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第56話 レヴィアス戦②・カスケード中級版覚醒
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指先が、まだ熱い。
どれくらい戦っただろうか。
三十分か、それ以上か。
アクセルの視界が、揺れている。
範囲弱体化を何度放ったか、もう数えていなかった。
首飾りが、胸元で脈打っている。
水中呼吸の魔力が、少しずつ弱まっている気がした。
「アクセルさん! 右から来ます!」
セレナの声で体が動いた。
レヴィアスの尾が、水を裂いて迫る。
かわしきれない。
衝撃が体を貫いた。
水中を回転しながら、岩壁が近づいてくる。
ぶつかる直前、青い光が体を包んだ。
セレナの水魔法だ。
減速して、岩壁に背中をつけた。
痛い。だが、致命傷ではない。
ダリウスが隣に泳いできた。
右肩を押さえている。
先ほどの攻撃で、傷が開いたのだろう。
「くそっ、また助けられちまったじゃねぇか」
ダリウスが笑った。
だが、その笑顔からは余裕が消えていた。
「お互い様だ」
アクセルは周囲を見渡した。
ミラが、杖を胸に抱いて浮かんでいる。
顔色が青白い。
魔力の消耗が、限界に近づいているのだろう。
セレナは、まだ動いていた。
だが、いつもの明るさが消えている。
唇を噛みしめ、必死に魔力を練っている姿が痛々しかった。
* * *
レヴィアスが、再び動き出した。
巨大な体が、四人に向かってうねる。
鱗の隙間を、電撃が走っている。
「もう一発いくぜ!」
ダリウスが左手で斧を構えた。
右腕は動かない。
それでも、彼は前に出ようとしていた。
「ダリウスさん、無茶ですよ」
ミラが止めようとした。
だが、その声も弱々しい。
「無茶でも何でも、やるしかねぇだろ」
ダリウスが歯を食いしばった。
「こんなとこで、終われるかよ」
震える手で、斧を振りかぶる。
水の抵抗で、動きが遅い。
それでも、彼は諦めなかった。
「アイスジャベリン!」
ミラが最後の力を振り絞った。
氷の槍が、レヴィアスに向かって飛ぶ。
だが、浅い。
傷は浅かった。
レヴィアスは止まらない。
* * *
巨大な海蛇が、動きを止めた。
口が、ゆっくりと開いていく。
鱗の隙間から、青白い光が溢れ始める。
電撃が、体表を這い回っている。
「来ます!」
セレナが叫んだ。
その声には、隠しきれない恐怖があった。
「あれは、さっきと違う」
アクセルは感じていた。
先ほどのライトニングブレスとは、規模が違う。
水が、震えている。
「【絶対雷嵐】」
レヴィアスの声が、水中に響いた。
光が、溢れた。
視界が、白く染まる。
水中全体に、電撃が走った。
逃げ場など、どこにもなかった。
「アクアバリア!」
セレナが両手を突き出した。
青い障壁が、四人を包み込む。
電撃と障壁がぶつかった。
火花が、水中に散る。
セレナの腕が、震えていた。
歯を食いしばり、全身で魔力を絞り出している。
顔が苦悶に歪み、それでも両手を下ろさなかった。
障壁にヒビが入った。
一本。
二本。
三本。
亀裂が、蜘蛛の巣のように広がっていく。
「セレナさん!」
ミラが叫んだ。
「大丈夫、です」
セレナの声が、かすれていた。
「まだ」
障壁が、砕けた。
電撃が、四人を貫いた。
* * *
体が、痺れている。
アクセルは目を開けた。
首飾りが、熱く脈打っている。
水中呼吸の魔力が、かろうじて機能していた。
仲間を探した。
ダリウスが、岩に背をつけて動かない。
斧を握る手だけが、まだ離れていなかった。
ミラが、水中で漂っている。
意識はあるようだが、杖を構える力が残っていない。
セレナが、力なく沈んでいく。
アクセルは手を伸ばした。
セレナの腕を掴む。
彼女の目が、薄く開いた。
「私」
声が震えていた。
「みんなの役に、立てなかった」
いつもの笑顔が、完全に消えていた。
「バリア、もう出せません」
セレナの瞳から、涙が零れた。
水中で、すぐに消えていく。
レヴィアスが、ゆっくりと近づいてくる。
その目には、苦悩があった。
「まだ、立てるか」
声が、頭に響いた。
「お前の仲間は、もう動けぬようだが」
アクセルは唇を噛んだ。
仲間を守れない。
クリスがいれば、もう一人前衛がいた。
だが今、俺にできることは。
デバフだけだ。
まだ足りない。
もっと強く。
もっと広く。
指先の熱が、腕全体に広がっていく。
* * *
石碑の言葉が、頭をよぎった。
水を制する者、連鎖を極める。
流れは無限、呪いは波となり広がる。
嵐の中で感じたあの感覚。
水がデバフを運んでいた。
今、俺たちは水の中にいる。
体の奥で、何かが渦巻いた。
熱い。
まるで、溶岩が流れるような。
目を閉じた。
暗闇の中に、青い光が見えた。
水のように揺らめいている。
光の奥に、人影があった。
ローブを纏った魔法使いたち。
彼らが、静かにアクセルを見つめている。
「継承者よ」
声が響いた。
若い声、老いた声、無数の声が重なっている。
「我らは流水の連鎖術を極めし者」
百年前の記録。
最後の流水の連鎖術使い、アクアリウス・セージ。
彼の魂が、この技術とともに継承されてきたのだ。
「水は」
声が、静かに響いた。
「運ぶ」
それだけだった。
彼らは、それ以上何も言わなかった。
アクセルは理解した。
水がデバフを運ぶ。
一つの弱体化が、水を媒介にして広がり、次の弱体化を増幅する。
体が、その感覚を覚えていた。
意識が、現実に戻った。
* * *
アクセルは立ち上がった。
全身から、青い光が立ち上っている。
水のオーラだ。
周囲の水が、彼を中心にゆっくりと渦を巻き始めた。
体が動く。
痛みは残っている。
疲労も消えていない。
だが、新しい力が体の奥から湧き上がっていた。
「みんな」
アクセルの声が、水中に響いた。
時間を稼いでくれた仲間たちを見た。
「ありがとう。ここからが本番だ」
セレナが目を見開いた。
「アクセルさん、その光」
「見てろ」
アクセルは両手を前に突き出した。
水が、応えた。
「【弱体化】」
紫色の光が放たれた。
光は水中に溶け込み、波紋のように広がっていく。
レヴィアスの巨体を、光の波が包み込んだ。
「【弱体化】」
二発目。
光が、前の光と重なる。
水を媒介に、効果が増幅されていく。
レヴィアスの動きが、目に見えて鈍くなった。
「【弱体化】」
三発目。
光の波紋が、さらに深くレヴィアスに食い込んでいく。
「【弱体化】」
四発目。
鱗の輝きが、褪せ始めた。
「【弱体化】」
五発目。
巨大な体が、わずかに沈んだ。
「【弱体化】」
六発目。
電撃が、弱々しく明滅している。
「【弱体化】」
七発目。
レヴィアスの目から、光が薄れていく。
「【弱体化】」
八発目。
それが、今の俺の限界だった。
レヴィアスの全身に、青黒い紋様が浮かび上がった。
巨大な体が、ゆっくりと沈んでいく。
動きが、完全に止まった。
レヴィアスの目が、アクセルを見た。
「これが」
声に、驚嘆があった。
「流水の連鎖術の、完成形か」
アクセルは膝に手をついた。
息が荒い。
覚醒しても、疲労は消えない。
あと少し。
もう少しだけ、持ちこたえなければ。
顔を上げた。
「セレナ」
彼女の目に、光が戻っていた。
「今だ。総攻撃!」
セレナが、震える体で立ち上がった。
「はい!」
その声に、いつもの力強さが戻り始めていた。
ダリウスが、岩から体を起こした。
左手で斧を握りしめている。
その手は、まだ震えていた。
「待たせたな」
それでも、彼は笑った。
ミラが、杖を構え直した。
残った魔力を、すべてこの一撃に込める覚悟だった。
「いきましょう」
四人が、一斉に動き出した。
どれくらい戦っただろうか。
三十分か、それ以上か。
アクセルの視界が、揺れている。
範囲弱体化を何度放ったか、もう数えていなかった。
首飾りが、胸元で脈打っている。
水中呼吸の魔力が、少しずつ弱まっている気がした。
「アクセルさん! 右から来ます!」
セレナの声で体が動いた。
レヴィアスの尾が、水を裂いて迫る。
かわしきれない。
衝撃が体を貫いた。
水中を回転しながら、岩壁が近づいてくる。
ぶつかる直前、青い光が体を包んだ。
セレナの水魔法だ。
減速して、岩壁に背中をつけた。
痛い。だが、致命傷ではない。
ダリウスが隣に泳いできた。
右肩を押さえている。
先ほどの攻撃で、傷が開いたのだろう。
「くそっ、また助けられちまったじゃねぇか」
ダリウスが笑った。
だが、その笑顔からは余裕が消えていた。
「お互い様だ」
アクセルは周囲を見渡した。
ミラが、杖を胸に抱いて浮かんでいる。
顔色が青白い。
魔力の消耗が、限界に近づいているのだろう。
セレナは、まだ動いていた。
だが、いつもの明るさが消えている。
唇を噛みしめ、必死に魔力を練っている姿が痛々しかった。
* * *
レヴィアスが、再び動き出した。
巨大な体が、四人に向かってうねる。
鱗の隙間を、電撃が走っている。
「もう一発いくぜ!」
ダリウスが左手で斧を構えた。
右腕は動かない。
それでも、彼は前に出ようとしていた。
「ダリウスさん、無茶ですよ」
ミラが止めようとした。
だが、その声も弱々しい。
「無茶でも何でも、やるしかねぇだろ」
ダリウスが歯を食いしばった。
「こんなとこで、終われるかよ」
震える手で、斧を振りかぶる。
水の抵抗で、動きが遅い。
それでも、彼は諦めなかった。
「アイスジャベリン!」
ミラが最後の力を振り絞った。
氷の槍が、レヴィアスに向かって飛ぶ。
だが、浅い。
傷は浅かった。
レヴィアスは止まらない。
* * *
巨大な海蛇が、動きを止めた。
口が、ゆっくりと開いていく。
鱗の隙間から、青白い光が溢れ始める。
電撃が、体表を這い回っている。
「来ます!」
セレナが叫んだ。
その声には、隠しきれない恐怖があった。
「あれは、さっきと違う」
アクセルは感じていた。
先ほどのライトニングブレスとは、規模が違う。
水が、震えている。
「【絶対雷嵐】」
レヴィアスの声が、水中に響いた。
光が、溢れた。
視界が、白く染まる。
水中全体に、電撃が走った。
逃げ場など、どこにもなかった。
「アクアバリア!」
セレナが両手を突き出した。
青い障壁が、四人を包み込む。
電撃と障壁がぶつかった。
火花が、水中に散る。
セレナの腕が、震えていた。
歯を食いしばり、全身で魔力を絞り出している。
顔が苦悶に歪み、それでも両手を下ろさなかった。
障壁にヒビが入った。
一本。
二本。
三本。
亀裂が、蜘蛛の巣のように広がっていく。
「セレナさん!」
ミラが叫んだ。
「大丈夫、です」
セレナの声が、かすれていた。
「まだ」
障壁が、砕けた。
電撃が、四人を貫いた。
* * *
体が、痺れている。
アクセルは目を開けた。
首飾りが、熱く脈打っている。
水中呼吸の魔力が、かろうじて機能していた。
仲間を探した。
ダリウスが、岩に背をつけて動かない。
斧を握る手だけが、まだ離れていなかった。
ミラが、水中で漂っている。
意識はあるようだが、杖を構える力が残っていない。
セレナが、力なく沈んでいく。
アクセルは手を伸ばした。
セレナの腕を掴む。
彼女の目が、薄く開いた。
「私」
声が震えていた。
「みんなの役に、立てなかった」
いつもの笑顔が、完全に消えていた。
「バリア、もう出せません」
セレナの瞳から、涙が零れた。
水中で、すぐに消えていく。
レヴィアスが、ゆっくりと近づいてくる。
その目には、苦悩があった。
「まだ、立てるか」
声が、頭に響いた。
「お前の仲間は、もう動けぬようだが」
アクセルは唇を噛んだ。
仲間を守れない。
クリスがいれば、もう一人前衛がいた。
だが今、俺にできることは。
デバフだけだ。
まだ足りない。
もっと強く。
もっと広く。
指先の熱が、腕全体に広がっていく。
* * *
石碑の言葉が、頭をよぎった。
水を制する者、連鎖を極める。
流れは無限、呪いは波となり広がる。
嵐の中で感じたあの感覚。
水がデバフを運んでいた。
今、俺たちは水の中にいる。
体の奥で、何かが渦巻いた。
熱い。
まるで、溶岩が流れるような。
目を閉じた。
暗闇の中に、青い光が見えた。
水のように揺らめいている。
光の奥に、人影があった。
ローブを纏った魔法使いたち。
彼らが、静かにアクセルを見つめている。
「継承者よ」
声が響いた。
若い声、老いた声、無数の声が重なっている。
「我らは流水の連鎖術を極めし者」
百年前の記録。
最後の流水の連鎖術使い、アクアリウス・セージ。
彼の魂が、この技術とともに継承されてきたのだ。
「水は」
声が、静かに響いた。
「運ぶ」
それだけだった。
彼らは、それ以上何も言わなかった。
アクセルは理解した。
水がデバフを運ぶ。
一つの弱体化が、水を媒介にして広がり、次の弱体化を増幅する。
体が、その感覚を覚えていた。
意識が、現実に戻った。
* * *
アクセルは立ち上がった。
全身から、青い光が立ち上っている。
水のオーラだ。
周囲の水が、彼を中心にゆっくりと渦を巻き始めた。
体が動く。
痛みは残っている。
疲労も消えていない。
だが、新しい力が体の奥から湧き上がっていた。
「みんな」
アクセルの声が、水中に響いた。
時間を稼いでくれた仲間たちを見た。
「ありがとう。ここからが本番だ」
セレナが目を見開いた。
「アクセルさん、その光」
「見てろ」
アクセルは両手を前に突き出した。
水が、応えた。
「【弱体化】」
紫色の光が放たれた。
光は水中に溶け込み、波紋のように広がっていく。
レヴィアスの巨体を、光の波が包み込んだ。
「【弱体化】」
二発目。
光が、前の光と重なる。
水を媒介に、効果が増幅されていく。
レヴィアスの動きが、目に見えて鈍くなった。
「【弱体化】」
三発目。
光の波紋が、さらに深くレヴィアスに食い込んでいく。
「【弱体化】」
四発目。
鱗の輝きが、褪せ始めた。
「【弱体化】」
五発目。
巨大な体が、わずかに沈んだ。
「【弱体化】」
六発目。
電撃が、弱々しく明滅している。
「【弱体化】」
七発目。
レヴィアスの目から、光が薄れていく。
「【弱体化】」
八発目。
それが、今の俺の限界だった。
レヴィアスの全身に、青黒い紋様が浮かび上がった。
巨大な体が、ゆっくりと沈んでいく。
動きが、完全に止まった。
レヴィアスの目が、アクセルを見た。
「これが」
声に、驚嘆があった。
「流水の連鎖術の、完成形か」
アクセルは膝に手をついた。
息が荒い。
覚醒しても、疲労は消えない。
あと少し。
もう少しだけ、持ちこたえなければ。
顔を上げた。
「セレナ」
彼女の目に、光が戻っていた。
「今だ。総攻撃!」
セレナが、震える体で立ち上がった。
「はい!」
その声に、いつもの力強さが戻り始めていた。
ダリウスが、岩から体を起こした。
左手で斧を握りしめている。
その手は、まだ震えていた。
「待たせたな」
それでも、彼は笑った。
ミラが、杖を構え直した。
残った魔力を、すべてこの一撃に込める覚悟だった。
「いきましょう」
四人が、一斉に動き出した。
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