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三章
40、サンドウィッチ
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「昼食を取らずじまいだったからな。今から一緒に食べよう」
旦那さまはそう仰ると、わたくしの寝間着の乱れを直してくださいました。
自分では気づかなかったのですが。どうやら敏感になりすぎた所為で、寝間着の胸元をはだけてしまったようです。
自ら、衿を開いたのでしょうか。
「す、済みません。はしたなくて」
恥ずかしいです。
なのに旦那さまは涼しいお顔で、きちんと着崩れを直してくださいました。
「俺の所為だからな。翠子さんは気にしなくていい」
◇◇◇
あまりにも愛しすぎた所為で、翠子さんは肌に布が触れるだけでも、感じるようになってしまった。
本当に、どれだけ彼女のことが好きなんだよ、と自分自身が不安になるし。翠子さんの体を壊してしまわないかと心配にもなる。
こぽこぽ、とティーポットからカップに紅茶を注ぐと、湯気と共に澄んだ香りがした。近くに牧場があるので、新鮮な牛乳をさらに入れる。
「ほら、飲みなさい」
ベッドに上体を起こし、膝にエリスを乗せた翠子さんに湯気の立つ白いカップを手渡す。
ソーサーを左手に、カップを右手に持った翠子さんは、紅茶を口に含んだ。
こくり、と喉が動くのを見て俺は安心した。
「お清がサンドウィッチを作ってくれたんだ。食べやすいように小さく切ってあるから。どれがいい?」
側卓に載せた皿には、長方形のサンドウィッチが並んでいる。きゅうり、玉子、ハム、ジャム。挟んである具材はそれぞれ一種類ずつだ。
「ジャムをいただきます」
翠子さんは、橙色の杏のジャムを挟んだサンドウィッチを選んだ。予想通りだ。
まぁ、俺としては栄養のありそうな玉子あたりを、食べて欲しいのだが。
小さなジャムサンドを食べ終えたところに、すかさず今度は玉子サンドを手渡してやる。
食べた。よしよし。次はハムサンドだ。
だが、挟まれたハムに反応したのか、エリスが翠子さんの腿に前脚を乗せて「それ、ください」とでも言いたげに甘えた声を出す。
「あら、ハムが食べたいの?」
駄目だ。ハムサンドからハムを抜いたら、ただのパンだ。英国にはトーストサンドという、パンでパンを挟んだ冗談みたいなサンドウィッチがあるらしいが。
「エリス、おいで。俺の分を分けてやろう」
「にゃあ」
少し厚めに切ってあるハムを、エリスの目の前でちらつかせると、すぐにこちらにやって来る。
そうそう。いい子だから、翠子さんには栄養を取らせてやってくれ。
じゃないと、すぐに甘い物ばかりを食べるのだからな。
「珍しく、仲良しなんですね」
いや、そうでもない。餌がないと、こいつは俺には近づきもしない。後は、如何にエリス自身が翠子さんを仲がいいかを見せつける時くらいか。
「……銀司さん」
ふいに翠子さんが銀司の名を呼んだから、部屋に入って来たのかと思いドアの方に視線を向けたが、そうではなかった。
そもそも、ノックもなしに主の寝室に入るほど、あいつは無神経ではない。
「翠子さん、銀司がどうしたって?」
「銀司さん、もう忘れちゃったかしら」
ため息交じりに翠子さんが呟くものだから、俺は気が気ではない。なんで今ここで、銀司なんだ。
あなたの一番好きな人は、目の前にいるだろ? いると言ってくれ。というか、俺の名前を呼んでくれ。
旦那さまはそう仰ると、わたくしの寝間着の乱れを直してくださいました。
自分では気づかなかったのですが。どうやら敏感になりすぎた所為で、寝間着の胸元をはだけてしまったようです。
自ら、衿を開いたのでしょうか。
「す、済みません。はしたなくて」
恥ずかしいです。
なのに旦那さまは涼しいお顔で、きちんと着崩れを直してくださいました。
「俺の所為だからな。翠子さんは気にしなくていい」
◇◇◇
あまりにも愛しすぎた所為で、翠子さんは肌に布が触れるだけでも、感じるようになってしまった。
本当に、どれだけ彼女のことが好きなんだよ、と自分自身が不安になるし。翠子さんの体を壊してしまわないかと心配にもなる。
こぽこぽ、とティーポットからカップに紅茶を注ぐと、湯気と共に澄んだ香りがした。近くに牧場があるので、新鮮な牛乳をさらに入れる。
「ほら、飲みなさい」
ベッドに上体を起こし、膝にエリスを乗せた翠子さんに湯気の立つ白いカップを手渡す。
ソーサーを左手に、カップを右手に持った翠子さんは、紅茶を口に含んだ。
こくり、と喉が動くのを見て俺は安心した。
「お清がサンドウィッチを作ってくれたんだ。食べやすいように小さく切ってあるから。どれがいい?」
側卓に載せた皿には、長方形のサンドウィッチが並んでいる。きゅうり、玉子、ハム、ジャム。挟んである具材はそれぞれ一種類ずつだ。
「ジャムをいただきます」
翠子さんは、橙色の杏のジャムを挟んだサンドウィッチを選んだ。予想通りだ。
まぁ、俺としては栄養のありそうな玉子あたりを、食べて欲しいのだが。
小さなジャムサンドを食べ終えたところに、すかさず今度は玉子サンドを手渡してやる。
食べた。よしよし。次はハムサンドだ。
だが、挟まれたハムに反応したのか、エリスが翠子さんの腿に前脚を乗せて「それ、ください」とでも言いたげに甘えた声を出す。
「あら、ハムが食べたいの?」
駄目だ。ハムサンドからハムを抜いたら、ただのパンだ。英国にはトーストサンドという、パンでパンを挟んだ冗談みたいなサンドウィッチがあるらしいが。
「エリス、おいで。俺の分を分けてやろう」
「にゃあ」
少し厚めに切ってあるハムを、エリスの目の前でちらつかせると、すぐにこちらにやって来る。
そうそう。いい子だから、翠子さんには栄養を取らせてやってくれ。
じゃないと、すぐに甘い物ばかりを食べるのだからな。
「珍しく、仲良しなんですね」
いや、そうでもない。餌がないと、こいつは俺には近づきもしない。後は、如何にエリス自身が翠子さんを仲がいいかを見せつける時くらいか。
「……銀司さん」
ふいに翠子さんが銀司の名を呼んだから、部屋に入って来たのかと思いドアの方に視線を向けたが、そうではなかった。
そもそも、ノックもなしに主の寝室に入るほど、あいつは無神経ではない。
「翠子さん、銀司がどうしたって?」
「銀司さん、もう忘れちゃったかしら」
ため息交じりに翠子さんが呟くものだから、俺は気が気ではない。なんで今ここで、銀司なんだ。
あなたの一番好きな人は、目の前にいるだろ? いると言ってくれ。というか、俺の名前を呼んでくれ。
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