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壁の中 ※グロ、ホラー表現あり
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私は男友達2人と、夜の繁華街を歩いていた。
男友達:リュウが大手へ内定し、上京する事になった。私はもう1人の男友達:ゲンキと、餞別に飲み会をする事にした。
飲む前に悪酔い抑制ドリンクが欲しいとリュウに言われたので、寄り道。
立ち寄ったのは、国内で1,2位の規模のメガディスカウントショップ。元々はよくある下町の飲み屋横丁的な、小規模居酒屋(席数5席程度)が何軒かあったが、建物の老朽化と店主の高齢化などで撤退した場所だ。
横丁時代の雰囲気をそのままに(よく言う謎の配慮)ディスカウントショップが出来て、店は巨大なトンネル状に品物が圧縮陳列されていると各メディアで紹介されていた。
「ここ、テレビでも紹介されたよね! 来たかったんだ~」
私達ははしゃぐように、店内を歩いた。
(すごいな。途中曲がりくねっているけど、全長50メートルの一本道だっけ。こんな店は確かに他に無いな)
ドリンクを探す途中、同世代のやんちゃそうな女子:クルミと出会った。
「ここ面白いよねー。クルミもよく来るよ」
無事に目的の品を見つけ、先にあるレジへ向かいつつ、クルミは話し始めた。
「都子って、怖い話平気ー?」
「うん、大好きよ。してくれるの?」
「あのねぇ、昔、ここって立ち飲み横丁だったっしょ? その頃にあった話なんだけど…」
クルミはひじきの様に重そうな睫毛で、瞬きをしつつ続けた。
「何かね、超迷惑な若者グループが居たんだって。注意されても大声で騒ぐわ、酔いつぶれると何処でも寝るわで。ある時も大声で騒いでたから、皆『また来た』って思ったんだけど、様子が違ったらしい」
私は聞きつつ、陳列されてる限定リップグロスを目で追った。
「『助けて』『出して、苦しい』って。それで、店主や客が店の外に見に行ったけど、姿が何処にも無くて。でも声はするから、警察呼んだんだって」
グロスの隣にはアイシャドウもあったので、私は引き続き相槌を打ちつつ、商品を眺めた。
「警察も声のする辺りを捜索して…、どうやら店の壁から聞こえるからって、穴開けて確認したのよ。そしたら、例の3人が壁の中に挟まっていて、ぐったりしていたんだって」
(それにしても、この店は随分暗いな)
「『挟まってた』っていうのが、あり得なかったんだって。外から壁の内側へは絶対に入れないってか、3人を救出しようにも、建物壊さないと無理な感じに挟まってて。だから、この世のものじゃない力で、3人が壁の内側に入れられたっていうか」
私はふと気づいた。何で、商品は私から見て全て後ろ向きに陳列されているのだろう。振り返ると、クルミは薄暗い中、私に笑いかけていた。
「コレねえ、品物並んでる内側に居るんだよ。だから後ろ向きなんだよ」
「都子!!」
目の前の商品が崩れ、リュウとゲンキが顔を見せた。山積みになっている後ろ向きの商品を引っ張り出し、私を商品棚の内部から助け出す。
「どうなってんの⁈ クルミ!!」
クルミの姿は何処にも無かった。
「あーあ、都子、こっちには来てくれないんだね」
クルミの声だけが商品棚の内側から、聞こえていた。
男友達:リュウが大手へ内定し、上京する事になった。私はもう1人の男友達:ゲンキと、餞別に飲み会をする事にした。
飲む前に悪酔い抑制ドリンクが欲しいとリュウに言われたので、寄り道。
立ち寄ったのは、国内で1,2位の規模のメガディスカウントショップ。元々はよくある下町の飲み屋横丁的な、小規模居酒屋(席数5席程度)が何軒かあったが、建物の老朽化と店主の高齢化などで撤退した場所だ。
横丁時代の雰囲気をそのままに(よく言う謎の配慮)ディスカウントショップが出来て、店は巨大なトンネル状に品物が圧縮陳列されていると各メディアで紹介されていた。
「ここ、テレビでも紹介されたよね! 来たかったんだ~」
私達ははしゃぐように、店内を歩いた。
(すごいな。途中曲がりくねっているけど、全長50メートルの一本道だっけ。こんな店は確かに他に無いな)
ドリンクを探す途中、同世代のやんちゃそうな女子:クルミと出会った。
「ここ面白いよねー。クルミもよく来るよ」
無事に目的の品を見つけ、先にあるレジへ向かいつつ、クルミは話し始めた。
「都子って、怖い話平気ー?」
「うん、大好きよ。してくれるの?」
「あのねぇ、昔、ここって立ち飲み横丁だったっしょ? その頃にあった話なんだけど…」
クルミはひじきの様に重そうな睫毛で、瞬きをしつつ続けた。
「何かね、超迷惑な若者グループが居たんだって。注意されても大声で騒ぐわ、酔いつぶれると何処でも寝るわで。ある時も大声で騒いでたから、皆『また来た』って思ったんだけど、様子が違ったらしい」
私は聞きつつ、陳列されてる限定リップグロスを目で追った。
「『助けて』『出して、苦しい』って。それで、店主や客が店の外に見に行ったけど、姿が何処にも無くて。でも声はするから、警察呼んだんだって」
グロスの隣にはアイシャドウもあったので、私は引き続き相槌を打ちつつ、商品を眺めた。
「警察も声のする辺りを捜索して…、どうやら店の壁から聞こえるからって、穴開けて確認したのよ。そしたら、例の3人が壁の中に挟まっていて、ぐったりしていたんだって」
(それにしても、この店は随分暗いな)
「『挟まってた』っていうのが、あり得なかったんだって。外から壁の内側へは絶対に入れないってか、3人を救出しようにも、建物壊さないと無理な感じに挟まってて。だから、この世のものじゃない力で、3人が壁の内側に入れられたっていうか」
私はふと気づいた。何で、商品は私から見て全て後ろ向きに陳列されているのだろう。振り返ると、クルミは薄暗い中、私に笑いかけていた。
「コレねえ、品物並んでる内側に居るんだよ。だから後ろ向きなんだよ」
「都子!!」
目の前の商品が崩れ、リュウとゲンキが顔を見せた。山積みになっている後ろ向きの商品を引っ張り出し、私を商品棚の内部から助け出す。
「どうなってんの⁈ クルミ!!」
クルミの姿は何処にも無かった。
「あーあ、都子、こっちには来てくれないんだね」
クルミの声だけが商品棚の内側から、聞こえていた。
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