324 / 398
新米の面倒を見る事になったおっさん冒険者34歳…… 実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていく①
しおりを挟む「ああ……やっぱりいいな、この感じ」
激しく行き交い周囲に響き渡る喜怒哀楽に満ちた喧騒。
決して狭くない空間で奏でられるのは――様々な願いに彩られた杯への想い。
それは自らの依頼達成を喜ぶ祝杯であり、あるいは不幸にも亡くなった仲間に対し祈りと共に捧げる献杯である。
冒険者ギルドに併設されているこの酒場はそんなざわめきが支配していた。
この雰囲気を懐かしいと感じる俺は根っからの冒険中毒なのだろう。
冒険者はギルド(ここ)で夢と野望に燃え、時に目的を叶え時に散っていく。
まるで人生を濃縮したようなこの環境が何故か無性に愛おしい。
「……大丈夫、おっさん?
さっきから何だか心ここに在らず、って感じだけど」
「おう、すまんすまん。
心配掛けるな、アレクシア」
「もうっ!
ボクの事はシアって呼んでいい、って言ったのに!」
「悪いな。まだ会ったばかりだからな、そう簡単には馴染まないさ。
まぁ――早く慣れるよう努力するよ」
「ならばいいけどさ。
でも……本当にさっきからどうしたの?
いつも泰然としているおっさんっぽくない感じ」
赤毛で短髪のアレクシアは体付きが貧弱なのと男装しているせいもあり、パッと見は成人前の美少年にしか見えない。
そんな子が間近に顔を寄せて囁かれているとあらぬ誤解を受けそうだな。
俺は苦笑を浮かべるとアレクシア――シアの肩にポン、と手を乗せた。
「俺も34歳のおっさんなんでな……色々思うところがあるのさ」
「どういう事?」
「あら……それってわたくし達が一緒だからでしょうか?」
心配そうな顔で俺に尋ねて来たのは聖女見習いに昇格したばかりのフィーナだ。
彼女とは何だかんだ子供の頃からの長い付き合いだが……随分成長したもんだ。
貧相な孤児だった頃に比べ背が伸び丸みを帯び、すっかり女性らしい体型だ。
元々端正な顔立ちをしている為、周囲の荒くれ達の注目を惹いている。
「ん。もしかして……迷惑?」
同じく心配そうな表情を浮かべるのは賢者候補生であるミザリアである。
成人を迎えたばかりとはいえ、利発そうで容姿端麗たる佇まいは確かにこの酒場では浮いており……フィーナ同様に無遠慮な眼差しが注がれている。
基本的に体が資本である冒険者にとって女性――しかも美貌の持ち主となれば、レアリティは跳ね上がる。
女気の無い奴等がそわそわするのも無理はない。
俺は苦笑を深め首を左右に振り否定すると、場馴れしてない皆を安心させる為におどけるように肩を竦める
「全然そんな事はないさ。
ただ――何とも言えぬやっかみを先程から感じているがな」
「確かに怨嗟に満ちた視線を感じますわ」
「ん。なんであんなおっさんにばかり――という嘆きの呪詛を孕んだ声を聞いた」
「ふふ~ん。ボク達が魅力的だから仕方ないよね♪」
「あっ、あの……アレクシアさん?」
「なになに、フィーナさん?」
「大変申し上げ辛いのですけれど……」
「うん?」
「あの赤毛の子は残念、と仰ってますわよ?」
「ん。同意。
顔はいいが身体が貧弱、数年後に期待――とデリカシーの無い事を言っている」
「む、むきいいいいいいいいいいいいいいいい!
今に見てろよ――くそぅ!
絶対ナイスバディのおねーさんになって見返してやるぅ!」
「ほらほら、意気込みは分かるが……まずはこっちの方が優先だ」
「は~い」
「聞き分けが良くてよろしい(うむ)。
さて、先程も言ったがこれからお前達の冒険者として初の依頼を受注する。
ギルドの規定通り、Fランクの依頼からスタートだ。
D級の俺が仲間という事で最大Eランクまで受注する事が可能だが……
まずはランクに応じた実力を身に付けねば話にならん。
受付嬢であるメイアによる冒険者登録時の説明内容は覚えているな?」
「ああ、あのおっさんと意味深な感じの人の?」
「あらあら。
それはどういうことですの、アレクシアさん」
「ん。学術的にも非常に気になる。もっと詳しく」
「えっとね……」
「こら、話に集中しろ!」
「うう……ごめんなさい」
「す、すみません」
「ん。申し訳ない」
「まあいい。
それで、だ。依頼を失敗するだけでなく取り返しが付かないとなると違約金と共に貢献点を喪う。違約金も痛いが――貢献点を喪うのが実は一番痛い。
貢献点とはいわば冒険者個人に関するギルドの信頼度だ。
信頼のない者に重要な仕事は任せられないだろう?
駆け出しのお前らに言ってもピンとこないだろうが……これが将来的に昇級に、かなり響いてくる。依頼者である民衆からの信用にも繋がるからな。
勿論、丁寧で満足度の高い仕事をすれば加点もされる。
力だけの荒くれ者はいつまで経っても昇級出来ない――と、そういう事だ」
俺の言葉に成程、と納得する三人。
そして何故か同様の表情と傷ついた顔を浮かべる盗み聞きしていた周囲の奴等。
中には身に覚えがあるのか、云々頷きながら自身の至らなさを反省し始める。
……自覚があるならまだやり直せるだろう。
何故か流れ弾による撃沈者を出しながら俺は話を締める。
「――という訳で、だ。
高難度の依頼を受けても完遂出来ないのでは意味がない。
だからお前達の――そして俺達のパーティとして受ける初の依頼はこれにした」
「何かな何かな?
定番のゴブリン退治? もしかして廃墟の探索?」
「気になりますわ」
「ん。興味深い」
俺の手にした依頼書をまじまじと覗き込む三人。次の瞬間――
「「「ええええええええええええええええええええ~~~~~~~!!!」」」
驚きと困惑に満ちた黄色い悲鳴が酒場に響き渡るのだった。
0
あなたにおすすめの小説
妖精の森の、日常のおはなし。
華衣
ファンタジー
気づいたら、知らない森の中に居た僕。火事に巻き込まれて死んだはずだけど、これってもしかして転生した?
でも、なにかがおかしい。まわりの物が全部大きすぎるのだ! 草も、石も、花も、僕の体より大きい。巨人の国に来てしまったのかと思ったけど、よく見たら、僕の方が縮んでいるらしい。
あれ、身体が軽い。ん!?背中から羽が生えてる!?
「僕、妖精になってるー!?」
これは、妖精になった僕の、ただの日常の物語である。
・毎日18時投稿、たまに休みます。
・お気に入り&♡ありがとうございます!
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
中年オジが異世界で第二の人生をクラフトしてみた
Mr.Six
ファンタジー
仕事に疲れ、酒に溺れた主人公……。フラフラとした足取りで橋を進むと足を滑らしてしまい、川にそのままドボン。気が付くとそこは、ゲームのように広大な大地が広がる世界だった。
訳も分からなかったが、視界に現れたゲームのようなステータス画面、そして、クエストと書かれた文章……。
「夢かもしれないし、有給消化だとおもって、この世界を楽しむか!」
そう開き直り、この世界を探求することに――
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。
彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
お気に入り・感想、宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる