きみよ奇跡の意味を知れ 【本編完結・番外プチ連載5/14完結】

桜以和果

文字の大きさ
60 / 98

59 嘆き

しおりを挟む



 ゆっくりと——ゆっくりと。
 ニコロともう一人、女の医師に支えられるようにして半身を起こした騏驥は、起きあがりはしたもののまだぼんやりした様子だった。
 瞬き一つせず、声ひとつ上げない。
 まるで、自分に何が起こっているのかわかっていないような——それこそ、死にかけて戻ってきたような、そんな様子だ。

 いや、きっと「そう」なのだろう。
 近くで見ると、彼の足先の傷はそれは酷いものだった。爪は全て剥がれているし、皮膚もあちこちが裂けている。なんらかの治癒をしてこの状態だったなら、元はいったいどれほどの怪我だったのかと想像すると、ルーランでも寒気がするほどだ。
 どれほど走ればそんな状態になるのか……。


 ルーランは魔術師たちからは少し距離を置いた場所から、ニコロたちとのやりとりを見つめる。ジァンも加わり、彼の反応を見ているようだ。
 本当はもっと近づきたくて焦れったくて堪らなかったが、ぐっと我慢した。
 回復に尽力している彼らの迷惑にはなりたくなかったのだ。
 早く回復すれば、それだけリィのことも聞けるのだから、と自分に言い聞かせて。
 
 加えて、そこにじっと立っている魔術師たちも気になった。
 なんとなく、さっき見た時と体格が変わっている気がする。
 姿を変えた? それとも中身が入れ替わったのだろうか。
 ……どうやったのかはわからないけれど。


 今、ルーランが見ている三人は、全員、大きなフードのあるコートを纏っているから、性別も年もわからない。もちろん、どんな顔をしているのかも。
 だからだろうか。そんなわけはないのに、まるでそっくり複製された「同じもの」がそこに佇んでいるような印象を与えてくる。
 とはいえ、実際は全員体格が違うし杖の持ち方にも特徴がある。
 本当に杖代わりにして軽く寄りかかるようにして持っている者もいれば、同じ寄りかかるにしても、後ろ手に杖をつき、腰を預けるような——ルーランから見れば場にそぐわないほど偉そうな格好で杖を使っている者もいる。
 残る一人は袖の中に隠すようにして持っている。三者三様だ。

(魔術師……か……)

 ルーランは、咎められることのないよう盗み見るように、チラチラと三人を見る。
 ニコロも魔術師だし(しかもかなりの魔術師らしい)、リィも魔術師ではないものの魔術を使うことが出来る。
 他の騎士にもそういうやつはいるし、医師はほとんどが魔術師のはずだ。だから魔術を使う者を見ること自体は初めてじゃない。
 だが。


『塔』からやってきたという彼ら——もしくは彼女ら——は、やはり雰囲気がまるで違う。
 近寄りがたいというか、「異質な者」が服を着て歩いているような印象だ。
 それこそ——比べられるのは嫌かもしれないが、ルーランたち騏驥のように。

 実際、身につけているものの全てに魔術が込められているらしく、ルーランはジァンに「魔術師には絶対に触れるなよ」ときつく念を押されたほどだ。
 服に触れるだけでも「何か」が起こるのかと思うと、気になりはしたが、取り返しの付かないことになっては嫌なので、言うことをきいている。
 実際、そんな雰囲気があるのだ。
 服に触れるだけで、消し炭にされてしまいそうな、そんな雰囲気が。


『塔』が特殊な場所だということは、ルーランでも知っている。彼らがそこに集う最高の魔術師たち『塔の十杖』なのか、それともその手下なのかはわからないが、いずれにせよ、関わり合いたくない連中だった。
 
 だが、そんな関わりたくない魔術師と騏驥は魔術を通じた深い関係でもある。
 外れない『輪』によって。
 ルーランが、『輪』の一つの存在を確かめるように、自身の腕を軽く振ったとき。

「ぅ……」

 呻くような声が、その耳に届く。
 はっと見れば、騏驥が正気を取り戻したようだ。
 ニコロを、獣医を、ジァンを、ゆっくりながら順に見つめる目に生気が戻っている。
 ジァンが水を渡すと、それを手にしてゆっくりと飲む。

 彼はもうしっかりと意識を取り戻している——。

 そう判断した途端、ルーランは考える間もなく勢いよく騏驥に近寄っていた。
 彼の身体を支えていたニコロを弾き飛ばすようにして、傍に陣取る。

「っ、ちょっ!? ルーラン! まだダンジァは——」

 ニコロは狼狽えた声を上げたが、構わずルーランはダンジァの肩を掴むと、声を上げながら揺さぶった。

「おい! お前! 聞こえてるか!?  聞こえてるよな!?」

 もう待った。充分待った。これ以上待つ気はない。

「お前、目は覚めたんだろ。覚めたんなら答えろ。リィはどこだ。リィはどうした!? え!?」

「ルーラン!」

 慌ててニコロが止めに入ろうとしたが、その身体を片手で突き飛ばした。
 わあっ、と声を上げて尻餅をついた気配に、一瞬だけ罪悪感が湧いたが、それよりもこの騏驥だ。リィのことだ。
 少しでも話が聞きたい。
 悠長に、完全な回復なんか待っていられない。

「おい! 答えろよ! あいつはどうなったんだよ!」

 ルーランはダンジァの胸倉を掴んで揺さぶる。
 今度はジァンが「やめろ」と止めに来たが、構わずダンジァを凝視したままでいると、

「……リィ様……は……」

 その唇がゆっくりと動いた。

「は………」

 だが、そこから言葉が出ない。

「この……っ」

 一発殴った方がいいんじゃないか!?
 あまりのじれったさに、ルーランがそう思ったとき。
 ダンジァの目に、みるみる涙が溜まっていくのが見えた。
 思わず掴んでいた胸元を緩めようとしたルーランのその手に、ダンジァの涙が落ちる。

「リィ様は……俺を……自分を…助けて、くれようとして……」

 両の瞳から涙を零しながら、ダンジァは言った。細い声で。消えそうな声で。

「色々なことが……わからなくなって……気付いたら、賊が……」

「…………」

 切れ切れに語られる言葉を、ルーランは固唾を呑んで聞く。
 ニコロたちもジァンも魔術師たちも、静かにダンジァが語るに任せている。
 彼は重たいものを吐き出すように、ぽつ、ぽつ、と言葉を継ぐ。

「……追われて……馬の姿でいることも上手くいかなくて……」

「!?」

「そうしたら……リィ様が、自分に、鞭を……。こ、これを持って、逃げろ、と……っ。これがあればお前は安全だから、と……っ」

「そ……れで……逃げた……ってわけか? 逃げたのか!? じゃあリィは!?  リィはどうなったんだよ!? お前まさかそのままリィを置き去りにして……」

 詰め寄るルーランの目の前で、ダンジァは大きく顔を歪める。
 それが答えだった。

「てめえっ!!」

 ルーランは叫ぶと、ダンジァを一層激しく揺さぶった。
 怒りと憤りで頭が焼けるようだ。

「置いてきたのかよ!? その賊がいるところに!? 敵がいるところに……あいつを、一人で!! 」

 違う答えが欲しくて、ルーランは繰り返しダンジァを揺さぶる。だが、彼は俯くばかりだ。

「……申し訳……ありません……っ……」

 そして引き絞るような声で彼がそう言ったとき。

「ふざけんな!!!」

 ルーランは怒りに我を忘れて叫んでいた。

「ふざけんな……お前、騏驥のくせに騎士を置いてきたのかよ!? 敵がまだいるってのに!? あいつを置いて……リィを置いて一人で逃げてきたのかよ!?」

「っ……」

「なにかあったらどうする気だ!? え!? 一人にして……もし何かあったらお前のせいだぞ!! お前が一人で逃げたから……っ」

 怒りと興奮で、目の前が赤くなる。
 何も考えられなくなる。
 リィが——リィが、一人で——。

「っ——!!」

 突き上げてくる怒りのまま拳を握り締め、抑えられない憤りをぶつけるように目の前の騏驥を殴りつけようとした寸前。

「!?」

 不意に、影が視界を過ぎる。

「っ!!」

 咄嗟にダンジァを突き放し、反射的に身をかわした次の瞬間。
 目の前を、風を切るような鋭い蹴りが過ぎて行った。
 ジァンだった。

「お前な……」

 彼は唸るような声を零し、体勢を整えると、ダンジァを庇うようにルーランの前に立ち塞がる。
 見たことがないほどの怒りの気配だ。

「この、バカが!」

 そして声とともに向けられた拳を、今度はルーランは避けなかった。
 ジァンの怒りの声は続く。

「『ふざけんな』だ!? それはこっちのセリフだ。『なにかあったらお前のせいだ』なんてよく言えたもんだな。え?」

「っ……」
 
 剣幕よりも、言い返すことのできないその言葉に、ルーランの心は切り裂かれる。

「あの騎士が危険な状況になっているとして、それが誰のせいだと思ってる。こいつのせいじゃない、お前のせいだ。あの騎士になにかあれば、それは全部、お前のせいだ。こいつのせいじゃない!」

「……」

「あれだけお前を連れて行こうとしていたリィ様を拒絶したのは誰だ? まさか忘れたか? 自分の言ったことも思い出せなくなったか? いつまでも捻くれて、騎士の依頼を蹴ったのはお前だろうが」

「…………」

「騎士がこの騏驥を逃がしたなら、それは騎士の判断だ。騏驥に責任はない。こいつは何一つ悪くないし、お前が責めるなんてもってのほかだ。まったく……この馬鹿野郎が……。お前に関係のないことに、グダグダ言うんじゃねえ! わかったな!」

 吐き捨てるように言うと、ダメ押しのようにドン、とルーランの肩を突き、踵を返す。
 医師の指示を仰ぎ、場所を移す旨を聞くと、ダンジァの傍に膝をつき「行こう」というように肩を貸して抱え上げる。
 ダンジァはされるままになりながらも、ルーランが気になるのか、しきりに振り返りながら去っていく。

 ルーランは大きく息をつくと、天を仰いだ。
 殴られたところより、胸が痛い。


 お前のせいだ。


 ジァンの言葉が蘇るたびに胸が痛くて堪らなくなる。
 わかってる。
 ダンジァへの怒りはただの八つ当たりだ。
 本当に殴りたいのは自分自身だ。
 だからジァンに殴られてどこかほっとしている。

「っ……」

 ルーランはきつく奥歯を噛み締めた。
 感じたことがないほどの後悔が、胸の奥でうねる。柔らかなそこを、深く抉る。
 不安と恐怖と後悔。
 考えられる限りの昏い感情が全身を苛み、動けなくなる。


 行けばよかった。
 一緒に、遠征に行けばよかった。
 行こうと言ってくれたのに。わざわざ伝えに来てくれたのに。
 行けばよかった。行けばよかった。行けばよかった。
 もう会えなくなったらどうしよう?
 もう二度と会えなくなったら。

 最後に会ったとき、俺は何をした? 何を言った?
 自分を求めてくれた騎士に。
 ずっと乗ってくれていた、たった一人の騎士に。


「…………」


 どうしよう。
 頭の中では同じ言葉ばかりがぐるぐる回っている。

 どうしよう。
 もう会えなかったら。彼と。リィともう会えなかったら。
 
 肩を落として馬房を出て行った姿。
 あれが、自分の見た彼の最後の姿だったら……。
 突き上げてくる恐怖に、大きく身を震わせたとき。


「——帰ろうか」


 突然、すぐ近くから声がした。
 見れば、ニコロが見上げてきていた。
 気がつけば、ここには二人だけだ。あの魔術師たちはいつの間に消えたのか。
 彼は「やれやれ」というような顔を見せると、そっと頬に触れてきた。

「まあ、このぐらいなら大丈夫だよね。殴る方も殴られる方も慣れたものだろうし。ジァンはあれで昔は相当……だったらしいからね。まあ、噂だけど」

「…………」

「とはいえ、僕は医者だからね。怪我した騏驥は見過ごせない。おいで、治療しよう」

「いいよ」

「そういうわけにはいかない」

「いいって! あんたはあの騏驥の治療があるんじゃないのかよ!? 俺のことなんか——」

 うるさい、ほっとけ、と言いかけたときだった。

「きみの都合なんかどうでもいいんだよ、ルーラン。僕が来いといったら来るんだ」

 ぴしゃりと、そう言い返される。
 その声は有無を言わさぬ迫力があり、ルーランは思わずうっ、と押し黙る。
 見つめ合ったものの、ルーランは分の悪さを察して仕方なく「わかったよ」と返事をすると、ニコロの後について診療所へ戻った。
 戻るときは、すぐに戻れた。


 ニコロはルーランを座らせると、てきぱきと傷に薬を塗る。
(途中、なんだかわざと強めに頬を摘まれ、思わず「痛!」と声を上げると、「突き飛ばしてくれたお返し」と微笑まれた。魔術師は記憶力がいい。そして陰険だ)

「はい、これでよし」

 終わると、にっこり笑った。
 もういつもの「若く見える、どちらかといえば頼りなさげな」医師の顔だった。

「まあ打撲だからしばらくは痛むだろうけど、後に響くような心配はないよ。口の中も切ってないから普通に食べてよし。馬房に戻って、ゆっくりして……少し頭を冷やしてれば治る」

「……」

「いいね」

「……」

「返事」

「……わかったよ……」


 渋々答えると、ニコロは満足そうに笑う。
 次いで、ふっと息をついた。


「僕はこれから、あの騏驥の治療だ。あれだけ傷ついてるとまずは外科的な治療が必要になってね。僕の役目はそのあと——っていうわけ」

「あんたならなんでも出来そうなのに、あんたより上手い奴がいるのか」

「僕、手術は駄目なんだよ。……怖くて」

「…………」

 は? と言いたいのを堪えて、ルーランはニコロを見る。ルーランの前に立つ彼は、困ったように頭を掻いて苦笑した。

「騏驥が好きすぎるせいなのか、どうも……切るのができなくて。まあその分、それ以外のところで助けられているとは思うんだけどね」

 ニコロは苦笑を深める。
 その様子に、ルーランはようやく、自分の表情が僅かながらでもほぐれるのを感じた。

「あんたにも苦手はあるんだな。医者で魔術師で……さっきだって、なんかすごいことやってたみたいなのに」

「そりゃあるよ。誰にでも向き不向きや、出来ることと出来ないことがある。出来ることを精一杯やるだけだよ」


 できること……。
 その言葉に、ダンジァの酷い怪我のことが思い起こされた。
 あれは治るだろうか。手術と、ニコロの治療で。

「……あのさ」

「うん?」

 目を瞬かせるニコロを見つめ、ルーランは言った。思いを込めて。

「あいつ……治してやってくれ。その……大変かもしれないけど……」

「もちろんだよ。全力を尽くす」

「うん……」

 リィが、自分の身が危うくなるのにも構わず逃がした騏驥なのだ。
 なんとか回復して欲しい。
 回復、してほしい。
 ……でも、リィは……?

「……リィは……大丈夫かな」

 気付けば、声が溢れていた。

「なあ……リィは…………!」

 不安が込み上げ、思わず声を荒らげてしまう。
 目の前のニコロを縋るように見つめると、彼はルーランの肩を軽く叩き「それもこれからだよ」と応えた。

「ダンジァはまだ記憶が混乱しているし……責任感が強いんだろうね、騎士と離れざるを得なくなったせいで動揺していて、事態の経緯をきちんと説明できないみたいだ。どんな賊なのか、どこで会ったのか、リィとはどこで別れたのか……。それによってリィの状況も変わってくるよ」

 慰めるような柔らかな口調で、ニコロは言う。
 本当だろうか。まだ間に合うだろうか?
 でも今は、信じるしかない。
 ルーランは自分の目の奥が熱くなるのを感じる。


「俺……最後にリィに会ったとき、最低だったからさ……。色々……」

 耐えられなくなったように、後悔が溢れた。

「ルシーがあんなことになってから……リィとも上手くいってなくて。騎士のために走るのなんか嫌になって……」

 酷いことを言って、傷つけて、拒絶した。
 挙句、こんなことになって——。
 ルーランは再び天を仰ぐ。

 目から何か出そうだ。けれどそんなもの誰にも見せたくない。
 息を吐くと、振り切るように立ち上がった。

「ま、そういう訳で、俺は最低だったんだよ。でもあの騏驥はリィのために働いてくれていた訳でさ……。あいつのこと、頼む」

 顔を見られるのも恥ずかしくて、ルーランはそそくさとその場をあとにしようとする。
 しかし、診療所を出て行きかけた寸前。


「——ルーラン」


 その背に、ニコロから声が掛かった。
 戸惑いつつも振り向くと、彼は至極真面目な表情でルーランを見つめてくる。


(なんだ……?)


 怒られる、というわけでもない気配だ。が……。ある意味、それ以上に緊迫したものを感じる。
 空気が張りつめていくのを感じながら、ルーランも黙って見つめ返すと、

「……三日後に……もう一度ここへおいで。夜が明ける前に」

「え……?」

「きみたちは夜目が利くから大丈夫だろう? いいね」

 そう言うと、ルーランからの返事は待たず背を向けてしまう。

(…………)

 なにが、なんだか。
 ルーランは首を捻らずにはいられなかったが、訊いてみても応えてはもらえないだろう。
 ニコロはもう、ダンジァの治療に向かう準備を始めている。
 仕方なく、ルーランはそのまま診療所を出ると自身の馬房へ戻る。

「夜明け前……ねえ……」

 まあ別に、無理な話ではない。
 騏驥は馬同様さほど眠らないし、暗闇だって目が見える。
 それにそれぐらい時間が経ってからなら、この身体の痛みもほとんど治まるだろう。

「ああ……そうか」

 そのテの検査かもしれない。
 人の姿の騏驥が人の姿の騏驥に殴られたとき、怪我はどのくらいで回復するか……とか。
 だがそれだけであんな顔をするとは思えない。
 なんだかとても真剣で、真面目で…断れない雰囲気だった。

(怖かった、っていうのとはちょっと違うけど……)

 なんだか、「そういう」気配だったのだ。
「行かなければならない」と思わせられるような。

「ま、いいか」

 ニコロなら、ルーランを悪いようにはしないはずだ。
 ……多分。

 行ったが最後、いきなり廃用にされるようなことはないだろう。

 もしかしたら、ダンジァの経過を教えてくれるつもりなのかもしれない。
 ひょっとしたら、彼が話した記憶を、何があったのかを、リィのことを教えてくれるのかもしれない。
 それは虫が良すぎるかもしれないが……とにかく、行けば解るだろう。


 ルーランは自分に言い聞かせるように頷くと、馬房に戻る。
 久しぶりだ。寒々しい。
 眠る気はない。どうせ眠れない。ここにいるのは辛い。
 でも——。

 リィとの最後の記憶はここにしかない。
 最悪の思い出。けれどそれでもここにしかない。
 思い出したい。思い出したくなくて——でも思い出したい。
 
 思い出して、彼が無事であることを願う。
 それしかできない自分がもどかしく、悔しくてたまらないけれど——。

 そう、思いながら。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヒールオメガは敵騎士の腕の中~平民上がりの癒し手は、王の器に密かに溺愛される

七角@書籍化進行中!
BL
君とどうにかなるつもりはない。わたしはソコロフ家の、君はアナトリエ家の近衛騎士なのだから。 ここは二大貴族が百年にわたり王位争いを繰り広げる国。 平民のオメガにして近衛騎士に登用されたスフェンは、敬愛するアルファの公子レクスに忠誠を誓っている。 しかしレクスから賜った密令により、敵方の騎士でアルファのエリセイと行動を共にする破目になってしまう。 エリセイは腹が立つほど呑気でのらくら。だが密令を果たすため仕方なく一緒に過ごすうち、彼への印象が変わっていく。 さらに、蔑まれるオメガが実は、この百年の戦いに終止符を打てる存在だと判明するも――やはり、剣を向け合う運命だった。 特別な「ヒールオメガ」が鍵を握る、ロミジュリオメガバース。

俺のファルハ 《黒豹獣人と俺》

大島Q太
BL
《黒豹獣人×異世界転移者》 マナトは子供を助けてトラックにひかれそうになった瞬間、異世界転移し、ついた先はジャングルの中だった。マナトを拾ったのは褐色の黒豹獣人ナミル。ナミルは俺を「ファルハ」と呼び甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。流されやすい主人公とそれを溺愛する原住民の話。

塔の上のカミーユ~幽囚の王子は亜人の国で愛される~【本編完結】

蕾白
BL
国境近くにあるその白い石の塔には一人の美しい姫君が幽閉されている。 けれど、幽閉されていたのはある事情から王女として育てられたカミーユ王子だった。彼は父王の罪によって十三年間を塔の中で過ごしてきた。 そんな彼の前に一人の男、冒険者のアレクが現れる。 自分の世界を変えてくれるアレクにカミーユは心惹かれていくけれど、彼の不安定な立場を危うくする事態が近づいてきていた……というお話になります。 2024/4/22 完結しました。ありがとうございました。 

聖者の愛はお前だけのもの

いちみりヒビキ
BL
スパダリ聖者とツンデレ王子の王道イチャラブファンタジー。 <あらすじ> ツンデレ王子”ユリウス”の元に、希少な男性聖者”レオンハルト”がやってきた。 ユリウスは、魔法が使えないレオンハルトを偽聖者と罵るが、心の中ではレオンハルトのことが気になって仕方ない。 意地悪なのにとても優しいレオンハルト。そして、圧倒的な拳の破壊力で、数々の難題を解決していく姿に、ユリウスは惹かれ、次第に心を許していく……。 全年齢対象。

ちびドラゴンは王子様に恋をする

カム
BL
異世界でチート能力が欲しい。ついでに恋人も。そんなお願いをしたら、ドラゴンに生まれ変わりました。 卵から孵してくれた王子様に恋をして、いろいろ頑張るちびドラゴンの話。(途中から人型になります) 心優しい第三王子×時々チートな働き者のドラゴン 表紙イラストはしけつ(ck2)さまにいただきました。ありがとうございます。

愛しの妻は黒の魔王!?

ごいち
BL
「グレウスよ、我が弟を妻として娶るがいい」 ――ある日、平民出身の近衛騎士グレウスは皇帝に呼び出されて、皇弟オルガを妻とするよう命じられる。 皇弟オルガはゾッとするような美貌の持ち主で、貴族の間では『黒の魔王』と怖れられている人物だ。 身分違いの政略結婚に絶望したグレウスだが、いざ結婚してみるとオルガは見事なデレ寄りのツンデレで、しかもその正体は…。 魔法の国アスファロスで、熊のようなマッチョ騎士とツンデレな『魔王』がイチャイチャしたり無双したりするお話です。 表紙は豚子さん(https://twitter.com/M_buibui)に描いていただきました。ありがとうございます! 11/28番外編2本と、終話『なべて世は事もなし』に挿絵をいただいております! ありがとうございます!

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

処理中です...