王太子妃が我慢しなさい ~姉妹差別を受けていた姉がもっとひどい兄弟差別を受けていた王太子に嫁ぎました~

玄未マオ

文字の大きさ
18 / 51

第18話 魔女テティス

しおりを挟む
「夫婦のことに口出しは無用です!」

「今、形式だけっていったじゃないか」

「ぐっ!」

 伯父のレナートと甥のベネット。
 ずいぶんと打ち解けた間柄に見えるが、自分を無視して話をされるのは……。

 メルはそう思い、発言することにした。

「私は確かに名ばかりの妻です。でも、ベネット様には本当によくしていただきましたし、私がベネット様のお役に立てることがあるなら何でもしたいと思っています。だから、その……、呪いのこととか、私の知らないことをもっと教えてくださいませんか?」

 メルの言葉にレナートは破顔一笑。

「なんだ、やっぱり口説いている最中だったのか。うんうん、わかるぜ。政略だといきなり夫婦になるし、いろいろとすっ飛ばしてそういう仲になるのを躊躇することもあるよな。だからこうして希少な宝石の贈り物を……」

「違います!」

 耳まで真っ赤にしてベネットは否定した。

「まあ、そう照れないで、早く彼女にこの宝石を渡してやったらどうだ?」

「伯父上が帰ったら渡します」

 少しふて腐れたような表情でベネットは言った。

 初めて見る人間臭いベネットの表情にメルは感情を揺さぶられた。


 そしてしばらく沈黙が続いたが、その時、三人とは別の女性の声が外から響いた。

「ちょっと、バルコニーで大声出して何やってるの? 渡したらすぐ帰ってくるって言ってなかった、レナート!」

 大きなトカゲに羽が生えたような生き物の上にまたがってその女性は空からやって来た。

 夜の闇に薄紫に輝く髪。
 一風変わった容姿の女性はレナートに声をかけた。

「いやあ、すまん。甥の奥さんを紹介してもらっていたから」

 いや、紹介したつもりはないけど、と、いうベネットの小さな声は無視された。

「あら、そこのきれいなお嬢さん? 初めまして、私はレナートの妻のテティスと申します。少しばかり魔法が使えるけど怖がらないでね」

 テティスは乗っていた生き物からバルコニーに飛び降りた。

「この子はリザ、よろしくね。この大きさじゃ目立つわね」

 飛んでいた生き物の名をテティスは紹介する。

 そして、リザは小さくなり、テティスの肩にちょこんと止まった。

「まったく、夜中にあんな大きな声で!」

「君がかけてくれた防音魔法があるから、僕の周囲は大丈夫だよ」

「でも、私には丸聞こえだったわよ。ごめんなさいね、せっかくの夜をお邪魔して」

 テティスはレナートを連れて飛び去ろうとした。

「あの、待ってください。王家の呪いのこととか、いろいろとまだ聞きたいことが……」

 メルは二人を引き留めた。

「いいんだ、メル、君が気にすることじゃない!」

 ベネットはそれを制止する。

「ふうん、じゃ、明日の夜また来るから、その時にまだ聞きたいと思うなら、私と一緒に行きましょう、じゃあね」

 テティスはそう言い残して、再び大きくなったリザにまたがり、彼女の夫レナートを連れて夜の闇に消えていった。



【作者あいさつ】
 更新がすっかり遅くなってすいません。
 一月前半は仕事のシフトも忙しくなかなか時間が取れませんでした。
 もう少し更新頻度を上げるよう努力いたします。

 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

愛されヒロインの姉と、眼中外の妹のわたし

香月文香
恋愛
わが国の騎士団の精鋭二人が、治癒士の少女マリアンテを中心とする三角関係を作っているというのは、王宮では当然の常識だった。  治癒士、マリアンテ・リリベルは十八歳。容貌可憐な心優しい少女で、いつもにこやかな笑顔で周囲を癒す人気者。  そんな彼女を巡る男はヨシュア・カレンデュラとハル・シオニア。  二人とも騎士団の「双璧」と呼ばれる優秀な騎士で、ヨシュアは堅物、ハルは軽薄と気質は真逆だったが、女の好みは同じだった。  これは見目麗しい男女の三角関係の物語――ではなく。  そのかたわらで、誰の眼中にも入らない妹のわたしの物語だ。 ※他サイトにも投稿しています

厄介払いされてしまいました

たくわん
恋愛
侯爵家の次女エリアーナは、美人の姉ロザリンドと比べられ続け、十八年間冷遇されてきた。 十八歳の誕生日、父から告げられたのは「辺境の老伯爵に嫁げ」という厄介払いの命令。 しかし、絶望しながらも辺境へ向かったエリアーナを待っていたのは――。

悪役令嬢扱いで国外追放?なら辺境で自由に生きます

タマ マコト
ファンタジー
王太子の婚約者として正しさを求め続けた侯爵令嬢セラフィナ・アルヴェインは、 妹と王太子の“真実の愛”を妨げた悪役令嬢として国外追放される。 家族にも見捨てられ、たった一人の侍女アイリスと共に辿り着いたのは、 何もなく、誰にも期待されない北方辺境。 そこで彼女は初めて、役割でも評価でもない「自分の人生」を生き直す決意をする。

カウントダウンは止められない

ファンタジー
2年間の「白い結婚」の後、アリスから離婚を突きつけられたアルノー。 一週間後、屋敷を後にするが……。 ※小説になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

お言葉ですが今さらです

MIRICO
ファンタジー
アンリエットは祖父であるスファルツ国王に呼び出されると、いきなり用無しになったから出て行けと言われた。 次の王となるはずだった伯父が行方不明となり後継者がいなくなってしまったため、隣国に嫁いだ母親の反対を押し切りアンリエットに後継者となるべく多くを押し付けてきたのに、今更用無しだとは。 しかも、幼い頃に婚約者となったエダンとの婚約破棄も決まっていた。呆然としたアンリエットの後ろで、エダンが女性をエスコートしてやってきた。 アンリエットに継承権がなくなり用無しになれば、エダンに利などない。あれだけ早く結婚したいと言っていたのに、本物の王女が見つかれば、アンリエットとの婚約など簡単に解消してしまうのだ。 失意の中、アンリエットは一人両親のいる国に戻り、アンリエットは新しい生活を過ごすことになる。 そんな中、悪漢に襲われそうになったアンリエットを助ける男がいた。その男がこの国の王子だとは。その上、王子のもとで働くことになり。 お気に入り、ご感想等ありがとうございます。ネタバレ等ありますので、返信控えさせていただく場合があります。 内容が恋愛よりファンタジー多めになったので、ファンタジーに変更しました。 他社サイト様投稿済み。

【完結】徒花の王妃

つくも茄子
ファンタジー
その日、王妃は王都を去った。 何故か勝手についてきた宰相と共に。今は亡き、王国の最後の王女。そして今また滅びゆく国の最後の王妃となった彼女の胸の内は誰にも分からない。亡命した先で名前と身分を変えたテレジア王女。テレサとなった彼女を知る数少ない宰相。国のために生きた王妃の物語が今始まる。 「婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?」の王妃の物語。単体で読めます。

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

処理中です...