強面な騎士様は異世界から来た少女にぞっこんです

島崎 桜

文字の大きさ
32 / 50

31話 ダークディアメント

しおりを挟む


サトミが可愛すぎる。頭を撫でてやると嬉しそうに俺に擦り寄って来るところとか、俺がお菓子の袋を開けると物欲しそうな顔でこっちを見つめながらおねだりしてくるところとか、こんなのいくらでもおやつあげたくなっちゃう。

でも、俺がちょっと目を離した隙にどこかに行ってしまうのはいただけない。猫は気まぐれな生き物だというが、もう少し危機感を持って欲しいものだ。自分が誘拐されたことを忘れたんじゃないのか? あー、もうずっと机の上に置いておきたいなあ。首輪なんてつけちゃって、日向ぼっこしながら気持ちよさそうに眠るサトミを一日中触っていたい。……なんか俺、日に日に妄想が酷くなってる気がする。

「ルイス!」
「っ、あ、ごめん」
「ここにサインくれって何度も言ってるだろ? 頼むからしっかりしてくれよ」
「はは、お前ら、いつもそんな感じか?」
「ああ、特にルイスは惚れた女のことを考えていつも上の空だ」

俺が慌てて差し出された書類に自分の名前を書くと、呆れ顔のヨハンに、いつもは隊長室で仕事なんかしてないで外回りだと称して遊び歩いているキールが鼻で笑った。

「あの子、意外とすばしっこいのな。足が早くてびっくりした。それに耳がいい。こっそり尾行してたのに、足音で気付かれてあやうく撒かれそうになったぜ、ヨハン」
「ほら、小動物ってのは自然界じゃ捕食対象だから敵が多いだろ? そういう危機を察知するための能力が発達してんじゃないかな。ウサギみたいに」

猫の次はウサギか……ウサギもいいな。体毛は黒で、柔らかくてもふもふで、鼻をふんふん鳴らしながらちょこちょこ動き回るサトミ。膝の上になんか乗っけちゃったりして。ああもう可愛い。

「敵が多いのは確かだわな。最近黒目の人間が野盗に襲われる事件が多発している。被害者は眼球を両方とも抉り出されて、死体はその場に放置されてたって話。貧乏人にとっちゃありゃ宝石が服着て歩いてるようなもんだ」
「そりゃ他国のスラム街での話だろ? こっちは王のお膝元、騎士団本部の建物があるから治安がいいし、白昼堂々ことに及ぼうとするやつなんていねーよ」

所詮は都市伝説の類だが、黒はこの世で最も不吉かつ、希少な色。それを宿して生まれてくるものは、悪魔か、魔女の生まれ変わり。その眼球はとある宝石になぞらえて『ダークディアメント』と呼ばれ、闇オークションで高値で取引されているらしい。もちろん臓器の裏売買は違法で、見つかれば重罪。騎士団が目を光らせてはいるが、全てを取り締まることはできてないのが現状だ。

……万が一にも、サトミが被害者になるようなことはないと思う。そのことを心配するのは普通に道を歩いていて誰かに刺されることを恐れるようなものだ。日常に潜む全ての危険を排除することは不可能に近い。だが、予防することはできる。

「サトミもなぁ、一人で出歩くなって言ってんのに、言うこと聞きやしねぇ。こうなったら縄でつないで、檻にでも入れて閉じ込めとくか? ルイス」
「……それはダメだろう。彼女にも人権ってものがある」

そんなことをしたら、鬱憤が溜まって逃げ出してしまうかもしれない。ウサギはストレスが溜まると自分を傷つけて自殺してしまうと聞く。ある程度の自由は保障しつつ、俺たちが見守ってやらなければ。

そうだ、俺はサトミを守る盾になる。弱気を助け、悪しきをくじくのが騎士の務め。そのためなら俺は、鬼にだってなんだってなってやる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

お飾りの妃なんて可哀想だと思ったら

mios
恋愛
妃を亡くした国王には愛妾が一人いる。 新しく迎えた若い王妃は、そんな愛妾に見向きもしない。

1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。

尾道小町
恋愛
登場人物紹介 ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢  17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。 ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。 シェーン・ロングベルク公爵 25歳 結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。 ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳 優秀でシェーンに、こき使われている。 コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳 ヴィヴィアンの幼馴染み。 アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳 シェーンの元婚約者。 ルーク・ダルシュール侯爵25歳 嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。 ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。 ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。 この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。 ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳 ロミオ王太子殿下の婚約者。 ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳 私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。 一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。 正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?

【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています

22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」 そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。 理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。 (まあ、そんな気はしてました) 社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。 未練もないし、王宮に居続ける理由もない。 だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。 これからは自由に静かに暮らそう! そう思っていたのに―― 「……なぜ、殿下がここに?」 「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」 婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!? さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。 「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」 「いいや、俺の妻になるべきだろう?」 「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。

処理中です...