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第二章 中二病には罹りません ー中学校ー

第267話 修学旅行は雅な香り (3)

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古都初日のお宿は老舗の旅館。女将さんや従業員さんも修学旅行客の扱いには慣れているご様子で、テキパキとご案内いただきました。
当然男子生徒はみんな同じ部屋ですよ?何か間違い(女子生徒が男子生徒に襲い掛かる等)があったら全国ニュースの大問題ですからね、その辺は教師陣旅館側双方共に気を使っていただいております。
実際あるんですよこれ、中高生の溢れる情熱と湧き上がるリビドーは時に理性を凌駕するんです。(激ヤバ)

「男子生徒の皆さんはこちらの部屋ですが、何かあったらすぐに先生に連絡ください。どんな小さなことでも構いませんので。」(仏の微笑み)

「「「・・・・・」」」

「おい佐々木、あれどうするんだよ。」

えっ、俺のせい?木村君だってやったじゃん、しかも女子たち泣いてたじゃん。全員の連帯責任だってこれ~。

「「「いやいやいや、お前のが一番酷いから。」」」

お寺の鐘撞き堂の一件、マジ大変でした。俺が鐘を撞いた後、周囲には得も言われぬ澄んだ鈴の音が広がったそうです。鐘を撞いたのに鈴の音っていったいって話しなんですが、俺の耳には”ゴ~~~~~ン”って聞こえたんだけどな~。
そんで問題はその後です、あの時お寺にいた人間全員が鐘の方を向いて合掌し拝んでいました。しかもみんながみんな憑き物でも落ちたかのようなアルカイックスマイルを浮かべてるんですよ、超恐い。変わらなかったの鐘撞いた五人だけ。
次の予定地に移動があったんでバスに向かったんですけど、お寺の尼さん全員付いて来ちゃうし。住職を筆頭にしてのお見送りって、マジ勘弁して。
クラスメートと佐藤先生の賢者タイム未だ続行中、表情がとても穏やかでいらっしゃいます。
こんな姿の集団を見たら普通ビックリすると思うでしょ?これがまた恐ろしい事に街中どこに行ってもこんな顔した人ばっかりなんですよ奥様、世にも奇〇な世界じゃないんだから、誰か助けて。
あの鐘絶対ヤバい何かだって、だって俺たち全員音色違ったんよ?おかしいでしょそれ。

「「「う~ん、確かに。」」」

これ朝になってもこのままだったら、班行動の時に神社にでも行ってお祓いして貰ったらいいんじゃない?他でどうにかなるとも思えないし。

「じゃあ俺スマホで良さげな神社検索しておくわ。」
「最悪班行動止めて全員で神社詣でって事でいいんじゃない?」
「「「異議なし。」」」

それじゃそんな方向で。取り敢えずの実害はなさそうだし、今日は様子見って事で。
「「「了解。」」」

「佐々木君たち、佐藤先生が食事の時間だから来る様にと呼んでいます。一緒に参りましょうか。」(アルカイックスマイル)

あ、あぁ。今行きます。

「なぁ、佐々木。俺今野口さんが聖母に見えたんだが。」
「俺も、あれって本当に鐘だけのせいなのか?」
いや分かんない。

「ねえ佐々木君、みっちゃんとくみちゃんが僕の事幼子の様に扱おうとするんだけど。」
「「「それはいつもの事だ。西山君、強く生きろ。」」」

どうか明日には元に戻っています様に。(願望)


”ガァ~~ッ、ス~~ッ、ガァ~~ッ、ス~~ッ”

う~~~ん、鈴木のイビキうるさい~。
今何時よ、夜中の一時半?あ~~っ。
仕様がないトイレ行って来よう。

うんスッキリ、切れのいいおしっこってやっぱいいわ。五十代のしっこはなかなか終わらない上に勢いもなかったからな~。
でもこの旅館、老舗だけあって中庭も見事だな~。大きな池もあるし、日本庭園の見本みたいなところだね、まあここは日本じゃないんだけど。
お、縁側から庭に出れるんだ。少し見て行くかな?

水面に写り込む満月、風流だね~。
「やっぱり月見酒は満月に限るね~。」
そうですね~。でも欠けた月ってのも味わいがあると言うか、俺は好きですけどね。
「ほう、少年はなかなか趣のある感性をしているね~。」
いや~、それほどでもって人がいたんですね、お邪魔して申し訳ない。
「いや~、こちらこそこんな夜更けにこんな場所で酒飲んでるってのもおかしな話だ、申し訳ない。でも少年は動じないね、普通こんな所に人がいたら驚くだろうに。」
いや~、慣れですかね。俺の周りって気配消す人が多くって、突然背後を取られるって所中なんですよ、昔から。
最近はびっくりしなくなったって言って逆に怒られるって言う理不尽なめに合ってますが。
「なんだそれ、笑い事じゃない様な気もするが。まぁ少年は気にしてない様だしいいのかな?」
それよりお姉さんはなんかあったんですか?妙に嬉しそうなそれでいて寂しそうって言う複雑な表情してますが。
「あぁ、古い友人や知人が旅に出てね。長い事辛い目にもあってたから、新天地に渡ることは喜ばしい事なんだが、やはり寂しい気持ちもあってね、まあこうして門出を祝っていた訳だ。」
そうですか。人生は一期一会、別れもあれば出会いもある。また素敵な出会いもありますって、今はその友人の門出を祝いましょう。旅路に幸あれ。
”パンッ”

俺は柏手を打ち、心より祈った。

「ほう、これは嬉しいものだね。荒れていた心が穏やかに凪いで行く。
うん、君に決めた。
我が名は”葛の葉”。困ったことがあったらいつでもこの名を呼ぶといい。」
”リー------ン”

夜空に鳴る澄んだ鈴の音

えっ、お姉さん今何を?

横を向けばそこにはすでに誰もいない。
いにしえの都が見せた、一時の幻の様に。
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