【完結】勇者パーティーの裏切り者

エース皇命

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第1巻 犬耳美少女の誘拐

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 自分は◯◯だ。

 そう勝手に思い込んでいることが、自然と視野を狭くすることがある。

 俺はまさにその状況に陥っていた。
 自分が裏切り者だと勝手に解釈して満足していたことで、他の人を疑うこともしなかったのだ。俺は――自分で言うのもなんだが――結構頭が切れる方だと思う。だが、今回の失態を受け、その認識は改めようと思った。

 まだ見えていないものがある。
 それこそ、ウィルには見えているものだ。

 初めから尊敬していたが、ウィルの洞察力から何から、長年の経験の賜物には勝てない。

 ちなみに、ウィル=ストライカーは今年で33歳になった。
 シンエルフは――というかエルフ族は――人間ヒューマンでいう20歳くらいまで成長したら、その後は老けずに若々しさを保つようになっている。

 だから彼の外見はいつまでも青年だ。死ぬまで、そのハンサムで若々しい顔のままだ。

「つまり、本当の裏切り者は――で、ウィルはその裏切り行為を阻止するために今まで動いてきた、と?」

「そういうことになるね。ほんの少し前、ロルフも真実を知った。でも、僕とロルフだけではどうにもならない。だからキミが必要なんだ」

 俺達は本拠地アジトに戻る道を歩いている。
 詳細はウィルの口からだいたい聞くことができた。

 本当の裏切り者の正体、ウィルの考えるその者の動機と目的……未だに信じられない思いだが、受け入れるしかない。

 そして知った。
 俺の目的を達成するためには、その裏切り者を潰しておかなくてはならない、と。自分が裏切り者でない以上、手を打たないわけにはいかなくなったのだ。






 この世界は面白い。

 かつてこれほどまでに綺麗に騙されていたことがあるだろうか?
 今の俺は最高にゾクゾクしている。

 早く対決したいものだ。






 ウィルの話すことに偽りがないとは言い切れない。
 嘘を言っている可能性はある。

 本当はウィルが裏切り者だった、なんていう展開も今では否定できない。

 だが、少なくとも彼の話には納得できる点も多かったし、それはそれから確かめていくつもりだ。とりあえずは信じることから始まる。

「どうして他のメンバーには言ってないんですか?」

裏切りこのことに関しては慎重に対処する必要がある。勿論ロルフのことは信頼しているから協力してもらうわけだけど、まだ他のメンバーに関しては管理しにくいところもあってね」

 ウィルが眉をかいた。
 
 裏切り者の情報に関して、できるだけ漏洩を防ぎたいらしい。

「じゃあ、俺のことはどうしてそんなに信用してるんです? ましてや1番の新入りですよ」

「そう思われても仕方ないね……それに関しては今ここで言ってしまうわけにはいかないなぁ。でも、ついさっきキミをメンバーに選んだ理由を教えたよね? それがキミを信頼する理由、と言っても間違いじゃないよ」

「まあ、それは確かに」

 裏切り者の正体を聞いた後、ウィルは俺の選抜理由もそれに従って教えてくれた。

 俺はそれを聞いて一部納得はしたわけだが、それが俺を・・信頼する1番の理由だとは思えなかった。

「もう本拠地アジトだ。この情報ことについてはくれぐれも内密にね。ハルとクロエには、僕に厳しく注意されたと伝えるといい。オーウェンの、いかれるリーダーに怯える演技、期待しているよ」



 ***



 その夜。

 俺は夕食の席に行かず、自分の部屋で考え事をしていた。

 クロエとハルには、ウィルに指示された通りに説教だと伝えておいた。
 反応は予想通り。
 頭をぺこぺこ下げて謝るクロエと、鼻を鳴らして自業自得と言い放つハル。

 俺はそれっぽく会話を切り上げ、もうそれ以降は誰とも話していない。こうして部屋にこもり、裏切り者の事実と向き合っている。

『オーウェン様、入ってもいいですか?』

 扉の外から女性の声がする。
 曇りのない、軽やかで穏やかな音色。

 メイドの内のひとり、ルーナだ。

 俺と年齢としが同じで同種族にんげんということもあり、メイドの中でも1番仲よくしていた。今では同年代の異性の中で誰よりも近い存在なのかもしれない。
 そしてもうひとつ。






 ルーナはもう既に、『俺の女』になっているということだ。






「鍵はかけてないから好きに入ってくれ」

『わかりました』

 ギギギッと重厚感のある音を奏でる扉。
 そこはもう少し軽快な音であって欲しかった。

 そして部屋に彩りをもたらす空色の髪の美少女。

 みずみずしい長髪は後ろでひとつに結えられていて、つい数日前に作った前髪はその美しい顔立ちに可愛げを与えている。
 何本か三つ編みが混じっているところもポイントだ。

 瞳の色はわからない。
 というか、見る度に変わる。

 一色に定めることができないのが事実だ。光を反射して明るい色ならどんな色でもなれる……のかもしれない。

「オーウェン様♡」

 ゆっくりと扉を閉め、俺の目だけを見つめるルーナ。今宵は海のように真っ青な瞳だ。

「今日はいきなりどうした?」

「最近は忙しそうで、私、ずぅっと我慢してたんです。オーウェン様が言うように、周囲にこの関係がバレると困りますから……でも、でもでも……夕食の席にも現れないオーウェン様を想うと、気持ちが抑えられなくなって……」

 はっきりさせておこう。
 俺はルーナと付き合っているわけでもないし、夜の関係というわけでもない。

 彼女のとある事情《・・》を、俺が密かに解決してやったことで、完全に慕われ、想われるようになってしまった、というわけだ。






 まあ、それも俺の思惑通りではあるが。

 今のルーナなら、俺のどんな頼みも聞いてくれる。
 もう俺の支配下にあり、俺がルーナという可愛い馬の手綱を握っているのだ。
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