恋、もう一度!外国で再婚を目指す女の波瀾万丈な生活

カプチーノ

文字の大きさ
2 / 6

いざ、ロマノスと顔合わせ

しおりを挟む
ネットで知り合ってからおよそ2週間後、お互いの都合が合う日がようやく決まる。
私が午後から用事があるため、なんと、朝の10時から。
この時間帯だったら、知らぬ相手と会うとしても、危険はないだろう。
場所については、私が提案してよいということだったので、観光客の多いメジャーな駅の近くにある本屋を指定した。


なんといっても32歳の男性だ。
46歳の私からしたら、年上好きの若造だろう、という感覚しかない。
恋愛対象になるとは思えないが、ま、若いピチピチの男性とお茶するなんてのも、女友達に会う時のいい話のネタになるかもしれない。

自分で言うのもなんだが、少なくともドイツに居ると、私は若く見える。
日本人女性の平均身長よりちょっと低めで、童顔ということもあるかもしれない。

基本、アジア人が欧米人に比べ、実年齢より若く見えるのは周知の事実。
日本人以外の友人知人は、私は30代半ばにしか見えない、詐欺だ、といつも言うので、多分、それは嘘ではないだろう。日本人はお肌ケアに余念がなく、ダイエットだって頑張っているから、中年太りとはほぼ無縁。
髪のスタイリングも、ネイルもきちんとやる。
ファッションだって、若者と変わらないスタイルをキープしつつ、若作り過ぎないように、安物は身につけない。
メイクは基本、ナチュラルながらも若く見えるように、顔色重視。


ともかく、一応、14歳年下の男性と会うのに相応しいと思われるカジュアル・エレガンスな服に身を包み、指定の時間に本屋へと向かった。
小雨混じりの強い風が吹く本屋の前に、一人の男性が立っているのが見えた。
向かい風のせいか目を細めて、こちらを確認しようとじっと見ている。
間違いなくこの人だと確信し、手を振って合図を送ると、あちらも手を上げた。
吹き荒れる風の中、握手を交わし、天候のことやらを話しながら、近くのカフェへと移動。
たわいない話をしながら、それぞれの飲み物を買うと、早速、カフェの片隅のテーブルで向かい合って座る。


これが32歳のギリシャ人。
しみじみと顔を眺めた。
私が持っていたギリシャ人のイメージは、肌が浅黒くラテンっぽいものだったが、ロマノスは、完全に白人そのものの肌に、ダークブロンドの髪、明るい茶色の目の男だった。
容姿の色合いのせいか、ゴールデンレトリバーっぽいという感想。

若干、歯並びがイマイチだが、顔立ちは整っていて、ガテン系の男というような、がっしりした体躯。若いせいもあるだろうが、男性ホルモンがムンムンするような雰囲気は確かにあった。
14歳上の私を前に、全然動揺することもなく、堂々と落ち着き払っているのには驚いた。
これまでも年上ばっかりと付き合って来たのかもしれない。
ギリシャからドイツへ来た経緯や、自分の仕事の話など、よどみなく話すのを見ていると、年齢差を忘れている自分に気がついた。
笑いも混じえながら、あれこれ話に花を咲かせていると、あっという間に2時間経ってしまった。
ロマノスは、夕方から出張があるため、これから帰宅後はその準備で忙しいらしい。週の半分は、遠方へ出張していることが多いとの事だった。
冷たい小雨が吹き付ける中、駅へと戻る。
それぞれのプラットフォームへ向かう際、別れ際にハグを交わした。


ま、それなりに楽しかった、というのが感想。
私が30代だったら、この人とデートしてみたいと思ったかもだが、いくら違和感なくても14歳差は痛い。
アメリカの芸能人じゃない、ただの一般人なんだから。

そんなことを考えつつ帰宅したら、ロマノスからメッセージが入っていた。
「Hi ミラ、今日はとても楽しかった。僕は君のことが好きになったよ。君も同じ気持ちだと嬉しいけれど」
正直驚いた。
随分ダイレクトだというのもあるけれど、もう連絡は来ないと思っていたからだ。
少し考えた後、返信した。
「Hi ロマノス。私も今日は楽しかったよ」
流石に好きなんて言葉を送るほどの気持ちはない。
しばらくして返信が来た。
「よかった!次はいつ会える?今度、ディナーに行かない?3日後には出張先から戻ってくるから」
また会うのか。
迷ったが、まんざら嫌な気分でもないから、もう一度会うのもいいかと思った。ただ、流石にディナーはやめといたほうがいいと思い、またお茶の約束をした。



約束の日の前日。
ロマノスから、待ち合わせ場所についてメッセージが来ていたので、返信をした。
彼がオンラインであることを表示する、グリーンのマークが彼の写真アイコンについているのだが、なぜか今日は、なかなか返信が入ってこない。いつもなら、オンライン中の彼は、すぐに返信してくるのだが。
1時間経っても、返信が来ないので、もしかしたら、もう会う気がなくなったのかもなぁなんて思った。
ちょっと残念な気がしたが、ホッとした気持ちもあった。
14歳も下の男の子だなんて、やっぱり深入りしないのがいい。
そんなことを思いながら、何気に「貴方にオススメのメンバー」のタブをクリックしたら、有料会員であるロマノスのプロフィールが上段の右端に表示された。
それを見て、思わず目が点になった。
メンバーの写真の上に、名前と、一言が表示される。
自分をアピールする一言には、普通、「ハロー」「真剣な出会いを求めています」「気軽にメッセージして」などと書かれてあるのだが、ロマノスの一言が、「ミラ!ブロック解除して!」になっていた。
ブロック解除?
どういうことだ??
私は彼をブロックした記憶はない。
変だなと思いつつ、メッセージフォルダをチェックすると、未読のメッセージ(無料会員から送信されたもので、文字がぼやけて読めないもの)の数が膨大になっていた。
そういえば、いつもは、ログインする度に、何通も新しいメッセージが入ってくるのに、今日はログイン後、未だにゼロ。
変だ。
もしかして、この溜まりすぎた未読メッセージせいで、メッセージの受信が出来なくなっているのではないか。
時間をかけて、何十通もののメッセージを削除した。
結局、残したのは、ロマノスとレオンだけ。
ロマノスに、「ブロックしていないよ。未読メッセージが溜まりすぎていたからだと思う。直ったかな?」と送ると、直に返信が来た。
「よかった!君に返信しようとしても、ずっと送信出来なかったんだ。もう、二度と会えないのかと思って焦ったよ」
可愛い事を言ってくれる。
しかも、自分のプロフィールの一言に、私宛のメッセージを載せるなんて、胸キュンしてしまう行動だ。
「こんなことがあると困るから、他の方法でも連絡取れるようにしておこう」
ロマノスにそう言われたので、ラインを使っていることを伝えた。



そして、約束の日。
これを果たして二回目のデートと呼んでいいのかは不明だが、待ち合わせ場所のカフェに行く。
サイト内でのメッセージのやりとりで問題が生じた関係で、他の方法で繋がることになり、ラインを指定したところ、彼は早速ラインをダウンロードしてくれた。
そろそろ着く、というメッセージを交換しつつ、カフェでオーダーしているところに、彼も到着した。
椅子に座ろうとしたら、今度は向かい合わせではなく、彼はテーブルの角を挟んで斜め横に座った。
前回と違い、距離を縮めたのは意図的だ、と直感でわかった。
グレーのセーターとジーンズというカジュアルな服装だが、服の上からもわかる、太い腕や厚い胸板に思わず目が行き、あわてて目を逸らした。
若さというのは危険な魅力だ。
年増女が年下男にはまるのは、こういう時なんじゃないだろうか。


仕事の話などに続き、ロマノスは今度は更に個人情報を公開してきた。
家族構成や、グーグルマップからギリシャの実家の画像を見せてくれたり、好みのギリシャ料理や菓子の話。
多分、自分は怪しい人間じゃないと証明しようとしているのだろうと思った。
1時間ほどお互いの家族の話などをした後、彼は少し黙って、注意深く私に質問をした。
「まだ離婚していなくて、同居しているということだったよね。セックスはしていないってこと?」
カフェでまさかこんなダイレクトな質問をされるとは思わずびっくりしたが、ここはドイツ、驚くことでもないだろう。
正直に、もう何年も手さえ繋いでいない事、ただ、兄妹か親友のような関係であり、夫には他に思いを寄せる人がいることを話した。
「いつ頃正式に別れる予定?」
またもや単刀直入な質問。
子供が12歳なので、親の離婚はゆっくりと進める予定だと答えた。一年~二年後くらいに、私がドイツの永住権を取得したら、配偶者ビザはなくなるし、その段階で別居を始め、離婚手続きを開始するつもりであると、明確に伝えた。
ここまで融通の聞かない年上女だと分かったら、きっとロマノスはこれでサヨナラって言うだろうなと思っていたら、予想に反し、納得したように笑顔で頷いた。
「わかった。全然問題ない」
えっ、と思ったが、あまりにも朗らかに笑っているので、思わずつられて笑いを零した。
その後、彼は自分の過去の恋愛について語った。14歳上くらいの彼女がいたこともあるし、同年代の彼女もいたらしい。どちらかというと年上と付き合いたいというその理由のひとつが、絶対に子供が欲しくないからだそうだ。同年代の彼女達は、ロマノスが絶対に子供は要らない、と分かると離れていったらしい。3年前付き合っていた、14歳年上の彼女は、年がら年中すべての支払いを彼にさせていたとかで、それを指摘しても態度が変わらなかったので、彼から別れたらしい。

子供が嫌いなわけじゃないが、自分の子供は欲しくないらしい。付き合う相手にすでに子供が居ること自体は全然気にならないらしい。
「それより、ミラ。いつディナーに行ける?」
何気なく膝に触れられて動揺した。
特に日時を決定はしないうちに、帰る時間となる。ロマノスはまたもや、夕方から出張先に向かう予定だった。
駅で別れ際にハグ。
前回より、ぎゅっと力を混めてのハグだった。



その日の夜、出張先に向かう電車にいるロマノスからメッセージが来た。
「今日も楽しかった。君の事がもっと好きになったよ」
こんな言葉をもらうなんて、今の夫と結婚した時以来で、新鮮すぎた。
明らかに「恋愛関係」に片足を踏み入れようとしている自分に動揺した。
ここで止めるか。
悩んだ。
年齢差はさておき、私がロマノスに好感をもっているのは間違いなかった。
まだいつでも引き返せる。
「私も貴方に好感を持ちました。仕事頑張ってね」
微妙ながら好意を伝えると、すぐに返信がきた。
「本当に?でも、君は僕が触れると居心地悪そうな気がするんだけど」
確かにそれは事実。
「親密な関係とは随分ご無沙汰しているから、少し恥ずかしいんです。同僚とハグするのはなんともないけれど、貴方は同僚じゃないしね」
そう返信すると、すぐ返信が来た。
「Okay、わかった。じゃ、もっと分かりやすく説明して。出来るだけ君が居心地よくなるよう努力するから。君が日本人だから、公共の場で、親密な様子を見られるのに居心地が悪いとか?アジア文化だと、欧米と違って、恋人同士は人目を忍ぶと聞いた事がある。でも、僕から見たら君は全然シャイなタイプには見えないけど」
私は海外生活が長いから、純粋な日本人よりはシャイではないのは事実。
「シャイではないです。ただ、正直なところをいうと、14歳も年下の男性と付き合うとか考えた事なかったから、また貴方に会っていいのか悩んでいるのは事実。貴方にとっては、同年代か、もう少し年が近い人と付き合うほうがいいんじゃないかな。私と付き合うなんて、貴方の貴重な時間が無駄になりそうな気がして、心配。

でも確かに、貴方と話していて年齢差は感じないというか、下手したら貴方の方が精神年齢は高そうな気がしたけど。ともかく、いろいろ考えちゃってね。
それに私から距離を縮めるのも、貴方にとって心地いいとも思えないんじゃないかって思ったり。
親密な関係は久しぶりだから、落ち着かないというのも本当だけど、だからといって、貴方に変わってほしいとかそういう意図はないです。そのままの貴方と話していて心地良かったしね」

そう返信すると、しばらくして今度は長い返信がきた。

「ミラ、年齢のことなんて、考える事もないから。僕も君との年齢差なんて全然感じていないよ。なにより、君との再会をこんなに楽しみにしているくらい、君に興味があるんだ。君は、僕の時間が無駄になるかもなんて言っているけれど、その意味がさっぱり分からないよ。

それに、どうして、僕が同年代と付き合ったほうがいいと思うんだ?僕はこれから素晴らしい未来が待っている若者かもしれないけれど、これまで付き合った同年代の彼女達は、学歴、仕事、容姿とか、彼女達の希望する要素を全て揃えている『将来有望な男である僕』を捨てて、他の男に走っていったんだ。僕が子供は要らないというのも、確かに別れる理由のひとつだとは思うけれどね。

僕は、感情表現の豊かな国の人間だから、気になる女性に対しては、ベタベタしてしまう。もっとこの気持ちを言葉や行動で表現したいと思うのを、止める事ができないんだ。君が僕との距離を縮めると、僕の心地が悪くなるなんて心配、大間違いだ。まさにその真逆だよ。君がもっと僕に近づいてくれたら、僕の気持ちは更に強まるんだ。
ねぇ、君がロマンッチックな雰囲気を自然に受け入れられるように、次回はディナーに行くべきだ」


ギリシャ人が、こんな情熱的な性格だとは知らなかった。
思わずネットでギリシャ人男性の情報を検索したところ、彼等は本当に、超、ロマンチックで情熱的だとのことだった。
しかし、同年代の彼女達が彼を捨てていったというのが気になる。彼が子供は欲しくない、ということだけが原因なのだろうか?
いろいろ悩むところはあるが、結局、数日後にその「ロマンティックなディナー」に行く約束をしてしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...