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第1巻 犬耳美少女の誘拐
06
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『見ろよ。あいつ、ロルフ=アヴェーヌだぜ』
『あの3人、例のウィルんとこのガキか』
『まさかあの【聖剣】のメンバー!? 愛しのヴィーナスお嬢様はいないのか!?』
ギルドに入ると、あちこちからそんな声が聞こえた。
ロルフに注目して感激しているやつもいれば、俺達新人組に注目して誰が今後来るのか賭け合ったりしているやつもいた。
それにしても、ウィルもロルフもヴィーナスも凄く有名だな。
思っていた以上に俺の所属する勇者パーティーの名前は広がっているらしい。
「ロルフ様! 本日もたくさんの討伐リストが更新されていますよ!」
ギルドの受付嬢はいつもと同じふたりだ。
俺から見て右側の、黒髪ボブ美女の名前はライリーで、左の茶髪ロング美女がナンシー。俺の記憶が正しければ、たぶんそんな名前だった。
ライリーは見た限りロルフに気があるらしい。
ロルフを見つめる瞳が完全にハートマークで、会えて嬉しそうだ。
自分から積極的に討伐リストを見せ、ロルフ様ならどんなモンスターもイチコロですよ♡、なんて言葉をかけている。
ロルフの細い切れ長の瞳はグレーで、ウルフヘアの光沢ある白髪。
シュッとした高い鼻。
彼は正統派ハンサムのウィルとはまた違う、というか正反対と言っていいタイプのハンサムだ。
「やっほー、オーウェンちゃんと双子ちゃんだ~」
新人組にも気を配って手を振ってくれたのは、もうひとりの受付嬢のナンシーだ。
ナンシーは気さくな人で、誰とでも仲よくできるという感じ。
ただ、ひとりだけ例外がいて――
「アルちゃん! 今日もかっわいいね~」
「えへへへへ」
アルには甘々なのだ。
たぶん昨日俺がアルに感じた感情に近しいものを持っているんだろう。
アルは可愛い。
つい頭を撫で撫でしたくなってしまう愛嬌の持ち主でもある。馬鹿な短所はここで最大の効果を発揮する、ということだ。
ナンシーだってまだ若い人間だが、見た限り20歳か少し上ってところだろう。
アルより年上のお姉さんとして、可愛い弟の面倒を見ているって感じだ。
このやり取りを見ていると、双子の姉であるハルは怒る。
「ちょっと! あっしがお姉ちゃんなんだけどっ」
「いいじゃんちょっとくらい。弟ちゃん貸してよ」
「だめだっての!」
相変わらず、この双子には茶番が多い。
俺はそれが嫌いじゃないが。
「オーウェン、貴様が討伐対象を選べ」
双子の茶番劇を見学していると、低いロルフの声が俺を我に返らせた。
その手に握られているのは、何枚かのモンスターの討伐依頼の紙だ。
大きくモンスターの絵が描かれていて、下に基本情報が記してある。ざっと見た限り、A2ランクが戦ってギリギリ倒せるような候補は3体に絞れそうだ。
「【黄金のキングオーガ】と【漆黒のダークエルフ】、【絶望の魔人】のどれかと戦いたいです」
それぞれ最近話題になっているモンスターたちだ。
何人もの実力者を容赦なく殺していると噂されている【黄金のキングオーガ】、闇の中から現れ、何も見えないうちに挑戦者を仕留める【漆黒のダークエルフ】、そして対峙する者の体力だけでなく、やる気をも奪うスキルを持つ【絶望の魔人】……どのモンスターを選んでも、危険なことに変わりはない。
あとは他の3人の判断に任せよう。
「あんた、相当な強敵選ぶよね」
「敵は強い方がいいだろ」
ハルの指摘に表情を変えず答える俺。
それに、何かあったらロルフが対処してくれるだろう。
多分。
「まあいいけど。このポンコツが真っ先にボコされそう」
ハルがアルの襟を掴んだ。
上に持ち上げ、宙吊り状態にする。
「ほわぁ」
今度はただの阿呆になっているアル。
いつも戦っている姿を見ているからこそ実力を認めているが、普段の様子を見ている限りではただの出来損ないのボケにしか思えない。
きっと今周囲にいる連中もそう思ってるだろう。
「ならば【絶望の魔人】だ」
どういう理由で、どういう基準で決めたのかはわからないが、とりあえずロルフがそう断言した。
なら従わないわけにもいかない。
「わかりました」
「はーい」
「りょ~」
俺達はギルドの美人受付嬢ふたりから祝福を受け、魔人討伐に向けて東へと進んでいった。
***
流石に歩いていくのは時間がかかり過ぎるので、馬車を使用している。
ちょうど客席4人乗りの馬車だったので助かった。
俺はハルの隣、ロルフの正面に座っている。
「どうして魔人を選んだんですか?」
ロルフに聞く。
「どうしてだと思う?」
まさか質問をそのまま返されるとは。
「魔人の目は高価で売れるから、とか?」
当然本気で言っているわけじゃない。
確かに魔人の目は高値で取引されるが、ロルフがそんな金のことに拘るとは思いにくい。
「魔人と対戦すると、本来の自分が剥き出しになる。隠していた本性も、考えも、弱音も全て、魔人の前では隠し通せない」
ロルフはただそれだけ言った。
意味深な言葉だ。
どこか、遠い過去を思い出しているような印象もある。
なんだか嫌な予感がした。
『あの3人、例のウィルんとこのガキか』
『まさかあの【聖剣】のメンバー!? 愛しのヴィーナスお嬢様はいないのか!?』
ギルドに入ると、あちこちからそんな声が聞こえた。
ロルフに注目して感激しているやつもいれば、俺達新人組に注目して誰が今後来るのか賭け合ったりしているやつもいた。
それにしても、ウィルもロルフもヴィーナスも凄く有名だな。
思っていた以上に俺の所属する勇者パーティーの名前は広がっているらしい。
「ロルフ様! 本日もたくさんの討伐リストが更新されていますよ!」
ギルドの受付嬢はいつもと同じふたりだ。
俺から見て右側の、黒髪ボブ美女の名前はライリーで、左の茶髪ロング美女がナンシー。俺の記憶が正しければ、たぶんそんな名前だった。
ライリーは見た限りロルフに気があるらしい。
ロルフを見つめる瞳が完全にハートマークで、会えて嬉しそうだ。
自分から積極的に討伐リストを見せ、ロルフ様ならどんなモンスターもイチコロですよ♡、なんて言葉をかけている。
ロルフの細い切れ長の瞳はグレーで、ウルフヘアの光沢ある白髪。
シュッとした高い鼻。
彼は正統派ハンサムのウィルとはまた違う、というか正反対と言っていいタイプのハンサムだ。
「やっほー、オーウェンちゃんと双子ちゃんだ~」
新人組にも気を配って手を振ってくれたのは、もうひとりの受付嬢のナンシーだ。
ナンシーは気さくな人で、誰とでも仲よくできるという感じ。
ただ、ひとりだけ例外がいて――
「アルちゃん! 今日もかっわいいね~」
「えへへへへ」
アルには甘々なのだ。
たぶん昨日俺がアルに感じた感情に近しいものを持っているんだろう。
アルは可愛い。
つい頭を撫で撫でしたくなってしまう愛嬌の持ち主でもある。馬鹿な短所はここで最大の効果を発揮する、ということだ。
ナンシーだってまだ若い人間だが、見た限り20歳か少し上ってところだろう。
アルより年上のお姉さんとして、可愛い弟の面倒を見ているって感じだ。
このやり取りを見ていると、双子の姉であるハルは怒る。
「ちょっと! あっしがお姉ちゃんなんだけどっ」
「いいじゃんちょっとくらい。弟ちゃん貸してよ」
「だめだっての!」
相変わらず、この双子には茶番が多い。
俺はそれが嫌いじゃないが。
「オーウェン、貴様が討伐対象を選べ」
双子の茶番劇を見学していると、低いロルフの声が俺を我に返らせた。
その手に握られているのは、何枚かのモンスターの討伐依頼の紙だ。
大きくモンスターの絵が描かれていて、下に基本情報が記してある。ざっと見た限り、A2ランクが戦ってギリギリ倒せるような候補は3体に絞れそうだ。
「【黄金のキングオーガ】と【漆黒のダークエルフ】、【絶望の魔人】のどれかと戦いたいです」
それぞれ最近話題になっているモンスターたちだ。
何人もの実力者を容赦なく殺していると噂されている【黄金のキングオーガ】、闇の中から現れ、何も見えないうちに挑戦者を仕留める【漆黒のダークエルフ】、そして対峙する者の体力だけでなく、やる気をも奪うスキルを持つ【絶望の魔人】……どのモンスターを選んでも、危険なことに変わりはない。
あとは他の3人の判断に任せよう。
「あんた、相当な強敵選ぶよね」
「敵は強い方がいいだろ」
ハルの指摘に表情を変えず答える俺。
それに、何かあったらロルフが対処してくれるだろう。
多分。
「まあいいけど。このポンコツが真っ先にボコされそう」
ハルがアルの襟を掴んだ。
上に持ち上げ、宙吊り状態にする。
「ほわぁ」
今度はただの阿呆になっているアル。
いつも戦っている姿を見ているからこそ実力を認めているが、普段の様子を見ている限りではただの出来損ないのボケにしか思えない。
きっと今周囲にいる連中もそう思ってるだろう。
「ならば【絶望の魔人】だ」
どういう理由で、どういう基準で決めたのかはわからないが、とりあえずロルフがそう断言した。
なら従わないわけにもいかない。
「わかりました」
「はーい」
「りょ~」
俺達はギルドの美人受付嬢ふたりから祝福を受け、魔人討伐に向けて東へと進んでいった。
***
流石に歩いていくのは時間がかかり過ぎるので、馬車を使用している。
ちょうど客席4人乗りの馬車だったので助かった。
俺はハルの隣、ロルフの正面に座っている。
「どうして魔人を選んだんですか?」
ロルフに聞く。
「どうしてだと思う?」
まさか質問をそのまま返されるとは。
「魔人の目は高価で売れるから、とか?」
当然本気で言っているわけじゃない。
確かに魔人の目は高値で取引されるが、ロルフがそんな金のことに拘るとは思いにくい。
「魔人と対戦すると、本来の自分が剥き出しになる。隠していた本性も、考えも、弱音も全て、魔人の前では隠し通せない」
ロルフはただそれだけ言った。
意味深な言葉だ。
どこか、遠い過去を思い出しているような印象もある。
なんだか嫌な予感がした。
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