追放されたデバフ使いが実は対ボス最終兵器でした〜「雑魚にすら効かない」という理由で捨てられたけど、竜も魔王も無力化できます〜

チャビューヘ

文字の大きさ
29 / 58

第29話 【前哨戦】

しおりを挟む
 第29話 【前哨戦ゼンショウセン

 夜明けの光が山肌を照らした。

 吹雪は止んでいる。

 薄い雲が空を覆うが、視界は悪くない。

 俺たちは野営地の荷物をまとめた。

「準備はいい?」

 クリスが全員を見渡す。

 ダリウスが剣を担ぎ直した。

「ああ、いつでも」

 ミラがツエを握りしめる。

「私も、大丈夫です」

 俺は自分の装備を確認した。

 魔力は十分に回復している。

 体調も悪くない。

「行こう」

 クリスが歩き出す。

 竜の巣の入口が、目の前にある。

 巨大な穴だ。

 高さは十メートル以上。

 幅も同じくらいある。

 中から冷気が流れ出ていた。

 氷の臭いと、硫黄の臭い。

「ここが巣ね」

 クリスが剣を抜く。

 俺たちも武器を構えた。

 一歩、また一歩。

 暗闇の中へ進む。

 足元に氷柱の破片が散らばっている。

 壁は滑らかな氷だ。

 天井から冷たいシズクが落ちる。

「静かね」

 クリスがツブヤく。

 確かに。

 物音ひとつしない。

 気配すらない。

 奥へ進むほど、暗くなる。

 ミラがツエの先に光を灯した。

 淡い光が洞窟を照らす。

「ありがとう」

 俺が言うと、彼女はウナズいた。

 さらに五分ほど歩く。

 洞窟が開けた。

 広い空間だ。

 氷の柱が何本も立っている。

「ここは……」

 ダリウスが辺りを見回す。

 その時だ。

 空気が震えた。

 頭上から、何かが降ってくる。

「上だ!」

 クリスが叫ぶ。

 三つの影が天井から落下してきた。

 翼を広げて着地する。

 フロストドラゴンリットだ。

 全長五メートルほどの竜。

 銀白色のウロコが光を反射する。

 鋭い牙をき出しにしている。

 三体が、俺たちを囲むように配置した。

 正面に一体。

 左右に一体ずつ。

「子竜か!」

 ダリウスが盾を構える。

「油断しないで!」

 クリスが警告する。

「レベル50はある!」

 三体が同時に咆哮ホウコウした。

 耳が痛い。

 洞窟全体が震える。

 右側の竜が突進してきた。

 速い。

 ダリウスが盾で受け止める。

 ガキィンと金属音が響いた。

「重てえ!」

 ダリウスが押される。

 左側の竜も動き出す。

 クリスが迎撃に入った。

 剣がヒラメく。

 竜のウロコに傷をつけるが、浅い。

「硬いわ!」

 クリスが舌打ちする。

 正面の竜が俺に視線を向けた。

 狙いが定まる。

 まずい。

 デバフを使うしかない。

「【範囲弱体化】!」

 魔力を放出する。

 光の輪が三体すべてを包んだ。

 竜たちの動きが変わる。

 明らかに鈍くなった。

 システムの通知が頭に響く。

『防御力-70%、速度-70%』

「効いてる!」

 ミラが声を上げる。

 ダリウスが押し返した。

「今だ!」

 盾で竜を弾き飛ばす。

 そして剣を振り下ろした。

 竜の首筋に刃が食い込む。

 悲鳴。

 一体目が倒れた。

「よし、一体!」

 残り二体。

 クリスが左の竜に斬りかかる。

 デバフで弱った竜は、避けきれない。

 剣が脇腹を切り裂いた。

 深い傷だ。

 竜がヒルむ。

 クリスは追撃を加える。

 連続で斬撃をタタき込んだ。

 二体目が崩れ落ちる。

「残り一体!」

 ダリウスが叫ぶ。

 正面の竜が、俺をニラんでいる。

 牙をく。

 氷のブレスを吐く構えだ。

 まずい。

「アクセル、避けろ!」

 クリスの声が遠い。

 竜の喉が膨らむ。

 氷のブレスが来る。

 足が、動かない。

 その瞬間だった。

 誰かが俺の前に飛び出した。

 ミラだ。

 ツエを構えて、防御魔法を展開する。

 氷のブレスが彼女を直撃した。

 光の障壁が砕ける。

 ミラの体が吹き飛ばされた。

「ミラ!」

 俺は叫んだ。

 彼女は地面に倒れる。

 肩から血が流れている。

 軽傷だが、痛いはずだ。

 視界が赤く染まる。

 怒りが、込み上げてくる。

 竜が、ミラを傷つけた。

 許せない。

 俺は竜に手を向けた。

「【弱体化】!」

 魔力を放つ。

 さらに続ける。

「【弱体化】!」

 竜の動きがさらに鈍る。

 二回のデバフが重なった。

 竜が完全に止まる。

 空中で硬直している。

 その時、俺は気づいた。

 デバフが、ツナがっている。

 まるで鎖のように。

 一つが次を強めている。

 そんな感覚が、確かにあった。

「待てよ」

 俺はツブヤく。

「今、デバフがツナがった……」

 ステータスを確認する。

 目を疑った。

「一つが、次を強めている……?」

 俺の声が震える。

 信じられない。

 でも、現実だ。

 竜は完全に動けなくなっている。

「おい、何だこりゃ!」

 ダリウスが驚いている。

「竜が、止まってる!」

「今よ、ダリウス!」

 クリスが叫ぶ。

 ダリウスが駆ける。

 剣を振り上げた。

 竜の首に刃が突き刺さる。

 三体目が崩れ落ちた。

 静寂。

 戦闘が終わった。

 俺は膝をつく。

 息が荒い。

 魔力を使いすぎた。

「ミラ!」

 俺はミラに駆け寄る。

 彼女は地面に座り込んでいる。

 肩から血がニジんでいた。

「大丈夫か!」

「は、はい……」

 ミラが答える。

 顔が少し青い。

「すまない、俺が……」

 言葉が詰まる。

 俺をカバって、彼女は傷ついた。

「動かないでください」

 ミラが自分でツエを構える。

 治療魔法を発動した。

 温かい光が肩を包む。

 傷が徐々に塞がっていく。

「自分で治療できるのか」

 俺が聞くと、彼女はウナズいた。

「これくらい、なら」

 でも、手が震えている。

 まだ痛いはずだ。

「俺が……俺のせいで」

「違います」

 ミラが俺を見た。

 目が真っ直ぐだ。

「アクセルさんを守れて、良かった」

 彼女は微笑む。

 いつもより、少しだけホホが赤い。

 俺も、なぜか視線を逸らした。

「ありがとう」

 それしか言えない。

 ミラは小さくウナズいた。

「アクセル、さっきのデバフは何だ?」

 クリスが俺に近づく。

「竜が完全に止まってた」

「俺も、よく分からない」

 正直に答える。

「ただ、デバフを重ねたら……ツナがった」

ツナがった?」

 ダリウスが首を傾げる。

「ああ。一つが次を強めるような感覚があった」

 俺は自分の手を見る。

「効果が上がってた。でも思うように出来ない」

「……」

 クリスが目を見開く。

「それは……」

 彼女は言葉を探している。

「あなたのスキル、まだ隠された力があるのね」

「みたいだ」

 俺はウナズいた。

 新しい発見だ。

 デバフの連鎖。

 これが、俺の本当の力なのか。

「とにかく、休もう」

 クリスが言う。

「次は本番だ」

 俺たちは広間の隅で休憩を取った。

 ミラの傷も完全に治った。

 彼女は少し疲れた顔をしているが、大丈夫そうだ。

 俺は洞窟の奥を見つめる。

 暗闇の先に、何かがいる。

 グラナドスだ。

 古代竜が、俺たちを待っている。

 その時だった。

 洞窟の奥から、咆哮ホウコウが響いた。

 巨大な、圧倒的な咆哮ホウコウ

 子竜とは比べ物にならない。

 空気が震える。

 壁の氷が砕ける。

 ダリウスが立ち上がる。

「まさか……」

 クリスも剣を握り直した。

「グラナドスが、気づいた」

 ミラが俺の隣に立つ。

 手が、僅かに震えている。

 俺は深呼吸をした。

 魔力を整える。

 デバフの連鎖。

 この力が、竜に通じるのか。

 もうすぐ、分かる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

処理中です...