俺の可愛いお嬢さまを離さない

真風月花

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二章

12、二人の夜【2】

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 俺が長生きせぇへんという言葉に戸惑い、お嬢さんが必死にしがみついてくる。
 思えば、こんな風にお嬢さんと夜を一緒に過ごしたことはない。

 愛しくて、けどこれまで触れるのは、彼女が抱っこをせがんだり池に落ちそうになった時だけ。
 後は、女學校に遅刻しそうになって、彼女の手を引いて早足で歩いた時くらいや。

「お嬢さん。今更やけど……もしかして朝、わざと遅刻しそうになってましたか?」
「え、何故今それを?」

 お嬢さんの混乱に、さらに輪をかけてしもたみたいや。ごめんな、翻弄する気はないんやけど。
 俺は、貴女に心底愛されているのを確認したいみたいや。

「俺とわざと手を繋ぎたかったんでしょ?」

 長い睫毛を伏せたお嬢さんは、答えをくれへん。せやから、もっと追究したなる。

「お嬢さん、言わはったやないですか。池に落ちそうになったのは、俺が傍に居って見張ってくれるからやって」
「そ、それは子どもの頃の話よ」
「今は違うんですか? さすがに池に突進することはないけど。今も俺のことを好きなんでしょ? さっきから何度も言うてはるし」

 冨貴子お嬢さんは唇を噛みしめて、顔を真っ赤にした。蝋燭の乏しい明かりでもよくよく見れば、耳まで赤く染まっている。

 なんで素直に好きと言えるのに、手を繋ぐための口実は認められへんのやろ。
 可愛いなぁ。本当にお嬢さんは可愛い。

 俺は彼女の白く細い首に、くちづけを落とした。

「意地を張らんでもええんですよ。俺も、お嬢さんと堂々と手を繋いで歩けて……まぁ、ほとんどは知ってましたけど。嬉しかったんです」

 春は桜の舞う中を、夏は蝉の声を聞ききつつ、秋は彼岸花に見送られ、冬は霜柱をさくさくと潰しながら。
 額に汗を浮かべるお嬢さんも、白息を吐くお嬢さんも、全部が愛おしくてたまらなかった。

「ね? わたくしがいなくなっても長生きしてくれるでしょ」
「またその話ですか。お約束はできませんね」
「約束して……」

 たぶん、指切りをするつもりなんやろう。お嬢さんが、俺と絡めた指を外そうとするから。そうはさせじとがっしりと掴み返した。

 そして彼女の唇にくちづける。もう今日だけで何度唇を重ねたやろ。これまで一度もしたことがなかったのに。そんなことを考えたこともなかったのに。

 貪るようにくちづけを交わし、彼女の口の中を舌で愛撫する。
 激しく、そして緩慢なほどにゆっくりと口中をなぞってやる。

「……んっ、んん……ぅ」

 お嬢さんの瞳は潤み、唇が離れた時に洩れる声は、まるでほんまに俺に抱かれとうみたいに甘い。
 半ば開いたお嬢さんの唇の端から、透明な唾液が伝う。

「えらい淫らですよ」
「だって、静生が……」

 ええ、そういう風に仕向けとるんです。あなたを本当の意味で抱いて、貫くことは出来へん。けど、愛を確かめ合うんは別にそれだけやないでしょ?

 俺はお嬢さんを膝に座らせて、指を彼女の口の中に入れた。

「指を舐めてください」

 何を言われたのか、すぐには理解できなかったのだろう。お嬢さんは一瞬目を見開いたが、けどすぐに俺の命令に従った。
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