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第8章 のろのろ帰還と運命の再会?
第002話 ベルピュート辺境伯の議題とビアンカへの爆弾
しおりを挟むアデール王国西部一帯を治めるベルピュート辺境伯は、自身の屋敷で側近達を集め今後の対策を取っていた。
「となると、東部北部が抑えられているのは確かな様だな」
「ええ、ブラン侯爵も情けない。東部の雄とも言われていたのに蓋を開ければコレですか。……それで? 西部の雄たるベルピュート辺境伯はどう出ますか?」
ベルピュート辺境伯は大柄で鍛えられた肉体を持つ強面の人物だ。度重なるカントラス王国との小競り合いでは先頭で指揮を取る等、領民からは強い支持を受けている。
アデール王国では珍しく有能な貴族と言えるだろう。故にアデール王国本国よりカントラス王国で高い評価を受けていると言う皮肉な状態でもある。
「茶化すな。しかしそうである以上動けるのは我等西部と南部サルマトール侯爵派閥だけ、しかし南部が動かないのであれば既にアデール王国は詰んでいるのであろうな」
「――南部は、フォシュレーグ王国と繋がっていると?」
「フォシュレーグ王国からそれを匂わす手紙が寄越されたのです」
それはシャルロッテの間者が出した手紙であった。後々に残る証拠ともなるので不味い部分は書かれていないが充分信憑性のある内容だった。
執事が大まかな内容を読み上げると、その場に居た側近達も辺境伯同様に難しい顔をして一様に口をつぐんだ。
「欺瞞情報の可能性は確かにある。……あるが、南部が仮に裏切っていないとすると、何故動かないのか」
「我等の動きを待っている可能性は?」
「つまりそれは我等が動かなければ動かないと言う事だろうが。そんなもん裏切っているのと変わらないだろう」
吐き捨てる様に言い放つ側近の一人、此処に居る者達は皆軍人でそう言った貴族の駆け引きを嫌う者達でもある。ベルピュート辺境伯自身そう言う人物なので、重用するのも自然とそういった人物が集まってしまったのだ。
「――どちらにしても南部は動けん」
「それは?」
「南部のサルマトール侯爵派は南に2つの国と接してはいるが、どう利用するにも規模が小さい。碌に戦争を知らんアヤツでは領地も命も賭けられんだろうよ」
ベルピュート辺境伯は側近の貴族に対する言い様を咎める事も無く話しを進めていった。こう言ったやり取りも何時もの事なのだ。
「それにしても恐るべきはフォーシュレーグ王国の侵攻速度よな。これから先、見誤れば我等も消えて無くなるぞ」
「フォシュレーグ王国に付くかカントラス王国に付くか、ですか」
「ルードルシア教王国ラージヒルド商業王国が動けば覆る事もあるであろうが、流石にアデール王国が滅ぶ前には間に合わんだろうよ」
「「「…………」」」
国には何の恩も感じていないがアデール王国のベルピュート辺境伯領と言う場所を守る為にこれまで戦って来たのだ。皆が一様に口を閉じてしまうのも無理はない。
「しかしフォシュレーグ王国め、何時の間にリアースレイ精霊王国とそこまで親密になっていたのか」
「国が滅ぶ、……か。愚王め、リアースレイ精霊王国を抱き込む手腕だけは認めていたのだが、それを自ら手放すとはな」
「愚王は所詮愚王、と言う事でしょう」
西部の雄とも言われるベルピュート辺境伯から見てもフォシュレーグ王国とリアースレイ精霊王国が連携しているかの様に見えていた。
実際にはそう見える様にシャルロッテが盤面を動かしていたのだが、西部から動けないベルピュート辺境伯には分かり様も無かった様だ。
飛空挺で飛ぶこと数時間、ビアンカ一行はレンリート伯爵領手前まで来ていた。ビアンカ達は近くの人里離れた所で降ろしてもらい、ダールトンとはそこで別れる事になる。
「シャルロッテ様との話し合いでアデール王国との契約は正式には切ってはいないのです。それでも本来なら王都以外に飛空挺を降ろす事は禁止されているのですが、今回は緊急時と言う事で何とか此処までお送りさせてもらいました」
「分かっているわ。いずれ何らかの形で恩に報いるわ」
話しをつけたのはシャルロッテだし、シャルロッテに丸投げすれば良いかしらね。
「いえ、寧ろ無かった事にして頂きたいのです。メメントリア王国からは馬車で此処まで来た事にして下さい」
「……成る程ね。分かったわ」
アイリスちゃん馬車が嫌いだからねえ。ガタガタ揺れてお尻が痛くなるって、まあ馬の世話とかは好きそうだったけど。
それにしても母国の規則を曲げてまでアイリスちゃんに気を使うなんて、どんだけアイリスちゃんが欲しいのよ。
「それと、アイリス様とユニコーンですが、くれぐれも大事になさって下さい。……では失礼致します」
「…………」
その後アイリスに挨拶をしてダールトンは飛空挺に乗り込みリアースレイ精霊王国へ帰って行った。ダールトンはビアンカにかなり真剣な表情で言った為に圧を感じてしまい、正直自分の手に余ると思った。
「――まあ、シャルロッテが居ないならお父様に丸投げすれば良いか」
色々と荒波に巻き込まれ、図太くなっていたビアンカはそう結論を出した。――父親にアイリスの起こす荒波が襲い掛かる事が確定した瞬間である。
ビアンカ一行は予め用意されていた馬車に乗り込んで10数分、いよいよ領境を越えて自領レンリート伯爵領に入って行った。
戦争によって逆侵攻をし、削り取った元ブラン侯爵領を抜けレンリート伯爵領の元々の領境の街まで入って行く。
そこは防衛の為か砦の様な造りになっていて、何処かメメントリア王国の王都に似ている。流石に規模は小さいが周囲を囲む壁はメメントリア王国の王都よりも堅牢に見えた。
街門を開けられ街の中に入るが、ビアンカの目には行きにアデール王国に入った時よりも人の数が少なくなって見えた。
取り敢えずまだ昼前なので、ここで小休止して昼食を取ってから次の町で一泊する予定だ。
ビアンカと使用人達に続きミリアーナとアリアとカチュア達と馬車を降りた。アイリスも降りたがユニコーンのキーちゃんは悪目立ちするのでアイリスがお願いして馬車の中で待ってもらっている。
因みにキーちゃん自身も精霊樹の様な清浄な魔力、高濃度の聖素を放っていてアイリス以外は近付けない。その為馬車はキーちゃんとアイリスだけが別にされているのだ。
「ビアンカお嬢様、無事のご帰還お喜び申し上げます!」
「「「お喜び申し上げます!」」」
「ええ、ありがとう。それで、何かあったのかしら? 何だか人も少ないし慌ただしい様だけど?」
ビアンカの帰還を伝えると身分の高そうな人達がやって来て挨拶をして来たが、ビアンカの質問にビクリとして固まった。
「ええ~、人が少ないのは戦争に駆り出されたのと、隣りの(アデール王国)ブラン侯爵領が実質傘下に収まって警戒度が下がったからですね。その分人が必要無くなりまして。それと、慌ただしいのはちょっと……、アドンの迷宮で問題が発生した様でして……」
「迷宮? スタンピードでも起こったの?」
言い辛そうにしているがビアンカは空気を読まずにずけずけと質問していく。経験上そうしなければ中々話しが進まなくなるのだ。
「いえ、……申し訳ありません。話して良いのか自分には判断がつきません」
「ふう、――領主一族として命じます。話しなさい」
(おお~、ビアンカお姉様格好良いな)
「――その、……第3王女エミリアーナ姫様とお付きの白銀騎士団が、……帰還予定日を過ぎても帰ってない様なのです」
とんでもない爆弾だった。
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