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6話 疑惑と信頼
しおりを挟むお給料をもらった。でも食事はきっちり三食出してくれるし、服や石鹸などの生活必需品は全て支給されるのでこれといった使い道が思い浮かばない。勝手に敷地の外に出てもいいのかな、なんて思ったところで、隣で一緒に洗濯物を畳んでいるアイシャちゃんに声をかけた。
「お買いものとかしてみたいんだけど、勝手に外出ってしてもいいの?」
「うーん、門限までに帰ってくれば問題ないと思うけど......待ってて、リーダーに聞いてくる!」
そしてアイシャちゃんは立ち上がり、とてとてと走り去って見えなくなった、そして五分後、彼女が戻ってきて、両手で大きな丸を作る。
「誰かと一緒ならいいって! 今度のお休みの日に私と行こうね!」
「……うん」
ひとつひとつの行動を管理されているな、というのがこの生活の印象だ。働いているときはもちろん、相部屋なので寝てるときも常に人がそばにいる。就寝時間は絶対厳守で、夜中にトイレ以外に部屋の外に出たのが奥様軍団のリーダーにバレたらもれなくお説教。お風呂は一階に大浴場があって女子全員で一気に入る。プライベートな空間が一切ないのだ。修学旅行のあの状態が毎日続く感じ。
まぁ嫌なら辞めろって話だし、ここにいれば飢え死にすることはないから特に不満はないのだけど……それでも窮屈だよね。
休みの日、財布を握りしめてアイシャちゃんと城下町を歩く。この町は王国の中心部ともあって、たくさんのお店が並び、大勢の人で賑わっている。
「サトミはなにか欲しいものあるの?」
「お世話になった人へのプレゼントを買いたくて」
私がすんなり入隊できるようにいろいろ手回ししてくれただろうし、仕事を紹介してもらったお礼にルイスさんへのプレゼントが欲しいんだけど……。
「アイシャちゃん、男の人ってなにをあげたら喜ぶと思う?」
「恋人?」
「いやいや、全然違う」
「普通の関係ならアクセサリー系統は重いよね。値段もそこそこするから相手に気を使わせちゃうし、服もサイズの問題や相手の好みがあるから避けた方がいいね。消えものが無難だと思うよ。食べものとか、飲みものとか。その人なにが好きなの?」
「お酒、かな」
「酒はちょっとなぁ……」
結局うんうん頭を悩ませて、ルイスさんは甘いものが好きだったことを思い出して、小綺麗な箱に入った焼き菓子の詰め合わせを購入した。これなら日持ちするし、上司に贈るならベストな選択……だよね?
早速騎士団の建物に戻ってきて、隊長室を覗いてみると、そこには誰もいなかった。ルイスさんも今日はお休みなのかな。
「なにをしている?」
「ひゃあっ!?」
突然後ろから肩を叩かれて、振り返ってみるとそこにいたのは赤茶髪のヤンキー(オラオラっぽいので私が勝手に心の中でそう呼んでいる)ヨハン隊長だった。
「ルイス隊長がどこにいるか、わかりますか?」
「あいつならレオさんに呼ばれて副団長室にいるよ」
「じゃあこれルイス隊長に渡しておいてもらえませんか?」
「自分で渡さなきゃ意味ないだろ」
「……え?」
「もうすぐ戻ってくるから、ここで待ってろ」
「は、はい」
ルイスさんが戻ってくるまで隊長室にお邪魔させてもらうことになった。ボサッと突っ立っていたら座れよと命令されたので、おずおずと空いている椅子に腰掛ける。
「どうだ? 仕事は慣れたか?」
「はい、みなさん優しくしてくれて、本当に助かってます」
「そうか、質問があるならなんでも受けつけるが」
「どうして一人で外出しちゃダメなんですか?」
「二人組で行動すれば片方になにかあっても、もう片方がすぐ助けを呼びにいけるだろ?」
「……あー」
「というのは建前だ」
「本音は?」
「逃げられたときすぐ上に報告がいくようにするため」
「逃げる?」
「騎士団の内部事情を知っている人間に急にドロンされると困るんだよ」
「つまり、私が外部に情報を漏らさないように監視されている?」
「はじめのころはみんなそうだよ。時間をかけて徐々に信頼を積み上げていくんだ。まっ、あと半年は我慢してくれ」
「……わかりました」
「……サトミ?」
ヨハンさんとベラベラおしゃべりをしていたら、ルイスさんが戻ってきた。私は立ち上がって、彼に焼き菓子の入った紙袋を渡す。
「これ、紹介してもらったお礼です」
「ありがとう。すごく嬉しいよ」
「それでは失礼しました」
「あっ! 待って……」
押し付けるような形になってしまったが、お仕事の邪魔になってはいけない。私は用件を済ませると、そそくさと隊長室から出た。
ヨハンさんの言葉が何度も頭の中をぐるぐると回る。胸がモヤモヤして落ち着かない。……私、信頼されてないのかぁ。
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