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~向日葵の日~
霧雨の向日葵
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「うわぁぁぁぉぁぉぁぁぁぁっ!」
その声は、優雨の耳を壊しそうなほど、大きい声を出していた。
「っ!?な、なんだ?!」
懸命に声を出す。これくらいしか出せなかった。
「い、今、君、向日葵の中を突っ切ろうとした。よね?」
まだ気が動転しており、 声の主がどの性別かも、わからなかった。
「えっと、えっ、あの、は、はい。」
優雨が答えると、声の主が姿を現した。
茶髪の透明感があるショートカット、白いワンピース、翠色の瞳、紅色の唇。
優雨の前に立っていたのは、優雨と同じくらいの年齢の娘だった。
「あ・の・ね・?」
「向日葵だってさ、いきてるんだよ!?それなのに君は、突っ切ろうとしたんだよね?君には生命の重さがわからないのかい?!」
その少女は、向日葵が大好きなんだな。と優雨は思った。
「あ、あの。ごめんなさい。た、た、確かに向日葵は踏むものじゃないですよね…ハハハハ…」
優雨は謝った。なるべく気分を害さないように。
「…え?君、ボクを嗤わないの?」
少女はポカーンとしたままこちらを見ている。
どう返してよいかわからない優雨が黙っていると。
「…こ、ここに来る人、全員、向日葵を、花を。生き物じゃないみたいに扱って。ボクが注意しても、嗤って、相手にしてくれないんだ。」
どうやら怒られた?のは優雨だけではなかったらしい。
「わ、笑いませんよ。だって、僕が悪いし…。」
彼女の顔がぱあっと明るくなった。
「君はいい人だね!あー!君みたいな人だらけならいいのになー!」
よく考えたら凄いことを言ってるような気がするが優雨は素直に、っす。 と答えた。
「ボクは葵。いつも、ここにいる。」
葵と名乗る少女は、自分のことを ボク と呼んでいた。巷でいう、ボクっ娘??
「…あ、のですね。か、帰っていいですか…?」
勇気を出して優雨は話しかける。
「っえ??い、行っちゃうの?」
少女は、なにいってんだよ。こいつ。という顔をしていた。
「お、親は帰ってないと思うんですけど、一応、帰ってないと、怒られそーなんで…」
優雨が頑張って言い訳?を言う。
先ほどまで、明るかった少女の顔がシュンと暗くなり、光っていた目が、光をなくした。
「ごめんね。そうだよね。もう暗いし、ごめん。うん。じゃ、じゃあね。」
まったく、抑揚のない声で優雨は言われた。
「あ、はい。」
突っ切ったら怒られそうなので、遠回りの坂道を通る。
背後から、小さい声が優雨の耳に入った。
「もう少し、いて欲しかったな。」
サアァァァッと風が吹く。一斉に向日葵が揺れる。
何故だか、彼女、葵と離れたくなくなった。無意識のうちに優雨はタッタッと坂道を登る。
「ほぇ?」
葵が間抜けな返事をする。
「か、帰るんじゃないの?」
葵が膨れた顔を優雨に見せながら言う。
「あっ!帰ってもすることないんで、大丈夫!で、です…」
葵は驚いたように優雨を見つめ、ププッと小さな笑いを起こした。
「そんなに、ビクビクしないでよ。普通にタメ口でいいよ。宜しくね?えっと…」
葵は優雨の名前がわからなかった。優雨は教えてなかったから。
「あ、優雨です。優しいに雨で、ゆうです。」
「優しいに雨かぁ。素敵だ!ボクも優雨くんみたいに優しい雨に出会いたいなぁ。」
何気に恥ずかしがるべきことを言ってる気がするが…
「あと、タメ口で話してくれるかなぁ?イマイチ、慣れないんだよね~。」
「は、はい…じゃなくて、っうん…!」
葵はまた、笑った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ボクは、ずぅっと、この向日葵畑にいて、ずぅっと、向日葵を護ってた。
でも、誰1人として、ボクの忠告を聞かなかった。
「あっ!向日葵は抜いちゃダメだよ!」
「っるさいわね。子供に好きなことやらせなさいよ。嫌な子。」
◇
「ちょっ!向日葵を叩いたりとかしちゃだめ!」
「は?こんな花1本くらいなくたって、なんも変わんねぇよ。」
◇
「ボク…も、うヤダよ。みんな、向日葵なんてどうでもいいんだ。ボクなんてただの煩い人でしかないんだ。」
そして、また向日葵畑を突っ切ろうと、したヤツがいた。
ボクは忠告したんだ。
そしたら。
その人は、素直に、謝ってくれたんだ。
ボクは初めてそーいう人に出会った。その人の名前は優雨って言うんだって。
あぁ、優雨くんは素敵だな。
胸の奥がむずがゆかった。
この人は、命を大切にできるんだな。ボクは心から優雨くんを信用した。
反面、こう思った。
---ずぅっと、この人と向日葵が見れたらイィなぁって。
ボクはこの気持ちをなんて表現するか、わからなかったけど。とてもいい気持ち。という事はわかったんだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
優雨と葵が駄弁っている内に段々、夜が近づいてきた。蝉は未だに鳴き続けている。
「優雨くん、大丈夫なの?ボク長話しちゃって…人と話すのなんてほんっとに久しぶりだから。」
「た、確かに、大丈夫かな?電話してみるね?」
優雨が携帯電話を取り出すと、葵は立ち上がり、向日葵畑に入った。優雨は電話を両親にかけながらその姿を見ていた。風に揺れる向日葵がこんなに素敵だと思えたのは葵のおかげだと思いながら。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「きょーも、優雨くんはイケメンだったなぁっ、もー優雨くんを私の物にしちゃいたいよぉ~。」
柚那は本気でそう思った。優雨を優雨の全てをしって、優雨を自分の物にしたかった。
「あぁ!そーだ!優雨くんにメール送ろぉ!気持ちをつたえなきゃっ!」
[件名・優雨くんへ
------------------
優雨くんスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキ…]
こんなんじゃ足りない。と柚那は思ったが、文が文字数を超えそうなので一応、送信した。
「明日の返信…楽しみだなっ」
柚那は待ち受けに設定している優雨の写真を見ながら、ヨダレを垂らしていた。
その声は、優雨の耳を壊しそうなほど、大きい声を出していた。
「っ!?な、なんだ?!」
懸命に声を出す。これくらいしか出せなかった。
「い、今、君、向日葵の中を突っ切ろうとした。よね?」
まだ気が動転しており、 声の主がどの性別かも、わからなかった。
「えっと、えっ、あの、は、はい。」
優雨が答えると、声の主が姿を現した。
茶髪の透明感があるショートカット、白いワンピース、翠色の瞳、紅色の唇。
優雨の前に立っていたのは、優雨と同じくらいの年齢の娘だった。
「あ・の・ね・?」
「向日葵だってさ、いきてるんだよ!?それなのに君は、突っ切ろうとしたんだよね?君には生命の重さがわからないのかい?!」
その少女は、向日葵が大好きなんだな。と優雨は思った。
「あ、あの。ごめんなさい。た、た、確かに向日葵は踏むものじゃないですよね…ハハハハ…」
優雨は謝った。なるべく気分を害さないように。
「…え?君、ボクを嗤わないの?」
少女はポカーンとしたままこちらを見ている。
どう返してよいかわからない優雨が黙っていると。
「…こ、ここに来る人、全員、向日葵を、花を。生き物じゃないみたいに扱って。ボクが注意しても、嗤って、相手にしてくれないんだ。」
どうやら怒られた?のは優雨だけではなかったらしい。
「わ、笑いませんよ。だって、僕が悪いし…。」
彼女の顔がぱあっと明るくなった。
「君はいい人だね!あー!君みたいな人だらけならいいのになー!」
よく考えたら凄いことを言ってるような気がするが優雨は素直に、っす。 と答えた。
「ボクは葵。いつも、ここにいる。」
葵と名乗る少女は、自分のことを ボク と呼んでいた。巷でいう、ボクっ娘??
「…あ、のですね。か、帰っていいですか…?」
勇気を出して優雨は話しかける。
「っえ??い、行っちゃうの?」
少女は、なにいってんだよ。こいつ。という顔をしていた。
「お、親は帰ってないと思うんですけど、一応、帰ってないと、怒られそーなんで…」
優雨が頑張って言い訳?を言う。
先ほどまで、明るかった少女の顔がシュンと暗くなり、光っていた目が、光をなくした。
「ごめんね。そうだよね。もう暗いし、ごめん。うん。じゃ、じゃあね。」
まったく、抑揚のない声で優雨は言われた。
「あ、はい。」
突っ切ったら怒られそうなので、遠回りの坂道を通る。
背後から、小さい声が優雨の耳に入った。
「もう少し、いて欲しかったな。」
サアァァァッと風が吹く。一斉に向日葵が揺れる。
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「ほぇ?」
葵が間抜けな返事をする。
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葵は優雨の名前がわからなかった。優雨は教えてなかったから。
「あ、優雨です。優しいに雨で、ゆうです。」
「優しいに雨かぁ。素敵だ!ボクも優雨くんみたいに優しい雨に出会いたいなぁ。」
何気に恥ずかしがるべきことを言ってる気がするが…
「あと、タメ口で話してくれるかなぁ?イマイチ、慣れないんだよね~。」
「は、はい…じゃなくて、っうん…!」
葵はまた、笑った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ボクは、ずぅっと、この向日葵畑にいて、ずぅっと、向日葵を護ってた。
でも、誰1人として、ボクの忠告を聞かなかった。
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そして、また向日葵畑を突っ切ろうと、したヤツがいた。
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優雨が携帯電話を取り出すと、葵は立ち上がり、向日葵畑に入った。優雨は電話を両親にかけながらその姿を見ていた。風に揺れる向日葵がこんなに素敵だと思えたのは葵のおかげだと思いながら。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「きょーも、優雨くんはイケメンだったなぁっ、もー優雨くんを私の物にしちゃいたいよぉ~。」
柚那は本気でそう思った。優雨を優雨の全てをしって、優雨を自分の物にしたかった。
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