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第三章 ある少年の回顧録
第328話 俺ってこの世界の主役じゃね? (4)
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「おはようございます、ひろし君。幼稚園の準備は済みましたか?」
玄関先ではお母さんの所属事務所の倉持さんが、今日の初登園の為に待機してくれていた。
「おはようございます、倉持さん。今日から本番ですね、倉持さんも今迄特訓に付き合ってくれてありがとうございます。お母さんの為にも僕も頑張らないと。今日はよろしくお願いしますね。(ニッコリ)」
挨拶の後はニッコリスマイル。これは王子様の最低限の所作、基本中の基本である。
「ウッ、ひろし君完璧です。肝心なのは強弱です、情緒の変化を忘れてはいけませんよ?」
「うん、分かった♪」
倉持さんのアドバイスはいつも的確だ、流石は男優オタクと自称するだけの事はある。一度見せて貰ったがあのライブラリーは壮観だった。(遠い目)
「倉持おはよう~。どうよ我が子の出来は、完璧じゃない?このまま子役でも行けそうじゃない?誘拐されちゃうから絶対やらせないけど。
じゃあこれからもよろしくね。」
お母さんは今日も超絶美人、いつもより気合が入ってる分美人マシマシです。
「はい、お任せください、律子さん。お車を回してありますんで、参りましょうか。」
「ひろし君頑張ってね、ママ応援してるからね。」
「任せてよお母さん。僕の初舞台、しっかり見ておいてね。」
こうして舞台の幕は降ろされた。幼稚園はもうすぐ、僕も頑張らないと。
”ガチャ”
車の後部座席のドアが開かれる。僕はシートベルトのロックを外し、一歩外へ足を踏み出す。
「ひろし君、恐れてはいけません。すべてを受け入れすべてを照らす、貴方は理想の王子様なのですから。
究極の王子、第一幕、王子の入園。今開幕です。」
「倉持さん、どうもありがとう。お母さんもまた後でね。行って来ます。」
「ひろし君、いってらっしゃい。園長先生に挨拶したらあとで顔を出すわ。頑張ってね。」
朝の幼稚園。
園児の元気のよい挨拶とはしゃぐ声が響くその園庭に、一人の男の子が現れた。
亜麻色のウェーブの掛かった髪、どことなく色気の漂う目元、シャープさの中にも子供らしさを残した輪郭、すらっとした手足。
その歩みの一つ一つ、動作の一つ一つが周囲の”女”を魅了する。
口を開けぼーっとする女児たち。顔を赤らめ目線を外さない保護者達。園児の事を忘れただ見入ってしまっている先生方。
”わぁ~~~!”
空腹のときに獲物を見つけた肉食動物の様に、一斉に群がる女達。
でも僕は焦らない、揺るがない。僕は理想の王子様なのだから。
”キャー、カッコイイ”
”お名前教えてください、わたしよし子って言います!”
”ちょっとどいてよ、私の王子様が見えないじゃない!”
「みんな落ち着いて、僕は逃げたりはしないから。それに僕なんかそんなに褒められたものじゃないよ?僕のことは気軽に“ひろし”って呼んでね♪」(ニッコリ)
”キャー、ひろし君~~❤”
園庭は黄色い声援に包まれた。
”ハハハハ、なんだよこれ。こんな事ってあるのかよ。もしかしたら俺ってこの世界の主役じゃね?”
僕の中に残る前世の感情が、心の中で高らかに笑いを上げるのであった。
玄関先ではお母さんの所属事務所の倉持さんが、今日の初登園の為に待機してくれていた。
「おはようございます、倉持さん。今日から本番ですね、倉持さんも今迄特訓に付き合ってくれてありがとうございます。お母さんの為にも僕も頑張らないと。今日はよろしくお願いしますね。(ニッコリ)」
挨拶の後はニッコリスマイル。これは王子様の最低限の所作、基本中の基本である。
「ウッ、ひろし君完璧です。肝心なのは強弱です、情緒の変化を忘れてはいけませんよ?」
「うん、分かった♪」
倉持さんのアドバイスはいつも的確だ、流石は男優オタクと自称するだけの事はある。一度見せて貰ったがあのライブラリーは壮観だった。(遠い目)
「倉持おはよう~。どうよ我が子の出来は、完璧じゃない?このまま子役でも行けそうじゃない?誘拐されちゃうから絶対やらせないけど。
じゃあこれからもよろしくね。」
お母さんは今日も超絶美人、いつもより気合が入ってる分美人マシマシです。
「はい、お任せください、律子さん。お車を回してありますんで、参りましょうか。」
「ひろし君頑張ってね、ママ応援してるからね。」
「任せてよお母さん。僕の初舞台、しっかり見ておいてね。」
こうして舞台の幕は降ろされた。幼稚園はもうすぐ、僕も頑張らないと。
”ガチャ”
車の後部座席のドアが開かれる。僕はシートベルトのロックを外し、一歩外へ足を踏み出す。
「ひろし君、恐れてはいけません。すべてを受け入れすべてを照らす、貴方は理想の王子様なのですから。
究極の王子、第一幕、王子の入園。今開幕です。」
「倉持さん、どうもありがとう。お母さんもまた後でね。行って来ます。」
「ひろし君、いってらっしゃい。園長先生に挨拶したらあとで顔を出すわ。頑張ってね。」
朝の幼稚園。
園児の元気のよい挨拶とはしゃぐ声が響くその園庭に、一人の男の子が現れた。
亜麻色のウェーブの掛かった髪、どことなく色気の漂う目元、シャープさの中にも子供らしさを残した輪郭、すらっとした手足。
その歩みの一つ一つ、動作の一つ一つが周囲の”女”を魅了する。
口を開けぼーっとする女児たち。顔を赤らめ目線を外さない保護者達。園児の事を忘れただ見入ってしまっている先生方。
”わぁ~~~!”
空腹のときに獲物を見つけた肉食動物の様に、一斉に群がる女達。
でも僕は焦らない、揺るがない。僕は理想の王子様なのだから。
”キャー、カッコイイ”
”お名前教えてください、わたしよし子って言います!”
”ちょっとどいてよ、私の王子様が見えないじゃない!”
「みんな落ち着いて、僕は逃げたりはしないから。それに僕なんかそんなに褒められたものじゃないよ?僕のことは気軽に“ひろし”って呼んでね♪」(ニッコリ)
”キャー、ひろし君~~❤”
園庭は黄色い声援に包まれた。
”ハハハハ、なんだよこれ。こんな事ってあるのかよ。もしかしたら俺ってこの世界の主役じゃね?”
僕の中に残る前世の感情が、心の中で高らかに笑いを上げるのであった。
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