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第28話 【竜の咆哮】
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第28話 【竜の咆哮】
山は険しかった。
足元の雪が深い。
一歩ずつ、頂上を目指す。
朝日が昇ったばかりだ。
空は青いが、風が冷たい。
吹雪の気配がある。
「この先、さらに険しくなるわ」
クリスが地図を確認する。
指で経路をなぞった。
俺たちは洞窟を出て、すでに三時間歩いている。
息が白く凍る。
足が重い。
「休憩する?」
ミラが心配そうに聞く。
「いや、もう少し進もう」
俺は首を振った。
立ち止まれば寒さが骨に染みる。
ダリウスが先頭を歩く。
雪を踏み固めながら道を作る。
背中が頼もしい。
山道は曲がりくねっている。
左手は切り立った崖だ。
下を見ると、霧に覆われた谷が広がる。
一歩間違えば転落死だ。
足元に集中する。
雪に隠れた岩に気をつけて進む。
「アクセル」
クリスが俺の隣に並ぶ。
「大丈夫か?」
彼女の目が俺を見つめる。
「ああ」
俺は頷いた。
本当は少し疲れている。
昨日の戦闘の疲れがまだ残っていた。
肩が重い。
でも弱音は吐けない。
正午が近づく。
太陽が真上に来た。
雪の反射が眩しい。
その時だ。
地面が揺れた。
小さく、でも確かに。
足元の雪が震える。
「何だ?」
ダリウスが立ち止まる。
また揺れた。
今度は大きい。
岩が崩れる音が遠くで響く。
「地震か?」
ミラが俺の腕を掴む。
「いや」
クリスが険しい顔をする。
剣に手をかけた。
「これは」
三度目の揺れ。
さらに強い。
俺たちはバランスを崩しそうになる。
そして、聞こえた。
咆哮だ。
遠くから。
山全体を震わせる、巨大な咆哮。
空気が振動する。
耳が痛い。
心臓が跳ねた。
「まさか」
ダリウスの声が震える。
山の頂上方向を見上げる。
何かが動いた。
巨大な影だ。
それは山よりも大きかった。
銀白色の何かが、空へ飛び上がる。
翼が広がった。
一枚の翼だけで、森を覆うほどの大きさだ。
「グラナドス」
クリスが呟く。
竜だ。
全長は、建物何棟分だろうか。
いや、そんな比較では足りない。
空そのものが、竜の影に覆われた。
鱗が陽光を反射する。
銀色の輝きが目を刺す。
翼の一振りで、暴風が吹き下ろす。
俺たちは岩陰に身を隠した。
風圧で吹き飛ばされそうになる。
「でかい」
ダリウスが呻く。
顔が青い。
「これが古代竜」
ミラの手が震えている。
グラナドスは咆哮する。
もう一度、山を震わせる叫び。
その声は、怒りに満ちていた。
いや、違う。
苦しみだ。
竜は苦しんでいる。
「封印が弱まって、狂暴化してる」
クリスが言った。
目を細めて竜を追う。
グラナドスは山の反対側へ飛んでいく。
巨大な体が徐々に小さくなる。
それでも、存在感は消えない。
やがて竜は視界から消えた。
沈黙。
誰も動けない。
誰も喋れない。
ようやく、ダリウスが口を開く。
「マジで、アレと戦うのか?」
声が裏返っている。
「そうよ」
クリスが立ち上がった。
剣を握り直す。
「でも、やらなきゃいけない」
ミラが深呼吸する。
震えを抑えようとしている。
「アクセルさんのデバフがあれば」
彼女が俺を見る。
俺のデバフ。
本当に効くのか?
あんな巨大な相手に。
でも、昨日の遺跡で見た壁画を思い出す。
累積する弱体化。
対象が強いほど効果が増大する。
それが俺のスキルの本質だった。
「試してみるか」
俺は岩場を見る。
道の先に、大きな岩が転がっている。
直径三メートルほど。
このまま進むには邪魔だ。
「あの岩で」
俺は手を向けた。
「【弱体化】」
魔力が流れる。
いつもと同じ感覚。
でも、何かが違う。
岩に魔法陣が浮かぶ。
光が岩を包む。
そして。
システムの通知が頭に響いた。
『対象の強度が低すぎます。効果が最小化されました』
岩は少しだけ崩れた。
表面が砂のようにボロボロと落ちる。
でもそれだけだ。
「やはり」
俺は拳を握る。
「強敵ほど効く」
雑魚モンスターには効果が薄い。
普通の岩にも効果が薄い。
でも、グラナドス相手なら。
「もっと強力な効果が出る」
クリスが頷く。
「あなたのスキルは、対ボス用なのよ」
彼女は俺の肩に手を置いた。
「だから大丈夫」
その言葉が、少し心を軽くする。
俺たちはさらに登った。
山道は険しさを増す。
風が強くなってきた。
雪が舞い始める。
吹雪だ。
「急ごう」
クリスが先を急ぐ。
一時間ほど歩いた。
息が荒い。
足が重い。
「あそこ」
ダリウスが指差す。
岩壁に巨大な穴が開いていた。
高さ十メートルはある。
幅も同じくらいだ。
竜の巣だ。
入口から冷気が流れ出ている。
氷の臭い。
そして、硫黄の臭い。
「ここが巣ね」
クリスが剣を抜く。
俺たちは入口の前で立ち止まる。
中は暗い。
奥から、何かの気配がする。
グラナドスは中にいるのか?
それとも、まだ外を飛んでいるのか?
「準備を整えましょう」
ミラが荷物を降ろす。
「今日はここで休んで」
彼女が続ける。
「明日、中に入りましょう」
ダリウスが肩を回す。
「昨日の戦闘の疲れが残ってる」
正直な声だ。
クリスも頷いた。
「そうね。万全の状態で挑みたい」
俺たちは巣の入口から少し離れた岩陰に陣取る。
風を避けられる場所だ。
ミラが火を起こす。
小さな炎が温かい。
俺は巣の入口を見つめた。
暗闇の奥に、何がいるのか。
グラナドス。
あの巨大な竜。
本当に勝てるのか?
不安が胸をよぎる。
でも同時に、決意もある。
俺はデバフ使いだ。
追放されて、無能と呼ばれた。
でも今、俺の力が必要とされている。
封印を守るために。
仲間を守るために。
「アクセル」
クリスが声をかける。
「明日、よろしくね」
彼女の目が真っ直ぐだ。
信頼が込められている。
「ああ」
俺は頷いた。
「任せてくれ」
夜が訪れる。
雪が静かに降り続ける。
明日、俺たちは竜の巣に入る。
戦いが始まる。
山は険しかった。
足元の雪が深い。
一歩ずつ、頂上を目指す。
朝日が昇ったばかりだ。
空は青いが、風が冷たい。
吹雪の気配がある。
「この先、さらに険しくなるわ」
クリスが地図を確認する。
指で経路をなぞった。
俺たちは洞窟を出て、すでに三時間歩いている。
息が白く凍る。
足が重い。
「休憩する?」
ミラが心配そうに聞く。
「いや、もう少し進もう」
俺は首を振った。
立ち止まれば寒さが骨に染みる。
ダリウスが先頭を歩く。
雪を踏み固めながら道を作る。
背中が頼もしい。
山道は曲がりくねっている。
左手は切り立った崖だ。
下を見ると、霧に覆われた谷が広がる。
一歩間違えば転落死だ。
足元に集中する。
雪に隠れた岩に気をつけて進む。
「アクセル」
クリスが俺の隣に並ぶ。
「大丈夫か?」
彼女の目が俺を見つめる。
「ああ」
俺は頷いた。
本当は少し疲れている。
昨日の戦闘の疲れがまだ残っていた。
肩が重い。
でも弱音は吐けない。
正午が近づく。
太陽が真上に来た。
雪の反射が眩しい。
その時だ。
地面が揺れた。
小さく、でも確かに。
足元の雪が震える。
「何だ?」
ダリウスが立ち止まる。
また揺れた。
今度は大きい。
岩が崩れる音が遠くで響く。
「地震か?」
ミラが俺の腕を掴む。
「いや」
クリスが険しい顔をする。
剣に手をかけた。
「これは」
三度目の揺れ。
さらに強い。
俺たちはバランスを崩しそうになる。
そして、聞こえた。
咆哮だ。
遠くから。
山全体を震わせる、巨大な咆哮。
空気が振動する。
耳が痛い。
心臓が跳ねた。
「まさか」
ダリウスの声が震える。
山の頂上方向を見上げる。
何かが動いた。
巨大な影だ。
それは山よりも大きかった。
銀白色の何かが、空へ飛び上がる。
翼が広がった。
一枚の翼だけで、森を覆うほどの大きさだ。
「グラナドス」
クリスが呟く。
竜だ。
全長は、建物何棟分だろうか。
いや、そんな比較では足りない。
空そのものが、竜の影に覆われた。
鱗が陽光を反射する。
銀色の輝きが目を刺す。
翼の一振りで、暴風が吹き下ろす。
俺たちは岩陰に身を隠した。
風圧で吹き飛ばされそうになる。
「でかい」
ダリウスが呻く。
顔が青い。
「これが古代竜」
ミラの手が震えている。
グラナドスは咆哮する。
もう一度、山を震わせる叫び。
その声は、怒りに満ちていた。
いや、違う。
苦しみだ。
竜は苦しんでいる。
「封印が弱まって、狂暴化してる」
クリスが言った。
目を細めて竜を追う。
グラナドスは山の反対側へ飛んでいく。
巨大な体が徐々に小さくなる。
それでも、存在感は消えない。
やがて竜は視界から消えた。
沈黙。
誰も動けない。
誰も喋れない。
ようやく、ダリウスが口を開く。
「マジで、アレと戦うのか?」
声が裏返っている。
「そうよ」
クリスが立ち上がった。
剣を握り直す。
「でも、やらなきゃいけない」
ミラが深呼吸する。
震えを抑えようとしている。
「アクセルさんのデバフがあれば」
彼女が俺を見る。
俺のデバフ。
本当に効くのか?
あんな巨大な相手に。
でも、昨日の遺跡で見た壁画を思い出す。
累積する弱体化。
対象が強いほど効果が増大する。
それが俺のスキルの本質だった。
「試してみるか」
俺は岩場を見る。
道の先に、大きな岩が転がっている。
直径三メートルほど。
このまま進むには邪魔だ。
「あの岩で」
俺は手を向けた。
「【弱体化】」
魔力が流れる。
いつもと同じ感覚。
でも、何かが違う。
岩に魔法陣が浮かぶ。
光が岩を包む。
そして。
システムの通知が頭に響いた。
『対象の強度が低すぎます。効果が最小化されました』
岩は少しだけ崩れた。
表面が砂のようにボロボロと落ちる。
でもそれだけだ。
「やはり」
俺は拳を握る。
「強敵ほど効く」
雑魚モンスターには効果が薄い。
普通の岩にも効果が薄い。
でも、グラナドス相手なら。
「もっと強力な効果が出る」
クリスが頷く。
「あなたのスキルは、対ボス用なのよ」
彼女は俺の肩に手を置いた。
「だから大丈夫」
その言葉が、少し心を軽くする。
俺たちはさらに登った。
山道は険しさを増す。
風が強くなってきた。
雪が舞い始める。
吹雪だ。
「急ごう」
クリスが先を急ぐ。
一時間ほど歩いた。
息が荒い。
足が重い。
「あそこ」
ダリウスが指差す。
岩壁に巨大な穴が開いていた。
高さ十メートルはある。
幅も同じくらいだ。
竜の巣だ。
入口から冷気が流れ出ている。
氷の臭い。
そして、硫黄の臭い。
「ここが巣ね」
クリスが剣を抜く。
俺たちは入口の前で立ち止まる。
中は暗い。
奥から、何かの気配がする。
グラナドスは中にいるのか?
それとも、まだ外を飛んでいるのか?
「準備を整えましょう」
ミラが荷物を降ろす。
「今日はここで休んで」
彼女が続ける。
「明日、中に入りましょう」
ダリウスが肩を回す。
「昨日の戦闘の疲れが残ってる」
正直な声だ。
クリスも頷いた。
「そうね。万全の状態で挑みたい」
俺たちは巣の入口から少し離れた岩陰に陣取る。
風を避けられる場所だ。
ミラが火を起こす。
小さな炎が温かい。
俺は巣の入口を見つめた。
暗闇の奥に、何がいるのか。
グラナドス。
あの巨大な竜。
本当に勝てるのか?
不安が胸をよぎる。
でも同時に、決意もある。
俺はデバフ使いだ。
追放されて、無能と呼ばれた。
でも今、俺の力が必要とされている。
封印を守るために。
仲間を守るために。
「アクセル」
クリスが声をかける。
「明日、よろしくね」
彼女の目が真っ直ぐだ。
信頼が込められている。
「ああ」
俺は頷いた。
「任せてくれ」
夜が訪れる。
雪が静かに降り続ける。
明日、俺たちは竜の巣に入る。
戦いが始まる。
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