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第四章 ラブコメって言ったら学園じゃね…

第490話 のっぺり、常識を知る。(霊能) (5)

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"シューッ、シューッ、シューッ"
休暇中に悪かったね~。もう温泉は入ったの?

"シューッ、シューッ、シューッ"
そう、みんな喜んでいるみたいなら良かった。四月からずっと忙しなかったからね、少しでも骨休めになればいいんじゃないかな。

"シューッ、シューッ、シューッ"
そうそう、海姫さんって神様だったんだよね、知ってた?えっ、知ってたの?知らなかったの俺だけ?マジかよ。言われても信じなかったとは思うけどさ~。
ところで他に神様って来てないよね。は?来てたの?道子さんってただの巫女さんじゃなかったの!?うっそん、勘弁してよ。もうお腹いっぱいなんですけど。

"シューッ、シューッ、シューッ"
まぁいっか、今さらだしね。特に何が変わるって事でもないし。今度詳しそうな朱音さんにでも聞いて見るよ。
他に神様に会ってるかも知れないしね。
ん?耳の後ろを掻くの?こんな感じ?ほれほれ、お客様いかがですか~。

どうも、色々常識がないと言われて教わりに来たのに放置プレーを食らってる男、佐々木大地です。
お婆さんはどうしたのか?少し前に再起動したんですけどね、何か急いでマミーに電話して抗議してるみたいです。
"見鬼、あれは何なんだい!あんたはうちを潰す気かい!"とか"あれに常識を教えるなんて出来る訳ないだろうが!"とかえらい言われ様なんですけど。
あの~、そう言う事はせめて本人のいないところでお願いします。結構心に来るんで。
キッって睨まれても、俺言われた事しただけですし。
あ、葛の葉、もうお披露目はいいみたいだから戻ってもいいよ。と言うか戻せるの?送還するって思えばいいのね、了解~。
でも狐の姿で戻ったら不味くない?向こうでは人型になるから大丈夫なんだ、便利だね。
それじゃお疲れ様でした、温泉まんじゅうよろしくお願いします。送還!

再び光が葛の葉を覆う。その光の塊が崩れる様にして、金色の大狐はその姿を消して行った。

うん、ザ・イリュージョン。これだけで食べていけるわ。えっ、駄目?世界中の組織から狙われる?
それは面倒そう、止めておきます。

「はぁ、坊やが何で私の所に送られて来たのかがよく分かったよ。確かに坊やに常識を教えるのは並みの人間には無理だね、うちの御当主様の様に寝込むのが目に見えているよ。それと坊やはこの業界には興味が無いようだけど、いざって時の為に並みの術者ってのがどんなもんか知っておいた方がいいかもしれないね。その上でそれ以下の対応をすれば基本問題ないだろうさ。坊やを見て一流の術者だなんて思う奴はまずいないから、下手にさっきの様な妖狐を連れてた日には何かの遺物か神器でも持ってるんじゃないかと疑われてあまりいい目には遭わないかもしれないからね。
特にこの業界は特別意識を持った自己中が多いからね、坊やも十分気を付けるんだよ。」

マジっすか、超面倒くさい。よしつくね、実力隠蔽モードだ、気配落とせ。
”キュイキュイ、キュイ!”

そうそうそんな感じ、いいね~、弱そうに見えるんじゃない?お婆さん、こんな感じでどうっすか?

”うっ、簡単にやってのけちゃってるけどそれって高等技術なんだが。霧影、あんたあそこまでの隠形術出来るかい?”
”気配を消す事は出来ますが自分の実力を偽るのは意外に難しいんですよ?しかもその状態で自然に安定させるだなんて、私には無理です。普通強力な力を持ったものはその力をひけらかす事はあれどそれを隠したり誤魔化したりなんて本能的にありえません、なのにあの鎌鼬は滅茶苦茶自然に振る舞っています、どれだけの修練を積めばそんな事出来る様になるんですか。”

引き攣った笑みを浮かべる二人をしり目に、つくねと戯れるのっぺりなのでありました。


「ここがこの屋敷の修練場だよ。術式の訓練、式神との連携なんかもここで行っている。」

そこは四方を板塀に囲まれた学校の体育館ほどの広さのあるグラウンド。この板塀にも隠蔽と結界の術式が組まれており、外からはただの庭園に見えるようになっているとの事でした。

「う~ん、どれくらいを基準にした方がいいのかね。霧影はどう思う。」

「そうですね、変に駆け出し程度では舐められますし、中堅くらいの実力者が隠蔽していると言った風を装うのが無難かと。」

「そうかい、だったら、彩音、ちょっといいかい。」

「は、大婆様、御呼びでしょうか。」

「うむ、すまないが彩音には少し演武を行って欲しい。術式の行使から全体の連携をざっと見せてくれればよい。」

「は、畏まりました。誰か相手をしてくれ。」

”はい、ただいま。”

今までグランドで様々な訓練をしていた人たちが周辺に避けて行く。中央には先ほど彩音と呼ばれた女性と、訓練生と思しき人物が対峙していた。

”始め!”

開始の合図と共に訓練生が懐から何かの紙を取り出す。そこに息を吹きかける様にして何か呪文を唱えながら前方に放り投げる、するとその紙から墨で書いたトラの様な物が飛び出し彩音さんに襲い掛かった。
彩音さんはそのトラを軽く躱し、避けざまに裏拳を叩きつけた。
そのまま吹っ飛び元の紙に戻るトラ。
えっと漫画の世界?凄いな術式。
少年の心をくすぐる展開に、ワクワクの止まらないのっぺり佐々木君なのでありました。
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