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第7話「刹那の慰め」
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ガルドの手のひらは、剣だこでざらついていた。
その無骨な感触がルシアンの冷たい頬に触れると、信じられないほどの熱が肌を伝って流れ込んでくる。
ルシアンは微かに息を吸い込み、閉じていた目をゆっくりと開けた。
至近距離にあるガルドの金色の瞳は、獲物を狙う獣のような鋭さを持ちながらも、どこか壊れ物を扱うような慎重さに満ちていた。
「嫌なら、突き飛ばしてくれ」
かすれた声でそう告げると、ガルドはゆっくりと顔を近づけてきた。
雨上がりの深い森の土の匂いが、ルシアンの肺の奥深くまで侵入してくる。それに呼応するように、ルシアンの体からも冬の夜の冷たい空気の匂いが甘く立ち上り、二人の間にあるわずかな隙間を埋め尽くした。
ルシアンは突き飛ばすどころか、無意識のうちにガルドの厚い胸板にそっと手を添えていた。
革の服越しに伝わる、力強い心臓の鼓動。それが、ルシアン自身の鼓動と不規則に重なり合う。
ガルドの唇が、ルシアンの唇に触れた。
最初は、羽が触れるようなわずかな接触だった。互いの温度を確かめるように、ただ軽く触れ合うだけ。
しかし、その一度の接触が、張り詰めていた理性の糸をあっけなく切断した。
「……っ」
ルシアンの口から小さな吐息が漏れた瞬間、ガルドの腕がルシアンの背中に回り、強い力でその細い体を引き寄せた。
深く、貪るような口づけ。
ガルドの荒々しい息遣いがルシアンの唇をこじ開け、舌が絡みつく。アルファ特有の圧倒的な熱量と支配欲が、微かな遠慮をかなぐり捨てて押し寄せてきた。
ルシアンの頭の中が真っ白になる。
今まで恐怖の対象でしかなかったアルファの力が、今はただ、どうしようもなく心地よかった。ガルドの大きな手に抱きすくめられ、彼の匂いに完全に包み込まれることで、長年抱えていた孤独の氷が内側から急速に溶け出していくのを感じる。
「ルシアン……」
唇を離し、ガルドが熱を帯びた声で名前を呼ぶ。その呼気に混じる土の匂いが、ルシアンの首筋を甘く撫でた。
「ガルド……」
ルシアンの声もまた、自分でも聞いたことのないような甘い響きを帯びていた。
ガルドはルシアンの体を軽々と抱き上げ、部屋の隅にある寝台へと向かった。
古い木製のベッドがきしみ、ルシアンの背中が柔らかい毛布に沈み込む。その上に、ガルドのがっしりとした体が覆いかぶさってきた。
部屋を照らすのは、暖炉の赤黒い残り火だけ。
薄暗い空間の中で、衣服の擦れる音と、荒くなった呼吸の音だけが不規則に響く。
ガルドの手がルシアンの修道服のボタンを一つずつ外し、白い肌を外気に晒していく。冷たい空気が肌に触れて粟立つが、すぐにガルドの熱い唇がその上をなぞり、焼けつくような熱を落としていく。
鎖骨から胸元、そして腹部へと、ガルドの唇が移動するたびに、ルシアンの体は微かに震え、甘い声を漏らした。
オメガの本能が、アルファに完全に支配されることを歓喜とともに受け入れている。
『これは、ただの慰めだ。明日には消えてしまう、かりそめの熱だ』
ルシアンは頭の片隅で必死にそう言い聞かせていた。
永遠を求めれば、必ず傷つく。だから、今この瞬間だけ、過去の痛みも未来の不安も忘れて、ただこの熱に身を委ねよう。
ガルドも同じ思いなのだろう。彼の触れ方は、激しく燃え上がる欲望の中にも、どこか切羽詰まったような悲壮感を漂わせていた。
失うことを恐れるからこそ、今手の中にあるものを強く、強く握りしめようとする不器用な手つき。
ルシアンは両腕をガルドの広い背中に回し、その筋肉の隆起を指先でなぞった。彼の背中にある古い傷跡に触れると、ガルドの体がびくっと跳ねる。
「……痛いですか」
ルシアンがかすれた声で問うと、ガルドは首を横に振った。
「いや。……あんたの手は、熱すぎるくらいだ」
ガルドの顔が近づき、再び深く唇を重ねる。
言葉の代わりに、互いの体をひたすらに求め合う。
外の吹雪の音は、もはや二人の耳には届いていなかった。暖炉の火が完全に消え、部屋が暗闇に包まれるまで、肌を重ねる微かな水音と、互いの名前を呼ぶ切実な声だけが、夜の静寂を満たしていた。
その無骨な感触がルシアンの冷たい頬に触れると、信じられないほどの熱が肌を伝って流れ込んでくる。
ルシアンは微かに息を吸い込み、閉じていた目をゆっくりと開けた。
至近距離にあるガルドの金色の瞳は、獲物を狙う獣のような鋭さを持ちながらも、どこか壊れ物を扱うような慎重さに満ちていた。
「嫌なら、突き飛ばしてくれ」
かすれた声でそう告げると、ガルドはゆっくりと顔を近づけてきた。
雨上がりの深い森の土の匂いが、ルシアンの肺の奥深くまで侵入してくる。それに呼応するように、ルシアンの体からも冬の夜の冷たい空気の匂いが甘く立ち上り、二人の間にあるわずかな隙間を埋め尽くした。
ルシアンは突き飛ばすどころか、無意識のうちにガルドの厚い胸板にそっと手を添えていた。
革の服越しに伝わる、力強い心臓の鼓動。それが、ルシアン自身の鼓動と不規則に重なり合う。
ガルドの唇が、ルシアンの唇に触れた。
最初は、羽が触れるようなわずかな接触だった。互いの温度を確かめるように、ただ軽く触れ合うだけ。
しかし、その一度の接触が、張り詰めていた理性の糸をあっけなく切断した。
「……っ」
ルシアンの口から小さな吐息が漏れた瞬間、ガルドの腕がルシアンの背中に回り、強い力でその細い体を引き寄せた。
深く、貪るような口づけ。
ガルドの荒々しい息遣いがルシアンの唇をこじ開け、舌が絡みつく。アルファ特有の圧倒的な熱量と支配欲が、微かな遠慮をかなぐり捨てて押し寄せてきた。
ルシアンの頭の中が真っ白になる。
今まで恐怖の対象でしかなかったアルファの力が、今はただ、どうしようもなく心地よかった。ガルドの大きな手に抱きすくめられ、彼の匂いに完全に包み込まれることで、長年抱えていた孤独の氷が内側から急速に溶け出していくのを感じる。
「ルシアン……」
唇を離し、ガルドが熱を帯びた声で名前を呼ぶ。その呼気に混じる土の匂いが、ルシアンの首筋を甘く撫でた。
「ガルド……」
ルシアンの声もまた、自分でも聞いたことのないような甘い響きを帯びていた。
ガルドはルシアンの体を軽々と抱き上げ、部屋の隅にある寝台へと向かった。
古い木製のベッドがきしみ、ルシアンの背中が柔らかい毛布に沈み込む。その上に、ガルドのがっしりとした体が覆いかぶさってきた。
部屋を照らすのは、暖炉の赤黒い残り火だけ。
薄暗い空間の中で、衣服の擦れる音と、荒くなった呼吸の音だけが不規則に響く。
ガルドの手がルシアンの修道服のボタンを一つずつ外し、白い肌を外気に晒していく。冷たい空気が肌に触れて粟立つが、すぐにガルドの熱い唇がその上をなぞり、焼けつくような熱を落としていく。
鎖骨から胸元、そして腹部へと、ガルドの唇が移動するたびに、ルシアンの体は微かに震え、甘い声を漏らした。
オメガの本能が、アルファに完全に支配されることを歓喜とともに受け入れている。
『これは、ただの慰めだ。明日には消えてしまう、かりそめの熱だ』
ルシアンは頭の片隅で必死にそう言い聞かせていた。
永遠を求めれば、必ず傷つく。だから、今この瞬間だけ、過去の痛みも未来の不安も忘れて、ただこの熱に身を委ねよう。
ガルドも同じ思いなのだろう。彼の触れ方は、激しく燃え上がる欲望の中にも、どこか切羽詰まったような悲壮感を漂わせていた。
失うことを恐れるからこそ、今手の中にあるものを強く、強く握りしめようとする不器用な手つき。
ルシアンは両腕をガルドの広い背中に回し、その筋肉の隆起を指先でなぞった。彼の背中にある古い傷跡に触れると、ガルドの体がびくっと跳ねる。
「……痛いですか」
ルシアンがかすれた声で問うと、ガルドは首を横に振った。
「いや。……あんたの手は、熱すぎるくらいだ」
ガルドの顔が近づき、再び深く唇を重ねる。
言葉の代わりに、互いの体をひたすらに求め合う。
外の吹雪の音は、もはや二人の耳には届いていなかった。暖炉の火が完全に消え、部屋が暗闇に包まれるまで、肌を重ねる微かな水音と、互いの名前を呼ぶ切実な声だけが、夜の静寂を満たしていた。
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