ああ!困ります、勇者サマ!〜聖女様に勇者パーティーを追放されたら、王太子殿下に求愛されました〜

森 湖春

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☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 Youkiyottana
 Okuchinicyakkusite
 yonndattena.

 Koregayomeruttyuukotowa
 jibunn
 yuusyanotekiseigaarehenn.

 Kennganukehennfuriwosite
 nigetahougaeede.

 Jibunnniwa
 arayurukotobaworikaisuru
 chikaragaannde.

 Yakudatsutoeena.

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 台座に刻まれた文字は、一見すると英字のようである。

 しかし、よく読んでみると、それはローマ字で書かれた関西弁のようだ。

 二行目に刻まれていた『お口にチャック』という助言に従って、アリスは黙読した。

 訳すると、こうである。

『あなたには勇者の適性がありません。
 剣が抜けないふりをして、逃げましょう。

 あなたには、あらゆる言葉を理解する能力があるので、役に立ててね』

 どうやら、勇者の証であるこのイベントは、形式上のもののようだ。

 きっと、剣は誰にでも抜けるようになっているのだろう。

(……知ってる。こういうの、茶番って言うのよね)

 読み終えたアリスは、スンとした顔をしていた。

(なにが勇者よ、もう)

 周囲を見渡せば、何やら熱心に下から見上げている視線が突き刺さる。

(……知ってる。これ、駅の階段でたまにあるやつ……!)

 アリスは、慌ててスカートを押さえた。

 途端に、広間には不満げな空気が漂う。

(こんな……痴漢紛いの男たちがいる国の勇者なんて無理!)

 そうしてアリスは、一世一代の名演技をするに至った。

 どんなに踏ん張っても、岩の台座から聖剣オートクレールは抜けなかったのである。

 国王陛下は、スカートの中を覗き見るというマニアックな嗜好しこうを教えてくれたアリスに対し、とても感謝した。

 感謝の意を表して、彼女がこの国にいる限り衣食住に困ることがないよう、王族にのみ与えられるゴールドカードを与えたのだ。

 国王陛下のこの対応に、マシューは当然だと頷いた。

 アリスは勇者の適性がないとされたが、召喚したのはこちらの勝手なのである。

 帰す方法がない以上、手厚く保護するのは当然だった。

 ゴールドカードがあれば、どんなことだって出来る。豪華な食事も、豪奢な宿での宿泊も、買い物だって困らない。

 冒険者ギルドで配布している、レベルに応じて色が変わる身分証ギルドカードなんて必要がないのである。

 アリスはゴールドカードをありがたく貰い受け、旅に出た。

 数年後、彼女はネリアン王国のあらゆる場所でコネを作り、異世界コーディネーターとして起業したのである。

 古代語ですら読み解ける彼女は、学者たちから引っ張りだこだった。

 少数民族の特殊な発音も理解出来るので、交渉の場に同席することもある。

 充実した日々を送るアリスのもとへ、ある日、国王陛下から手紙が届いた。

 『ようやく勇者が現れたので、アリスの力を貸してほしい。

 どうやら彼は、古代語どころかこの国の言葉も少々怪しいようだ』

 そのようなことが書かれた手紙を読み終えたアリスは、困ったように眉尻を下げた。

「本当に、勇者なのかしら……?」

 たまたまアリスはあの文字に気付けたけれど、勇者となった人は運悪く気付かなかっただけなのでは。

 そう思うと、一抜けした自分にも責任があるような気がして、アリスは複雑な気持ちを抱きつつ、異世界コーディネーターとして助力することを決めたのだった。



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