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21.3-6 変わり果てた場所
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朝6時に先輩がやって来た。大きな鞄を背負っていた。
「いいよーって言うまで、目閉じててねー」
自分は渋々と瞼を閉じた。
閉じなければ良かったと、別の意味で後悔した。
先輩命令でそれを買ってきた。代金は先輩から預かっていた。
ベンチに座っていた先輩に、買ってきた食べ物を渡す。
それが乗った皿を受け取って、極上の獲物を見つけたかのように先輩は金色の目を輝かせた。
「おおー!! これが北の大陸の新名物!! 雪見大福ー!!」
興奮しすぎて、雪見大福の抑揚が全て上がっていた。
先輩はそれに気付いているのか、敢えて気付かないふりをしているのか。付属の串を大福に刺して頬張った。
「んん~!! おいしい~!! 弾力がありながらものび続ける餅皮は仄かに甘みがあって、中のバニラアイスは甘くもほんのりと塩気があって、甘と甘を足しているのにくどくない!! むしろ足したことでなんかコラボレーションして素晴らしい甘を実現させた!! しかも、やや固めのアイスの中にふっくら粒あんを仕込む粋な計らい!! ちょっと大きいかなーと僅かに引いたけど、餅にアイスに餡子が入っているならもうちょっと大きくても良くねって思うぐらいだわー!! 食べてしまうのがもったいないでも食べちゃう!! おっいしいー!!」
先輩は大の甘党だ。
南の魔神から状況報告として届く手紙に、いつも焼き菓子が添えられていた。
手紙が届くたびに先輩がやってきて、手紙を読む自分の横で、今のように感想を告げながら全部たいらげる。それほどの甘党である。
美味しくてもここまで感激できない自分が食べるより、先輩に食べられた方が菓子達も幸せだろう。
話は変わるが、北の大陸は朝と夜は1段と寒い。朝6時過ぎにアイスを食べるという行動は、自分には厳しいものがあった。
大福に舌包みを打つ先輩の横に座り、自分は故郷を眺める。
こんな形で里帰りを果たすとは思ってもいなかった。
どうやって一瞬で移動したのかと質問したが、「魔族だから」とよくわからない回答をされた。
見渡す限り、雪以外は全て自分の知らない光景に変わっていた。
魔道具の外灯の方が明るい白白明け。行き交う人々の口からは白い息が吐かれる。
あの時の魔物の襲撃によって王都は壊滅。王族を含めた、城にいた人間は毒を使う魔物によって殺された。
他の大陸の人達主導の復興作業が、今も続いている。この大陸の人間が主導でないのは、自分にもわからない。
木材や石材を運ぶゴーレム達を見て、自分は緊張して固まった。
その魔法使いは全く知らない人で安堵した。
北の大陸では、夜はすぐに訪れて暗くなってしまう。そのため、徐々に明るくなる朝方から仕事をすることが多い。魔法の明かりがあっても、夜の暗さは、闇のようで何も見えなくなるからだ。
ただし、防寒具は必須。
先輩の背負っていた鞄の中身は、防寒仕様の長い丈の上着だった。誰もが着ているため、周りから浮いていない。
いつもの黒装束の帽子を外し、髪を2つに束ねてからニットの帽子を被り、上着を着れば、誰がどう見ても人間にしか見えない。
上着だけではない。人間そっくりの容姿をした先輩でなければ、大騒ぎになっていた。
魔族に馴染みのないこの大陸で、人間や獣以外の姿をしていたら、魔物と間違われて攻撃される可能性が高いからだ。
今の自分の方が人間は人間でも、怪しい人間に見られてしまうだろう。
上着の下の服装は南の大陸の旅装。肌を叩き、口に入ってこようとする砂風対策を重視したローブとマスク。魔眼を隠しながらも視界を守るためのゴーグル。深めに被ったフード。
肌を一切出さない格好である。不審者と言われても否定できない。けれど、人間との不慮の接触があると困るから肌は出せない。
「はい!! ごちそうさま~!!」
幸せいっぱいの先輩の声に横を見れば、万遍の笑みで両手を合わせていた。
「じゃ次に行こう!!」
その言葉の意味を、自分は帰るのではないのかと質問した。
「え? これで終わりなワケないじゃん? 元アルバースト領で販売されているのはこの1カ所だけ。しかも朝食のデザートのような扱いだから小さくて足りないしー。元レモーナ領では雪見大福を扱っている店はたっくさーんあるんだよ!! てなわけで、次のお店にゴー!!」
さっき、大福大きいなどと言っていたのは先輩だ。
それを指摘する前に、義手の二の腕を掴まれて無理矢理連れて行かれた。
元アルバースト領。
そう言われるまで、自分がどこにいたのかすら気付かないほど様変わりしていた。
変な鼻歌を歌う先輩に連れられて歩く。
左右の建物を見ても、自分の記憶に残された町並みに一致する光景がなかった。
瓦解したその建物を見て、自分の足が止まった。
アルバースト家の屋敷だ。あの外装も、大きな穴も、血の残る内装も覚えていた。
入れないように立ち入り禁止の縄で囲まれていた。
説明書きのある立て看板があった。それを読もうとしたが、先輩に引っ張られて読むことなく通り過ぎた。
気になることがあった。
故人を偲ぶとき、北の大陸では真っ白なリボンを供えるのだが、それが1つもなかった。
あの縄で囲う前に撤去されたのかもしれない。だが、自分の脳裏には誰も供えなかったのだと、確証のない批判的な考えが支配した。
自分も白いリボンを用意していない。
けれど、この屋敷で本を読み、語らい、穏やかで楽しい時間を共に過ごした女性へ。感謝と謝罪、そして安らかな眠りを心の中で祈った。
さらに歩き続けた。
雲ひとつない快晴の空に変わっていた。
領地から出る正式な手順ではなく、王都中央を突っ切るように進む。元アルバースト領地よりも復興作業に取り組む多くの人の姿、露店という簡易な店を開く商人達の姿、何かを調べている『同盟調査団』という文字が背中に書かれた白服の団体、英雄譚を弾き語る吟遊詩人たちの姿があった。全員が他の大陸からやって来た人間で、北の大陸の人間の姿はなかった。
雪見大福を買った店の淑女の人は、東の大陸からやって来たとか言っていた。
元王都であっても帰ってきた感覚がないのは、そんな人々の様子と、象徴である城とクリスタルの城壁がないからだと、ようやく気付いた時だった。
「そうだったー。キミに戦利品渡さなきゃ!」
細やかな用事を思い出しかのような口ぶりだった。
戦利品の件は嘘で、買い出し要員として連れてこられてのではなかったらしい。
嘘ならその方がいいと思い、何も言わなかった。
「ってなワケでー・・・・・・こちらが戦利品第1弾になりまーす!!」
楽しそうに先輩は告げ、大げさに腕を振って差し向けた先には石碑があった。
立っている人間ほどの、透明感のある大きな黒い石だ。その黒に溶け込んでたまるかと主張するように、洗練された美しい白い文字が刻まれていた。
観賞する方の褒美か。そう思いながら、刻まれた文章を読んで鳥肌が立った。
文章には、死刑囚として歩かされた過去があっても、魔物の襲撃から人々を守ろうとした英雄と呼ばれた男の姿と行動が刻まれていた。
「じゃ‼ 次の慰霊碑を見に行こーう‼」
先輩は笑いが堪えきれずに、にまにまと笑っていた。
次。まだあるのか。
そう思うと、恥ずかしくなってきた。
先輩は強引にじゃれつく猫のように、自分の腕を掴んで連れて行った。
別の石碑の場所は、とても近くにあった。
こちらは、勇者としての自分の生涯だ。死刑囚の内容は、自分の記憶と食い違う部分が一切なかった。
「いろんな村や町を襲う魔物から人々を救った英雄。その正体は無実の罪で処刑された北の勇者だった・・・・・・。この大陸中に散りばめるように当然できていた石碑の物語に、こぞって吟遊詩人がやって来て、自分の歌にしてこの大陸や他の大陸に広げているらしいよー」
先輩の含みある楽しそうな声に、急激に自分の体温が上がったのを感じた。
自分の記憶や活動を知り、碑石設置という人間離れした芸当が可能なのは1人しかいない。
この石碑では、常に北の魔神が一緒に行動してしている。けれど、犯人は同行している北の魔神ではなく、石碑には一切登場しない魔神の方だ。
南の魔神。なんてことをしてくれたんだ。
絶望と恥ずかしさに悶絶したくなる。
本人への不許可の掲載。個人情報の漏洩。経歴詐欺。これは人権を無視した犯罪だ。
「んー・・・・・・と。北の勇者は悪ーい北の魔神を懲らしめて、2度と悪さをしないように誓わせた。勇者は王様の隠し子であって、この功績を評価されて時期王様を約束されたけど、魔物を使って全ての大陸の支配を企む悪ーいお妃様により王様は暗殺。王妃と手を組んでいた裏切り者の同行者達によって、勇者は処刑された。そんな風前の灯火の勇者を救ったのは、彼の勇者としての慈悲深さと正義心に心を打たれた北の魔神。勇者と魔神は共にこの国を救わんと立ち上がった。そして、押し寄せる魔物たちと、他の大陸へと移動を始めた強大な力を持った魔物達のボス。北の魔神に押し寄せる魔物達の対処とこの大陸を託して、勇者は単騎で強大な力を持った魔物に挑んだ。そして、その魔物を打ち取ったが、勇者の姿はどこにもなく、消えてしまった・・・・・・だったかなー? 遠いけど、徒歩圏内でその内容の石碑も見に行けるよー」
止めてくれ。
声に出して言わないで欲しいし、見に行きたくもない。
王道的で面白そうな創作物語に脚色されているが、この勇者が自分だとわかっていると顔から火がでるほど恥ずかしい。
極寒の北の大陸なのに、生身の部分が火照りを超えて熱くなる。汗すら流れてきた。
待って欲しい自分。恥ずかしがっている場合ではない。
この恥ずかしい物語を吟遊詩人が歌にして拡散している。そう先輩は言っていた。
声が出せたら、変な悲鳴を上げただろう。
そう確信できるほど、自分は激しく動揺する。頭の中が勢いよく回されたかのように考えがとっちらかる。
これは公開処刑なのか。それとも社会的に抹殺しようとしているのか。
こんな慙死を受けるぐらいなら、物理的に殺して欲しい。
「そこのお嬢ちゃん。あの人具合悪いのかい? さっきからしゃがんで手で顔を覆ったままプルプル震えているけど?」
「違いますよ-。あの慰霊碑の内容に感激して震えているだけですよー」
先輩は、呼吸をするように嘘を吐く。その声の端から、自分の様子を面白がっている気配を感じた。
「やっぱりいいよね、この勇者の物語。まだ駆け出しの吟遊詩人だから説得力ないけど、この物語は素晴らしいよ。誰よりも勇気あるから勇者って感じだし、勇者と魔神が手を取るなんて過去に1度もないから、彼の純粋さと人柄の良さを感じさせるよ。こんな素晴らしい人を無実で処刑するなんて酷いものだ。西の大陸ならその名誉を讃えるのに!」
「ですよねー!」
知らない新人吟遊詩人と先輩が、自分に追い打ちをかけてくる。
視線を向けると、先輩と談笑している新人吟遊詩人は他の大陸の人間だった。
この人の生まれ育った大陸で、自分を元にした物語が語られる。ここで止めなくては恥が上書きされてしまう。
精神的損害あるいは疲労から、体を立たせるのすら覚束ない。だが、行動しないとこの悪夢のような時間が続くのだ。なんとしても阻止しなくてはならない。
言葉を向けようとしたとき、自分の右斜め前方から敵意と殺意が膨れあがるのを察した。
位置からしたら、新人吟遊詩人の背後。
自分はすぐに移動し、振り落とされた木の棒を握る太い手を義手で掴む。そこを軸にして、襲撃者を投げ飛ばした。
襲撃者は情けない悲鳴を上げながら尻もちを着いた。遅れて、状況に気付いた新人吟遊詩人が小さな悲鳴を上げた。
「んー? どちら様?」
僅かに首を傾げる先輩に、襲撃者が敵意を込めた声で怒鳴った。
「あ、あんたらのせいだ!! あんたらのせいでおれたちのじんせいメチャクチャだ!!」
「はぁ? 意味わかんないんだけどー?」
「おれたちただしいんだ!! おうさまがただしいんだからおれたちもただしいんだ!! そうじゃなきゃおかしいんだよ!!」
唾を飛ばしながらそう叫ぶ襲撃者は、北の大陸の人間。拙い話し方から、教育を受ける権利が得られない下級身分の、さらに貧しい人間だ。どこかの村か小さな町から、ここへ来たのだろう。
南の魔神に会う前の自分もこんな話し方をしていたと思うと、恥ずかしくなってきた。
敵意と殺意のおかけで冷静になれたのに、振出しに戻った気がした。
「だーかーらー!! 意味わかんないって言ってるでしょー?」
先輩の声が苛立ち始める。金色の目は嫌悪と不愉快さから釣り上がり、人間らしさが消えて獣のような獰猛さを見せ始める。
このままでは、先輩が魔族としての本性を出して襲撃者を殺しかねない。
立ち上がった襲撃者と睨み付ける先輩。その間に自分が入って、落ち着いてと動作で伝える。
「後輩邪魔!!」
「ひっこんでろ!!」
先輩と襲撃者の声が重なった。あまりに綺麗に重なってしまったため、何を言っているのは聞き取れなかった。
「なんだ。また貴様か?」
いつの間に集まっていた傍観する人の輪からこちらへ、背中に文字の入った白服を着た男性がやってきた。
男性は眼鏡をしていた。その眼鏡の奥にある目は、襲撃者を見てうんざりとしてた。
腕を曲げたまま持ち上げた。空から一羽の鷹が降りてきて、その腕に着陸した。
「妨害活動もこれで60回目。以前に忠告しただろ。次は公務執行妨害で逮捕するぞ、と」
そんなに他の人間に迷惑をかけ続けていたのかこの襲撃者は、と。その数字に呆れた。
「知ってる顔して乱入してきたアンタも、アタシからすれば誰って話なんだけどー?」
この先輩は、全ての人間に喧嘩を売らないと気が済まない性格なのだろうか。
「同盟調査団として派遣された東の大陸の人間だが?」
「名前言えよ」
「名札を付けているだろ? 第1、全然興味ありませんと目で言っているだろ?」
「あ。バレた?」
この間に、襲撃者は複数の男性に取り押さえられた。
統一された服装から、組織だと判断できた。
「こういう危険な場所には、魔族と戦えるほどの熟練者が送り込まれるのがお決まりだ。喧嘩感覚で殺し合いを所望するなら付き合ってやろうか?」
「わー。怖ーい!!」
「今更、可愛げのある少女のように振る舞っても騙されんぞ」
「ひっどいな-。可愛げのある少女だって、戦わないと生きていけないのが世の常だよー」
先輩は頬を膨らませた。
「・・・・・・そう言うなら、今回だけは可愛げのある少女として扱ってやろう」
調査団の男は余裕のある微笑みを浮かべた。駄々をこねる子供を慰めるように、先輩の主張に付き合った。
この男は、先輩が魔族だと気付いている。
憶測だが、自分も純粋な魔族だと見ているだろう。
腰にある小さな杖から、魔法使いだろうと推測できた。
魔族と戦ったことある人間ほど、魔族や魔神を警戒する。
魔族だと言って攻撃を正当化することもできるのに、それをしないのはどうしてなのか。自分は訝しんだ。
「うらぎりものだ!!」
突然の大声に、自分は驚いて声の方を振り返った。
連行されていく襲撃犯が喚き散らしていた。
「わるいのはうらぎりものだ!! おれたちじゃない!! おうさまがただしいんだ!! おうさまがわるいといったうらぎりものがわるいんだ!! いきているのがわるいんだ!! しょけいされたときにしんでればよかったんだ!! おうさまもおれたちはわるくない!! おれたちは────」
離れていくにつれ、襲撃者の声も小さくなっていった。
「・・・・・・そういえば、何がしたかったのあれー?」
そう尋ねた先輩の後ろで、顔色を真っ青にして涙目で震える吟遊詩人が必死に頷いた。
調査団の男は石碑を指した。
「これによって、この大陸の人間の政治と常識が悪になってしまったことを抗議したいのだ。抗議しているものはごく一部だが、暴力に訴えて、補導されればああやって騒ぐ。最初は事件の全貌を調べに来た私達を標的にしていたのだが、拡散の導火線になった吟遊詩人達に逆恨みする者が多くなった。実に迷惑行為だ」
迷惑とかいいながらも、あまり気にしていない様子である。
「最近はこの碑石を見に来ただけの人間にも危害を加えるようになって凶悪化している。・・・・・・そこの方、碑石巡りをするなら護衛付きのツアーがあるから参加した方がいいぞ。金はかかるが命の保証はある。今ならツアー開始まで腕利きの奴を1人付けてやろう」
「入ります!!」
吟遊詩人は思いっきし手を上げた。男が呼んだ護衛が来ると、自分に礼を言って行ってしまった。
会話の流れが途切れた。
これは好機。早く先輩を連れてここから離れた方がいい。
そう思った矢先に、男に二の腕を掴まれた。
敵意も悪意もない。だが、逃がさないと言わんばかりの力と、静かな意志が目に宿っていた。
腕に止まっていた鷹は肩に移動していた。猛禽類の凛々しくも愛嬌のある丸い目が、自分を見据えていた。
4つの視線に、針で刺された虫の標本のように動けなくなり、身じろぎすらできなかった。
「もう少し詳しく説明してやろう」
大手柄になるほどの獲物を見つけた狩人のように、男は不敵な笑みをしていた。
「この碑石が突然現れたのは、北の大陸で起きた魔物襲撃から10日後だ」
こんな恥ずかしいものが、早々と建てられたことに驚いた。
ふと、疑問が浮かんだ。
自分はこれを石碑と見ている。男は碑石と呼んでいた。お互いに起きた事柄の記録という認識からだ。
しかし、先輩は慰霊碑と呼んでいた。
違いは出来事の中心人物である北の勇者の生死。けれど、この認識のずれに強い違和感があった。
その間に、説明は進んでいく。
「北の魔神が自ら設置したと公表した。今回の元凶である王妃が、この大陸やがては全大陸を支配するための兵器として自大陸の人間を魔物に変えて兵器としようとする非人道的かつ戦争を誘発する悪として、魔物に殺された王妃に有罪の判決が下った。王妃が用意した国王の偽物により、北の勇者を処刑へと誘導。それも含め数多の嘘で味方にした大陸の人間を共犯者とし、大陸の社会制度の解体と社会的制裁を下す方針に決まった。事の大きさもあり、3つの大陸で、この大陸の人間をバッシングする状況が起きた。彼ら自身、罪人のように肩身が狭くなってしまったということだ。王を神輿にやりたい放題する犯罪者がいれば、この結果は当然ではあるがな」
「・・・・・・それってー、3つの大陸で金銭心理物理の3方向からぶん殴って泣かせてやろーぜ‼ ってことだよねー?」
「制裁による圧力と言え!! ・・・・・・無論、解体と制裁と同時進行に、事件の真相の解明、北の勇者の名誉の回復と身の潔白の証明も進めている」
前に、復讐計画を練っていたときに、南の魔神が似たようなことを言っていた気がする。
これが、復讐のアドバイスマネージャーとしての、仕事の成果なのかもしれない。
南の魔神が言った通りのことが起きていた。依頼人として、仕事の素晴らしい出来に称賛するべきなのに、全然喜べなかった。
わかっていた。これは、自分が望んだ復讐の形ではないからだ。
この大陸には、この復讐で最も望んでいたあのヒト達のいた痕跡がないからだ。
「1番難航しているのは事件の真相だ!!」
男の声が1段とうるさくなって、自分が耳が痛くなった。
「特に人間を魔物に変える非人道的な方法!! 碑石にも書かれておらず、この大陸中を調べても魔物にされた個人が判明する名簿すら見つからない。死体を解剖調査しても何も解明されていない!! これがわからない限り、その資料を手にした悪人によって似たことが起こされかねん。運良く北の魔神を見つけて尋ねたが、知らないと一蹴された。そこで我々はこう推測した。あの碑文は、北の勇者から語られたものを北の魔神が形にしたもの。そうであれば、北の勇者が唯一の真実を知っていると!!」
「熱弁だね-。飽きたからもう行っていいー?」
先輩は興味を無くしたかのような、どうでもいいと言わんばかりの声で言った。
「ああ。その代わり、この質問に答えてくれ──お前達の界隈で北の勇者を見かけなかったか? 王族特有の雪のような白銀の髪をした人間だ」
これを聞きたくて攻撃してこなかったのだと気付いた。それと同時に、自分の心臓が飛び跳ねた。
驚きと恐怖からだ。
もし見つかったらどうなるのか。勇者であっても今は魔族だ。人類の敵となった自分は再び処刑されるのか。あるいは、あの監獄のように暗闇に閉じ込められるのか。
考えれば考えるだけ、不安に襲われた。
魔族と気付かれているが、空気が重たいだけ。今すぐに殺し合うような殺伐とした雰囲気はない。
この質問を上手く切り抜けられれば、この危機的状況から逃げられる。
「・・・・・・その前に質問ー」
先輩はちょこんと首を傾げた。
「北の勇者は死んだんでしょ? 北の勇者が処刑された地にある同じ石にそう書かれていたんだし、生きてるはずないじゃーん‼」
自分は死んだことになっていた。そのことに、自分が驚いた。
ならどうしてこの男は、北の勇者が生きていると思ったのだろう。その疑問があった。
「そう捉えられる、記され方がされているからだ」
男は、切り札を出すかのように笑った。
「だが、姿を消したのであって、死んだとはどの碑石にも書かれていない。そして、死体を見たものは全くいない。なら、存命している可能性の方が高い。我々はそう捉えて行動している。根拠ならある。今なお出現しない冬の聖剣だ。北の魔神を打倒できる武器を、北の勇者が持って逃亡している。そう考えられないか?」
その根拠には申し訳ないが、冬の聖剣はただ出現しないだけである。自分とは一切関係ない。
「ああ。確かにそうだねー……で、王族が生き残ってたらどうなるのー? 王族だから処刑しちゃう?」
先輩の言葉に、自分は恐怖で身震いしそうになった。
脇腹を強く掴んで、それを制した。
「おかしなことを聞くな? 東の大陸に嫁いだ王妃様はこの大陸の元王族だ。あの御方を処刑しろと無礼なことを言いたいのか?」
「違う違う。北の勇者のことだよー?」
先輩の視線が、自分を貫いた。
「答えはノーだ。北の勇者には申し訳ないが発見次第、重要参考人として本部のある東の大陸で身柄を拘束させてもらう。好待遇の衣住食は用意するが実質監禁だ。こちらとしては誠に申し訳ないと思っているけどな・・・・・・」
「事件の全貌がわかったら解放されるのー? お咎めなしー?」
「当たり前だろ!! 監禁をすぐさま解き、しかるべき褒賞を与える所存だ!!」
「それって、名誉のトロフィーや金品だけじゃなく豪華な屋敷もだよねー?」
「随分とこちら側の事情に詳しいのだな・・・・・・」
失礼だと思った。怒鳴るほどではないか、この男に怒りたくなった。
まるで、獣が人間の言葉を話すのを初めて見るかのような驚き様だったからだ。
東の魔族達がどのような生活をしているかはわからないが、魔族にだって文化や文明はある。暴力で解決を好まない魔族だっている。
南の大陸の眷族達は、人間の言葉や文化文明などの常識を学んで理解していた。権力者に喧嘩を売りに行く時もあったが、ほとんどの人間とは友好的な関係を築いているのを何度も見た。考え方が違う存在をわかり合おうとするのは、並大抵のことではない。
そんな彼らの努力と優しさを、馬鹿にされた気がしたのだ。
「それって鳥籠と一緒じゃん!!」
先輩がほくそ笑む。そして歌うように言葉を紡いでいく。
「哀れで可哀想な北の勇者。大勢の人間に抑圧させ、監獄に幽閉され、磔で命を落としかけ、勇者の責務に囚われて大陸救って・・・・・・全てが終わって、もし生きていたとしても、最後は美しい鳥籠に押し込められた珍しい鳥のように英雄として称賛される・・・・・・功績は偉大だけど、他人に繋がれ隔離され続ける人生なんて、体を小さくしないといけない、せっま~い牢屋に押し込められた罪人の時と同じだと思わない? 後輩?」
先輩の言葉が無数の棘のように、自分の胸に突き刺さった。
それは自分が最も理解していた。
それと、偉大な功績など何ひとつない。
本当のことを話したかった。自分は勇者の立場を盾に、優しいヒト達を殺した赦されない罪人。復讐者として皆殺しを望みながらも、最後は私怨に狩られて利用されただけの愚か者。
言葉が発せられない。その現実が、今はもどかしかった。
だが、けじめを果たすためには、自分は北の勇者であることを隠さなくてはならない。
その一環として頷かなければならないとわかっていても、偉大な功績を立ててないという1点から頷くことができなかった。
端から見れば、先輩を無視する態度の悪い後輩に見られているのだろう。
「やけに詳しいな? 監獄塔についての調査報告はまだ発表していないのだが?」
男の質問に、悪戯が大好きな動物のように先輩は目を光らせた。
「うん。だって北の勇者は──」
自分の顔と髪を隠すフードに、先輩が手を添えていた。
下ろす気だと、すぐに察した。拘束されていない手で咄嗟に掴んで阻止するが、その行動を見た男が眉間に皺を寄せた。
その表情でわかった。この行動がかえって不審感を与えてしまったのだ。
先輩の唇が動く。
獣のような目が楽しそうに歪んだ。
否。自分の正体をばらした後に起きるだろう展開は、とっても楽しい状況なのだろうと確信している様子だった。
当然、先輩と男が消えた。
否。周りの景色が変わっていた。
「なんなの‼ この看板‼」
「なんで『誘導君』がここにいる⁉ そもそも突然出てきたぞ⁉」
先輩と男の、素っ頓狂な悲鳴が聞こえた。
「なんじゃそりゃー‼」
「『誘導君』は、現場の修復作業時の接触事故を防ぐための自動式誘導魔法道具だ‼」
声が聞こえる方向を見れば、先輩や男の姿ではなく、どっと笑っている多くの人の背中が見えた。
いつの間にか、自分は人の輪を飛び越えて、先輩と男から大きく離れていた。
南の魔神が使う砂嵐の転移に似ているが、肝心の砂嵐はなかった。
何が起きたのかと混乱する自分に、すぐ横から囁く女性の声が聞こえた。
「南の魔神さんには連絡済みです。ここから離れますから、付いてきてください」
始めて聞く声から敵意や悪意はなかった。
南の魔神の知り合いなのか。そう思いながら、自分は頷いた。
肩よりも短い黒髪の小柄な女性の後ろ姿に続いて、ここから離れた。
南の魔神の名前を口にした女性を、信頼しているわけではない。
だが、変わり果てた王都は自分の知らない場所だ。土地勘がある女性に付いていった方が得策だと判断した。
「いいよーって言うまで、目閉じててねー」
自分は渋々と瞼を閉じた。
閉じなければ良かったと、別の意味で後悔した。
先輩命令でそれを買ってきた。代金は先輩から預かっていた。
ベンチに座っていた先輩に、買ってきた食べ物を渡す。
それが乗った皿を受け取って、極上の獲物を見つけたかのように先輩は金色の目を輝かせた。
「おおー!! これが北の大陸の新名物!! 雪見大福ー!!」
興奮しすぎて、雪見大福の抑揚が全て上がっていた。
先輩はそれに気付いているのか、敢えて気付かないふりをしているのか。付属の串を大福に刺して頬張った。
「んん~!! おいしい~!! 弾力がありながらものび続ける餅皮は仄かに甘みがあって、中のバニラアイスは甘くもほんのりと塩気があって、甘と甘を足しているのにくどくない!! むしろ足したことでなんかコラボレーションして素晴らしい甘を実現させた!! しかも、やや固めのアイスの中にふっくら粒あんを仕込む粋な計らい!! ちょっと大きいかなーと僅かに引いたけど、餅にアイスに餡子が入っているならもうちょっと大きくても良くねって思うぐらいだわー!! 食べてしまうのがもったいないでも食べちゃう!! おっいしいー!!」
先輩は大の甘党だ。
南の魔神から状況報告として届く手紙に、いつも焼き菓子が添えられていた。
手紙が届くたびに先輩がやってきて、手紙を読む自分の横で、今のように感想を告げながら全部たいらげる。それほどの甘党である。
美味しくてもここまで感激できない自分が食べるより、先輩に食べられた方が菓子達も幸せだろう。
話は変わるが、北の大陸は朝と夜は1段と寒い。朝6時過ぎにアイスを食べるという行動は、自分には厳しいものがあった。
大福に舌包みを打つ先輩の横に座り、自分は故郷を眺める。
こんな形で里帰りを果たすとは思ってもいなかった。
どうやって一瞬で移動したのかと質問したが、「魔族だから」とよくわからない回答をされた。
見渡す限り、雪以外は全て自分の知らない光景に変わっていた。
魔道具の外灯の方が明るい白白明け。行き交う人々の口からは白い息が吐かれる。
あの時の魔物の襲撃によって王都は壊滅。王族を含めた、城にいた人間は毒を使う魔物によって殺された。
他の大陸の人達主導の復興作業が、今も続いている。この大陸の人間が主導でないのは、自分にもわからない。
木材や石材を運ぶゴーレム達を見て、自分は緊張して固まった。
その魔法使いは全く知らない人で安堵した。
北の大陸では、夜はすぐに訪れて暗くなってしまう。そのため、徐々に明るくなる朝方から仕事をすることが多い。魔法の明かりがあっても、夜の暗さは、闇のようで何も見えなくなるからだ。
ただし、防寒具は必須。
先輩の背負っていた鞄の中身は、防寒仕様の長い丈の上着だった。誰もが着ているため、周りから浮いていない。
いつもの黒装束の帽子を外し、髪を2つに束ねてからニットの帽子を被り、上着を着れば、誰がどう見ても人間にしか見えない。
上着だけではない。人間そっくりの容姿をした先輩でなければ、大騒ぎになっていた。
魔族に馴染みのないこの大陸で、人間や獣以外の姿をしていたら、魔物と間違われて攻撃される可能性が高いからだ。
今の自分の方が人間は人間でも、怪しい人間に見られてしまうだろう。
上着の下の服装は南の大陸の旅装。肌を叩き、口に入ってこようとする砂風対策を重視したローブとマスク。魔眼を隠しながらも視界を守るためのゴーグル。深めに被ったフード。
肌を一切出さない格好である。不審者と言われても否定できない。けれど、人間との不慮の接触があると困るから肌は出せない。
「はい!! ごちそうさま~!!」
幸せいっぱいの先輩の声に横を見れば、万遍の笑みで両手を合わせていた。
「じゃ次に行こう!!」
その言葉の意味を、自分は帰るのではないのかと質問した。
「え? これで終わりなワケないじゃん? 元アルバースト領で販売されているのはこの1カ所だけ。しかも朝食のデザートのような扱いだから小さくて足りないしー。元レモーナ領では雪見大福を扱っている店はたっくさーんあるんだよ!! てなわけで、次のお店にゴー!!」
さっき、大福大きいなどと言っていたのは先輩だ。
それを指摘する前に、義手の二の腕を掴まれて無理矢理連れて行かれた。
元アルバースト領。
そう言われるまで、自分がどこにいたのかすら気付かないほど様変わりしていた。
変な鼻歌を歌う先輩に連れられて歩く。
左右の建物を見ても、自分の記憶に残された町並みに一致する光景がなかった。
瓦解したその建物を見て、自分の足が止まった。
アルバースト家の屋敷だ。あの外装も、大きな穴も、血の残る内装も覚えていた。
入れないように立ち入り禁止の縄で囲まれていた。
説明書きのある立て看板があった。それを読もうとしたが、先輩に引っ張られて読むことなく通り過ぎた。
気になることがあった。
故人を偲ぶとき、北の大陸では真っ白なリボンを供えるのだが、それが1つもなかった。
あの縄で囲う前に撤去されたのかもしれない。だが、自分の脳裏には誰も供えなかったのだと、確証のない批判的な考えが支配した。
自分も白いリボンを用意していない。
けれど、この屋敷で本を読み、語らい、穏やかで楽しい時間を共に過ごした女性へ。感謝と謝罪、そして安らかな眠りを心の中で祈った。
さらに歩き続けた。
雲ひとつない快晴の空に変わっていた。
領地から出る正式な手順ではなく、王都中央を突っ切るように進む。元アルバースト領地よりも復興作業に取り組む多くの人の姿、露店という簡易な店を開く商人達の姿、何かを調べている『同盟調査団』という文字が背中に書かれた白服の団体、英雄譚を弾き語る吟遊詩人たちの姿があった。全員が他の大陸からやって来た人間で、北の大陸の人間の姿はなかった。
雪見大福を買った店の淑女の人は、東の大陸からやって来たとか言っていた。
元王都であっても帰ってきた感覚がないのは、そんな人々の様子と、象徴である城とクリスタルの城壁がないからだと、ようやく気付いた時だった。
「そうだったー。キミに戦利品渡さなきゃ!」
細やかな用事を思い出しかのような口ぶりだった。
戦利品の件は嘘で、買い出し要員として連れてこられてのではなかったらしい。
嘘ならその方がいいと思い、何も言わなかった。
「ってなワケでー・・・・・・こちらが戦利品第1弾になりまーす!!」
楽しそうに先輩は告げ、大げさに腕を振って差し向けた先には石碑があった。
立っている人間ほどの、透明感のある大きな黒い石だ。その黒に溶け込んでたまるかと主張するように、洗練された美しい白い文字が刻まれていた。
観賞する方の褒美か。そう思いながら、刻まれた文章を読んで鳥肌が立った。
文章には、死刑囚として歩かされた過去があっても、魔物の襲撃から人々を守ろうとした英雄と呼ばれた男の姿と行動が刻まれていた。
「じゃ‼ 次の慰霊碑を見に行こーう‼」
先輩は笑いが堪えきれずに、にまにまと笑っていた。
次。まだあるのか。
そう思うと、恥ずかしくなってきた。
先輩は強引にじゃれつく猫のように、自分の腕を掴んで連れて行った。
別の石碑の場所は、とても近くにあった。
こちらは、勇者としての自分の生涯だ。死刑囚の内容は、自分の記憶と食い違う部分が一切なかった。
「いろんな村や町を襲う魔物から人々を救った英雄。その正体は無実の罪で処刑された北の勇者だった・・・・・・。この大陸中に散りばめるように当然できていた石碑の物語に、こぞって吟遊詩人がやって来て、自分の歌にしてこの大陸や他の大陸に広げているらしいよー」
先輩の含みある楽しそうな声に、急激に自分の体温が上がったのを感じた。
自分の記憶や活動を知り、碑石設置という人間離れした芸当が可能なのは1人しかいない。
この石碑では、常に北の魔神が一緒に行動してしている。けれど、犯人は同行している北の魔神ではなく、石碑には一切登場しない魔神の方だ。
南の魔神。なんてことをしてくれたんだ。
絶望と恥ずかしさに悶絶したくなる。
本人への不許可の掲載。個人情報の漏洩。経歴詐欺。これは人権を無視した犯罪だ。
「んー・・・・・・と。北の勇者は悪ーい北の魔神を懲らしめて、2度と悪さをしないように誓わせた。勇者は王様の隠し子であって、この功績を評価されて時期王様を約束されたけど、魔物を使って全ての大陸の支配を企む悪ーいお妃様により王様は暗殺。王妃と手を組んでいた裏切り者の同行者達によって、勇者は処刑された。そんな風前の灯火の勇者を救ったのは、彼の勇者としての慈悲深さと正義心に心を打たれた北の魔神。勇者と魔神は共にこの国を救わんと立ち上がった。そして、押し寄せる魔物たちと、他の大陸へと移動を始めた強大な力を持った魔物達のボス。北の魔神に押し寄せる魔物達の対処とこの大陸を託して、勇者は単騎で強大な力を持った魔物に挑んだ。そして、その魔物を打ち取ったが、勇者の姿はどこにもなく、消えてしまった・・・・・・だったかなー? 遠いけど、徒歩圏内でその内容の石碑も見に行けるよー」
止めてくれ。
声に出して言わないで欲しいし、見に行きたくもない。
王道的で面白そうな創作物語に脚色されているが、この勇者が自分だとわかっていると顔から火がでるほど恥ずかしい。
極寒の北の大陸なのに、生身の部分が火照りを超えて熱くなる。汗すら流れてきた。
待って欲しい自分。恥ずかしがっている場合ではない。
この恥ずかしい物語を吟遊詩人が歌にして拡散している。そう先輩は言っていた。
声が出せたら、変な悲鳴を上げただろう。
そう確信できるほど、自分は激しく動揺する。頭の中が勢いよく回されたかのように考えがとっちらかる。
これは公開処刑なのか。それとも社会的に抹殺しようとしているのか。
こんな慙死を受けるぐらいなら、物理的に殺して欲しい。
「そこのお嬢ちゃん。あの人具合悪いのかい? さっきからしゃがんで手で顔を覆ったままプルプル震えているけど?」
「違いますよ-。あの慰霊碑の内容に感激して震えているだけですよー」
先輩は、呼吸をするように嘘を吐く。その声の端から、自分の様子を面白がっている気配を感じた。
「やっぱりいいよね、この勇者の物語。まだ駆け出しの吟遊詩人だから説得力ないけど、この物語は素晴らしいよ。誰よりも勇気あるから勇者って感じだし、勇者と魔神が手を取るなんて過去に1度もないから、彼の純粋さと人柄の良さを感じさせるよ。こんな素晴らしい人を無実で処刑するなんて酷いものだ。西の大陸ならその名誉を讃えるのに!」
「ですよねー!」
知らない新人吟遊詩人と先輩が、自分に追い打ちをかけてくる。
視線を向けると、先輩と談笑している新人吟遊詩人は他の大陸の人間だった。
この人の生まれ育った大陸で、自分を元にした物語が語られる。ここで止めなくては恥が上書きされてしまう。
精神的損害あるいは疲労から、体を立たせるのすら覚束ない。だが、行動しないとこの悪夢のような時間が続くのだ。なんとしても阻止しなくてはならない。
言葉を向けようとしたとき、自分の右斜め前方から敵意と殺意が膨れあがるのを察した。
位置からしたら、新人吟遊詩人の背後。
自分はすぐに移動し、振り落とされた木の棒を握る太い手を義手で掴む。そこを軸にして、襲撃者を投げ飛ばした。
襲撃者は情けない悲鳴を上げながら尻もちを着いた。遅れて、状況に気付いた新人吟遊詩人が小さな悲鳴を上げた。
「んー? どちら様?」
僅かに首を傾げる先輩に、襲撃者が敵意を込めた声で怒鳴った。
「あ、あんたらのせいだ!! あんたらのせいでおれたちのじんせいメチャクチャだ!!」
「はぁ? 意味わかんないんだけどー?」
「おれたちただしいんだ!! おうさまがただしいんだからおれたちもただしいんだ!! そうじゃなきゃおかしいんだよ!!」
唾を飛ばしながらそう叫ぶ襲撃者は、北の大陸の人間。拙い話し方から、教育を受ける権利が得られない下級身分の、さらに貧しい人間だ。どこかの村か小さな町から、ここへ来たのだろう。
南の魔神に会う前の自分もこんな話し方をしていたと思うと、恥ずかしくなってきた。
敵意と殺意のおかけで冷静になれたのに、振出しに戻った気がした。
「だーかーらー!! 意味わかんないって言ってるでしょー?」
先輩の声が苛立ち始める。金色の目は嫌悪と不愉快さから釣り上がり、人間らしさが消えて獣のような獰猛さを見せ始める。
このままでは、先輩が魔族としての本性を出して襲撃者を殺しかねない。
立ち上がった襲撃者と睨み付ける先輩。その間に自分が入って、落ち着いてと動作で伝える。
「後輩邪魔!!」
「ひっこんでろ!!」
先輩と襲撃者の声が重なった。あまりに綺麗に重なってしまったため、何を言っているのは聞き取れなかった。
「なんだ。また貴様か?」
いつの間に集まっていた傍観する人の輪からこちらへ、背中に文字の入った白服を着た男性がやってきた。
男性は眼鏡をしていた。その眼鏡の奥にある目は、襲撃者を見てうんざりとしてた。
腕を曲げたまま持ち上げた。空から一羽の鷹が降りてきて、その腕に着陸した。
「妨害活動もこれで60回目。以前に忠告しただろ。次は公務執行妨害で逮捕するぞ、と」
そんなに他の人間に迷惑をかけ続けていたのかこの襲撃者は、と。その数字に呆れた。
「知ってる顔して乱入してきたアンタも、アタシからすれば誰って話なんだけどー?」
この先輩は、全ての人間に喧嘩を売らないと気が済まない性格なのだろうか。
「同盟調査団として派遣された東の大陸の人間だが?」
「名前言えよ」
「名札を付けているだろ? 第1、全然興味ありませんと目で言っているだろ?」
「あ。バレた?」
この間に、襲撃者は複数の男性に取り押さえられた。
統一された服装から、組織だと判断できた。
「こういう危険な場所には、魔族と戦えるほどの熟練者が送り込まれるのがお決まりだ。喧嘩感覚で殺し合いを所望するなら付き合ってやろうか?」
「わー。怖ーい!!」
「今更、可愛げのある少女のように振る舞っても騙されんぞ」
「ひっどいな-。可愛げのある少女だって、戦わないと生きていけないのが世の常だよー」
先輩は頬を膨らませた。
「・・・・・・そう言うなら、今回だけは可愛げのある少女として扱ってやろう」
調査団の男は余裕のある微笑みを浮かべた。駄々をこねる子供を慰めるように、先輩の主張に付き合った。
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調査団の男は石碑を指した。
「これによって、この大陸の人間の政治と常識が悪になってしまったことを抗議したいのだ。抗議しているものはごく一部だが、暴力に訴えて、補導されればああやって騒ぐ。最初は事件の全貌を調べに来た私達を標的にしていたのだが、拡散の導火線になった吟遊詩人達に逆恨みする者が多くなった。実に迷惑行為だ」
迷惑とかいいながらも、あまり気にしていない様子である。
「最近はこの碑石を見に来ただけの人間にも危害を加えるようになって凶悪化している。・・・・・・そこの方、碑石巡りをするなら護衛付きのツアーがあるから参加した方がいいぞ。金はかかるが命の保証はある。今ならツアー開始まで腕利きの奴を1人付けてやろう」
「入ります!!」
吟遊詩人は思いっきし手を上げた。男が呼んだ護衛が来ると、自分に礼を言って行ってしまった。
会話の流れが途切れた。
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敵意も悪意もない。だが、逃がさないと言わんばかりの力と、静かな意志が目に宿っていた。
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「もう少し詳しく説明してやろう」
大手柄になるほどの獲物を見つけた狩人のように、男は不敵な笑みをしていた。
「この碑石が突然現れたのは、北の大陸で起きた魔物襲撃から10日後だ」
こんな恥ずかしいものが、早々と建てられたことに驚いた。
ふと、疑問が浮かんだ。
自分はこれを石碑と見ている。男は碑石と呼んでいた。お互いに起きた事柄の記録という認識からだ。
しかし、先輩は慰霊碑と呼んでいた。
違いは出来事の中心人物である北の勇者の生死。けれど、この認識のずれに強い違和感があった。
その間に、説明は進んでいく。
「北の魔神が自ら設置したと公表した。今回の元凶である王妃が、この大陸やがては全大陸を支配するための兵器として自大陸の人間を魔物に変えて兵器としようとする非人道的かつ戦争を誘発する悪として、魔物に殺された王妃に有罪の判決が下った。王妃が用意した国王の偽物により、北の勇者を処刑へと誘導。それも含め数多の嘘で味方にした大陸の人間を共犯者とし、大陸の社会制度の解体と社会的制裁を下す方針に決まった。事の大きさもあり、3つの大陸で、この大陸の人間をバッシングする状況が起きた。彼ら自身、罪人のように肩身が狭くなってしまったということだ。王を神輿にやりたい放題する犯罪者がいれば、この結果は当然ではあるがな」
「・・・・・・それってー、3つの大陸で金銭心理物理の3方向からぶん殴って泣かせてやろーぜ‼ ってことだよねー?」
「制裁による圧力と言え!! ・・・・・・無論、解体と制裁と同時進行に、事件の真相の解明、北の勇者の名誉の回復と身の潔白の証明も進めている」
前に、復讐計画を練っていたときに、南の魔神が似たようなことを言っていた気がする。
これが、復讐のアドバイスマネージャーとしての、仕事の成果なのかもしれない。
南の魔神が言った通りのことが起きていた。依頼人として、仕事の素晴らしい出来に称賛するべきなのに、全然喜べなかった。
わかっていた。これは、自分が望んだ復讐の形ではないからだ。
この大陸には、この復讐で最も望んでいたあのヒト達のいた痕跡がないからだ。
「1番難航しているのは事件の真相だ!!」
男の声が1段とうるさくなって、自分が耳が痛くなった。
「特に人間を魔物に変える非人道的な方法!! 碑石にも書かれておらず、この大陸中を調べても魔物にされた個人が判明する名簿すら見つからない。死体を解剖調査しても何も解明されていない!! これがわからない限り、その資料を手にした悪人によって似たことが起こされかねん。運良く北の魔神を見つけて尋ねたが、知らないと一蹴された。そこで我々はこう推測した。あの碑文は、北の勇者から語られたものを北の魔神が形にしたもの。そうであれば、北の勇者が唯一の真実を知っていると!!」
「熱弁だね-。飽きたからもう行っていいー?」
先輩は興味を無くしたかのような、どうでもいいと言わんばかりの声で言った。
「ああ。その代わり、この質問に答えてくれ──お前達の界隈で北の勇者を見かけなかったか? 王族特有の雪のような白銀の髪をした人間だ」
これを聞きたくて攻撃してこなかったのだと気付いた。それと同時に、自分の心臓が飛び跳ねた。
驚きと恐怖からだ。
もし見つかったらどうなるのか。勇者であっても今は魔族だ。人類の敵となった自分は再び処刑されるのか。あるいは、あの監獄のように暗闇に閉じ込められるのか。
考えれば考えるだけ、不安に襲われた。
魔族と気付かれているが、空気が重たいだけ。今すぐに殺し合うような殺伐とした雰囲気はない。
この質問を上手く切り抜けられれば、この危機的状況から逃げられる。
「・・・・・・その前に質問ー」
先輩はちょこんと首を傾げた。
「北の勇者は死んだんでしょ? 北の勇者が処刑された地にある同じ石にそう書かれていたんだし、生きてるはずないじゃーん‼」
自分は死んだことになっていた。そのことに、自分が驚いた。
ならどうしてこの男は、北の勇者が生きていると思ったのだろう。その疑問があった。
「そう捉えられる、記され方がされているからだ」
男は、切り札を出すかのように笑った。
「だが、姿を消したのであって、死んだとはどの碑石にも書かれていない。そして、死体を見たものは全くいない。なら、存命している可能性の方が高い。我々はそう捉えて行動している。根拠ならある。今なお出現しない冬の聖剣だ。北の魔神を打倒できる武器を、北の勇者が持って逃亡している。そう考えられないか?」
その根拠には申し訳ないが、冬の聖剣はただ出現しないだけである。自分とは一切関係ない。
「ああ。確かにそうだねー……で、王族が生き残ってたらどうなるのー? 王族だから処刑しちゃう?」
先輩の言葉に、自分は恐怖で身震いしそうになった。
脇腹を強く掴んで、それを制した。
「おかしなことを聞くな? 東の大陸に嫁いだ王妃様はこの大陸の元王族だ。あの御方を処刑しろと無礼なことを言いたいのか?」
「違う違う。北の勇者のことだよー?」
先輩の視線が、自分を貫いた。
「答えはノーだ。北の勇者には申し訳ないが発見次第、重要参考人として本部のある東の大陸で身柄を拘束させてもらう。好待遇の衣住食は用意するが実質監禁だ。こちらとしては誠に申し訳ないと思っているけどな・・・・・・」
「事件の全貌がわかったら解放されるのー? お咎めなしー?」
「当たり前だろ!! 監禁をすぐさま解き、しかるべき褒賞を与える所存だ!!」
「それって、名誉のトロフィーや金品だけじゃなく豪華な屋敷もだよねー?」
「随分とこちら側の事情に詳しいのだな・・・・・・」
失礼だと思った。怒鳴るほどではないか、この男に怒りたくなった。
まるで、獣が人間の言葉を話すのを初めて見るかのような驚き様だったからだ。
東の魔族達がどのような生活をしているかはわからないが、魔族にだって文化や文明はある。暴力で解決を好まない魔族だっている。
南の大陸の眷族達は、人間の言葉や文化文明などの常識を学んで理解していた。権力者に喧嘩を売りに行く時もあったが、ほとんどの人間とは友好的な関係を築いているのを何度も見た。考え方が違う存在をわかり合おうとするのは、並大抵のことではない。
そんな彼らの努力と優しさを、馬鹿にされた気がしたのだ。
「それって鳥籠と一緒じゃん!!」
先輩がほくそ笑む。そして歌うように言葉を紡いでいく。
「哀れで可哀想な北の勇者。大勢の人間に抑圧させ、監獄に幽閉され、磔で命を落としかけ、勇者の責務に囚われて大陸救って・・・・・・全てが終わって、もし生きていたとしても、最後は美しい鳥籠に押し込められた珍しい鳥のように英雄として称賛される・・・・・・功績は偉大だけど、他人に繋がれ隔離され続ける人生なんて、体を小さくしないといけない、せっま~い牢屋に押し込められた罪人の時と同じだと思わない? 後輩?」
先輩の言葉が無数の棘のように、自分の胸に突き刺さった。
それは自分が最も理解していた。
それと、偉大な功績など何ひとつない。
本当のことを話したかった。自分は勇者の立場を盾に、優しいヒト達を殺した赦されない罪人。復讐者として皆殺しを望みながらも、最後は私怨に狩られて利用されただけの愚か者。
言葉が発せられない。その現実が、今はもどかしかった。
だが、けじめを果たすためには、自分は北の勇者であることを隠さなくてはならない。
その一環として頷かなければならないとわかっていても、偉大な功績を立ててないという1点から頷くことができなかった。
端から見れば、先輩を無視する態度の悪い後輩に見られているのだろう。
「やけに詳しいな? 監獄塔についての調査報告はまだ発表していないのだが?」
男の質問に、悪戯が大好きな動物のように先輩は目を光らせた。
「うん。だって北の勇者は──」
自分の顔と髪を隠すフードに、先輩が手を添えていた。
下ろす気だと、すぐに察した。拘束されていない手で咄嗟に掴んで阻止するが、その行動を見た男が眉間に皺を寄せた。
その表情でわかった。この行動がかえって不審感を与えてしまったのだ。
先輩の唇が動く。
獣のような目が楽しそうに歪んだ。
否。自分の正体をばらした後に起きるだろう展開は、とっても楽しい状況なのだろうと確信している様子だった。
当然、先輩と男が消えた。
否。周りの景色が変わっていた。
「なんなの‼ この看板‼」
「なんで『誘導君』がここにいる⁉ そもそも突然出てきたぞ⁉」
先輩と男の、素っ頓狂な悲鳴が聞こえた。
「なんじゃそりゃー‼」
「『誘導君』は、現場の修復作業時の接触事故を防ぐための自動式誘導魔法道具だ‼」
声が聞こえる方向を見れば、先輩や男の姿ではなく、どっと笑っている多くの人の背中が見えた。
いつの間にか、自分は人の輪を飛び越えて、先輩と男から大きく離れていた。
南の魔神が使う砂嵐の転移に似ているが、肝心の砂嵐はなかった。
何が起きたのかと混乱する自分に、すぐ横から囁く女性の声が聞こえた。
「南の魔神さんには連絡済みです。ここから離れますから、付いてきてください」
始めて聞く声から敵意や悪意はなかった。
南の魔神の知り合いなのか。そう思いながら、自分は頷いた。
肩よりも短い黒髪の小柄な女性の後ろ姿に続いて、ここから離れた。
南の魔神の名前を口にした女性を、信頼しているわけではない。
だが、変わり果てた王都は自分の知らない場所だ。土地勘がある女性に付いていった方が得策だと判断した。
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