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25話 長期休暇2
しおりを挟む夕方って何時くらいかな。十六時じゃまだ早いか? 十八時じゃ外真っ暗だし、夜ご飯の時間が十九時からだから、それまでに終わらせるとして、間をとって十七時にルイスさんの部屋に行ってみよう。ううっ、こんなときスマホがあればいちいち悩まなくて済むのに……。この国の連絡手段、いまだに人が走って手紙を届けるだけだもんな。
「失礼しまーす」
「やぁ、来たか」
「よろしくお願いします」
ノックをしてからドアを開けると、中央のテーブルに数冊の本が置いてあって、その前にルイスさんが座って待機していた。準備いいな。
本を開いたルイスさんがページに書いてある内容を読み上げるので、隣で見てる私がその文章を目で追っていく。アスディア語の文法にはある程度の規則や形式があり、漢字の音読みや訓読み、また日常生活に必要な語彙が多い日本語よりは難しくない。
が……一から新しい言語を覚え直すということはそう簡単なことではなくて。英語のテストで4点という衝撃的な点数を取った私にとっては厳しいものがある。
「……既に私には、偽物と優しさの区別がつかなくなっていた」
ルイスさんが読んでいるのは恋愛小説。客と娼婦の報われぬ恋事情。登場人物が多いし、重くてなに言ってんのか分かんない。
彼の低くてゆったりした声を聞いていると眠くなる。スリスリ、スリスリ、ルイスさんにひっついて身体をこすり合わせる私はただのペット。
「うーん……」
「おいおい、まだ途中だぞ」
「えへへ」
にゃぁーん。私がいくら甘えても、ルイスさんは全く嫌がらない。彼の大きな手のひらが私の頭を撫でて、そのままチュッ、と私の唇に軽いキスを落とした。
「っ!?」
一瞬、なにをされたのか分からなくて、心臓が嫌な音を立てて跳ねた。背筋に電流が流れたような衝撃が走って、私は自分で自分の身体を抱きしめたまま後ろへ下がった。背中に壁がぶつかって。目の前には私に手を伸ばすルイスさんが居て。私は反射的に足を強く閉じた。
「......ごめんな」
どういうつもりで謝ってるの? あれはスキンシップ? それともそれ以上? ルイスさん酔ってないよね? シラフだよね?
彼は床に膝をついて、座ったまま私の首筋に何度も口づけを落として、服の上から私の上半身をまさぐった。耳にルイスさんの熱い吐息がかかる。私は抵抗もせず、小動物のように身体を縮こませることしかできない。嫌じゃない、むしろ気持ちいいけど、男性経験がない私にとっては全部初めてのことで、恥ずかしいのと、怖い感情がごっちゃになって。
「んん……」
「はっ!」
夕食時のチャイムが鳴り響いて、ルイスさんは我に帰ったように私の身体から手を離した。
「……」
私は慌てて衣服の乱れを直した。ルイスさんはなにも言わない。ただ、悲しげに私を見つめるだけだ。
「ご飯、いきましょうか」
「……ああ」
無言のまま二人で食堂への道を歩くが、なんだか気まずい。食堂は薄暗くて、誰も人がいない。当然満足な食事の用意もないので、台所を漁って二人分のパンとチーズを見つけて、端っこの席に座ってもそもそと味のしないパンを口に運ぶ。
「さっきは、ごめん」
「……いいえ、別に」
ルイスさんは私のことをどう思っているんだろう。すごく気になったが、彼との関係を壊したくなくて、それ以上のことはなにも言わなかった。
簡素な夕食を終えたあとは、ルイスさんと別れて自分の部屋に戻った。特にすることもないので、私は頭から布団をかぶったが、なかなか寝付けない。先程の彼とのやりとりを思い出して、どうしようもなく身体が疼いて、そっと自分の秘部へ指を伸ばした。
……ああ、寂しいなぁ。
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