ああ!困ります、勇者サマ!〜聖女様に勇者パーティーを追放されたら、王太子殿下に求愛されました〜

森 湖春

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「そうだね。僕が謝る必要も、ヒナギクが追放される理由も、ない」

「え……?」

 何を言っているのだという顔で見上げるミモザを、マシューは無感情な顔で見下ろした。

 どんな時でも笑みを絶やさない彼が、微笑すらも浮かべていない。

 彼の足元から、ヒヤリとした冷気が漂ってきた。

「さて、ミモザ嬢。あなたが言ったアリスの失態についてだが。それぞれ証言者を呼んである」

「え?」

「まず、騙されて身ぐるみを剥がされた件。これは、勇者だな?」

 マシューの声に、人だかりの中心が割れて、オリヴァーが出てきた。

 さきほどの人だかりはオリヴァーを中心としたものだったらしい。

 どおりで、マシューがアリスを庇えたわけである。

 今宵のオリヴァーは、白を基調とした詰襟の服を着ていた。マシューと並ぶと対照的な色合いである。

「ええ、ボクです。かわいこちゃんが僕を誘うものですから、ついうっかりついて行ってしまって……ああ、アリスは何も悪くないんですよ? 夜に外出してはいけませんって言われていたのに、ミモザが少しくらいなら大丈夫って言うものですから」

 悪気なく無邪気に答えるオリヴァーに、ミモザが「うっ」と声を漏らした。

 悔しそうに唇を噛み締めていたかと思えば、つい先ほどまで「勇者様♡」と媚び売っていたのがうそのように、憎しみに満ちた目でオリヴァーを睨みつけている。

 そんな彼女を守るように、グロリオが立ち塞がった。

 猛犬が吠えるように、彼は叫ぶ。

「アリスは俺をカジノ依存症にしようとしたんだぞ? これについてはどうなんだ⁉︎」

 王太子に対して、この態度。

 無礼な物言いに、場にいた貴族たちが眉をひそめてヒソヒソと声を漏らす。

「ああ、それはワタクシが」

 衆人の中から一人、手を挙げて出てきた。

 小さく醜い姿をした彼は、ゴブリン。

 仕立ての良い服には見覚えがある。

 ゴブリンは、カジノスタッフだった。

「グロリオ様はもともと、カジノに入り浸っておられました。勇者様のパーティーに加わってからは足が遠のいておりましたが……。それに、アリス様はパーティーの皆様が全財産をスらないよう、あらかじめワタクシどもに根回しおねがいをしておりました。万が一、大損をするようなことになったら、勇者の名に傷がつく。だから、そうなる前に止めてほしいと。グロリオ様はわれわれがお止めするのも聞かず、それどころかアリス様のゴールドカードを担保に、借金をしようとしていました」

「ヒナギクは、あなたのために、大事なゴールドカードを渡したというのか? まさかとは思うが、勇者パーティーの一員でありながら、盗みを働いたのではないだろうな。確か、あなたの職業は戦士だったはず。いつの間に、転職ジョブチェンジしたのか」

 神殿で職業の確認をする必要があるとして、グロリオは衛兵に連れて行かれた。さすが戦士と言おうか、衛兵は束になって立ち向かっていたけれど。
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