【完結】魔王とは、聖女を愛した騎士の、もう一つの名前だった〜偽りの聖戦と、世界を欺いた二人の逃亡〜
聖剣は、魔王を殺していない。300年間信じられてきた聖女伝説の根幹を揺るがす真実が、今、暴かれる。
帝国大学の主任研究員ヴィクトル・ノイマンが「奈落の書庫」から発掘した決定的な証拠群は、公式の歴史に致命的な亀裂を入れる。聖女エルザは異界から召喚された直後、大聖堂ではなく地下牢に軟禁され、「魔力の器」として命を搾取される運命にあった。彼女を唯一救おうとしたのは、後に「魔王」と呼ばれる騎士ゼギルである。
二人は、パンの包み紙に絵や文字を刻んで言葉を超えて愛を通わせた。ゼギルは聖女の命を救うため、彼女の首の魔力吸引の首輪を断ち切ろうとしたが失敗し、聖女暗殺未遂の罪で「魔王」に仕立て上げられる(資料5, 6)。教会は直後、聖女が真実を漏らすことを恐れ、暗殺ギルドに「聖女の始末」を依頼していた(資料7)。
しかし、彼らの物語は終わらなかった。聖暦1000年から始まった「聖戦」は、実は魔王軍が討伐軍の作戦をすべて把握し、聖女が一時的に軟禁状態から離脱して魔王と密会するための「茶番」だった。彼らは「聖戦」の裏側で、ベルゲン渓谷の廃村の風車小屋で85回も密会し、愛を育んだ。
聖暦1003年の「最終決戦」は、相討ちによる英雄的殉教という公式記録とは異なる結末を迎えた。魔導分析の結果、聖なる炎ではなく自爆系魔法で「死んだふり」をし、転移魔法で脱出していたことが判明。ゼギルは片足を失い重傷を負うも、エルザの献身的な介護により、密貿易商人の手を借りて「忘れられた諸島」へ逃亡した。
彼らは「マリア」と「ヨハン」という無名の人間として、世界を捨てて50年間添い遂げた。この逃避行の真実を語り継ごうとするノイマン主任研究員は、教会の圧力により「異端者」として断罪の天秤にかけられる。彼は、真実の公開が300年間の平和を破壊するかもしれないという究極の選択を迫られながらも、彼らの人間としての愛の物語を後世に残すことを決意する。
これは、世界よりも互いの愛を選んだ二人の逃亡劇と、その真実を巡る命がけの告発の記録である。
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