【完結】勇者パーティーの裏切り者

エース皇命

文字の大きさ
17 / 29
第1巻 犬耳美少女の誘拐

断章3

しおりを挟む
「どうやらオーウェンが動いたようだね」

 勇者パーティー【聖剣エクスカリバー】の本拠地アジト
 
 最高責任者リーダーのウィルが呟いた。
 もうすぐ昼になろうとしている。昼食は食堂で取るつもりだった。

 しかしアルを除く新人達は不在の様子。
 少し前まで中庭で訓練していた流れのまま、断りを入れずに外出したようだ。

 ウィルとロルフは静かに大広間でくつろいでいた。とはいえ、ソファーに横になってだらだら……なんてことはしない。ウィルの方は優雅に紅茶を飲み、ロルフは無表情のまま直立している。
 
「キミも飲まないかい? この紅茶は僕のお気に入りだよ」

「断る」

「そうかい」

 ウィルがどこか面白そうに笑った。
 
 広い本拠地アジトでは10人程度のメイドを雇っている。
 獣人からエルフから、種族は様々だ。
 
 大広間にはウィルとロルフの他、3名のメイドが掃除をしていた。猫人族みょうじんぞくの新人少女、エルフのベテラン、人間ヒューマンの中堅――最近ではこの3人が幹部ふたりに付き添っていた。

 ヴィーナスひとりには男性のメイドが3人もついている。

 そして、新人組それぞれにひとりずつ。
 ちなみにオーウェンには同種族の人間ヒューマンであるルーナという少女が専属メイドをしていた。

「それより、オーウェンが動いた、とはどういうことだ?」

 切れ長の目を細めながら、ロルフが聞く。

「言葉通りの意味だよ。僕に何も言わずに外出した、ということになるね。でも、オーウェンがいるのなら大した問題は起こらないと思うよ」

「奴を高く買っているようだな。何故なぜだ? 俺はいまいち奴が信用ならない」

「逆に聞くけど、キミはどう思う? この前オーウェンと一緒に魔人を倒しにいった時、キミは彼に何を感じたかい?」

 ウィルの質問返しに、ロルフは10秒程度黙り込む。
 しかし無視したわけではない。
 最適な答えを考えている。

 それに対し、ウィルも静かに考えるロルフを見守っていた。紅茶をすすり、自身の手首をポキポキと鳴らしながら。

「戦闘能力を見れば、十分なポテンシャルはある。だからオレは奴に全て任せた。最終的に奴は期待以上の勝利を得たわけだ。だが……ウィル、貴様が聞きたいのは別の話だ。違うか?」

「そうだね。続けて」

 紅茶を飲み終えたウィルはソファーから立ち上がり、ロルフの方へと近づいていく。

「奴は判断力が優れている。あの魔人を攻略するためのポイントは血を流さないことだった。オーウェンはそれをアルの悪例を参考に仮定付け、パワーで確実な戦い方へと持ち込んだ」

「興味深いね」

「ただ……それだけだ。オレからすれば、オーウェンよりも優れた引き抜きの対象は他にもいた。あのクズのところのアレス=ヴァイオラ――何故先に仲間に引き入れなかった? オレは貴様を信頼しているが、オーウェンは・・・・・・信頼していない。未だにアレスを捨て奴を選んだ理由がわからない」

 この神聖都市アレクサンドリアには、数多くの勇者パーティーが存在する。
 
 それぞれの派閥同士で競い合い、優秀な人材を集めて構成する戦いとなっている今日では、【聖剣エクスカリバー】のような大きなパーティーが、規模の小さいパーティーから将来有望な人材を引き抜くのはよく行われていた。

 新人組のアルとハル、そしてオーウェンはその引き抜きで【聖剣エクスカリバー】に加入した。
 
 いずれも最終的な決定権を持っていたのはウィルだ。
 ロルフもヴィーナスも、ウィルの決定には反対できない。ウィルの判断が間違っていたことはない――そこには確固たる信頼がある。

 アレス=ヴァイオラというのは、オーウェンと同時期に引き抜き候補だった青年だ。

 今ではネロ率いる最大のライバル派閥【聖剣アスカロン】の一員となって、メキメキと成長を遂げている。

「オーウェンを否定するつもりはない。だが……後悔していないのか? アレスを選ばなかったことに」

 ロルフはウィルが初めて判断を誤ったと思っていた。
 珍しいとも思っていたが、ウィルも人なので仕方がない。もっとも、彼の場合はシンエルフだが。

 誰だってミスはするものだ。

 ウィルはもうロルフの目の前に移動していた。
 その小さな体と、ロルフの体格のよい獣人の体が並ぶ。

 ウィルは身長135CMセーチメルトルで、ロルフは179CM。父親と子供のようだ。

 しかし、そんな外面的なものとは打って変わって、内面的なものでは立場が逆だ。ウィルは親で、ロルフが子。

「僕は後悔なんてしてないよ。今でもオーウェンを選んで正解だったと思っている。そして、アレスを選ばなかったことも正しいと思う」

「それは強がり……」

 途中まで言って、辞めた。
 
 ウィルに限ってそんなことはない。
 彼が自分のプライドや面目を守るために強引な意見を張ることなんてないのだ。常に冷静に、正直に――それがウィル=ストライカーというシンエルフなのだ、と。

 ウィルの真っ赤な瞳の奥には、確信という名の炎が静かに燃えている。

(オレの力不足か……)

 ロルフは知っている。
 目の前にいる小さなシンエルフの好青年が、自分より遥かに強いことを。

 ロルフは知っている。
 我らがリーダーが、自分より遥かに賢いことを。

「まだわからなくてもいいよ。でも、僕はオーウェンこそが、この勇者パーティーの『切り札』だと確信しているんだ」

「何故そこまで言い切れる?」

 ロルフは気になって仕方がなかった。
 
 オーウェンが切り札?
 どこまで見据えた発言なのかも想像できない。ウィルは自分の視野にない些細なことも見落とさず、現状から導き出される未来を予測している。

 ウィルの頬がまた緩んだ。

「うーん、それじゃあ、これはどうだい? オーウェンは――ということだよ」

 その後、ロルフはウィルに裏切り・・・の真相を明かされることとなった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

処理中です...