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第24話 【元パーティの焦燥】
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第24話 【元パーティの焦燥】
酒場の扉を開けると、安酒と油の匂いが鼻を突いた。
薄暗い店内には、煙が立ち込めている。
マルセルは顔をしかめた。
「ここでいいのか?」
カミラが肩をすくめる。
「他に選択肢がないわ。金欠だもの」
四人はカウンター席に腰を下ろした。
周囲の冒険者たちが、ちらりとこちらを見る。
視線には、以前のような尊敬の色はない。
好奇と、少しの同情が混じっていた。
店主が無愛想に近づいてくる。
「何にする?」
「ビール四つと、適当につまみを」
ブライトが注文した。
運ばれてきたのは、泡の少ないぬるいビールと、固いパンだった。
マルセルはジョッキを手に取り、一口飲んだ。
味が薄い。
リナが小さく呟く。
「前の店の方が、美味しかったわね」
「前の店には、もう入れないだろうな」
カミラが冷めた声で答えた。
四人の間に、重い沈黙が落ちる。
ブライトが沈黙を破った。
「次はうまくいくさ」
マルセルは頷いたが、表情は硬い。
「そうだな。ヘルハウンドキングは……運が悪かった」
「運?」
カミラが眉を上げた。
彼女の指が、テーブルの縁を叩く。
「あれは運の問題じゃないわ」
「じゃあ何だって言うんだ」
ブライトが苛立った声を出す。
カミラは答えなかった。
視線が虚空を彷徨う。
リナがジョッキを両手で包み込んだ。
「魔物の動きが、読めなかったのよ」
「前なら読めてたのか?」
マルセルの問いに、リナは黙り込む。
また沈黙が戻ってきた。
カウンターの向こうで、モブの冒険者たちが話している。
声が聞こえてくる。
「……S級のクリスとダリウスのパーティ、知ってるか?」
「ああ、最近A級に上がったデバフ使いと組んだって」
マルセルの手が止まった。
四人の耳が、自然とその会話に向く。
「デバフ使い? そんな奴いたっけ」
「アクセルって名前らしいぜ。元は勇者マルセルのパーティにいたとか」
「マジか。あの勇者パーティから?」
「追放されたらしいけどな。で、S級と組んだら化けたって話だ」
カミラのジョッキを持つ手が、微かに震えた。
リナが息を呑む。
ブライトは目を伏せた。
マルセルだけが、じっと前を見つめている。
モブの会話が続く。
「今、竜討伐に向かってるらしいぞ」
「竜?マジで?」
「封印の山のグラナドスだってさ。S級でも無理って言われてる相手だぜ」
「すげぇな……」
モブたちの声が遠ざかっていく。
マルセルはゆっくりとジョッキを置いた。
音が、やけに大きく響いた。
カミラが口を開いた。
「アクセル、ね」
その声には、複雑な響きがあった。
ブライトがカウンターを軽く叩く。
「偶然だろ。S級と組んだから目立っただけだ」
「そうかしら」
カミラの目が細まる。
リナが小さく言った。
「でも、私たち……最近、うまくいってないわ」
「気のせいだ」
マルセルが即座に否定する。
だが、その声には力がない。
ブライトがビールを飲み干した。
「次のクエストで結果を出せばいい」
「そうね」
カミラが頷いた。
だが、誰の目にも迷いが浮かんでいる。
リナが視線を落とす。
マルセルは、ジョッキの中の泡を見つめていた。
泡は、ゆっくりと消えていく。
店の奥で、また別のモブが話し始めた。
「アクセルって奴、デバフだけで竜の眷属を倒したらしいぜ」
「嘘だろ?」
「本当らしい。ギルドで報告書が回ってるって」
四人は、その声を聞かないふりをした。
だが、耳は確かに捉えている。
マルセルが立ち上がった。
「もう行こう」
他の三人も無言で立ち上がる。
会計を済ませ、店を出た。
外の空気は冷たかった。
夜の王都が、静かに広がっている。
カミラが腕を組んだ。
「明日、ギルドで新しい依頼を受けましょう」
「ああ」
マルセルが短く答える。
ブライトとリナも頷いた。
四人は、それぞれの宿へと歩き出す。
背中には、酒場の明かりが揺れていた。
誰も振り返らない。
誰も、口を開かない。
ただ、それぞれの胸に、小さな疑念が芽生えていた。
酒場の扉を開けると、安酒と油の匂いが鼻を突いた。
薄暗い店内には、煙が立ち込めている。
マルセルは顔をしかめた。
「ここでいいのか?」
カミラが肩をすくめる。
「他に選択肢がないわ。金欠だもの」
四人はカウンター席に腰を下ろした。
周囲の冒険者たちが、ちらりとこちらを見る。
視線には、以前のような尊敬の色はない。
好奇と、少しの同情が混じっていた。
店主が無愛想に近づいてくる。
「何にする?」
「ビール四つと、適当につまみを」
ブライトが注文した。
運ばれてきたのは、泡の少ないぬるいビールと、固いパンだった。
マルセルはジョッキを手に取り、一口飲んだ。
味が薄い。
リナが小さく呟く。
「前の店の方が、美味しかったわね」
「前の店には、もう入れないだろうな」
カミラが冷めた声で答えた。
四人の間に、重い沈黙が落ちる。
ブライトが沈黙を破った。
「次はうまくいくさ」
マルセルは頷いたが、表情は硬い。
「そうだな。ヘルハウンドキングは……運が悪かった」
「運?」
カミラが眉を上げた。
彼女の指が、テーブルの縁を叩く。
「あれは運の問題じゃないわ」
「じゃあ何だって言うんだ」
ブライトが苛立った声を出す。
カミラは答えなかった。
視線が虚空を彷徨う。
リナがジョッキを両手で包み込んだ。
「魔物の動きが、読めなかったのよ」
「前なら読めてたのか?」
マルセルの問いに、リナは黙り込む。
また沈黙が戻ってきた。
カウンターの向こうで、モブの冒険者たちが話している。
声が聞こえてくる。
「……S級のクリスとダリウスのパーティ、知ってるか?」
「ああ、最近A級に上がったデバフ使いと組んだって」
マルセルの手が止まった。
四人の耳が、自然とその会話に向く。
「デバフ使い? そんな奴いたっけ」
「アクセルって名前らしいぜ。元は勇者マルセルのパーティにいたとか」
「マジか。あの勇者パーティから?」
「追放されたらしいけどな。で、S級と組んだら化けたって話だ」
カミラのジョッキを持つ手が、微かに震えた。
リナが息を呑む。
ブライトは目を伏せた。
マルセルだけが、じっと前を見つめている。
モブの会話が続く。
「今、竜討伐に向かってるらしいぞ」
「竜?マジで?」
「封印の山のグラナドスだってさ。S級でも無理って言われてる相手だぜ」
「すげぇな……」
モブたちの声が遠ざかっていく。
マルセルはゆっくりとジョッキを置いた。
音が、やけに大きく響いた。
カミラが口を開いた。
「アクセル、ね」
その声には、複雑な響きがあった。
ブライトがカウンターを軽く叩く。
「偶然だろ。S級と組んだから目立っただけだ」
「そうかしら」
カミラの目が細まる。
リナが小さく言った。
「でも、私たち……最近、うまくいってないわ」
「気のせいだ」
マルセルが即座に否定する。
だが、その声には力がない。
ブライトがビールを飲み干した。
「次のクエストで結果を出せばいい」
「そうね」
カミラが頷いた。
だが、誰の目にも迷いが浮かんでいる。
リナが視線を落とす。
マルセルは、ジョッキの中の泡を見つめていた。
泡は、ゆっくりと消えていく。
店の奥で、また別のモブが話し始めた。
「アクセルって奴、デバフだけで竜の眷属を倒したらしいぜ」
「嘘だろ?」
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四人は、その声を聞かないふりをした。
だが、耳は確かに捉えている。
マルセルが立ち上がった。
「もう行こう」
他の三人も無言で立ち上がる。
会計を済ませ、店を出た。
外の空気は冷たかった。
夜の王都が、静かに広がっている。
カミラが腕を組んだ。
「明日、ギルドで新しい依頼を受けましょう」
「ああ」
マルセルが短く答える。
ブライトとリナも頷いた。
四人は、それぞれの宿へと歩き出す。
背中には、酒場の明かりが揺れていた。
誰も振り返らない。
誰も、口を開かない。
ただ、それぞれの胸に、小さな疑念が芽生えていた。
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