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二章 獣人の領土~ドンタイガー領~

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 ていうか、ここの領地来てから露天しか見てないけど、その露天でも売ってなかったよな?氷なんて。俺がイメージする、四角くて透明で冷たい小さい氷とは違うのかもしれない。
「氷を売ってるのはどこ?」
「えっと…どこ…でしょう?」
「うん、ありがとう」
 知らない、という事でね。メェルもすっごい不思議そうにこっち見てるし。というか、店あっても識別できないじゃん。文字書く人いないって事は文字を識別できないじゃない。俺も識別できないけど、だから迷子になるんだけど。どうすりゃいいんじゃい!!
 気づくと後ろからコンコンと音がした。ああ、すいません、邪魔だったのかね?と道を譲る。すると、目の前に出てきたのはギルドで点字を教えた魚人の一人だった。本当に見た目は人間そっくりだ。なんで、魚人だけ人間そっくりなんだろ?ていうか…魚人?氷の場所知らないかな?
「うん?それは、点字板じゃないか!」
 魚人は小さい点字の板を取り出して、文字を並べる。すごい、腕の上に置いているのに落ちて行かない。細かいウロコとかが生えているのかな?それがストッパーの役割をしているとか?何々…?って読めないんだったわ。ごめん。
「お礼を…言いたいそう…です」
「あら?そうなの?別にいいのに」
 魚人はすぐに点字を並べ替える。ていうか、メェルは文字読めるのか?!今更気づいたけど。すごい、俺より頭いいじゃない。この大陸全ての言葉、ミミズが暴れたようにしか見えなくて、正直困ってたんだよ。
「氷売ってるところ…知ってます」
「教えて!!」
 魚人は手招きしている、こっちに来いと言う事だろう。良い事すると、良い事が返ってくるんだな…!ていうか、俺の意志が伝わった…いや違うわ、後ろに居て話を聞いていたんだろう。俺を見かけてこっちに来たのかな?可愛い奴だ、まぁ俺の妄想だけど。
 急に人の前で止まるから、手をわたわたさせてしまった。なんだ、もう着いたのか…?って、ここなの?普通に路地裏というか…なんというか店の感じがしないけど。魚人は裏口の扉をコンコンと叩いている、すると奥から猫の獣人が出てきた。
「どうしたの?あら?お客さん?」
「こちらで氷を売っていると聞いて来ました」
「売っているわよ?欲しいの?」
「ええ、どれぐらいの大きさか、それと加工できるかを聞きたくて」
「大きさはこれぐらいだけど…加工…ね?できるかしら?」
 猫の獣人は両手をいっぱいに広げる。え、そんなにでかいの?そしたら二個ぐらいあれば足りるけど…この家みたいな所のどこに保管しているんだ?そもそも、そんなにデカい氷をどうやって山から持ってくるんだ?
「入手方法は…秘密よ?」
「え?顔に出てましたか?」
「そうね、二個どうやって運ぶのかしら?」
「中借りられますか?」
「ええ…いいけれど?」
 不思議そうに首を傾げる店主。でも、最初に加工するって言ったからさ?そもそも、加工を中で出来るなら…そのまま運べるだろう。多分だけど、二個の氷をそのまま二つ運ぶのは無理がある。
 魚人が叩いた扉をくぐって、部屋に入る。部屋というか…倉庫か。床に仕掛けがあって、そこから下にもぐっていく。薄暗い中、階段を下りていくとそこに氷の保管庫があった。氷の大きさはそれぞれ違くて、部屋も横に長広い。
「これならいけそうか?」
 さぁ、オーキチ選手氷を前にスキル発動です!こうしないと、剣筋が安定せず、どうにもできませんからね!問題はこの氷を加工できるかどうか、いざ一太刀!ケーキを斬るがごとく、スパッと切れました!イメージ通りです!この氷を四枚の板にカットしていきまして、四角く貼り付けます!取っ手を吐ければ、はい完成!お料理番組がごとく、すぐに成功することが出来ました!
「ふぅ…出来た」
「これは、何に使うのかしら?」
「冷蔵庫…食材の保管ですね」
「あら、便利そうじゃない?」
「ええ、これが無いとやってられないぐらいには便利ですよ?」
 誰しもが一家に一台は持っている冷蔵庫、食材を低温で保管する事が目的だから、鮮度を保つために必要だ。昔のように知恵を絞る必要が無くなってしまったと言えばそれまでなのだが。
「私も欲しいわね…お願いできるかしら?」
「ここに置いておけば鮮度を保てるのでは?」
「上にいちいち上げるのは流石に手間だわ?」
「なるほど…。場所を借りたし、作りましょう!」
 二セット目を作り終えて出来た冷蔵庫を運び出す。氷二個分の代金を支払って店の外から、先ほどの牛の店主が居た露天の傍に。すると、牛の店主が目を丸くして、”そいつはなんだ?!”と騒ぎ立てる。待て待て、落ち着いてくれ!こいつの用途を説明すると、牛の店主は喜んでいた。まぁ…塩漬け肉の必要性が無くなってしまったけど、それはそれでいいか。
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