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二章 獣人の領土~ドンタイガー領~

六話 血の臭いと初めての感触

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 確かにちらほら羊の獣人も見えるけど…この中からでもわかるのか?すごいな、仲間意識がかなり強いんだろうな。血縁関係があればなおさらなのだろうか。それよりさっきから気になるんだけど…人を斬る感覚が残ってて気持ちが悪い。くそ…なんなんだよこれ。
「大丈夫…ですか…?」
「ああ、大丈夫だと思う」
 俺の好きな実況を人殺しのために使うのも嫌だし…吐き気がする。歯を食いしばれ、目の前の敵を叩き斬れ、相手を同族だと思うな。
「隙あり!」
 後ろから斬りつけられる。待て、実況が発動しな…い?”ガキン”という音と共に、メェルが俺の事を庇ってくれる。メェルはダメージを受けた様子はない。
「ごめん、ありがとう」
「いえ…大丈夫です…!」
 さっき殺した死体の顔がこちらを見ている気がする。目が合う気がする。はぁ…大丈夫、大丈夫だ。落ち着け、こんな考え事をするな。相手は俺らの事を殺しに来ているんだ。斬れ、斬れ、切り伏せろ!
「うぉぉぉ!!」
 さぁ、もう一度、オーキチ選手の闘志に火が灯ります!それと同時に、実況もスタートします!戦況は相変わらず不利で、斬って、斬って、斬りまくる!これこそが作戦です!メェル選手が弾き、オーキチ選手が斬る!
「しっかりしないとな!」
「頑張りましょう…!」
 戦術…戦術…本当にどうすればいいんだよ。攻撃は激しさを増していく一方だし、もはや囲まれているし。本当に…領主に会う方法の中で、これが最善の一手だったのか?
「行け!相手は弱っているぞ!」
「そんなわけあるか!!!」
 さぁ、オーキチ選手の咆哮!相手は驚き動きが止まってしまった!そんな相手を切り伏せ!進む!二人しかいないのに、なんと勇敢な事でしょう!相手は二人に襲い掛かればいいはずなのに、その場を動くことができません!
「行くぞ、指揮官、お前の元に!!」
 メェル選手が前衛でタンクをして、ヘイトを買う!騎士たちの間を流れるように通って行きます!メェル選手は斬りつけられても物ともしない!何故かって?ウールという分厚い装甲が備わっているからです!さぁ、どんどん迫っていきます!
 領主はこの状況を見て、どう思うんだろうか。会った事もないし、領民でもないけど、会ってくれるんだろうか。
「メェル、ダメだ、一度下がる!」
「分かり…ました…」
 オーキチ選手とメェル選手は二人で元来た道を戻っていきます!流石に強行突破をすることは不可能だ、と悟ったようです!いくらメェル選手が居たとしても、こちらは二人しかいないのです!戦況を確認することが大切だ、と踏んだようですね!
「あぁ…減った?これ…」
「減ったように…見えません…」
 死体は転がっているのに、全然数が減らない。二人じゃしんどいけど…獣人の手を借りるわけにも行かないしな。俺ら二人が始めた戦争だし、俺ら二人で片付けないと…行けないけど…。
「これは…どうする?」
「やるしか…ないです…。」
「うん、逃げる選択肢は全くないけど…助けてほしいね。」
「それは…そうかも…です…」
 二人で息を切らしながら、座り込む。相手も少しばかり作戦を練り直しているのか、全くこちらまで攻めてこない。相手からしたら、二人しかいないのになんでこんなに時間が掛っているんだ、となっているのだろう。
「ていうか…相手があまり強くないよね?」
「そうなんでしょうか…?」
「戦争に出てくるのはスキル持ちかと思ってたんだけど?」
「そうですね…スキル…見てないです…」
 う~ん…この後、もし仮に特殊部隊なんかとして、スキル持ちが大量に出てくるんだとしたら…ぞっとするな。だって、スキルってかなり強いでしょ?メェルや俺みたいに普通の兵士ぐらいなら数十人相手出来るぐらいには。
「獣人に助けを求めたい」
「出来ますかね…?」
「いやぁ、どうだろう?無理かも」
「勝手に…始めちゃってますから…」
「加勢しますよ!」
 声のする方には、ギルドの受付嬢が立っていた。それも…領民が数百は居る。
「その…大丈夫かな?領主に何か言われない?」
「ドン・タイガー様ならそんなことは言われないと思います!」
「そうだそうだ!寧ろ守れって言うよな?!」
 ”うぉぉぉぉ!!!”という声を上げて、各々闘志を燃やしている。助かる、非常に。今がチャンスだ、これを逃してはならない!
「ありがとうございます、皆さま!」
「当たり前だろ!!寧ろ俺らの領地を守ろうとしてくれてありがとうな!」
 あ、この人絡まれてた人か。災難だっただろうな、人間が急に来ていちゃもんに対応させられて。ていうか、ここの領主は名前が良いね。なんか…シャンパンみたいで。
「じゃあ、行きますか!」
 領地防衛戦、第二陣出撃です!獣人を数百人引き連れての大乱闘!果たしてうまく行くのでしょうか!
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