乙女ゲームに転生するつもりが神々の悪戯で牧場生活ゲームに転生したので満喫することにします

森 湖春

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四章 一年目はるの月

35 はるの月3日、ガテンなお兄さん②

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 そうしてフライングで手に入れたニワトリは、ヤマダサンと名付けられ、昨夜はイーヴィンのベッドで共に寝た。ヤマダサンが朝から元気な声で彼女を起こしたのは、言うまでもない。

「ヤマダサン、いってらっしゃーい」

 コケコケコッコと鳴く丸みを帯びたヤマダサンは、イーヴィンの言葉を理解しているのか、首を前後に振りながら牧草地へと歩いていく。
 牧草地の中程で足を止めたヤマダサンが地面を突き始めたのを見送って、イーヴィンは畑の隅で作業する男を眺めた。

 もとは綺麗な金髪だったらしい、日に焼けて傷んだ髪は、ライオンのたてがみのようにパサパサして見える。きちんと手入れをしたらきっと綺麗だろうに、当の本人は興味がないのか、無難に短く切り揃えられていた。

 大工という仕事柄か、その体はどこもかしこもムキムキで、イーヴィンなんて片手で持ち上げてしまいそうである。あらゆる女性をお姫様抱っこ出来そうだ。

 彼の名前は、ファーガル。
 イーヴィンの婿候補の一人である。
 婿候補の中では三番手ーーつまり一番人気がない人物ではあるが、一部の女性から地味に人気を得ていた。曰く、何があっても守って貰えそうなところが素敵なんだとか。

 元は他国の海軍に所属していたが、上司とそりが合わずに除隊して、親戚のいるこの島にやってきた。趣味のDIYが高じて現在は大工の職に就いているーーとゲームでは語られていた気がする。

 マフィアの構成員のような強面をしているが、本当はとても良い人なんだろうな、とイーヴィンは思う。

 昨日、ニワトリ小屋建設を依頼しに行った時、あまりにも声が低音すぎて何度も聞き返すという失礼なことをしたにも関わらず、「慣れている、気にするな」と大きな手でイーヴィンの頭を優しく撫でてくれた。
 大きくて無表情な彼が怖いなぁなんて思っていたから、あまりにも優しい仕草に思わずドキドキしてしまったのだ。

 甘い恋愛イベントを求めていた前世では、彼との恋愛イベントを後回しにしがちだった。
 いかにも恋愛が苦手そうな彼が、甘い言葉をかけてくれるとは思えなかったからだ。
 四姉妹の長女として生きていた前世では、女系家族で育ったせいか男性が少々苦手な節があり、男臭さが前面に出ていない男性キャラクターを好んでいたせいもある。

 けれど、今はどうだろう。あの優しい頭ナデナデを経験して、今やイーヴィンの中で彼の好感度が急上昇している。
 弟五人と生活し、男に対して嫌悪感が薄れている今世では、婿候補の中ではファーガルが一番良いのではと思い始めていた。知らない男と結婚するくらいならファーガルと結婚するのもアリかも、くらいには思っている。

 とはいえ、まだまだ牧場生活は始まったばかりである。

(春になったことだし、これから少しずつ貢いで好感度を上げれば良いか)

 三人いる婿候補のうち、まだ二人にしか会っていない。
 ハーモニーハーベストをプレイする乙女の中には、三人の婿候補の結婚前までの恋愛イベントを全て見た上でセーブし、そこからそれぞれと結婚して三つのセーブデータで遊ぶ人もいるのだ。
 三人目の異国の王子、ハリーファと出会ってからフラグを立てても遅くはないだろう。

 既に自らローナンとのフラグをへし折り、シルキーがハリーファとのフラグをへし折っているとも知らず、イーヴィンは呑気なものだった。

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