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恥辱
しおりを挟む学校への登校のための用意をするテツの姿を舐めるように観察していたアルフが唐突に声を上げた。
「ほう‥既に身体が女に近づいているな良い兆候だ」
彼の視線の先には着替えに戸惑いながらもなんとかレイナの手を借りて衣服を身につけるテツの姿があった。
「そうね。テツ‥いいえ‥もう立派な女の子だもの。テツちゃんで良いわよね」
悪気のない満面の笑顔を浮かべたレイナがテツの男としての尊厳を無慈悲に傷つける。
「ぅ、うん‥」
しかし現在のテツは他者からの言葉を否定できるほどに精神の余裕は持ち合わせていなかった。
「やっぱりテツは特殊なのね。おかしいと思ったのよ。鬼人族の男の人たちはみんなもっと大柄で筋肉も逞しいもの。でもテツだけ全く成長しないでいつまでも女の子みたいな身体つきだったのはおかしいと思ったのよ」
軽い口調で語るレイナは一人感心したように頷いてテツの身体を観察していた。
「凄いじゃない‥あなたは男と女のどちらにもなれたのよ。こんなこと普通はあり得ないはわ」
以前と比べて現在のテツの身体は様変わりしていた。
唯一筋肉の発達していた下半身は既に女性らしい丸みを帯びたものとなっている。
元から筋肉がついていなかった胸部はレイナほどではないにしてもささやかながら年相応の少女のような膨らみを宿していた。
「でも‥もう女の子にしかなれないと思うけど‥だってこんなに強い男の人の精子お口に受けちゃったらもう身体が覚えて忘れられなくなっちゃうもん❤️」
うっとりと表情を蕩けさせて語るレイナは不意にテツの着替えの手を止めさせた。
「この上から着なさい」
口元には笑みを浮かべているが瞳の奥には加虐心ともいうべき感情が渦巻いていた。
「わかった‥」
脱ごうとしていた巫女服とスカートを履き直すテツの表情は羞恥心によって紅潮していた。
露出の多い衣装の上から着流しを羽織る彼の姿は他所から見ても不自然なことは明らかだった。
「あの‥これは‥」
確実に下にきているものを悟られる自身の姿に意義を唱えようと声を上げるテツ。
しかし彼の蚊の鳴くような声ささやかな抵抗を意に解すことなく言葉を続けるレイナである。
「ふふ❤️別にバレてもいいじゃない❤️大丈夫よみんな可愛くなったテツちゃんのことを見て驚くでしょうね❤️‥特にこことここッ❤️」
悪戯心を宿したレイナの声と同時に彼女の手が淫にテツの臀部目掛けて伸びる。
「あッ❤️ん‥❤️」
唐突なレイナの行動に反応することも叶わずされるがままのテツ。
以前よりも肉付きの良い尻肉に手を這わせるレイナ。
「んんッ❤️母さんッ❤️」
安産型の上向いた形の良い尻肉を白魚の如き繊細ば指先で揉みしだくレイナ。
「‥レイナ‥テツが遅刻してしまうだろう」
彼女に弄ばれて甘い吐息を漏らすテツの姿を見て声を上げるアルフ。
「そうね‥それじゃあテツちゃん。お友達にちゃんと自分がアルフさんのお嫁さんになったってことを報告するのよ。いってらっしゃい❤️」
最後に形の良いテツの耳を甘噛みして送り出すレイナ。
「う、うん‥行ってきます。‥父さんも行ってくるね‥」
まるで媚びるかのように可愛らしい笑みを浮かべてアルフを上目遣いで見上げるテツには微塵も男であった時の面影など皆無だった。
「ああ」
短い言葉と共に頷いてテツを見送るアルフ。
着流しの上からでも明らかな豊満さを窺える胸を柔らかに揺らして家を出る。
あまりに屈辱的な服装に興奮したテツの胸の先端が勃起する。
硬くなった桜色の乳首が衣服の布地に擦れて快感が走る。
「ぁ‥❤️」
その場で身体を痙攣させて快感に打ち震えるテツ。
人通りのある家の前で自身の肉体を掻き抱くようにして蹲る彼である。
「‥大丈夫ですか?」
するとそこへ声をかけてくる一人の少女の姿があった。
月のように輝きを放つ金髪に左右均整の取れた顔立ち。
そして何より特徴的なのは宝石の如く透き通った瞳。
確固たる意志を宿した瞳がテツを気遣わじげに見つめてくる。
「具合が悪いのなら私が家まで送ります」
優しい柔らかな声音で顔を覗き込んでくる少女に肩を震わせるテツ。
「マナちゃん‥」
彼はこの美しい少女のことをよく知っていた。
親は違えど実の兄妹と比べて何ら遜色のないほどに仲の良い間柄だ。
しかし少女の方は自身の名前を呼んだ目の前の人物がテツであることに気がついていない様子を示している。
「‥どうして私の名前を‥」
思いがけない疑問の言葉を受けたテツは瞼を瞬かせてマナの表情を盗み見た。
別段嘘を言っている様子も見受けられない。
「あの‥ワタシって女に見えますか?」
恐る恐るといった様子で自身の容姿について問いかけるテツ。
「?‥はい見えますけど‥私と同い年くらいですかね‥それとも年下ですか?」
心底から不思議そうな表情で小首を傾げるマナの美しい金髪が頬を流れた。
「あ‥そうです。これから学校に行こうと思って‥そしたら立ち眩みが‥」
自身の容姿が年下のマナよりも幼くなっていることに衝撃を受けるテツであったが何とか詰まりながらもなんとか言葉を返す。
「そうだったんですね!それなら一緒に行きませんか?私もこれから学校に行こうと思っていて」
この村に学校と呼ばれる教育機関が一つしか存在していないことは周知の事実である。
そしてそのことを理解しているのはマナも例外ではない。
幼いながらこの村がどのような構造になっていのるかを正確に理解している彼女である。
「え‥あ‥はい‥よろしくお願いします‥」
満面の汚れなき笑顔を向けてくるマナに思わず頷いてしまうテツ。
「では行きましょう」
未だ地面に蹲ったままであるテツに向日葵のような暖かい笑みを浮かべて手を差し伸べてくるマナ。
「‥ありがとう」
歳幼い少女から見下ろされることに羞恥心を覚えたテツは彼女の助力を得ずに自身の足で立ち上がる。
「わぁ。一人で立てて偉いですね」
するとマナを正面から見据えると同時にそんな馬鹿にするかのような言葉が投げかけられた。
その屈辱的な言葉の意味を咀嚼したテツは残酷な現実を理解するに至る。
自身の体格が明らかに目の前の少女より一回り小さいことに目を見開いて動揺を露わにするテツ。
「何でおれ‥いや‥ワタシより背が大きいんだね‥」
思わず声に出して呟いてしまう彼の低い声音からは明らかにマナの恵まれた体格への嫉妬の感情が窺うことができる。
「はい?えぇまぁ‥ですがあなたはまだ幼いのだから気にすることはないですよ。それに女の子なんですから背が大きくても何の得もありません。むしろ小さい方が羨ましいです。しかし私のようにどうしても大きくなりたいというのなら─」
唐突なテツの賞賛の言葉に呆気に取られていたマナ。
しかし瞬時に我に帰ると明るい調子でテツに励ましの言葉を送る。
得意げに淀みない軽い調子で語っていたマナだったがテツの豊満な胸部に視線がいくと同時に閉口した。
「マナさん?」
神妙な面持ちで自身の胸を凝視する彼女の顔には鬼気迫る雰囲気が漂う。
そんな尋常ではない様子を示すマナに疑問の声を上げるテツ。
「な、な、な、なんですか!この大きい胸は!この背に反してこれはおかしいです。こんな小さな子がこんな大きな胸を持っているなんて不平等です!どうして私は背ばかりが大きくなって胸が全く成長しないのですかッ!」
すると急激に表情を怒りに染めたマナは天を仰いで大声で叫び始めた。
「ひッ」
あまりにも突飛な彼女の奇行に少女のような悲鳴を漏らして後ずさるテツ。
「‥あ‥」
可愛らしい大きな瞳に恐怖の色を浮かべて眦に涙を滲ませる彼の姿を見て我に帰るマナ。
「も‥申し訳ありません。少し取り乱してしまいました。怖がらせてしまってごめんない‥。
‥それにしても本当にすごいものをお持ちですね‥。‥あ‥そこちょっとはだけますよ」
一瞬だけ恐縮した様子を見せたもののすぐさま矢継ぎ早に並べ立てられるマナの無数の言葉に圧倒された様子を示すテツ。
彼の服の乱れを見咎めたマナは何の躊躇いもなくテツの胸元に手を置いた。
「あ‥」
他者よりも非力であった彼はこれまで異性に触れられたことなどレイナ以外であれば皆無に等しい。
故に蚊の鳴くようなか細い声をあげて動揺を露わにするテツ。
「もう‥女の子なんだからしっかりしないとダメなんですからね。それにこんな可愛い子がこんな男性の服なんて着てたら台無しですよ?‥あれ?この下に着てるのって正装ですよね‥。‥恥ずかしいのはわかりますけど‥みんな最初はそうなんですから隠しちゃ‥めっ‥ですよ」
男物の衣服の下に覗いていた巫女服の肩紐を見たマナはテツの羽織っている着流しを脱がせ始めた。
「あッいやッ」
僅かに残っている男としての矜持が人前で女装姿を晒すことを躊躇わせていた。
しかしマナの瞳からは聞き分けの悪い幼子を諭すかのような慈愛の感情が垣間見える。
「もう‥抵抗しないでください。こんな格好で学校に行くなんてだめなんですからね。‥まあ‥でもわかります。私も恥ずかしかったですから‥。ですがもう私は一つ上に上がったのでとうとうちゃんとした制服を着させてもらえるようになったんです。なのであなたも頑張ってください」
彼女の長々とした語りが終わる頃には既に肌の露出の多い服が露わとなる。
何より目立つのは柔らかな肉付きが窺えるほどにむっちりとした白くきめ細かい肌を晒している太腿だ。
スカートの丈は男を喜ばせるための配慮としてちょうど尻肉が見える位置の長さであつらえられている。
肩は紐で繋いであるだけの布地だけであつらえられた巫女服は谷間が覗ける胸元が大胆にも開かれている。
身長とは反比例した今にもこぼれ落ちそうな谷間が男の目を惹くのは明らかだ。
「あ、ありがとう」
怒涛の淀みない喋りと手際の良さに呆気に取られたテツは困惑した表情を浮かべながらも頭を下げた。
姿勢を傾ける際に乳肉が柔らかに弾んで揺れた。
圧倒的な質量を誇る胸が重力にされるがままに下向きに垂れる。
より強調されることになる谷間を端正な顔立を歪めて顰めっ面で睨みつけるマナ。
「‥いえ‥これくらい上級生として当然です。‥はあ‥まったく‥あなたはもっと自分の魅力に無頓着すぎます。‥いいですか‥もしもあなたの身体を無遠慮に触る悪い人間がいた私に言ってください」
真剣な面持ちでテツの肩を掴んで力説する彼女の姿に圧倒されながらもなんとか頷いて返事を返すテツである。
「‥わかった。おねーさんにちゃんと言う」
唯々諾々と自身の言葉に従う様子を見せる彼の姿に柔らかに口元を緩めて微笑を浮かべるマナ。
「そうです。偉い。偉い。それと私のことはマナおねーさんと呼びなさい。いいですね?」
有無を言わせぬ迫力のあるマナの物言いに何度も首を縦に振って肯定の意を示すテツ。
「わかりました。マナおねーさん」
少女のように可憐に微笑んで甘い声を出す彼の振る舞いは既に演技ではなく自然に行うことができるようになっていた。
「わぁ‥本当に言う事を聞けて偉いですね~とっても可愛いです。女の子としての作法はしっかりと身についているようですね。」
従順なテツに心の底から感心した様子を示すマナはより一層笑顔を深めて黄色い声をあげた。
「いえ‥あの‥」
村では弱者として人々に冷たい眼差しを向けられて迫害同然の仕打ちを受けていたテツは褒められるということに慣れていなかった。
他者からの初めての賞賛の言葉が女の子としての自分に与えられたものであった事実に悔しさを覚えるテツである。
「あ~照れてる~。可愛い~❤️」
その事実を認めることができない彼は暖かい感情を瞳に浮かべたマナから顔を背ける。
しかしその子供らしい無邪気な仕草に胸を高鳴らせるマナはテツの頭を優しく撫でた。
慈しむような表情を浮かべた表情はまるで聖女の如き暖かさを内包していた。
「や、やめて」
強く抵抗を示すわけにもいかないテツは幼子のように片言で軽い拒絶の姿勢を試みた。
しかし彼のささやかな抵抗も虚しくマナは一向に構った様子がない。
丁寧にテツの艶やかな光沢を放つ髪を優しく撫で続けていた。
「もう‥照れなくてもいいんですよ~。私はあなたよりもお姉ちゃんなのですから」
聖母のような穢れのない純白な笑顔を崩さないマナに諦観の表情を浮かべて押し黙るテツ。
「あの‥ワタシてそろそろ学校に行かないと‥」
恐る恐るといった様子で声をあげる彼にマナは上機嫌に緩めてい表情を硬直させた。
「あ‥私としたことが!‥早く行かないと遅刻してしまいます!‥では手を繋ぎましょう。ほら‥こうですしっかりと‥」
瞳に母性のような感情を垣間見ることができるマナは手を繋ぐことをテツに要求した。
自身よりも圧倒的に上から差し出された手を恐る恐る躊躇った様子で握ろうとする彼である。
しかしそんな躊躇した様子を示すテツに焦れたマナは勢いよく手を取った。
「あ‥」
自身よりも年下であるとはとても思えない力強く握られた手を呆然と見つめるテツ。
「ほら!行きましょう!」
男であった時は与えられることのなかった人の温もりを感じて目を見開く彼になんら構うことなく手を引いて先導するマナ。
「あ‥う、うん!」
互いに硬く手を握り合う暖かい感触に胸を高鳴らせて学校へと向かうのであった。
応援ありがとうございます!
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