ギャルゲーの脇役、情報通な彼に転生してしまった!~こうなったらヒロインの一人位は絶対に確保する!~

GARUD

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 私はお嬢様の執事兼運転手の実松。
 幼稚園の頃からお嬢様の為に、毎日送り迎えをしているが、決して苦になる事はない。
 お嬢様は幼稚園の頃から沢山の習い事をしているが、決して我儘を言わず、また投げ出す事もなく、日々淡々とこなしていらっしゃる。

 しかし小学校登校二日目、事件が起こった。
 なにやら今日のお嬢様は大層ご機嫌な様子。
 朝の移動中の車内では、なんと普段は静かにお座りになられているお嬢様が、大好きなブリピュアのテーマソングを鼻歌で歌っていらっしゃる。
 一体何があったというのか?

 私が疑問に思っている間にも、車は小学校の校門の手前に到着。
 車が停まり、学校に着いたのを窓から確認したお嬢様。
 しかしお嬢様は車を降りようとはなさらず、窓から外を眺めるばかり。
 私はどうしたのか?と疑問に思い、声を掛けた。

「お嬢様。小学校に到着しましたが?」

 そう話しかけるが、一心不乱に窓から外を眺めるお嬢様には、どうやら私の言葉は聴こえていない様子。
 取り敢えず後ろのドアを開けるか?と思い、私は車から降りようとしたその時──

「き……きた!」

 お嬢様は突然裏返った声を上げると車の後部座席から飛び出した!
 私は何事か?と運転席から出ると、なにやらお嬢様はご学友の男の子と挨拶を交わしている。
 しかしその男の子は、お嬢様と話すのも僅かで、隣にいた女の子に引き摺られるように校門の方に連れて行かれてしまった。
 それを手を伸ばし、立ち尽くしたように見送るお嬢様。
 そうして暫く呆けていたが、トボトボと校舎に向かっていくお嬢様。
 小学校に入学して僅か二日の間に一体何があったというのか……
 私はモヤモヤした気持ちで車を走らせました。


 そして時刻は昼。
 小学校一年生は午前授業の後、給食を食べたら帰宅となっているので、私は校門の横に車を付けて待機していた。

 暫くすると、お嬢様の姿……

「なッ!」

 私は驚愕に打ち震えました。
 なんとお嬢様は登校時に話していたご学友の男の子と、仲良く手を繋いでブンブンと腕を振りながら校門に向かってくるのです。

(あの物静かで、あまりはしゃぐ事が無かったお嬢様が……あんなに腕を振って……)

 私の心は驚愕から感動に変わり、思わず目尻から汗が流れて来ます。
 私は慌ててハンカチでソレを拭うと、車を出てお嬢様をお迎えしました……が──

「じぃ!きょうからわたしはゆーやさまとえきまでいっしょにかえる!」
「ハッ?!お嬢様一体何を?!」

 私はお嬢様が何を言っているのか理解出来ずにいた。
 今まで一度も我儘を言った事のないお嬢様……習い事も淡々と澄ましたお顔でこなしていたお嬢様……そんなお嬢様が我儘?なにゆえ……
 悪い夢を見ているのだと思いたかったが、続くお嬢様の言葉でこれは現実なのだと思い知らされた。

「だから、わたしはゆーやさまとかえるの!」

 お嬢様が初めて我儘を言った事に動揺していた私だが、深く深呼吸する事で落ち着きを取り戻し、お嬢様に諭すように説明する。

「お嬢様……お戯れはそれ位にして、ささ、早くお車に乗って下さい。このままではピアノのレッスンに遅れてしまいますよ?」

 普段のお嬢様であれば、習い事に遅れるとわかれば直ぐに言う事を聞いてくれるはずだった──しかし……

「ぅぅ……ピアノなんていいの!ゆーやさまとかえるの!」
「お嬢様!!」

 普段のお嬢様とかけ離れた言動に、私は思わず面を食らってキツイ声が出てしまった。
 しかしお嬢様は怯むどころか私をキッ!と睨みつけて来る始末……
 これはどうすれば……と困っていると、横に居た男の子がお嬢様と私の間に身を滑り込ませ「まぁまぁ」と仲裁して来たのだ。これには驚いたが、その後の展開は今の驚き具合とは比べ物にならなかった。
 正に驚愕、驚天動地と言っても大言壮語ではないと私は思う。
 なんと、目の前の仲裁に入った男の子は、お嬢様を優しく……注意するのではなく、まるで妹かなにかに教えるように言い含めたのです。
 だが、それすらもお嬢様は納得せず、唇を噛む。
 男の子は作戦を変更したのか、お嬢様を一度置いて私に向き直ると、こう提案して来たのです。 

「じぃ……さん?取り敢えず、今日の所はピアノに連れて行って下さい。それで、明日からは雫ちゃんが僕達と一緒に駅まで帰れるように、習い事の時間をずらすよう手配して頂けませんか?」

 この提案に私はなる程、上手い言い回しをする……と感心しました。
 これなら、今日のお嬢様のピアノのレッスンに穴を空ける事もなく、次以降は一緒に帰れると暗にお嬢様に教えているようなもの。
 いやはや……とても小学一年生とは思えない。
 私は感服し「わかりました」と男の子に頷いた事に、男の子も満足顔で頷いた。
 これだけ頭のキレる男の子であればお嬢様をお任せするに足りるだろう。
 どれ……最後にもう一つ、試してみるか……

「……お坊っちゃま。わたくしの事は実松サネマツとお呼び下さい。そしてこの話、この実松がキチンと旦那様にご報告させて頂きます」
「うん。宜しくお願いします。実松さん……という事だから、雫ちゃんは今日はここ迄……ね?」
「はぃ……」

 なんと!普通なら親に言うぞと言われたら焦るのが子供だというのに、笑顔で頷くと私にお辞儀をしてお願いしますと言う。脱帽だ。
 気がつけばお嬢様は後部座席に座っていて、車の発進を待っている。
 私は目の前の男の子に深くお辞儀をして車を発進させた。

 その夜、事の顛末を旦那様に報告すると──

「なるほど……話はわかった。明日にでもその、ゆーやとやらに会ってみないとならないな」
「はい……あのお坊っちゃん……いや彼と言った方がいいですな。彼は小学一年生にしては利発に過ぎます。私が大人と会話しているのではないかと錯覚する程……彼であれば、お嬢様のよき友人になるかと……」
「うむ……して、実松。明日の予定だが、昼以降は全てキャンセルだ。明日の雫の迎えに私も同行する」
「畏まりました。ですが、お嬢様のお迎えは駅……という事になっておりますが?」
「構うことは無かろう。校門まで迎えに行き、そのゆーやとやらと友人の子も一緒に乗せて送れば問題あるまい。それに、そのゆーやとやらが、そこまで気が回るのなら断りはしないだろう」
「では、そのように手配しておきます」

 彼はどうやって切り抜けるのだろうか……
 私は年甲斐もなくワクワクし、口角が上がりそうになるのを必死に堪えたのだった──
 
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