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春の終わりがやって来て、二年目の運動会がやって来た。
「あれ?去年も色分けなんてあったっけ?」
「あったよ~。ゆぅくんがきにしてなかっただけだよ?たしか、しろくみで、ことしはあかくみだよ!」
「ぬぅ……そうだったのか……」
「ゆーやさまはいつもはんぶんにぼうしをかぶってるから……」
「いつもじゃないよ!ヒャッハーしたくなった時と光の戦士になりたくなった時だけだよ!」
「あいすらっかー!っていってすぐぼうしなげちゃうし」
「雫君。僕はね、夕焼けに明けの明星が輝く時、M88星雲に帰らなければならないんだよ!」
「いかないで!ゆーやさま!」
「でゅわ!」
「ゆぅくんもしずくちゃんも、いつまでやってるの?」
俺と雫ちゃんの迫真の演技も佳子ちゃんの前ではただの漫才だったようで、ジト目であしらわれてしまった。
そうやってふざけていると、二年生の徒競走の準備のアナウンスが流れる。
俺達二年生は振り分けられた順に五人一組で並んでいく。
「よし!今年も一番になるぜ!」
「あはっ!さきといっしょだね!ゆや!まけないよ!」
「若林君。君に俺のドライブシュートは止められないぜ!」
「なにいってるのかわかんないけど!」
そう、今年は運動ステータスの高い若林咲が同じコースに居る。彼女は運動事にはめっぽう強く、徒競走も俺とほぼ変わらないタイムを持っている。
練習の時はかなりいい勝負をして、いつの間にか名前で呼び合う……いわゆるライバルのような関係になっていた。
そして今、どんどん前の奴らの徒競走が終わり、ついにトリである俺達の番が来た。
「負けないぞ!」
「わたしだって!」
俺達が睨み合い、激しく火花を散らす中、係の先生が銃を上に掲げる。
──位置について……よーい……パン!──
合図と同時に飛び出した!
スタートは互角!そこから俺と咲は一気に加速して他のランナーを背中に置き去りにする!
ほんの十秒という僅かな戦い。
どちらがより早くゴールテープを切るかで勝敗が決する。
息を止めて走る!足に乳酸が溜まり足が上がらなくなってくるのを無視して俺はギアを一段上げた!
いつの間にか俺の横にも、そして前にも誰も居ない。俺は、俺だけの世界を走り抜けた──
「ゼェゼェ……」
「ッ……ハァハァ……」
俺と咲の二人は風に靡く旗を片手に掲げ、肩で息をする。
「まけちゃった!ゆや、れんしゅーよりはやかった!」
「伊達に毎日走ってないからな!俺に本気を出させるなんて、咲もやるな!」
「むぅ……ゆや!つぎはまけないからね!」
負けたというのに爽やかな笑顔で話しかけてくる咲に、俺も笑顔を向ける。
お互いに握手をして健闘を称え合い、二年生の席へと戻る。
「ところで咲。俺の名前は裕也なんだが……」
「ゆやはゆやだよ!」
「おおぅ……」
ニカッ!と太陽のような笑顔で言われて俺はついなんとなく頷いてしまった。
その時、背筋に寒気が走り、思わず背後を振り向くと、佳子ちゃんがニヨニヨと、雫ちゃんが涙目でそれぞれ俺を指差して……
「むぅ……ゆぅくんがさきちゃんとうわき!」
「ゆーやさま!わたしにはもうあきたんですか?!」
「誤解を招く発言だ!」
「小僧!雫を泣かせたなぁぁぁぁ!」
「だぁぁ!テメーは関係者席に帰れええ!」
「ええい!今度こそ許さん!許プゲラッ!」
案の定、誤解を植え付けられた零士が双眼鏡片手に二年生の席に突貫してきて、実松さんに気絶させられて関係者席へと引き摺られて行く。
ほっと息を吐くと次は佳子の親夫婦が現れた。
「裕也くんは相変わらずモテるようだね」
「これは佳子ちゃんも気が気じゃないわね~」
二人共にこやかに笑いかけてくるが内心どう思っているのやら……
一緒に現れた俺の親達は息子の成長を素直に喜んでいるのか、満面の笑みで俺の頭を撫でてくる。
「ほんと裕くんモテモテでママ妬けちゃうわ!」
「裕也はパパに似てカッコいいからな!うはははは!」
「「それはない」」
父親の勘違いは俺と母親に完膚なきまでに粉砕された。父親よ、背中に哀愁が漂ってるぜ?
その後、昼食を食べる為にレジャーシートを広げていると、佳子親子が現れて合流し、続いて雫&零士と実松さんも合流。
気が付けば咲親子も合流して四家族で一角を占拠していた。
「おお!奥さん、この玉子焼きは美味しいですな!」
「それは裕くんが作ったやつですよ~」
「あ!この唐揚げ美味しい!」
「それも裕くんが~」
「あら?このコロッケ、中に枝豆が入ってて面白いわ!」
「裕くんが昨日の夜に捏ねてたやつね~」
「「「………」」」
「小僧は主夫かッ!」
「有料物件過ぎるわ!」
「佳子じゃこの先不安だからぜひ家の入婿に!」
「ハァハァ……こんな所にパーフェクト美少年が!」
「ママ!おちついて!ゆやはゆやだよ!」
「おむこさんにきてくれたらまいにちゆぅくんのおいしいごはんがたべられる!」
「あぁ……ゆーやさまのてりょうりがまいにち……はふ……」
「ぬぁ!雫はやらんぞおおおお!ぶべらッ!」
カオスだった。
お陰で午後の二年生のダンスは俺の記憶に残らなかった。
気が付けば運動会が終わっていて、赤組の優勝だった。
後日の職員会議
「運動会は来年から給食にしましょう」
「「「意義なし!」」」
「あれ?去年も色分けなんてあったっけ?」
「あったよ~。ゆぅくんがきにしてなかっただけだよ?たしか、しろくみで、ことしはあかくみだよ!」
「ぬぅ……そうだったのか……」
「ゆーやさまはいつもはんぶんにぼうしをかぶってるから……」
「いつもじゃないよ!ヒャッハーしたくなった時と光の戦士になりたくなった時だけだよ!」
「あいすらっかー!っていってすぐぼうしなげちゃうし」
「雫君。僕はね、夕焼けに明けの明星が輝く時、M88星雲に帰らなければならないんだよ!」
「いかないで!ゆーやさま!」
「でゅわ!」
「ゆぅくんもしずくちゃんも、いつまでやってるの?」
俺と雫ちゃんの迫真の演技も佳子ちゃんの前ではただの漫才だったようで、ジト目であしらわれてしまった。
そうやってふざけていると、二年生の徒競走の準備のアナウンスが流れる。
俺達二年生は振り分けられた順に五人一組で並んでいく。
「よし!今年も一番になるぜ!」
「あはっ!さきといっしょだね!ゆや!まけないよ!」
「若林君。君に俺のドライブシュートは止められないぜ!」
「なにいってるのかわかんないけど!」
そう、今年は運動ステータスの高い若林咲が同じコースに居る。彼女は運動事にはめっぽう強く、徒競走も俺とほぼ変わらないタイムを持っている。
練習の時はかなりいい勝負をして、いつの間にか名前で呼び合う……いわゆるライバルのような関係になっていた。
そして今、どんどん前の奴らの徒競走が終わり、ついにトリである俺達の番が来た。
「負けないぞ!」
「わたしだって!」
俺達が睨み合い、激しく火花を散らす中、係の先生が銃を上に掲げる。
──位置について……よーい……パン!──
合図と同時に飛び出した!
スタートは互角!そこから俺と咲は一気に加速して他のランナーを背中に置き去りにする!
ほんの十秒という僅かな戦い。
どちらがより早くゴールテープを切るかで勝敗が決する。
息を止めて走る!足に乳酸が溜まり足が上がらなくなってくるのを無視して俺はギアを一段上げた!
いつの間にか俺の横にも、そして前にも誰も居ない。俺は、俺だけの世界を走り抜けた──
「ゼェゼェ……」
「ッ……ハァハァ……」
俺と咲の二人は風に靡く旗を片手に掲げ、肩で息をする。
「まけちゃった!ゆや、れんしゅーよりはやかった!」
「伊達に毎日走ってないからな!俺に本気を出させるなんて、咲もやるな!」
「むぅ……ゆや!つぎはまけないからね!」
負けたというのに爽やかな笑顔で話しかけてくる咲に、俺も笑顔を向ける。
お互いに握手をして健闘を称え合い、二年生の席へと戻る。
「ところで咲。俺の名前は裕也なんだが……」
「ゆやはゆやだよ!」
「おおぅ……」
ニカッ!と太陽のような笑顔で言われて俺はついなんとなく頷いてしまった。
その時、背筋に寒気が走り、思わず背後を振り向くと、佳子ちゃんがニヨニヨと、雫ちゃんが涙目でそれぞれ俺を指差して……
「むぅ……ゆぅくんがさきちゃんとうわき!」
「ゆーやさま!わたしにはもうあきたんですか?!」
「誤解を招く発言だ!」
「小僧!雫を泣かせたなぁぁぁぁ!」
「だぁぁ!テメーは関係者席に帰れええ!」
「ええい!今度こそ許さん!許プゲラッ!」
案の定、誤解を植え付けられた零士が双眼鏡片手に二年生の席に突貫してきて、実松さんに気絶させられて関係者席へと引き摺られて行く。
ほっと息を吐くと次は佳子の親夫婦が現れた。
「裕也くんは相変わらずモテるようだね」
「これは佳子ちゃんも気が気じゃないわね~」
二人共にこやかに笑いかけてくるが内心どう思っているのやら……
一緒に現れた俺の親達は息子の成長を素直に喜んでいるのか、満面の笑みで俺の頭を撫でてくる。
「ほんと裕くんモテモテでママ妬けちゃうわ!」
「裕也はパパに似てカッコいいからな!うはははは!」
「「それはない」」
父親の勘違いは俺と母親に完膚なきまでに粉砕された。父親よ、背中に哀愁が漂ってるぜ?
その後、昼食を食べる為にレジャーシートを広げていると、佳子親子が現れて合流し、続いて雫&零士と実松さんも合流。
気が付けば咲親子も合流して四家族で一角を占拠していた。
「おお!奥さん、この玉子焼きは美味しいですな!」
「それは裕くんが作ったやつですよ~」
「あ!この唐揚げ美味しい!」
「それも裕くんが~」
「あら?このコロッケ、中に枝豆が入ってて面白いわ!」
「裕くんが昨日の夜に捏ねてたやつね~」
「「「………」」」
「小僧は主夫かッ!」
「有料物件過ぎるわ!」
「佳子じゃこの先不安だからぜひ家の入婿に!」
「ハァハァ……こんな所にパーフェクト美少年が!」
「ママ!おちついて!ゆやはゆやだよ!」
「おむこさんにきてくれたらまいにちゆぅくんのおいしいごはんがたべられる!」
「あぁ……ゆーやさまのてりょうりがまいにち……はふ……」
「ぬぁ!雫はやらんぞおおおお!ぶべらッ!」
カオスだった。
お陰で午後の二年生のダンスは俺の記憶に残らなかった。
気が付けば運動会が終わっていて、赤組の優勝だった。
後日の職員会議
「運動会は来年から給食にしましょう」
「「「意義なし!」」」
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