって我武者羅に馬鹿や阿呆やって必死に力を物にして、本体や俺達の並列意識のサポートもあって復讐成し遂げたんだろ?」
ピエロは反論出来ないとばかりに黙った。
「狼の俺。随分といいこと言うなぁ~」
そう言って狼の姿の魔神に近寄ってきたのは、全身鎧の魔神だった。
「魔神や魔族は消滅するだけで何も残らないと知らず、優しい言葉に絆されて聖剣の苗床を発動させる水晶玉に触れちまって白い神の野郎の依り代になっちまった馬鹿でもサポートすれば復讐は叶う。いいこと言うねぇ! あれさえ触れなければ、聖剣が魔力に変わって体内から支配されることもなかったのになぁ・・・・・・。聖剣によって依り代として作り替えられ、白い神が作り出す聖剣工房になることはなかったって言うのになぁ~」
「そういう攻撃的な言動するから、トリオに追いかけ回されるんだろぉ?」
「・・・・・・猫の俺が追い打ちをかけてくるぅ・・・・・・」
全身鎧の魔神は、和からは離れていじけだした。
「あ。本体から頼まれごとされたから行くわ」
狼の姿の魔神がそう言って、砂嵐を纏って姿を消した。
「俺も後任せたって言われたから行くなぁ」
猫の姿の魔神は、とたとたと歩いて部屋から出て行った。
全身鎧の魔神は無言でピエロを見た。
ピエロは話すことないと言わんばかりに、視線を逸らした。
「ひどいみんな!!」
膝から崩れるようにして四つん這いになって悲しみの声を上げた。
「マジで俺が何したって言うんだぁ!!」
「胸糞悪い下手な演技してっからだぁよ」
瞬きの一瞬より早く、あのクリスタルに覆われた場所で会った魔神の本体が現れて、全身鎧の後頭部を掴んで地面に叩きつけた。
「そんな大根演技でバレねぇと思っていたのかぁ?」
苛立っていると言っていたが、明らかに激怒していた。
ピエロはただただ静観していた。
「・・・・・・よくこんな面倒くさい話し方できるよな?」
全身鎧は悪そびれる様子がない。
否。どこか魔神本体を見下している様子があった。
「周期前の不安定を利用して出てきて、バレても俺への悪評。その度胸に恐れ入るぜぇ」
魔神本体はさらに手に力を入れて、全身鎧の頭を氷の床にめり込ませた。
「こちとら嘘つき見つけ出すゲームしてる暇ねぇんだよっ‼ 要望通りの結果は出してやっからとっとと帰れっ‼」
ぐつぐつと煮込んだような熱湯──否。東の大陸にある火山の中でぐつぐつと泡たつマグマのような危ない熱があった。噴火ではなくねっとり流れるマグマのように、触れたら一瞬で燃やされる。そう思ってしまうほど、ここまで怒っている魔神は初めて見た。自分が対象でないとわかっているのに、その気迫に萎縮してしまった。
木よりも脆そうな骨の手なのに、今にでもその兜を粉々に握り割りそうだった。
その対象である全身鎧の余裕満々の姿に、別の意味で不気味に見えた。
「はいはい。で、ひとつ質問。──偽名であっても名前を付けるほど北の勇者に肩入れしてるみたいだけど、そんなにあれ大事なのか?」
「当たり前だ。依頼人だぞ」
何かを考えるように間があった。
その静けさの後に、嵐がやって来るのではないかと思えるほど異様な空気だった。
「だったら、始めから皆殺しの復讐でやってやればいいじゃん」
全身鎧の魔神が、はっきりと告げた。
「依頼人と請負の関係なんだろ? 依頼人がこうしてって言ったらそれ通りにやるのが仕事だろ? お前への命令も同じなんだから一緒にやってやれば、依頼人はこーんな遠回りせずに済んだだろ?」
何を言っているのか理解できなかった。
「あ。そりゃ無理な話だったな! やる気ないからな!」
「・・・・・・わかってんなら言うなよなぁ」
顔の周りを飛び回る小さな虫を叩きつぶすように、全身鎧の魔神の兜を握力だけで粉砕した。
残った体の部分は乾いた砂となって崩れた。
魔神の本体がパチンと指を鳴らすと、その砂は指を鳴らした掌に集まって消えた。
「しばらくは俺とお前で工場破壊を手分けするぞ」
「はいよ」
ピエロが返事をすると、魔神は指を鳴らすと砂嵐に包まれて消えた。どこかに移動したのだろうと予想はつく。
魔神の本音を引き出すために、この記憶の持ち主は、浸食した分身体の1体を犠牲にしたのだ。
否。もしかしたら、予備がいたから犠牲にしたのかもしれない。
そこで、このやり取りが終わった。
そして、景色が一変する。
狼の姿の魔神が、アルバースト家の屋敷に足を着けた。
今までの記憶の光景とは違い、たまに輪郭がぼやけたりずれたりしていた。
この記憶の持ち主が、狼の姿をした魔神を別の場所から見ているかのような感覚だった。
喉を切られ、魔物となってどこかに行ってしまったウタネの姿を見せつけられた。
屋敷を後にして、外へと出て行ってしまった。
他の魔物のように人を殺しに行ったのかもしれない。
魔法使いの集団に見つかれば殺されるかもしれない。
経緯はどうあれ、ウタネという人間は死んでしまった。
生きて欲しいと願ったのに、死んでしまったのだ。
その場所を、自分は知っていた。
勇者の時に、魔物討伐という名目で滞在していた鉱山の麓の町があった。
その町の建物は全て壊され、雪降る中で人々は寒さに震えていた。
その町の様子を一望できる山の崖の上に、全身鎧の魔神は降り立った。
「ヤッホー!! 元気ぃ?」
全身鎧の魔神の視線の先には、その崖の上に座る狼姿の魔神がいた。
「おうよ! って、全身鎧の俺。こんな所に何用だぁ?」
狼姿の魔神は向きを変えた。
全身鎧の魔神は、狼姿の魔神の正面に座った。
「いや~。俺の分担終わって一段落したら暇になったから来た」
「あっそ・・・・・・」
「で、狼の俺の新着状況は?」
全身鎧の魔神は体を傾けて、町を見下ろす。
「全然駄目・・・・・・。下調べしたいんだが近づけねぇし、大賢者の奴すら現れねぇわ・・・・・・」
「そりゃあれだろ。城勤めか本体ぶっ殺すぅ! で忙しいんじゃねぇ?」
狼の魔神は盛大なため息を吐いた。
「それもそうかもだが・・・・・・表向きには聖剣なくなってんだぜ? 北の魔神の複製体がいないとはいえ、魔物はわんさかいる。さすがにこれで新しい勇者を用意するか、英雄様ご一行を派遣しないと苦情もんだろ?」
全身鎧の魔神が否定するように手を振る。
「しないだろ。ポップコーンのようにぽこぽこと聖剣用意できねぇし」
「現実的に言えばそうなんだが・・・・・・聖剣の苗床があるなら可能かもしれねぇだろ?」
「ああ。あれね。・・・・・・あ。工場破壊中だったから情報共有が上手くいってなくてあまり知らねぇんだわ。頼む!! 教えてくれっ!!」
全身鎧の魔神は必死に頼み込むように、両手を合わせた。
「工場破壊も大変だねぇ~。で、どこから話せばいい?」
狼の魔神は労うような優しい声で尋ねた。
「また抜けてましたは困るから、全部で頼むわ」
「はいよ」
狼の魔神は快諾し、少しだけ考える間を置いた。
「・・・・・・よし。簡単に言えば、攻撃防御に特化した住まい造り。動く要塞だな」
全身鎧の魔神は顎に手を当て、何度も首を傾げた。
「・・・・・・本当に簡単に言ったな・・・・・・詳細くれ」
その催促を待っていたかのように、狼姿の魔神の表情が明るくなった。
「わかってるって! 神の依り代に見合う勇者の魔力と化して内に潜り、神を迎え入れる準備と、その依り代の魔力変換機関を永遠に聖剣を鋳造するものに作り変える。それが聖剣の苗床──白神が直接手を加えて冬の聖剣に付け足した要望だ」
「ほうほう。・・・・・・ん? 勇者の魔力変換機関って壊れたんじゃなかったのか?」
全身鎧の魔神は、再び首を傾げた。
「それもかよ・・・・・・」
狼姿の魔神の目が据わり、耳が横に倒れた。
「大賢者が無理させたらしいぜ・・・・・・本体の俺が処刑場に足を運んで蹴散らした時には、重要なそれがヒートを起こしていたとさ」
「・・・・・・マジで何したいんだあの眷族?」
「さぁ? この大陸の教会設立者の初代法皇なんだろ? 眷族として長く生きすぎて狂い始めたんじゃねぇ?」
「300年ちょっと生きてんだっけ?」
「元人間としては大したもんだよなぁ~」
魔神から聞いた話だと思っていた中で、ありえない数字が出てきた。
それに初代法皇と、狼の姿の魔神は言った。
300年前に白神の眷族になったことは聞いていない。これを信じろと言う方が無理だ。
否。魔神に対して発した大賢者の言葉を思い出せば一致した。信じたくはないが、時代背景的にも当てはまった。
拠点の書斎で読んだ歴史書には、北の大陸は王政国家に異を唱える反乱集団が各地で横暴。その活動が過激となって紛争が起きていた。結果としては王国側が勝利を収めて今に至る。
その中立にいたのが大陸中にあった教会だ。彼らが耳を傾けるのは偉い人間ではなく神。王国派や反乱集団の肩を持つことはなく、紛争によって家や仕事、生きるために必要な食料すら失った人々の避難施設として温かく迎え入れた。
避難した人も含めて、誰もかが平和と幸せを神に願い続けた。
しかし、そのどっちつかずの態度が両方の勢力に疑念を抱かせた。実は裏で繋がっていると疑われ、両方の勢力から攻撃を受けて教会は壊されていった。中にいた関係者だけでなく、避難してきた人々の多くも死んだ。
紛争に終わりが見えない。被害だけが増え続ける。人の屍でいくつもの小山ができあがっていく日々。
そんな時に悪魔が現れた。
その見た目の恐ろしさから、どちらかの勢力が攻撃をしてしまった。
悪魔は大陸中を暴れるだけ暴れ回った。被害はさらに増えた。騎士や魔法使い、反乱集団の屍で城ほどの大きな山が出来上がった。けれど、両方の勢力は争える気力も武器もなくして紛争は集結した。その時に反乱集団の指導者は死亡。王族は生き残っていたことで、王政社会が継続された。
いくつも教会があったから、祈りは届かなかった。
神は1人。なら教会もひとつでなければ神に祈りの声は届かない。
こうして、北の大陸には教会はひとつしかなくなった。
この教会ができたのが、およそ300年前。
これがいつの会話だがわからない。だが、自分の魔力変換機関が壊れたと言っていたから、処刑後から眷族になる前のどこかの記憶かもしれない。
自分の予想でしかないが、唯一の教会を設立したのが初代法皇であり、自分の知るウォール大賢者。そして、その時点で白神の眷族として活動していたのだろう。そうでないと、あの地下の存在が説明できない。
けれど、それを信じろというのは無理がある。
大賢者が生きてきた長い年月もそうだが、それほど昔から白神が依り代を求めてあんな計画を立てていたことが信じられなかった。
魔神はこんな風に言っていた。
たまたま自分が選ばれた、と。
300分の1。そんな奇跡に近い確率を、自分は引いてしまったのだ。
運が悪いにもほどがある。声が出るなら笑いたくなる。
「お。誰か町に来たぞ!」
全身鎧の魔神の言葉に、狼姿の魔神が勢いよく振り返った。
勢いよく振っていた尻尾が、ぱたりと雪の上に落ちた。
「ありゃ賊だよ・・・・・・1日3組以上はやってくるぜぇ・・・・・・」
狼姿の魔神の声はうんざりとしていた。
「うん。これで調べるのは無理だねぇ……」
そこで、このやり取りが途切れた。
そして、景色が一変する。
とん、と。木の全身鎧の魔神が木の床に足を着けた。
そこは、見覚えのある書斎だった。
木の全身鎧の魔神が近づいたのは、ベッドで寝ている自分だった。
否。その自分は過去の自分だった。
手を伸ばして、その自分の顔に触れようとする。
その指と手首と腕に、3匹のモチユキ兎が齧り付いた。小さな目には最大級の敵意が灯っていた。
自分の知っている、兎の姿をした魔族。下級魔族と呼ばれる最初の頃の姿だった。
「・・・・・・なにこの魔族?」
「ああ。この大陸の下級の野良魔族その1。その2とその3もいてな、そいつが気になるみたいで1ヶ月ほど前からよく通って来てんだよぉ」
そう言ったのは、猫の姿をした魔神だ。
本をめくっては、紙の上に羽根ペンを走らせるように文字を書いていた。
気のせいだろうか。やつれているように見えた。
通ってくる。確かにそう言った。
彼らが拠点にいてくれるようになったのは、自分が書斎に運ばれてから。そんな言葉を猫の姿の魔神が言っていたのを思い出す。
この景色は、自分の状態が安定してベッドに移動した直後のやり取りだと察した。
「・・・・・・本体の俺は知ってるのか?」
木の全身鎧の魔神が尋ねると、猫の姿をした魔神が羽根ペンを止めた。
「知らんけど?」
顔を上げて、さも当然のように答えた。
「・・・・・・いやいや。連絡しないと駄目だろ」
兎の魔族を1羽ずつ引き剥がしながら、木の全身鎧の魔神は非難した。
猫の姿の魔神に見られないように、体を使って隠しながら兎の魔族を引き剥がしていた。
その指摘に、猫の姿の魔神の目から光が消えた。
この世は地獄。そう悟ってしまったかのように。
「・・・・・・じゃ、変わってくれよ・・・・・・」
その目と同じように、声に覇気がなかった。
「何を?」
木の全身鎧の魔神は、最後の1羽を引き剥がし終えてから振り返った。
「北の魔神の再生だよ」
猫の姿の魔神の言葉に、自分は耳を疑った。
あのヒトが蘇る。そんな空想の物語のような都合のいいことが起きるはずがない。
「あ? 俺も関わってるだろぅ?」
「全身鎧の俺と本体は北の魔神の複製体を倒してその魔力を送る担当だろ。俺は送られてきた魔力からオリジナルの北の魔神のものと、複製しすぎてバグった魔力を精査して、北の魔神そのものの魔力を集める担当・・・・・・バグが酷すぎて性格歪んでんだよ、あいつ・・・・・・思い出してだけで毛玉吐きそう・・・・・・」
そう言うと、猫の姿をした魔神は盥を取り出して顔を突っ込んだ。「うえっ、ぷ」と声を上げた。
「猫の俺ぇ。本物の猫じゃねぇんだから毛玉吐かないだろうぅ?」
全身鎧の魔神はそう言いながら、自分のベッドの横にあった椅子に座った。
分離した状態で兎の魔族は、その足下で鮫のようにぐるぐると回っていた。
「いいや吐くね!」
猫の姿の魔神は顔を上げると、睨み付けてきた。
「想像してみろ鎧の俺ぇ!! 我ぇと言いお偉いさんみたいな口調の北の奴が、西の奴の第2人格みたいな奴そっくりの話し方で、激甘な性格に変わってるんだぞ!! あああああああ。なんて恐ろしい最終兵器を作り出したんだああああああああああ」
「頭抱えるほど?」
「下手すりゃこの世が終わるぅ~」
「大げさ過ぎだろ?」
「そう思うなら変わってくれぇ~。あとさっさと媒質回収してきてくれぇ~」
「絶賛捜索中だからぁ・・・・・・あぶねぇ。話すり替えられてた!」
猫の姿の魔神は首を傾げながら、盥を横に置いた。
「話すり替えてねぇぞ。最終兵器の残骸に心がやられたこの俺にとっての癒やしはそいつらだし。本体に連絡入れて立ち入り禁止を宣言されたら俺の心が死ぬ・・・・・・」
「そうなる前に役割チェンジってことかぁ?」
「そうそうっ‼」
猫の姿の魔神は、首を激しく縦に振った。
「・・・・・・その姿の俺に言うのもおかしい話だが、アニマルセラピーなんて興味ないだろ?」
「っちっちっち」
猫の姿の魔神は右手を振った。
「聞いてもねぇことを強制的に解説説明してストレス解消してる」
「はた迷惑!!」
「喧しいっ!! そいつが起きたらいっぱい解説説明してやるって決めて頑張ってんだぞっ!!」
そう叫びながら、猫の姿の魔神がふわふわの毛に覆われた右手を突き出した先には、ベッドの上にいる自分だった。
思い返せば、かなりの時間を授業に当たられていた。
「まずは魔神と伝承だろぉ・・・・・・次に人間と魔物の魔法だろぉ・・・・・・城の滞在期間の短さを考えれば政治や歴史、マナー講座もしねぇとなぁ・・・・・・復讐計画開始まで13年もあるんだから一般教育の1段階上の、いや3段階上の教養も教えてもいいなぁ・・・・・・ふっふっふ。楽しみすぎて毛が逆立ってくるぜぇええい!!」
極悪な犯罪を考えるような表情と声音で、猫の姿の魔神は己の野望を口にした。
「目的脱線してるぞ!! 戻ってこい猫の俺ぇ!!」
目的が変わっていないか。ちょうど、自分もそう思っていた。
「目的の範疇内だっ!! 復讐には知識も必要だと教えなければいけねぇからな!!」
「・・・・・・その本音は?」
全身鎧の魔神がは叫び返すのを止め、落ち着いた声で尋ねた。
「思う存分解説説明講座してやらぁ!! あーっはっはっはっはっは!!」
「・・・・・・駄目だ。猫の俺壊れやがった」
全身鎧の魔神はそう言いながら、目があると思われる兜は敵意を向ける兎の魔族に向けられていた。
距離があった。机の上で下の方まで目が届いていなった。その2つの状況によって、猫の姿の魔神は兎の魔族の様子に気付いていなかった。
そこで、このやり取りが終わった。
そして、景色が一変する。
とん、と。ピエロが氷の床に足を着けた。
そこは拠点である氷の洞窟。そのどこか。
洞窟の形状、そして氷の形から、自分が入ったことのない部屋だとわかった。
その部屋に、眠るように瞼を下ろして体を伏せる北の魔神の姿もあった。
なぜ、複製体がここにいるのか。
もしかしたら、先ほど言っていた北の魔神の再生した姿なのだろうか。
そんな不安が頭の中に渦巻いた。
その姿の前に、猫の姿の魔神、狼の姿の魔神がいた。
「狼の俺ぇ。もうちょっと右~」
「はいよー」
左右から布を持って地面に敷こうとしている。
否。その地面は歪に凹凸していた。
先にピエロに気付いたのは、猫の姿の魔神だった。
「おー。ピエロの俺ぇ。どうしたぁ?」
「それはこっちの台詞だ。何してんだよぉ?」
「死体処理」
狼の姿の魔神が答えた。
ピエロは、まだ布がかけられいない木で作られた鎧の右手を見た。
その人差し指には黒い塗料が付着していた。氷の地面に「おのれトリオ」と書かれていた。
「・・・・・・燃やすなら手伝うが?」
ピエロがそう告げると、布が勝手に持ち上がった。
「止めろぅ!!」
そう叫びながら布を取り払ったのは、布をかけられていた木の全身鎧の魔神だった。
「傷心している俺に止めを刺すなっ!! 大丈夫って優しく労って~!!」
抱きつこうとする全身鎧の魔神を、ピエロは右に移動するだけで躱した。
「酷いよ~。冷たいよ~」
全身鎧の魔神は、泣くように両手を顔に添えた。
「猫の俺。北の魔神の状況は?」
「ああ。やっぱり媒質がないから目覚まさない」
「聞けよっ!!」
簡単なやりとりをし始めたピエロと猫の姿の魔神に、全身鎧の魔神が声を荒げた。
あれが、本物の北の魔神なのだ。
「ああ。大変だった……」
突然、全身鎧の魔神が積み重ねてきた努力を噛みしめるかのような声を出した。左手で拳を作ってぎゅっと握りしめていた。
「魔神とは……大陸の維持に必要な基準まで迅速かつ的確にマナを減らしつつ、相手のナーマを減らす量を計りながら適量になるよう誘導する重要装置っ‼ 聖剣の使い手とは違い、替えがきかないっ‼」
「なんか語りだしたなぁ」
「なんで語りだしたぁ?」
「追いかけまわされて、気でも触れたかぁ?」
突然の語りに、なんで、と自分も疑問に思った。
「対処法としては新たな魔神を用立てるか、代役を立てるっ‼ だーが‼ 新たな魔神や代わりの存在などぽこぽこいるわけがないっ‼ 装置の機能は魔力変換機関にすでに刻まれているからだっ‼」
たぶんだが、全身鎧の魔神はかまって欲しいのだと思う。
書斎で読んだ創作小説で、そんな登場人物がいたからだ。
とにかく注目を引きたくて、問題を起こしたり、関係の無いことをして目立つ。全身鎧の魔神の行動に当てはまった。
けれど、妙なひっかかりがあった。
一体化した魔神の中にいて並行して物事に当たる存在。それが並行思考だ。
「じゃあどうするか? 居続けさせるしかない‼ だが、トラブルは常につきもの。何かの拍子で魔神が消滅するのは確認済み。この由々しき事態への対処法として目を付けたのが、装置部分に関係の無い魔力変換機関の一部を上級魔族に貸して魔神代行……眷族にする方法だ‼ 魔神の魔力変換機関にひとつの機能を加え、魔神消滅後に眷族に渡した魔力変換機関を回収してそれらを接続。魔神としての重要装置を最優先に修復して、支障なく儀式を行えるようにしたっ‼」
「儀式以外の記憶は不要って理由で引き継げないのって酷いよねぇ」
「これのせいで狙われやすい眷族たちに、救済措置がないのも酷いよねぇ」
猫の姿と狼の姿の魔神が、小声で言った。
例えるなら、右手と左手で別々のことを書き、それらとは関係ない魔法の詠唱をするようなものだ。
考える脳が1つの人間なら絶対に失敗する。それを魔神は別の脳にそれぞれ任せることで可能とさせている。並行と思考の言葉の意味からそう解釈していた。
人間ができると自信を持ちながらも、できないのではと不安を持つように。分身体は魔神と酷似した思考を持ちながらも、魔神が考えている事に真逆の意見を持つという許容の範囲はあるのだろう。
「だが、北の魔神は眷族を持たずに消滅‼ やむおえず‼ 分裂体を倒しながら北の魔神の魔力を抽出‼ 姿や性格などの情報は本体の記憶を型枠として採用‼ そうして40%の再生を完成させ、残るは重要な魔力変換機関を閉じ込めた媒質のみ‼ もうすぐで、俺らの奮闘も終わるぞぉ‼」
「改めて聞くと、達成比率おかしいよなぁ」
「本来なら99.9%って言いたいところなのになぁ」
猫の姿と狼の姿の魔神が、再び小声で言った。
だが、この記憶の中の全身鎧の魔神はそうではない。
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あのダイコウという存在は、初めから自分にこれを見せるつもりでいたのかもしれない。
「そういりゃ・・・・・・なんで全員集合してんだよ?」
ピエロが質問すると、2体の分身体が一斉に視線を逸らした。
「・・・・・・本体に聞いてくるかぁ」
くるりと背を向けて歩き出そうとしたピエロに、3体が抱きついて抑えた。
「待って!! 今行ったら駄目ぇ!!」
「本体に殺されるぅ!!」
「ステイステイ!!」
ピエロは足を止め、張り付く3体を無理矢理剥がした。
「で、なんで全員集合してんだよ?」
猫の姿をした魔神が、ふわふわの手をおそるおそるに上に伸ばす。
「えー・・・・・・あいつの重傷を本体の俺が治してるから・・・・・・」
「はぁ? なんでぇ?」
「・・・・・・眷族の力が暴走した・・・・・・」
「たかが暴走だろぅ? 本体も何やってんだよぉ・・・・・・過労で苛立ちが止まらねぇとか愚痴ってただろ……」
「背中の傷が酷くて常備してある薬でも数ヶ月かかるなら、力使った方が早いって判断」
「あっそ・・・・・・」
ピエロは飽きたように素っ気なく言うと、眠っているような体勢の北の魔神に手を当てた。
「それにしても・・・・・・北の勇者は馬鹿だねぇ。たかが分裂体の1体倒しただけで、罪悪感を抱くなんてなぁ。まだまだたくさんいたのになぁ~。1度、あの大群見せた方がいいんじゃねぇ?」
「ピエロの俺。さすがにそれは言い過ぎじゃねぇか?」
猫の姿の魔神が、眉間に皺を寄せた。
「スノーフラワーの特徴を使ってたくさん作られるなんて誰も想像しねぇよ。むしろ、北の勇者が結界を張っている複製体を倒さなかったら、俺達はずっと外の結果で足止めされてた。そっちの方が馬鹿なんじゃねぇの?」
「ま。その高度な結界のせいで、異変に気付けないでいたこっちの落ち度もあるよな~」
全身鎧の魔神は、猫の姿の魔神の肩を持つような含みがあった。
「はいはい。ストップストップ!」
3体の分身体に待ったをかけた狼の姿の魔神は、強引に会話を止めるように体を割り込ませた。
「ここで俺達が何言っても意味ねぇだろ」
「確かにな。だが、狼の俺もあいつの馬鹿さには嫌気あんだろ?」
「馬鹿だろうが阿呆だろうがどっちでもいいだろ。それをサポートするのがこの俺と猫の俺の仕事。その器だって我武者羅に馬鹿や阿呆やって必死に力を物にして、本体や俺達の並列意識のサポートもあって復讐成し遂げたんだろ?」
ピエロは反論出来ないとばかりに黙った。
「狼の俺。随分といいこと言うなぁ~」
そう言って狼の姿の魔神に近寄ってきたのは、全身鎧の魔神だった。
「魔神や魔族は消滅するだけで何も残らないと知らず、優しい言葉に絆されて聖剣の苗床を発動させる水晶玉に触れちまって白い神の野郎の依り代になっちまった馬鹿でもサポートすれば復讐は叶う。いいこと言うねぇ! あれさえ触れなければ、聖剣が魔力に変わって体内から支配されることもなかったのになぁ・・・・・・。聖剣によって依り代として作り替えられ、白い神が作り出す聖剣工房になることはなかったって言うのになぁ~」
「そういう攻撃的な言動するから、トリオに追いかけ回されるんだろぉ?」
「・・・・・・猫の俺が追い打ちをかけてくるぅ・・・・・・」
全身鎧の魔神は、和からは離れていじけだした。
「あ。本体から頼まれごとされたから行くわ」
狼の姿の魔神がそう言って、砂嵐を纏って姿を消した。
「俺も後任せたって言われたから行くなぁ」
猫の姿の魔神は、とたとたと歩いて部屋から出て行った。
全身鎧の魔神は無言でピエロを見た。
ピエロは話すことないと言わんばかりに、視線を逸らした。
「ひどいみんな!!」
膝から崩れるようにして四つん這いになって悲しみの声を上げた。
「マジで俺が何したって言うんだぁ!!」
「胸糞悪い下手な演技してっからだぁよ」
瞬きの一瞬より早く、あのクリスタルに覆われた場所で会った魔神の本体が現れて、全身鎧の後頭部を掴んで地面に叩きつけた。
「そんな大根演技でバレねぇと思っていたのかぁ?」
苛立っていると言っていたが、明らかに激怒していた。
ピエロはただただ静観していた。
「・・・・・・よくこんな面倒くさい話し方できるよな?」
全身鎧は悪そびれる様子がない。
否。どこか魔神本体を見下している様子があった。
「周期前の不安定を利用して出てきて、バレても俺への悪評。その度胸に恐れ入るぜぇ」
魔神本体はさらに手に力を入れて、全身鎧の頭を氷の床にめり込ませた。
「こちとら嘘つき見つけ出すゲームしてる暇ねぇんだよっ‼ 要望通りの結果は出してやっからとっとと帰れっ‼」
ぐつぐつと煮込んだような熱湯──否。東の大陸にある火山の中でぐつぐつと泡たつマグマのような危ない熱があった。噴火ではなくねっとり流れるマグマのように、触れたら一瞬で燃やされる。そう思ってしまうほど、ここまで怒っている魔神は初めて見た。自分が対象でないとわかっているのに、その気迫に萎縮してしまった。
木よりも脆そうな骨の手なのに、今にでもその兜を粉々に握り割りそうだった。
その対象である全身鎧の余裕満々の姿に、別の意味で不気味に見えた。
「はいはい。で、ひとつ質問。──偽名であっても名前を付けるほど北の勇者に肩入れしてるみたいだけど、そんなにあれ大事なのか?」
「当たり前だ。依頼人だぞ」
何かを考えるように間があった。
その静けさの後に、嵐がやって来るのではないかと思えるほど異様な空気だった。
「だったら、始めから皆殺しの復讐でやってやればいいじゃん」
全身鎧の魔神が、はっきりと告げた。
「依頼人と請負の関係なんだろ? 依頼人がこうしてって言ったらそれ通りにやるのが仕事だろ? お前への命令も同じなんだから一緒にやってやれば、依頼人はこーんな遠回りせずに済んだだろ?」
何を言っているのか理解できなかった。
「あ。そりゃ無理な話だったな! やる気ないからな!」
「・・・・・・わかってんなら言うなよなぁ」
顔の周りを飛び回る小さな虫を叩きつぶすように、全身鎧の魔神の兜を握力だけで粉砕した。
残った体の部分は乾いた砂となって崩れた。
魔神の本体がパチンと指を鳴らすと、その砂は指を鳴らした掌に集まって消えた。
「しばらくは俺とお前で工場破壊を手分けするぞ」
「はいよ」
ピエロが返事をすると、魔神は指を鳴らすと砂嵐に包まれて消えた。どこかに移動したのだろうと予想はつく。
魔神の本音を引き出すために、この記憶の持ち主は、浸食した分身体の1体を犠牲にしたのだ。
否。もしかしたら、予備がいたから犠牲にしたのかもしれない。
そこで、このやり取りが終わった。
そして、景色が一変する。
狼の姿の魔神が、アルバースト家の屋敷に足を着けた。
今までの記憶の光景とは違い、たまに輪郭がぼやけたりずれたりしていた。
この記憶の持ち主が、狼の姿をした魔神を別の場所から見ているかのような感覚だった。
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