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24話 長期休暇
しおりを挟む年末から年明けにかけての長期休暇。この期間は団内の業務が一斉に停止して、各自好きな時間を過ごすことかできる。アイシャちゃんやララちゃんなど、ほとんどの人は実家に帰ってしまったが、私は帰る場所がないので居残り。建物の中はがらんと静まり返っており、どこかもの悲しさを感じさせる。
周りに誰も人がいないって、寂しいな......。
なにもしていないと暇と孤独に押しつぶされそうになるので、私は雑巾でせっせと床を掃除していた。
「サトミ?」
男の人の足元が見えて、ふと顔をあげてみると、そこにいたのはルイスさん。彼は腰を曲げて屈むと、まるで幼子を心配する親のように私に視線を合わせた。
「どうしたんだ?」
「やることがなくて暇なので......」
「なら隊長室にお茶を持ってきてくれ、喉が乾いたんだ」
「はい!」
誰かに用事を頼まれた。私が存在している意味ができた。私は急いで手を洗って、給湯室でお茶をいれると、隊長室へ向かう。ルイスさんの他には誰もいない。
「失礼します」
「ありがとう」
「ルイス隊長はお休みじゃないんですか?」
「一応なにかあった時のために残ってるんだ。まぁ、俺の場合は帰る実家がないから仕方なく......だが。親父もお袋も病気で死んじまったからな」
「......ご兄弟、とかは?」
「兄が一人。小さい頃はよく面倒を見てもらったが、大人になってからは一度も会ってない」
「なんか、すみません」
想像以上に重い話だった。ルイスさんも独りなんだ。家族に会えないのがどれだけ寂しくて、苦しいか、今の私なら痛いほど分かる。
「いいんだ。俺もいい歳だ。一人で自立して生きていかなきゃならない」
「私も......」
「辛いよな、サトミも」
それは同情か、傷の舐め合いか、ルイスさんは立ち上がると、私の身体をしっかりと抱きしめた。鼻をくすぐる石鹸の匂い。心地よくて、すごく安心する。
「......ルイス、さん」
そのままキスされるんじゃないかと思った。でも、その柔らかな感触がいつまでも降ってくることはなくて、恐る恐る目をつぶると、ルイスさんがピンッ! と私の額にデコピンをかました。
「いたっ!」
「ははっ、ごめんごめん。ふざけすぎたな」
目を開けてみると、さっきまでのいやらしい雰囲気はどこへやら。ルイスさんはケラケラと腹を抱えながら笑っていた。
「サトミは本は好きか?」
「好きですけど......この国に来てからはほとんど読めていません」
アスディア王国の共用語はアルファベットを反転させたような、ミミズがのたうち回っているような独特なもので、ありがとう。とか、こんにちはとか、簡単な意味の単語は読めるようになったけど、長文となるとさっぱりだ。
「なら俺が読んでやろうか? 教養を深めるのはいいことだ。夕方になったら俺の部屋に来るといい。ヨハンも休暇が終わるまで帰ってこないしな」
……もしかして私誘われてる? いやいや、ルイスさんは私のことを考えて言ってくれているだけだ。水商売出身で、まともな学のない私を哀れんでくれているだけだ。
「ありがとうございます、ぜひお願いします」
「うん」
そしてルイスさんはコップを持ち上げて、お茶の中身をすすった。そのあとは少し雑談をして、私は隊長室から出て、普段とは違う日っていうのも、なかなかいいもんだなって。
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