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27話 国歌
しおりを挟むルイスさんと談話室でお勉強。ここなら広いし、本もたくさんそろってる。今彼が読んでいるのは四百ページを越えそうな分厚い歴史小説。私は小難しい本は苦手。漫画とかライトノベルとかの方が好きだけど、ルイスさんの隣にいられるならなんでもいい。
ただ淡々と文を読み上げるだけじゃなくて、ときどき私の方を見ながらいい子いい子と頭を撫でてくれる。大人しくしてるから、もっとナデナデして欲しいです。
「お前ら......最近毎日そんな感じだな」
「今は勤務時間の外だ。なにをしようと自由だろ?」
呆れたような顔をしたヨハンさんが階段から降りてきて、私たちの目の前に座る。小説の朗読は一時中断だ。
「ずいぶんベッタリじゃねぇか。まるでご主人様とペットだ」
「サトミをペット呼ばわりするな」
「はいはい、よく懐かれてるみたいで結構。外に逃げ出さないようにちゃんとリードつけとけよ? 勝手にウロチョロされたら困るからな」
「私は人間ですー!」
「ヨハン……お前は俺たちをおちょくりに来たのか?」
「ちげーよ、俺はサトミに用があって来たの。なぁお前、この国の国歌って知ってるか?」
「国歌?」
君が代なら歌えますが。この国の曲なんて一つも知らない。ウォークマンもネットもないから、新しく知る機会がなかったし、今まで特に困ることもなかったから。
「掲示板に貼り紙がしてあっただろ? 来週全体で剣術の演習試合が行われるから、そんときは全員集まって庭で国旗の前で国歌を斉唱するんだ」
「わからないです。口パクじゃダメですか?」
「それはちょっとな……団長も来るから。というか、アスディア王国に住んでる以上は知ってないとなにかとまずい」
まさか私、非国民?
「歌詞を紙に書いて……つってもお前文字読めないんだったな。仕方ない、ルイス、練習に付き合ってやれ」
「俺が歌うのか? 今ここで?」
「とりあえず聞かなきゃどんな曲なのかわかんねーだろ?」
「……あまり気は進まないが」
「先生ー! お願いします!」
ルイスさんのアカペラが始まった。よく通るテノールボイス。一音一音の発音がしっかりしていて、お腹の底から声が出ている。
国歌の内容を簡単に訳すと、空が青い、雲が白い、川が広い。以上。歌詞に海が入ってないのはアスディア王国が陸続きだからかな。なにが言いたいのかさっぱりわからない。
「すごくお上手」
「そうか?」
「ルイス、本番でちゃんとサトミが歌えるように、教育しとけよ」
「ああ、わかった」
こうして、ルイス教官との特訓が始まった。ルイスさんが一つの節を歌い終わった後に続けて私も歌う。それを何度も繰り返して、内容とリズムを頭の中に叩き込む。音楽がないとどうにも音程が取りにくくて不安。
「……どうですか?」
「完璧。サトミは呑み込みが早いから助かるよ」
「えへへ」
ルイスさんといっぱい一緒にいられて嬉しい。なんか私、彼といると精神年齢が低くなってる気がする。
「もうすぐ就寝時間だ。部屋に戻って寝たほうがいい」
「はい、おやすみなさい。ありがとうございました」
「うん、おやすみ。また明日」
そしてまたルイスさんは私の頭を撫でた。寂しくない、心がポカポカする。今晩はぐっすり眠れそうだ。
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