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30話 ヤ○ザ
しおりを挟む「ヨハン隊長ー、お散歩行きたいです!」
「今忙しいからダメ」
「連れってって連れてって連れて」
「あーもう! 手が離せないって言ってんだろうが!」
「きゃっ!」
「ヤベッ」
私が休みの日、隊長室でお仕事中のヨハンさんにしつこく催促したら、結構強めの力でどつかれたが、私が倒れることもなくケロリとしていると、一瞬心配そうな顔をしたあとに大きなため息をついて、また机仕事に戻った。
「お前、結構タフだな……」
「お外行きたいです! ルイス隊長は?」
「あいつなら用事で役所行ってる、残念でした。そんなに身体を動かしたいなら建物の中ならいくらでもウロウロしていいから」
「そんな徘徊老人みたいな真似できません!」
「ミャーミャーミャーミャーうるせぇな! 仕事の邪魔だからあっち行ってろ!」
怒鳴りつけられて、とうとう追い出されてしまった。外出したいときはいつでも俺に声かけろ、なんて言ったくせに。他の隊長さんにお願いしようにもユリウスくんもマーガレットさんもいないし。こうなったら一人で出かけちゃえ。町の地理はおおよそ頭に入ってる。ヨハンさんが勝手にマイルールを私に押し付けてるだけで、元々一人での外出許可は出てるんだし。
太陽の光を浴びながら歩くのは気持ちいい。でも一つ問題があって、誰かにあとを付けられてるんだよね。気配は完全に消してる、限りなく静かな足音、並の人間じゃない。私は小走りに切り替えると、人気の少ない小道に入り込み、後ろに遮蔽物が何もない場所でくるりと振り返った。
「おじさん、だあれ?」
「……おいおい、参ったな」
そこにいたのは紺色の髪をしたワイルド兄ちゃん。歳は三十代後半くらい? 彫り深めのいかつい顔つきに、清潔感なんて全く感じさせないボサボサの無精髭、垂れた長めの前髪。ルイスさんがかっちり系の強面イケメンなら、この兄ちゃんはだらしない系の強面イケメン。黒のジャケットに黒のズボン……なんかヤのつく自由業の方みたい。それか借金取りか。背高いし、やたらガタイいいし。
「アスディア王国騎士団十番隊隊長、キール・アイゼン。ヨハンに頼まれたんだ、ウチの飼い猫が迷子にならないように見張っててくれって」
強面ヤ○ザの正体は隊長様。軍服姿じゃないと分かんないよ。
「見つからないようにこっそり付けてたつもりだったが……まぁあれだ、バレちまったもんは仕方ねえ。嬢ちゃんどうだい? おじさんとお茶でも」
「おごりなら喜んで」
……というわけで、キールさんと一緒に近くの喫茶店にやってきた。私が頼んだのは大盛り白桃パフェ。おっきなグラスにこれでもかというくらい生クリームとフルーツが乗ってる。
「んー! 美味しい!」
「……すっげ」
お腹いっぱいになって、キールさんと本部に戻ると、ルイスさんがいた。用事は終わったのかな?
「おかえり」
「ただいま! あのね、おじさんにパフェおごってもらっちゃいました!」
「キール、すまない。金は?」
「いいよ、俺が出しといた」
「サトミ、お外は危険がいっぱいだ。勝手に外出しちゃいけない。これからお散歩に行きたいときは俺に言うんだよ?」
「でも、ルイス隊長、いなかったから」
「そのときは我慢してくれ、できるか?」
「……はい」
「いい子だ。今日はもう仕事終わりだから、本を読んであげよう。それともトランプがいいか?」
「トランプ!」
自分のプライベートな時間も欲しいだろうに、ルイスさんはお仕事が終わるといつも私の遊びの相手をしてくれる。私にとってのルイスさんはご主人様。
お散歩に連れてって欲しいし、頭ナデナデして欲しいし、いっぱい遊んで欲しい。ただひたすらに甘やかされるのが心地いい。
ご主人様の命令には、きちんと従わなきゃね。
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