強面な騎士様は異世界から来た少女にぞっこんです

島崎 桜

文字の大きさ
12 / 50

11話 おしゃれ談義

しおりを挟む

自分の格好を見て、改めて地味だなあと思う。制服はシルエットが寸胴に見える丈が太ももくらいまである黒いロングワンピース。家事をするときはその上から汚れないようにエプロンを着る。

下着は胸につけるのは白かベージュのスポブラ。パンツはお尻をすっぽり覆う麻布のかぼちゃパンツ。ワ○メちゃんみたいなやつね。お腹を冷やさないから安心。

化粧は禁止、香水も禁止。指輪やネックレス、ピアスなどの装飾品の装着もダメ。髪の毛は肩に付く以上の長さは結べという。ここまで規則が厳しいと中学校ですか? って感じ。ちなみにアイシャちゃんは髪型で隠れるからってこっそりピアスつけてた。ピアッサーなんてないだろうから、どうやって耳たぶに穴開けたの? って聞いたら、普通に裁縫針でって。怖っ。

サトミにも開けてあげるよと言われたが遠慮しておいた。痛そうだし、失敗の確率も高そうだ。……しかし、なんでお化粧しちゃダメなのかな? 別に仕事に支障が出ないならいいと思うんだけど。

「そりゃーおめー、若い野郎が発情しちまうからだよ」
「発情?」
「ウチ(騎士団)に志願するようなやつは好戦的な輩が多い。良くも悪くも欲が強いのさ。そんな野獣の群れの中に脚だの胸だの見せつけてバッチリ決めた若い女がいてみろ。すーぐ餌食になっちまう」

今日の天気はおおむね晴れ。さんさんとした太陽が照りつける中、庭で剣術稽古が行われている。額に汗をかきながら木刀を振るう若い兄ちゃん達。いい目の保養だ。

私はお茶係という名目で、ついでに稽古の様子を見学させてもらっていた。私お手製の水に塩と果糖を混ぜたスポーツドリンクは好評。激しい運動をするときは水分補給がなによりも大事。

ベンチに座ってボーッとしてたら、ヨハンさんが隣に腰掛けてきたので、コップに注いだスポーツドリンクを一緒に飲みながらおしゃべり中。ヨハンさんは聞いたことにはなんでも答えてくれる。嬉しい。

「……マーガレット様は?」

あの規則破りの見本市のようなシャツのボタン三つくらい開けてる胸元おっ広げのギラギラゴテゴテボインお姉様は?

「あれは例外だよ。間違ってもマギーに手を出そうとするような度胸があるやつはいねえさ」
「例外、ねぇ」

それはマーガレット様が隊長だから? それとも強いから? 私も強かったら、何でも許されるのかな。……そういう問題じゃないか。

「昔はそんなに厳しくなかったんだけどよ。前に女子の部屋に忍び込んで夜這いしかけようとしたバカがいてな」
「ヨハン」

ヨハンさんの話をぶった切ったのは、気配を消して、いつのまにか真後ろに立っていた鬼のような形相のルイスさんだった。木刀を片手に仁王立ちする姿はどこぞの体育教師のよう。

「サボってないでさっさと練習に戻れ!」
「あー……」
「頑張ってくださーい」

ルイスさんに猫のように首根っこを掴まれて、ヨハンさんはそのまま連行されていった。さて、私も中に戻るかな。

「サトミ、こっちこっち」
「なに?」

アイシャちゃんに腕を引っ張られて、連れてこられたのはトイレの中の手洗い場。唇に指を当てられて何をされるのかと思って目をつぶったら、なんか塗られた。

「ほら、可愛い」

目を開けてみると、鏡の前の私は反射された光を受けていつもより少しだけ輝いていた。アイシャちゃんが私の唇に塗ったのはピンクのリップグロスだった。

「これくらいならバレないから大丈夫だよ」
「ありがとう」

アイシャちゃんと別れて廊下を歩いていると、この先には隊長室があったことを思い出した。髪の毛を巻いてきた日は教師にバレないように職員室への道は避ける……みたいな。なんでビクビクしてんだろ、私。

くるりと身体を回転させて、逆の道から行こうとすると、そこにはまさかのルイスさん。なんで?

「あっ、どうも」
「忘れ物を取りにきたんだが」
「そうですか、それでは失礼します」

そそくさと横をすり抜けて逃げようとしたら、腕を掴まれた。顔をじろじろ舐めるように見られて、なんだかこそばゆい。まずい、怪しまれている。

「待て。化粧は禁止だって、言われなかったか?」
「……言われ、ました」
「じゃあするな」
「……は、い」
「それでいい。サトミは化粧なんてしなくても、十分綺麗だから」

そしてルイスさんはそのまま隊長室に入っていった。心臓の鼓動が早くなる、顔が熱い。異性に息をするように綺麗だ、なんて言われたの初めてだ。化粧っていってもあんなちょっとなんだから、注意深く観察しなければわからないレベルなのに。

それだけルイスさんは私のことを見ているってことか? いやいや、勘違いするな。ルイスさんは私が規則を破ったから注意しただけだ。それ以上の気持ちなんて微塵もないはず。

……どうして、彼のことを意識してしまうんだろう。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。

尾道小町
恋愛
登場人物紹介 ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢  17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。 ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。 シェーン・ロングベルク公爵 25歳 結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。 ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳 優秀でシェーンに、こき使われている。 コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳 ヴィヴィアンの幼馴染み。 アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳 シェーンの元婚約者。 ルーク・ダルシュール侯爵25歳 嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。 ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。 ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。 この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。 ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳 ロミオ王太子殿下の婚約者。 ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳 私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。 一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。 正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?

お飾りの妃なんて可哀想だと思ったら

mios
恋愛
妃を亡くした国王には愛妾が一人いる。 新しく迎えた若い王妃は、そんな愛妾に見向きもしない。

【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています

22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」 そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。 理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。 (まあ、そんな気はしてました) 社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。 未練もないし、王宮に居続ける理由もない。 だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。 これからは自由に静かに暮らそう! そう思っていたのに―― 「……なぜ、殿下がここに?」 「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」 婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!? さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。 「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」 「いいや、俺の妻になるべきだろう?」 「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。

処理中です...