美しき吸血鬼は聖女に跪く

朝飯膳

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☆酒好き追放聖女×俺様系伝説の吸血鬼

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 わたしの言い方が悪かったというのか……? 若い子の思考回路って分からないな、と思いながら、口元がひきつるのを押さえられなかった。

「何か勘違いしてる? わたし、あの王子に未練なんてこれっぽっちもないんだけど」

「で、でも……」

 何をどう考えたらそんな思考回路になるのか……。王子に捨てられたアピールをしすぎたんだろうか。未練があるかどうかと、婚約破棄を突き付けられて腹が立っているかどうかは同じ問題じゃないと思うんだけど。

「とにかく、わたしから言えることは何もないって言ってるでしょ。さっさと帰って、わたし、もう寝たいんだから」

 しっし、と追い払うように手を振った。まだ何か言いたそうだったが、これ以上は話さない、という態度で居れば、諦めたようで、「夜遅くにすみませんでした……」と、とぼとぼと帰っていく。

 ――と、扉が閉まるか、閉まらないかの瞬間、後ろ髪が引っ張られる感触がした。

 振返ると、シルムが立っている。軽く腰を負って、口元に手を当てている。わたしの髪が、するりと、そのシルムの口と手の間から抜けていくのが見えた。
 バタン、と扉が閉まる音がすると、わたしは深く溜息を吐いた。

「待てなかったわけ?」

「あの娘、オレの魅了にかかっていそうだったからな。希望の芽を摘んでおこうかと」

 吸血鬼の魅了にかかった、ということは、本当に人外への抵抗力が少ないのか。そんなんで、人外が押し寄せるこの国で聖女としてやっていけるのか? あの子は。
 「扉を閉める振り向きざまに目があったからな。けん制にはなっただろう」と言うシルムに、わたしはつい、「良かったの?」と聞いてしまった。

「あっちの方が若くて美味しいんじゃない。それに、ちゃんと聖女だし」

「いや? 聖女の血なら前にも飲んだことがある。あれもあれで、類を見ないほどの極上の味だったが……オレが飲みたいのは、マシバの血だ」

 え、と自分でも間抜けだと思うほど、気の抜けた声が自分の口から出た。

「相性がいいのか知らんが、お前の血ほど、夢中になるものはないよ。――なんだ、照れているのか?」

 にたにたと笑うシルム。わたしは照れ隠しに、座ったまま、がっとシルムの胸倉を掴んで引き寄せた。

「上等じゃない、この仕事が終わったらひんひん泣かしてやるわよ」

 もうイけない、と泣いて許しを乞われても、シルムの腰が駄目になって、精液が出なくなるまで搾り取ってやろうか、なんて考えていると、バタバタと険しい足音が聞こえてくる。
 なんだ、と思っていると、今度はノックもなしにバンッ! と勢いよく扉が開かれる。

 その先には、第二王子と聖花ちゃん、そして近衛兵の方々が。

「――男を連れ込むなんて、派手なことをするな、マシバ」

 第二王子はご立腹だった。そりゃそうよ。
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