向日葵の咲く夏に

さくぱん

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~向日葵の日~

黄昏の向日葵

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あぁ、暑い。クーラーくらいつけて欲しい。


高校2年の夏。蝉が弾けるように鳴いている。そのせいか、暑さが倍になっている気がする。と、風神  かぜかみ 優雨ゆうは、思った。

優雨が住んでいる場所は都会から、離れていている。俗に言うだ。
でも、住み心地が悪いわけではない。景色は綺麗だし、春になれば花は見れるし、動物も、自然も多い。学校だってある。
いい場所だ。

だけど、夏は違う。
暑いし、蝉はうるさい。虫は増えるし…

この町は貧乏らしく、学校にクーラーなどがつけられていない。そのせいで夏は地獄だ。

正直いって優雨は夏が大嫌いだった。いいことがない。
そして、運の悪いことに、優雨が座っている場所はクラスの中で一番、風当たりが悪い。なおさら暑い。

ホームルームで担任が話しているが、耳に入らない。ボーッとしていると、「はい!ホームルームしゅーりょー!みんな暑さに負けず、部活がんばれよ!じゃ!」

それだけ言い残すと担任は挨拶も日直にさせず、教室を出て行った。

何が 暑さに負けず。だ。 優雨はもうとっくにKOされてしまっている。

周りの人が全員、カバンをもって教室を出て行く。

優雨は暑すぎて動けない。正確には動きたくない。のだか。

「ゆうくーん?なにしてんの?」

聞き慣れた、甲高い声が耳を貫く。その声がする方に目を向けると、予想通り、幼馴染の 紅技べにぎ 柚那ゆなが立っていた。

「なにって…、暑すぎて、動けないんだよ。」

優雨は気だるそうに答える。
それとは逆に元気よく、柚那が答える。
「なにいってんの?!暑すぎてとか、優雨くんは女子ですか?私なんか、夏なのにラーメン食べるから!ラーメンだよ?!ラーメン!」

ラーメン。こっんなクソ暑いってのに、ラーメン。

優雨はラーメンが嫌いなわけではない。好きだ。(特にネギ入りの醤油味)でも。夏は別!!!!!

夏のラーメン。冬のガリガリ君。
この2つは矛盾している。ありえない!

「…ここにいると、蝉の声と柚那の声で倒れそうだから、もう帰るわ。」
またまた気だるそうに教室を出ようとする優雨の背中越しに「ちょ!それどーいう意味よぉ!」と、声が聞こえたのは気のせいにしておこう。




何故か優雨は柚那と帰ることになった。

「あの、なんで一緒に帰ってんの?僕ら。」

「んー、だってぇ、優雨くんと一緒にいたいから、かな?」
ニコッと笑う。キモい。やめて欲しい。顔は悪くないのだが普通にこんな事を言える彼女がキモい。

「…吐いていい?」
この言葉は無視された。
歩いて行くと、優雨の家が見えてきた。白い一軒家だ。

「優雨くんはいーなー!一軒家とか羨ましすぎる。私が前、都会行ったらね、ビルがドーンっ!タワーがドォォッ!人がバアアアッ!って居たんだからぁ、あー、あれは怖かったなぁ。」

効果音しか耳に残っておらず彼女が何を言っているかわからなかった。ドーンっ、ドォォッ、バアアアッ。これだけでも覚えててやろう。

「……私あっち方面だから、バイバイだね!」

手を振る彼女を優雨は黙って見ていた。そして彼女が見えなくなった途端、謎の安心感に包まれた事は彼女に内緒。

家に着いたが、両親はいない。
共働きだから。昔は優雨にも祖父母がいたが、2年前に他界してしまった。

家に帰って1時間くらいはゲームで時間が潰せたが、もう限界だ。
優雨は足早に玄関のドアを開け、蝉の声が鳴り響く外へ出た。

(彼処しか行く場所、ないな。)

5分ほど歩くと、何もなかった野原に色が付いた。それは全て黄色で埋め尽くされており、風が吹くと一斉に揺れる。とても幻想的だ。

ひまわり畑。ここが、優雨のお気に入りの場所だ。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「りお!見てよぅ!このお花ボクより高いよ!」



「りお!すごいんだよ!今日は幼稚園でカブトムシを見たんだ!」

??

「りお?どこ?」

???

「りおっ、りおぉっ!どこだよぅ!ねぇっ!返事してよぉ!」

?????りお?
誰だ。それ。しらない。

「おー!優雨!すげーな!向日葵ひまわりより高くなれんのかぁ?ハハッ」

誰だよ。お前。なんで僕の名前を知ってんの。

「カブトムシかぁ!なつかしーな!俺も昔よく獲ったぜ!」

消えろ。不審者。キエロ。

「じゃあな、優雨。」

キエロキエロキエロキエロ。

「優雨っ、じゃあな…俺は、もう、だめ…だ…」

そうだ。死ね。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「っは!!」
嫌な夢を見た。優雨は寝ていたらしい。あたりは暗くなりつつある。

「誰だよっ、りおって…」

夢とは思えないほど、声が鮮明に頭の中で再生される。頭痛が酷い。先ほどの夢は忘れよう。

優雨は黄昏時の向日葵畑をみて、心底、綺麗だ。と思った。
もう帰ろうと優雨は向日葵畑を突っ切ろうとしたその時。その刹那。
「うわぁぁぁぉぁぉぁぁぁぁっ!」と声がした。
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