46 / 50
45話 潜入任務2
しおりを挟む私とルイスさん(ルイザ)は早速勤務初日からお客さんの席につかせてもらえることになった。こっちの世界のキャバクラも日本と同じで、店の中に大きめのテーブル席がいくつもあって、そこにそれぞれ女の子がついて、お客さんとおしゃべりを楽しみながらお酒や軽食を振る舞う。接客のノウハウなんて全く知らない私だが、ママさんに習うより慣れろ、とにかく甘い声を出して客にオネダリしまくれ、と背中をぶっ叩かれて戦場に放り出されて今に至る。
「ルイザ! サトミ! 五番テーブルお願い!」
「「はーい!」」
お呼び出しがかかって、私はともかくこんなゴツい大男を指名してくれるモノ好きなんて誰かなぁ、と思いながら席に向かうと、そこにはエドガーさんと今にも吹き出しそうな顔で笑いをこらえているヨハンさんが。
「失礼します、サトミです」
「ルイザです」
「……きっも、お前、とうとうソッチに目覚めたのか?」
「これも仕事のうちだ、なぜヨハンが?」
「俺も仕事のうちだよ。ま、本当は経費で落ちるからって、タダ酒を飲めるからって、面白半分でついてきただけなんだけど」
「そんな理由で......まったく」
「まぁまぁ、ルイザちゃん。お酌してよーん!」
「おいバカ! 絡むな!」
「サトミ、こっちに」
「はい」
ホモ疑惑が再び強くなってきたあのバカ二人は放っておいて、私は横に身体をピッタリとくっつけてきたエドガーさんに耳を近づける。すると、彼は小声で話し始めた。
「二つ隣の席に黒スーツを着た三人組がいるだろ」
「はい」
「顔は向けずに、視線だけ横にそっとずらせ。あいつらがマフィアの連中だ。酒をガバガバ飲ませて酔っ払わせて情報を聞き出して欲しい。できるか?」
「……なんとか、やってみます」
「おいエドガー、もっとサトミと離れろ」
「サトミちゃん! 三番テーブルのお相手お願い!」
「はーい!」
なんかプルプル震えているルイスさんはおいておいて、早速お呼び出しがかかったので私は大声でギャハギャハ騒ぎ、迷惑そうな顔をしているにもかかわらず、ほかのお姉さんの肩を抱いている汚い三人組の席に向かった。威厳は微塵も感じられない。ただのチンピラだな。
「失礼します、サトミです」
「君が新人さん? もっとサービスしてよー!」
「なんでも頼んでいいからさ!」
「わぁ、素敵! じゃあゴールドお願いしてもいいですか?」
「いいよー! じゃんじゃん注文して!」
とりあえず言われた通り値段もアルコール度数も高い酒を何本も注文させて、既にできあがっていたところにさらに酒を飲ませた。
「あの……聞きたいことがあるんですけど」
「なに? おじさんなんでも答えちゃうよ~!」
三人組は私がおずおずと甘い声を出してねだると、マフィアの幹部の名前、誘拐の詳細、時間や人数、会合の場所などを簡単に教えてくれた。やっぱりバカだな。それをこっそり紙に書いて懐に入れておく。振り返ってみれば、さきの五番テーブルでルイスさんに絡んでいるヨハンさんの隣でエドガーさんがサムズアップを決めているのが見えた。さて、あとはこれをエドガーさんに渡して......。
「すみません、少し席を外しますね」
「なんでぇ? もうちょっとここにいようよお~」
「もっとおしゃべりしよ?」
「ちょっと、やめて……」
三人に挟まれて、身体を触られそうになった。息が酒とヤニ臭い。ううっ、我慢我慢だ、ここで騒いだら努力が水の泡……。
「……お客様、当店でのおさわりは禁止ですよ」
「なんだぁてめえ? 気持ち悪いやつだな」
「汚ねぇ手でサトミに触るな!」
「おい、こいつ騎士団のやつだぞ!」
「ちっ、あっさりバレてんじゃねぇよ。やるか、エドガー」
「ああ、もう用はない、徹底的に解らせてやれ」
「あーあ……」
ウィッグが外れ、完全に鬼と化したルイスさんにエドガーさんとヨハンさんが加わり、店の中で大乱闘が始まってしまった。結果はルイスさん達の圧勝だったわけだが、私とルイスさんは責任を取らされて一日で店を辞めることに。
「ごめんな、サトミ。結局俺なにもしてない」
「大丈夫ですよ、ルイス隊長は私のこと、守ってくれたじゃないですか」
例のマフィア連中は公務執行妨害と誘拐未遂の件で捕らえることができたし、目的は達成した。
「もう帰って寝ましょう」
外はすでに日が昇りはじめている。夜更かしにしては遅すぎる時間だ。
「......ありがとう」
私はルイスさんに手をそっと差し出す。すると、彼は優しくそれを握り返した。
「またルイス隊長の女装姿、見たいですね」
「......もう勘弁」
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳
ロミオ王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています
22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」
そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。
理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。
(まあ、そんな気はしてました)
社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。
未練もないし、王宮に居続ける理由もない。
だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。
これからは自由に静かに暮らそう!
そう思っていたのに――
「……なぜ、殿下がここに?」
「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」
婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!?
さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。
「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」
「いいや、俺の妻になるべきだろう?」
「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる