上 下
348 / 525
第四章 ラブコメって言ったら学園じゃね…

第344話 文句があるなら実力を示せ

しおりを挟む
順子ちゃんと朱音さん、めちゃくちゃ仲良くなっちゃいました。
主に俺の話題で。
やれ理不尽の権化だとか、常識の破壊者だとか酷い言い様。
僕が何したって言うの?僕悪い男の子じゃないよ?

「「・・・・・・」」

無言の圧力は止めてください、結構心に来るので。でもそんなに俺って変かな?大した事やってないのにな。

”なんかまた理不尽な事言っとるぞあ奴は。大体森に建物があって気になるから来たって、そんな簡単に来れるような人除けはしとらんと言うのにこれが大したことじゃないというんか。私の結界とはいったい。”
”朱音さん、気にしちゃダメです。佐々木君は子忘れ島の海猿の配下を手懐ける異常者です。あの山に単独で入って行って楽しいキャンプだったって喜んでる狂人なんですから。”
”子忘れ島の海猿ってあの特級怪異の海猿か!?ヤバすぎるだろ、のっぺり佐々木。”
”義父曰く、その後の大粛清にも関わっていたらしいです、無自覚で。”
”なんつう奴が入学して来たんじゃ、この学園終わるぞ!”
”その点は大丈夫かと。ああ見えて自分は常識人と言う意識がありますんで、自ら破壊神にはなりませんから。義父曰く、こちらの常識は相当破壊されるそうですが。”
”そのお義父殿には同情するぞ、相当な目に合っていると見た。”
”そうですね、こないだ義父の背中に哀愁が漂って見えましたから。”

何か二人で頷き合って楽しそうです。


ただいま~、マミーいる?チョッと相談があるんだけど。

「お帰りなさいませ、Saki様。お母様は本日お休みです。先ほどからリビングでくつろいでおいでです。」

ノエルどうもありがとうね。それと葛の葉いる?

「葛の葉でしたら増山と事務所の方で警護プランについて勉強していると思いますが。」

おぉ、仕事熱心で何より。それじゃ増山のおっちゃんと葛の葉、出来たら北川さんにも来てもらっていいかな?

「畏まりました。すぐにこちらへ向かうよう通達いたします。」

「おう、帰ったかい息子。桜泉の高等部はどうだった?」

マミーただいま。どうもこうも正門で捕まって警察に連行されちゃいました。

「ぶっははははは、それってマジ、正門で捕縛って、あんた人物確認されなかったの?」

確認なさった上での不審者だそうです。

「アッハハハハハハ、流石息子、想像の斜め上を行くねアンタは、もう笑いの神に愛されてるとしか思えないんだけど。アッハハハハハ、腹痛い腹痛い、勘弁して~。」

へいへい、精々笑い飛ばしてください。そんで問題はこの落とし前をどう着けるのかって事。高等部校長はお話にならなかった、その上となると理事長かな。
マミー的にはどうよ。

「ま、こう言った事は直接行って話し付けるしかないね。嘗められたら終わりって奴さ。」

ですよね~。細かい落としどころはそっちに任せていい?俺は理事長のお言葉に従うだけだから。

「あぁ、あれかい。あたしはシンプルで好きだけどね。面倒な話はあたしが北川と詰めておくよ。」

それじゃよろしく。俺は着替えて来るね。

「あいよ、任された。」

話しは終わりとばかりに自室に戻る我が息子。あの子も分かってるじゃないか、この世界舐められたら終わりなんだよ。
さ~て、しっかり追い込みかけないとね~♪

久々の案件狩りに、ワクワクの止まらないマザー佐々木でありました。


(side:鬼龍院一華)

「政子が入院?いったい何が起きたって言うんだい。」

私立桜泉学園理事長、鬼龍院一華はその報告に驚きを隠せなかった。
今日は我が私立桜泉学園高等部の入学式、その晴れの舞台の日に入院とはただ事じゃない。

「は、ご報告申し上げます。本日の入学式では幾つかの騒ぎが起き、政子様はその対処に当たられていたご様子でございます。その一つ、外部進学生徒佐々木大地との面会の後、意識を失い病院へ搬送。現在意識は戻られた様ですが、酷く怯えているとの事でございます。」

「あの子が怯える?おいおいおい、あの鬼龍院政子だぞ、相手を怯えさせることがあっても決して自分を曲げないあの子が怯える?本当何があった。詳しい事は分かっているんだろうね?」

一華の孫娘政子は一華の一番のお気に入りであった。蝶よ花よと育てられ多少自分中心な所はあるものの、頭の切れも良くこれからの学園を任せるのに十分な人材であった。

「は、事件は今朝の生徒登校時に遡ります。くだんの生徒佐々木大地は、その容貌から不審者と認定され捕縛、警察へ引き渡されたとの事でございます。その後釈放され新入生お披露目に出席、政子校長と面会したという流れでございます。」

「はぁ?なんで容貌で不審者扱いされる生徒がウチの新入生にいるんだい、おかしいだろう。」

「は、彼は例の理事会推薦の者にございます。昨今の外部進学生の退学問題の対策として性格的に女子から忌避されない生徒と言う事で入学が許可された者にございます。」

理事会推薦の生徒、思い出したあの温泉番組の男子生徒か。確かに身体付きは良く、身長もある。人当たりの良い性格も好ポイントだ。だが決定的に顔が悪い。まったくと言っていい特徴のないのっぺり顔。いくら外部進学生が辞めてしまうからと言って、複数の理事からの推薦でなければ決して承認はしなかっただろう。

「はぁ~、なんにしてもこっちは大事な娘が入院させられてるんだ、きっちり落とし前を付けて貰わないといけないね。」

「お話し中の所失礼いたします。外より佐々木大地と申す男性が一華様に面会を求めて尋ねられて来ていますが、如何対処いたしましょうか。」

それは今話に出ていた例の男子生徒であった。

「丁度いい、会おう。謁見の間に通しておいてくれるかい?」

「畏まりました。」

さて鬼と出るか蛇と出るか、久しぶりにワクワクして来たね~。


謁見の間には複数の人物が横一列に座り待機していた。広い畳部屋の中心、全員の前に座っている青年、彼が例の佐々木大地であろう。
その容貌は報告の通り特徴らしい特徴の見られない、のっぺりとしたものであった。

「なんだい、自分に自信が無いからと言って人を集めて来たってのかい?そんなんじゃこの鬼龍院一華の前に立つ資格はないさね。」

若干落胆はしたが、今時の男ならこんなもんだろう。精々虚勢を張るがいい。

「待たせたかい?あたしが鬼龍院一華だ。で、話ってのはうちの政子を入院させたことへの詫びって事でいいんだよね?」

しょっぱなから佐々木大地とやらに目一杯の圧を掛ける。これに耐えられる男なんか今まで見た事が無い。
話しの主導権はこれでこちらのモノ、ま、そんなもんだろう。

「ほう、これが答えって事でいいんだな?」

”ゾクッ”
坊主の空気が変わった。背筋を走る悪寒、一体何だってんだい。

「フン、周辺に三十八人、全体だと他に八十五人か。案外少ないな。」

こいつは何を言っている?それは私の警護の人数と屋敷の人間の人数じゃないか!?

「”文句があるなら実力を示せ”、だったな?」

”ヒィッ”
思わず洩れる悲鳴、怖い怖い怖い怖い怖い!!
彼の存在が、その在りようが、どんどんと強大なモノへと変わっていく。

”ガタッ、バタッ、ドサッ、グシャッ”
次々と倒れ伏す護衛、周囲で意識のある者は私と隣でガタガタ震える秘書だけ。

「葛の葉、ノエル。後から問題が起きても面倒だ、倒れている人間をすべてこの部屋に集めて転がしておけ。」

「「は、Saki様(ご主人)」」

背後の人物が二人消えたと思えば次々と運ばれる屋敷の人間、その数おおよそ百人以上。これは本当に屋敷の人間全員か!?

「さて、”詫びに来たのか”、だったな?」

”ゴソッ”
ゆっくりと立ち上がる彼。
強大な力の奔流が、こちらに向かい、一歩一歩。

「俺に文句があるって事だよな、だったら分かってるよな?」

全身から噴き出る汗、ガチガチと音を立てる歯の震え。
私はいったい何を敵に回してしまったと言うのか!

「”文句があるなら実力を示せ”」

その日、我が鬼龍院一族は、一人の青年によって完全に敗北した。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

記憶喪失の異世界転生者を拾いました

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:704pt お気に入り:35

太后

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:10

充実した人生の送り方 ~妹よ、俺は今異世界に居ます~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,726pt お気に入り:63

キミといるしあわせ

BL / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:16

コオロギを水洗いしてはいけない

エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:1

処理中です...