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13話

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使用人視点。


「また売上が下がってるじゃないか!なんでだ!こんなに頑張っているのに!」


「領主様、落ち着きください」


「黙れ!」


領主様の拳が頬に当たります。
思わず私は倒れました。


ここ一年で工場の経営状態は急激に悪化しています。
以前までの好調がウソであったかのようです。


優秀な労働者はいな別の工場に引き抜かれてしまいました。
製品の質も落ち、シェアも他の工場に奪われ続けています。


赤字ばかりです。


ですが旦那様はそれを皆に隠しています。
まったく平気だという顔をして、贅沢もやめません。


奥様やアイリス様、領民の皆様にいい顔ばかりしてるのです。


借金はどんどんと膨らんでいます。
このままではこの工場すら売却する羽目になるでしょう。


ですが、私は悲しいとは思っておりません。
それどころか嬉しいのです。


(フレデリカ様。よくぞお元気で)


なぜなら私達の商売敵がフレデリカ様であったからです。
彼女はどうやったかはわかりませんがポルコ様を味方に付けました。


そして圧倒的な資金力で私達を圧倒しているのです。


ただ資金力だけが強さの秘訣ではありません。
フレデリカ様は、きちんと学びながら事業を進めておられます。


最初はお金しか取り柄がありませんでしたが、今では知識は領主様以上でしょう。
とても立派になられていて、感服いたしました。


「来月までに売上を倍にしろ!そうしなければお前は首だ!」


「ば、倍!?ですか!?そんなことは不可能です!?」


「知らねえよ!やることをやれ!」


領主様はそうは吐き捨てると、不機嫌そうに部屋から出て行きました。
来月までに売上を2倍にするなど不可能な命令です。


どうやら私もこれまでのようです。


工場の資料を集めるだけ集めます。
そして鞄につめて立ち上がります。


こんな所は、もうおさらばです。


私は、アリシア様の元に行きます。
工場の情報を手土産として。


長く勤めた家でありましたが、もういいでしょう。


部屋を出ると領主様と奥様と、アイリス様。
そして新しいご家族であるアルト様がいらっしゃいました。


みなさんでご機嫌に食事をとっておられます。
資金難であるというのに、とても豪勢なお食事です。


「お父様!新しいバッグがほしいの!」


「私も、アルトに新しい玩具を買ってあげたいわ」


「構わんよ。欲しいものは何でも言ってくれたまえ」


断れぬ領主様は、皆様の要求を快く了承してしまいます。
今が工場が存続できるかどうかの瀬戸際にあるというのに。


失敗は必然、成功は偶然であります。
彼らは必ず負けてしまいますでしょう。


(今まで、お世話になりました)


長く使えた領主様に頭をさげます。
そしてアリシア様の元に歩み始めるのでありました。

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