泣き虫龍神様

一花みえる

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雨冷え【10月番外編】

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    こんにちは、しらたきです。
    今朝のご飯は、炊きたてご飯にお味噌汁、それからふわふわ卵焼きだったようです。食後の玄米茶を飲んで、はふ、と満足そうにお腹を撫でていました。
    食器は自分で運ぶため、その間ぼくはテーブルの上でお留守番。遠くからお二人の声が聞こえてきます。なんだか、とても楽しそう。ぼくはお話できないけど、聞いているだけで楽しくなるのです。
「おみ、きがえてくる」
「外に行くならマフラーした方がいいぞ」
「うぃ」
    この辺りは気温が低いらしく、りょうたさんはいつもご主人さまが寒くないか心配しています。たしかに、ご主人さまは走り回ったり、転がり回ったり、飛んだり跳ねたりするのですぐに暑く感じるそうです。
    そうすると、朝にはちゃんと着込んでいたものたちはどこかに追いやられてしまうのです。
「うーん、きょうはみどり!」
    本日の着物が決まったようです。ふむふむ、深い緑色ですか。秋らしくて良いのではないでしょうか。
    寝巻きを脱ぎ捨て、黒い肌着(ひぃとてっくというそうです)を着込み、テキパキと着物を身につけていきます。最後にモコモコの靴下を履いたら完成です。 
    うん、今日も可愛らしいです、ご主人さま!
「まふらーしないと」
    あ、そうですよ!    よく覚えていましたね!    お外に行く時はマフラーがいりますよ!
    ごそごそ箪笥を漁ったご主人さまは、最近お気に入りのマフラーを見つけました。さかぐちさんから貰った、ふわふわのマフラーです。白い毛糸でざっくり編まれたマフラーは、長すぎず、しかも巻きやすいのだそうです。
「よし、できた!」
     完璧です、ご主人さま! 
    これでいつでも遊びに行けますね!
「あ、そうだ。しらたきも」
    え?    ぼくもですか?    ぼくはぬいぐるみだから、寒さにはつよいですよ?
「おみとおそろいにしようね」
    そう言って、ぐるりと首に何か巻かれます。それは、ご主人さまが付けているマフラーによく似た毛糸でした。少し歪ですがきちんと編まれており、ぼくの首にぴったりです。
    ご主人さま、これは一体。
「りょーたとつくったの。にあうねー!」
    そんな、ぼくのために、マフラーを……!
    しかもおそろいだなんて!
    ぼく、とってもうれしいです!    天にも登る勢いです!    飛べませんが!
「よーし、しゅっぱーつ!」
    今日も背中におんぶされて、ご主人さまと二人で小さな冒険へと出かけます。首に巻かれたふわふわのマフラーのおかげで、乾いた風もへっちゃらな気持ちになりました。
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