悪役令嬢のサラは溺愛に気づかないし慣れてもいない

玄未マオ

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第14章 大団円

第163話 控室にて

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 卒業パーティより二か月後、王太子と公爵令嬢、つまりジークと私の結婚式が挙げられる。急に取り決められたことだったから当日の段取りや招待客の選別、そして衣装の作成まですべて突貫工事だった。

「まさかこんな無茶ぶりをなさるとは、らしくない、らしくなさすぎる!」

 各方面からの苦情を受け付けなばならない侍従のトロイアは叫んでいた。

「王太子妃になれないのがそんなに残念だとは思わなかったからさ」

 ジークが私に言った。だから、戴冠式で王位につく前にジークは式を挙げるのだという。いや、そもそもは私の勘違いから原因なんだし、それで皆をさらに多忙にさせているのは申し訳ない。

「おそらく、早く式を挙げなきゃ、またサラ様が気を変わられてというのを恐れたのでしょうな」

 トロイアは言った。
 もう大丈夫なのに。怖れで自分やジークの思いに目をそらすことはないのに。

 結婚式当日、控室には衣装を整える係の他に父と母。

「ちくしょう! あのクソ王太子! まんまとサラを奪っていきおって!」
「あなたったら、婚約を解消してもしなくても怒るのですね」

 怒りながら泣きじゃくる父とそれをなだめる母。
 父にはヴァージンロードを一緒に歩く役目もあるのに、あんなにびしゃびしゃに泣いて大丈夫だろうか?

「くっそぉ! そうだ、ヴァージンロードから王太子に引き渡す直前に踵を返してサラとともに走り去るというのはどうだ?」

 父がとんでもない提案をする。
 やろうとしていることがまるで映画の『卒業』。

「サラがついてきてくれると思うんですか?」

 母があきれて言う。その通りだ、どこの世界に不服でもない結婚式で回れ右して父親と逃げる娘がいる?

「そっかあぁ」

 父、落胆。
 そんな態度をされましても……。

「ちょっと風にあたってくるわ」

 父は一人で控室を出て行く。それを見て母は苦笑いをした。

「「「「「サラ様、おめでとうございます!」」」」」

 入れ違いに生徒会の女性陣+ユリアが入ってきた。 男性陣はエミール王子とともに王太子の方に行っているらしい。私と同じく卒業したアデリー&ハイディにはブライズメイドの役をお願いしていて、別の部屋で衣装の着付けをしてもらっている。

「サラ様、おきれいですわ」
「式場ではもっと映えるでしょうね」

「えへへ、そうかな。急ごしらえの割にはビーズやラメをうまく配置してくれてるのよね、この衣装」

 フェリシアやシュザンナの誉め言葉に私は照れながら答えた。

「王太子殿下も惚れ直しますよ。いや、もともとサラ様ぞっこんの殿下ではあれ以上『惚れ直す』っていうのも?」

 リーニャが言っているのにユリアが同意してうなづいている。私は何と答えていいかわからない。

「それにしてもわれらが生徒会から『英雄』が何人も出るなんてね」

 ペルティナが感慨深げに言った。
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