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第五話「断罪の天秤」②
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
資料20:「忘れられた諸島」現地調査報告(聖暦1305年10月)
【調査者】帝国大学第四史料編纂室 ヴィクトル・ノイマン
【調査期間】聖暦1305年10月1日~10月15日
【調査地】忘れられた諸島・東端の島(現地名:ナーディア島)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
以下は、私が直接「忘れられた諸島」を訪れ、現地調査を行った記録である。
この調査は、異端審問の通達を受ける前——まだ自由に動けた頃に行った。
今となっては、この島に渡ることさえ不可能だろう。
記録を残せるうちに、すべてを書き残しておく。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【調査報告】
■ 島の概要
ナーディア島は、帝国の地図には載っていない。
「忘れられた諸島」の東端に位置する小さな島だ。
人口は約200人。漁業と小規模な農業で生計を立てている。
島民は、帝国の存在をほとんど知らない。
「大陸」からの訪問者は、数十年に一度あるかないか。
彼らにとって、「聖女」も「魔王」も、遠い御伽噺に過ぎない。
私が「聖女の話を聞きたい」と言っても、誰も知らなかった。
だが、「マリアおばあちゃんの話なら知ってる」と言う者がいた。
■ 「マリアとヨハン」の伝承
島の長老(推定年齢90歳以上)から聞き取りを行った。
長老曰く——
「マリアおばあちゃんと、ヨハンおじいちゃん?
ああ、知ってるよ。
この島に代々伝わる話だからね。
ずっと昔——私のひいひいひいおばあちゃんの、そのまたずっと前の時代に、この島に流れ着いたらしい。
女の人は、銀色の髪をしていた。
男の人は、片足がなかった。
二人とも、ぼろぼろの姿で、死にかけていたって。
でも、島の人たちが助けて、畑を与えた。
それから——ずっと、この島で暮らしたんだ。
マリアおばあちゃんは、言葉が不自由だった。
島の言葉を覚えるのに、何年もかかったって。
でも、優しい人だった。
子供たちに絵を描いて見せたり、変わった遊びを教えたり。
ヨハンおじいちゃんは、弓が上手かった。
片足なのに、島一番の猟師だった。
鳥を射るのが、ものすごく上手かったんだ。
二人は、子供を作らなかった。
できなかったのか、作らなかったのか——分からない。
でも、島の子供たちを可愛がってくれた。
二人は、いつも一緒だった。
畑仕事も、漁も、何をするにも一緒。
喧嘩しているところを、誰も見たことがないって。
マリアおばあちゃんが寝たきりになっても、ヨハンおじいちゃんは毎日、花を持っていったそうだ。
野の花を摘んで、枕元に飾るんだ。
雨の日も、嵐の日も、休まなかった——って、言い伝えられている。
マリアおばあちゃんが先に逝った。
ヨハンおじいちゃんは、その三日後に死んだ。
眠るように、静かに。
二人は、一緒の墓に埋められた。
島の丘の上——海が見える場所に。
墓石には、変わった文字が刻まれている。
誰も読めない文字。
でも、「愛の言葉」だって、言い伝えられている。
ヨハンおじいちゃんが、マリアおばあちゃんの言葉で刻んだんだって。
300年も前の話だけどね。
この島では、ずっと語り継がれてきたんだ」
■ 墓石の調査
長老の案内で、丘の上の墓地を訪れた。
海が見える、小さな丘。
名前のない墓石が、ひっそりと立っていた。
墓石には、確かに文字が刻まれていた。
——異界の文字だ。
私は、震える手で拓本を取った。
刻まれていたのは、一篇の詩。
エルザの母語——異界の言葉で書かれた、愛の詩だった。
■ 発見された生活痕跡
墓の近くに、崩れかけた小屋の跡があった。
長老曰く、「マリアとヨハンの家の跡」だという。
発掘調査の結果、以下のものを発見した。
(1) 農機具の残骸
鋤、鍬、鎌など。
300年の風化で朽ちかけているが、形は残っていた。
(2) 弓の残骸
複合弓の破片。
帝国騎士団が使う型に似ている。
(3) 絵の断片
壁に描かれた絵の痕跡。
——下手な絵だった。
鳥、花、月、そして——二人の人物。
手を繋いで、海を見ている。
(4) 貝殻の首飾り
粗末だが、丁寧に作られている。
おそらく、ゼギルがエルザに贈ったものだろう。
■ 調査所見
彼らは、この島で約50年を過ごしたと推定される。
聖暦1003年12月に逃亡し、1050年代に死亡。
その間——ただの農夫と、その妻として生きた。
「聖女」でも「魔王」でもなく。
「マリア」と「ヨハン」として。
子供を残さなかったのは、意図的だったのかもしれない。
自分たちの秘密を、誰にも背負わせないために。
彼らは、最後まで沈黙を守った。
世界を救った英雄として称えられることも、汚名を雪ぐこともなく。
ただ——静かに、穏やかに、二人で生きた。
それが、彼らの選んだ「幸せ」だった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
編纂者注記
島から帰る船の中で、私は何度も拓本を見返した。
異界の文字。
私には読めない言葉。
帰国後、私は異界言語の専門家に翻訳を依頼した。
帝国でただ一人、異界の言葉を解読できる学者——ヘルマン・シュルツ老教授。
教授は、拓本を見て、長い間黙っていた。
そして、静かに言った。
「……美しい詩だ」
次の資料は、その翻訳だ。
聖女エルザが、この世界に残した——最後の言葉。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
資料21:無名の墓石に刻まれた詩(翻訳・完全版)
【原文】異界の言葉(ナーディア島墓石より拓本採取)
【翻訳】異界言語学者ヘルマン・シュルツ
【備考】聖女エルザの筆跡と一致(筆跡鑑定済み)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
この詩は、墓石の表と裏に刻まれている。
表に女性から男性へ。
裏に男性から女性へ。
異界の言葉と、この世界の言葉が混ざっている。
エルザの母語と、ゼギルに教わった言葉。
二人の「共通語」で書かれた詩だ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【墓石・表面——エルザからゼギルへ】
私は、遠い場所から来た。
言葉も、空も、月の形も違う場所から。
暗い部屋で、泣いていた。
「かえりたい」と、壁に書いた。
でも、あなたが来た。
下手な絵を描いて、世界を見せてくれた。
鳥の名前を教えてくれた。
花の名前を教えてくれた。
空の色を、教えてくれた。
私の言葉を、覚えようとしてくれた。
「ありがとう」を、何度も練習していた。
——発音、すごく下手だった。
あなたは、すべてを捨てた。
名前も、名誉も、足も。
私のために。
「なぜ」と聞いたら、あなたは言った。
「好きだから」と。
それだけ。
それだけで、十分だった。
この島で、50年。
毎日、あなたは花を摘んできた。
雨の日も、嵐の日も。
——あなたの足は、一本しかないのに。
私は、世界を救わなかった。
でも、あなたに会えた。
それが、私の——すべて。
先に逝くね。
少しだけ、待っていて。
向こうで、また会おう。
今度は——私が、あなたの世界を案内する。
ありがとう。
愛してる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【墓石・裏面——ゼギルからエルザへ】
俺は、絵が下手だ。
言葉も下手だ。
お前の言葉は、何度練習しても上手く言えない。
でも、お前は笑ってくれた。
俺の下手な絵を見て。
俺の下手な言葉を聞いて。
「嬉しい」と、言ってくれた。
——それだけで、十分だった。
俺は、騎士だった。
名誉と忠誠が、すべてだった。
でも、お前に会って——変わった。
お前のためなら、何でも捨てられた。
名前も、地位も、足も。
後悔は、一度もない。
「魔王」と呼ばれた。
世界中に、憎まれた。
でも——お前だけは、俺の名前を呼んでくれた。
「ゼギル」と。
それだけで、生きていけた。
この島で過ごした50年。
毎日、お前の隣にいられた。
それ以上の幸せを、俺は知らない。
お前は、先に逝った。
約束通り——少しだけ待っていてくれ。
すぐに、追いかける。
お前の世界を、見せてくれ。
今度は、俺が——お前に教わる番だ。
ありがとう。
愛してる。
——ゼギル・ヴァルトシュタイン
「マリア」の夫、「ヨハン」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
編纂者注記
翻訳を読み終えたとき、私は涙を堪えられなかった。
これが——「真実」だ。
教会が作り上げた「聖女伝説」ではない。
「魔王の恐怖」でもない。
ただ、愛し合った二人がいた。
すべてを捨てて、逃げた二人がいた。
50年間、手を繋いで生きた二人がいた。
彼らは、世界を救わなかった。
だが——互いの世界を、救い合った。
それは、間違いだっただろうか。
歴史の前で、個人の愛など——取るに足らないものだろうか。
私には、分からない。
ただ、一つだけ確かなことがある。
この墓石の前で、私は誓った。
彼らの物語を、世界に伝えると。
たとえ——私が「異端者」と呼ばれようとも。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
資料20:「忘れられた諸島」現地調査報告(聖暦1305年10月)
【調査者】帝国大学第四史料編纂室 ヴィクトル・ノイマン
【調査期間】聖暦1305年10月1日~10月15日
【調査地】忘れられた諸島・東端の島(現地名:ナーディア島)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
以下は、私が直接「忘れられた諸島」を訪れ、現地調査を行った記録である。
この調査は、異端審問の通達を受ける前——まだ自由に動けた頃に行った。
今となっては、この島に渡ることさえ不可能だろう。
記録を残せるうちに、すべてを書き残しておく。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【調査報告】
■ 島の概要
ナーディア島は、帝国の地図には載っていない。
「忘れられた諸島」の東端に位置する小さな島だ。
人口は約200人。漁業と小規模な農業で生計を立てている。
島民は、帝国の存在をほとんど知らない。
「大陸」からの訪問者は、数十年に一度あるかないか。
彼らにとって、「聖女」も「魔王」も、遠い御伽噺に過ぎない。
私が「聖女の話を聞きたい」と言っても、誰も知らなかった。
だが、「マリアおばあちゃんの話なら知ってる」と言う者がいた。
■ 「マリアとヨハン」の伝承
島の長老(推定年齢90歳以上)から聞き取りを行った。
長老曰く——
「マリアおばあちゃんと、ヨハンおじいちゃん?
ああ、知ってるよ。
この島に代々伝わる話だからね。
ずっと昔——私のひいひいひいおばあちゃんの、そのまたずっと前の時代に、この島に流れ着いたらしい。
女の人は、銀色の髪をしていた。
男の人は、片足がなかった。
二人とも、ぼろぼろの姿で、死にかけていたって。
でも、島の人たちが助けて、畑を与えた。
それから——ずっと、この島で暮らしたんだ。
マリアおばあちゃんは、言葉が不自由だった。
島の言葉を覚えるのに、何年もかかったって。
でも、優しい人だった。
子供たちに絵を描いて見せたり、変わった遊びを教えたり。
ヨハンおじいちゃんは、弓が上手かった。
片足なのに、島一番の猟師だった。
鳥を射るのが、ものすごく上手かったんだ。
二人は、子供を作らなかった。
できなかったのか、作らなかったのか——分からない。
でも、島の子供たちを可愛がってくれた。
二人は、いつも一緒だった。
畑仕事も、漁も、何をするにも一緒。
喧嘩しているところを、誰も見たことがないって。
マリアおばあちゃんが寝たきりになっても、ヨハンおじいちゃんは毎日、花を持っていったそうだ。
野の花を摘んで、枕元に飾るんだ。
雨の日も、嵐の日も、休まなかった——って、言い伝えられている。
マリアおばあちゃんが先に逝った。
ヨハンおじいちゃんは、その三日後に死んだ。
眠るように、静かに。
二人は、一緒の墓に埋められた。
島の丘の上——海が見える場所に。
墓石には、変わった文字が刻まれている。
誰も読めない文字。
でも、「愛の言葉」だって、言い伝えられている。
ヨハンおじいちゃんが、マリアおばあちゃんの言葉で刻んだんだって。
300年も前の話だけどね。
この島では、ずっと語り継がれてきたんだ」
■ 墓石の調査
長老の案内で、丘の上の墓地を訪れた。
海が見える、小さな丘。
名前のない墓石が、ひっそりと立っていた。
墓石には、確かに文字が刻まれていた。
——異界の文字だ。
私は、震える手で拓本を取った。
刻まれていたのは、一篇の詩。
エルザの母語——異界の言葉で書かれた、愛の詩だった。
■ 発見された生活痕跡
墓の近くに、崩れかけた小屋の跡があった。
長老曰く、「マリアとヨハンの家の跡」だという。
発掘調査の結果、以下のものを発見した。
(1) 農機具の残骸
鋤、鍬、鎌など。
300年の風化で朽ちかけているが、形は残っていた。
(2) 弓の残骸
複合弓の破片。
帝国騎士団が使う型に似ている。
(3) 絵の断片
壁に描かれた絵の痕跡。
——下手な絵だった。
鳥、花、月、そして——二人の人物。
手を繋いで、海を見ている。
(4) 貝殻の首飾り
粗末だが、丁寧に作られている。
おそらく、ゼギルがエルザに贈ったものだろう。
■ 調査所見
彼らは、この島で約50年を過ごしたと推定される。
聖暦1003年12月に逃亡し、1050年代に死亡。
その間——ただの農夫と、その妻として生きた。
「聖女」でも「魔王」でもなく。
「マリア」と「ヨハン」として。
子供を残さなかったのは、意図的だったのかもしれない。
自分たちの秘密を、誰にも背負わせないために。
彼らは、最後まで沈黙を守った。
世界を救った英雄として称えられることも、汚名を雪ぐこともなく。
ただ——静かに、穏やかに、二人で生きた。
それが、彼らの選んだ「幸せ」だった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
編纂者注記
島から帰る船の中で、私は何度も拓本を見返した。
異界の文字。
私には読めない言葉。
帰国後、私は異界言語の専門家に翻訳を依頼した。
帝国でただ一人、異界の言葉を解読できる学者——ヘルマン・シュルツ老教授。
教授は、拓本を見て、長い間黙っていた。
そして、静かに言った。
「……美しい詩だ」
次の資料は、その翻訳だ。
聖女エルザが、この世界に残した——最後の言葉。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
資料21:無名の墓石に刻まれた詩(翻訳・完全版)
【原文】異界の言葉(ナーディア島墓石より拓本採取)
【翻訳】異界言語学者ヘルマン・シュルツ
【備考】聖女エルザの筆跡と一致(筆跡鑑定済み)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
この詩は、墓石の表と裏に刻まれている。
表に女性から男性へ。
裏に男性から女性へ。
異界の言葉と、この世界の言葉が混ざっている。
エルザの母語と、ゼギルに教わった言葉。
二人の「共通語」で書かれた詩だ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【墓石・表面——エルザからゼギルへ】
私は、遠い場所から来た。
言葉も、空も、月の形も違う場所から。
暗い部屋で、泣いていた。
「かえりたい」と、壁に書いた。
でも、あなたが来た。
下手な絵を描いて、世界を見せてくれた。
鳥の名前を教えてくれた。
花の名前を教えてくれた。
空の色を、教えてくれた。
私の言葉を、覚えようとしてくれた。
「ありがとう」を、何度も練習していた。
——発音、すごく下手だった。
あなたは、すべてを捨てた。
名前も、名誉も、足も。
私のために。
「なぜ」と聞いたら、あなたは言った。
「好きだから」と。
それだけ。
それだけで、十分だった。
この島で、50年。
毎日、あなたは花を摘んできた。
雨の日も、嵐の日も。
——あなたの足は、一本しかないのに。
私は、世界を救わなかった。
でも、あなたに会えた。
それが、私の——すべて。
先に逝くね。
少しだけ、待っていて。
向こうで、また会おう。
今度は——私が、あなたの世界を案内する。
ありがとう。
愛してる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【墓石・裏面——ゼギルからエルザへ】
俺は、絵が下手だ。
言葉も下手だ。
お前の言葉は、何度練習しても上手く言えない。
でも、お前は笑ってくれた。
俺の下手な絵を見て。
俺の下手な言葉を聞いて。
「嬉しい」と、言ってくれた。
——それだけで、十分だった。
俺は、騎士だった。
名誉と忠誠が、すべてだった。
でも、お前に会って——変わった。
お前のためなら、何でも捨てられた。
名前も、地位も、足も。
後悔は、一度もない。
「魔王」と呼ばれた。
世界中に、憎まれた。
でも——お前だけは、俺の名前を呼んでくれた。
「ゼギル」と。
それだけで、生きていけた。
この島で過ごした50年。
毎日、お前の隣にいられた。
それ以上の幸せを、俺は知らない。
お前は、先に逝った。
約束通り——少しだけ待っていてくれ。
すぐに、追いかける。
お前の世界を、見せてくれ。
今度は、俺が——お前に教わる番だ。
ありがとう。
愛してる。
——ゼギル・ヴァルトシュタイン
「マリア」の夫、「ヨハン」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
編纂者注記
翻訳を読み終えたとき、私は涙を堪えられなかった。
これが——「真実」だ。
教会が作り上げた「聖女伝説」ではない。
「魔王の恐怖」でもない。
ただ、愛し合った二人がいた。
すべてを捨てて、逃げた二人がいた。
50年間、手を繋いで生きた二人がいた。
彼らは、世界を救わなかった。
だが——互いの世界を、救い合った。
それは、間違いだっただろうか。
歴史の前で、個人の愛など——取るに足らないものだろうか。
私には、分からない。
ただ、一つだけ確かなことがある。
この墓石の前で、私は誓った。
彼らの物語を、世界に伝えると。
たとえ——私が「異端者」と呼ばれようとも。
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