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第3話「浄化の力と解けない呪い」
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公爵邸に連れてこられてから三日が過ぎた。
僕は相変わらず部屋に閉じ込められたままで、一歩も外に出ることは許されない。食事は豪華だったが、ほとんど喉を通らなかった。
窓から見える美しい庭を眺めることだけが、僕の唯一の慰めだった。あの花壇に僕が育てた薬草を植えたらもっと元気になるだろうな、なんてことを考えてしまう。僕は根っからの薬草採りなのだ。
四日目の朝、状況が少しだけ動いた。
部屋を訪れたギルバートさんが僕にこう告げたのだ。
「リアム様、アシュレイ様がお呼びです。温室へお越しください」
温室?
初めて聞く場所に戸惑いながらも、僕はギルバートさんの後についていった。長い廊下を抜け中庭を通り、屋敷の離れにある大きなガラス張りの建物へとたどり着く。
中へ入ると、むわりと湿った暖かい空気が肌を撫でた。そこは見たこともないような珍しい植物で埋め尽くされた緑の楽園だった。甘い花の香りと土の匂いが混じり合っている。
「……すごい」
思わず感嘆の声が漏れた。村の森とはまた違う、凝縮された自然の生命力に満ちた空間だ。
その温室の中央で、アシュレイ公爵は一人椅子に座って本を読んでいた。僕たちの足音に気づくと彼は静かに本を閉じ、顔を上げる。
「来たか」
今日も彼は氷の彫刻のように美しく、そして冷たい。
僕は緊張しながら彼の前に立った。ギルバートさんはいつの間にか姿を消している。温室には僕と公爵様の二人きりだ。
「ここにある植物は、俺の魔力の影響で弱っている」
アシュレイ公爵は自分の足元に置かれた鉢植えを指さした。そこには葉が黄色く変色し、ぐったりと萎れた薔薇の苗木があった。
「お前の力で、これを元に戻せ」
命令口調。しかし僕は彼の言葉に反発するよりも、弱った薔薇の苗木に心を痛めていた。
僕は彼の許可も得ずに、その鉢植えの前にしゃがみ込んだ。土は乾き葉には艶がない。植物が苦しんでいるのが僕には痛いほど伝わってくる。
「かわいそうに……」
僕はそっとその萎れた葉に触れた。そして目を閉じ、心の中で祈る。
『元気になって。綺麗な花を咲かせて』
僕の体から温かい光のようなものが手のひらへと集まっていく。それは僕にしか見えない淡い金色の光。僕が『浄化』と呼んでいる力だ。
金色の光が僕の手を通して薔薇の苗木へと注がれていく。すると奇跡のようなことが起こった。
黄色く変色していた葉がみるみるうちに鮮やかな緑色を取り戻し、力なく垂れていた茎がしゃんと上を向く。そして固く閉じていた蕾の一つが、ゆっくりと、本当にゆっくりと綻び始めたのだ。
「……これは」
背後からアシュレイ公爵の息を呑む声が聞こえた。
僕は祈りをやめ目を開ける。目の前の薔薇はさっきまでの瀕死の状態が嘘のように、生命力に満ち溢れていた。
「すごい……本当に、そんな力が」
振り返ると、アシュレイ公爵が驚愕の表情で僕を見つめていた。あの無表情な顔が崩れ、人間らしい感情が露わになっている。僕は初めて見る彼のそんな顔に、少しだけ胸がどきりとした。
「お前のその力は、一体何なんだ」
「僕にもよく分かりません。物心ついた時からこうでした。おばあさんからは、人に見せてはいけないって……」
「……そうか」
彼は何かを考えるように自分の顎に手を当てた。そして僕に信じられないような提案をしてきた。
「リアム。この温室の管理をお前に任せる」
「えっ?」
「ここの植物は全て俺の魔力の影響で長くはもたない。だがお前がいれば話は別だ。この温室をお前の好きにしていい」
それは軟禁状態からの解放を意味していた。
もちろん屋敷の外に出られるわけではないだろう。でもこの緑に囲まれた空間で、僕の好きな植物の世話ができる。それは今の僕にとって望外の喜びだった。
「……いいんですか?」
「ああ。その代わり条件がある」
やっぱりただではいかないらしい。僕はごくりと唾を飲み込んだ。
「俺の体にも、その力を使え」
彼の言葉に僕は息を呑んだ。
アシュレイ公爵はゆっくりと自分の胸に手を当てる。
「俺の体の中では常に魔力が嵐のように荒れ狂っている。それが俺を内側から蝕み、片時も安らぎを与えない。お前の力ならこの苦痛を和らげられるかもしれん」
彼の紫水晶の瞳が痛切な色を帯びて僕を射抜く。それは命令ではなく、まるで祈りのようにも見えた。
この人はずっと一人でこんな苦しみを抱えて生きてきたんだ。
そう思うと僕は彼のことを無下にできなかった。道具だとか所有物だとか言われたことは腹が立つけど、苦しんでいる人を目の前にして見捨てることはできない。
「……分かりました」
僕はうなずいた。
「僕の力でよければ。でも直接体に触れても、植物と同じようにうまくいくかは分かりません」
「構わん。試す価値はある」
アシュレイ公爵は僕の目の前の椅子に深く腰掛けた。そしておもむろに上着のボタンを外し始める。
「え、えっ!?」
「何だその反応は。力を注ぎやすいようにするだけだ」
彼はそう言うとシャツの胸元を少しだけ寛げ、逞しい胸板をあらわにした。その肌にはまるで黒い茨のような痣が幾筋も浮かび上がっている。あれが魔力暴走の痕跡、彼の言う『呪い』なのだろうか。見ているだけで痛々しい。
「……ここに、触れろ」
彼は自分の心臓の辺りを指さした。
僕は緊張で震える手をゆっくりと彼の胸に近づけていく。彼の肌に指先が触れた瞬間、びくりと彼の肩が揺れた。ひんやりとしているのに、内側からはとてつもない熱を感じる。これが暴走する魔力。
『大丈夫、大丈夫……』
僕は心の中で自分に言い聞かせながら、目を閉じて祈りに集中した。
僕の『浄化』の力が金色の光となって彼の中へと流れ込んでいく。
すると僕の脳裏に、彼の苦しみが映像となって流れ込んできた。
激しい痛み。終わらない孤独。誰にも理解されない絶望。幼い頃からたった一人でこの呪いと戦ってきた彼の記憶。そのあまりの辛さに僕の胸まで締め付けられる。
「っ……!」
思わず呻き声が漏れた。同時にアシュレイ公爵も苦しげに息を吐く。
僕が慌てて目を開けると、彼は額に汗を浮かべ、きつく目を閉じていた。
「だ、大丈夫ですか!?」
「……続けろ」
彼の声はかすかに震えていた。
僕はもう一度、彼の苦しみを和らげることだけを考えて力を注ぎ続けた。
どれくらいの時間が経っただろうか。
僕の力が尽きかける寸前、アシュレイ公爵の体からふっと力が抜けた。彼がゆっくりと目を開ける。その紫水晶の瞳はさっきよりも少しだけ穏やかな色をしていた。
「……楽に、なった」
ぽつりと彼が呟く。
「こんなに体が軽いのは、何年ぶりだろうか……」
その言葉に僕は心の底からほっとした。役に立てたことが素直に嬉しい。
だけど僕の体は限界だった。急に目の前がぐにゃりと歪み、意識が遠のいていく。
「あっ……」
倒れそうになった僕の体を、力強い腕がぐいっと引き寄せ支えてくれた。
気づけば僕はアシュレイ公爵の腕の中にすっぽりと収まっていた。彼の胸に顔を埋める形になり、とくん、とくん、という穏やかな心臓の音が聞こえる。
そしてさっきまで感じていた冷たい薔薇の香りとは違う、少しだけ甘く優しい彼の本当のフェロモンが、僕の鼻腔をくすぐった。
「っ、す、すみません……!」
僕は慌てて身を離そうとしたが、彼の腕は僕を解放してくれなかった。
それどころか彼は僕の髪に顔を埋めるようにして、深く息を吸い込んだ。
「……お前、いい匂いがするな」
耳元で囁かれた低い声に、僕の心臓が大きく跳ねた。
僕がオメガだって、この人は気づいているんだろうか。
それとも――。
彼の腕の中で混乱しながら、僕はただ彼の温もりを感じていることしかできなかった。
僕は相変わらず部屋に閉じ込められたままで、一歩も外に出ることは許されない。食事は豪華だったが、ほとんど喉を通らなかった。
窓から見える美しい庭を眺めることだけが、僕の唯一の慰めだった。あの花壇に僕が育てた薬草を植えたらもっと元気になるだろうな、なんてことを考えてしまう。僕は根っからの薬草採りなのだ。
四日目の朝、状況が少しだけ動いた。
部屋を訪れたギルバートさんが僕にこう告げたのだ。
「リアム様、アシュレイ様がお呼びです。温室へお越しください」
温室?
初めて聞く場所に戸惑いながらも、僕はギルバートさんの後についていった。長い廊下を抜け中庭を通り、屋敷の離れにある大きなガラス張りの建物へとたどり着く。
中へ入ると、むわりと湿った暖かい空気が肌を撫でた。そこは見たこともないような珍しい植物で埋め尽くされた緑の楽園だった。甘い花の香りと土の匂いが混じり合っている。
「……すごい」
思わず感嘆の声が漏れた。村の森とはまた違う、凝縮された自然の生命力に満ちた空間だ。
その温室の中央で、アシュレイ公爵は一人椅子に座って本を読んでいた。僕たちの足音に気づくと彼は静かに本を閉じ、顔を上げる。
「来たか」
今日も彼は氷の彫刻のように美しく、そして冷たい。
僕は緊張しながら彼の前に立った。ギルバートさんはいつの間にか姿を消している。温室には僕と公爵様の二人きりだ。
「ここにある植物は、俺の魔力の影響で弱っている」
アシュレイ公爵は自分の足元に置かれた鉢植えを指さした。そこには葉が黄色く変色し、ぐったりと萎れた薔薇の苗木があった。
「お前の力で、これを元に戻せ」
命令口調。しかし僕は彼の言葉に反発するよりも、弱った薔薇の苗木に心を痛めていた。
僕は彼の許可も得ずに、その鉢植えの前にしゃがみ込んだ。土は乾き葉には艶がない。植物が苦しんでいるのが僕には痛いほど伝わってくる。
「かわいそうに……」
僕はそっとその萎れた葉に触れた。そして目を閉じ、心の中で祈る。
『元気になって。綺麗な花を咲かせて』
僕の体から温かい光のようなものが手のひらへと集まっていく。それは僕にしか見えない淡い金色の光。僕が『浄化』と呼んでいる力だ。
金色の光が僕の手を通して薔薇の苗木へと注がれていく。すると奇跡のようなことが起こった。
黄色く変色していた葉がみるみるうちに鮮やかな緑色を取り戻し、力なく垂れていた茎がしゃんと上を向く。そして固く閉じていた蕾の一つが、ゆっくりと、本当にゆっくりと綻び始めたのだ。
「……これは」
背後からアシュレイ公爵の息を呑む声が聞こえた。
僕は祈りをやめ目を開ける。目の前の薔薇はさっきまでの瀕死の状態が嘘のように、生命力に満ち溢れていた。
「すごい……本当に、そんな力が」
振り返ると、アシュレイ公爵が驚愕の表情で僕を見つめていた。あの無表情な顔が崩れ、人間らしい感情が露わになっている。僕は初めて見る彼のそんな顔に、少しだけ胸がどきりとした。
「お前のその力は、一体何なんだ」
「僕にもよく分かりません。物心ついた時からこうでした。おばあさんからは、人に見せてはいけないって……」
「……そうか」
彼は何かを考えるように自分の顎に手を当てた。そして僕に信じられないような提案をしてきた。
「リアム。この温室の管理をお前に任せる」
「えっ?」
「ここの植物は全て俺の魔力の影響で長くはもたない。だがお前がいれば話は別だ。この温室をお前の好きにしていい」
それは軟禁状態からの解放を意味していた。
もちろん屋敷の外に出られるわけではないだろう。でもこの緑に囲まれた空間で、僕の好きな植物の世話ができる。それは今の僕にとって望外の喜びだった。
「……いいんですか?」
「ああ。その代わり条件がある」
やっぱりただではいかないらしい。僕はごくりと唾を飲み込んだ。
「俺の体にも、その力を使え」
彼の言葉に僕は息を呑んだ。
アシュレイ公爵はゆっくりと自分の胸に手を当てる。
「俺の体の中では常に魔力が嵐のように荒れ狂っている。それが俺を内側から蝕み、片時も安らぎを与えない。お前の力ならこの苦痛を和らげられるかもしれん」
彼の紫水晶の瞳が痛切な色を帯びて僕を射抜く。それは命令ではなく、まるで祈りのようにも見えた。
この人はずっと一人でこんな苦しみを抱えて生きてきたんだ。
そう思うと僕は彼のことを無下にできなかった。道具だとか所有物だとか言われたことは腹が立つけど、苦しんでいる人を目の前にして見捨てることはできない。
「……分かりました」
僕はうなずいた。
「僕の力でよければ。でも直接体に触れても、植物と同じようにうまくいくかは分かりません」
「構わん。試す価値はある」
アシュレイ公爵は僕の目の前の椅子に深く腰掛けた。そしておもむろに上着のボタンを外し始める。
「え、えっ!?」
「何だその反応は。力を注ぎやすいようにするだけだ」
彼はそう言うとシャツの胸元を少しだけ寛げ、逞しい胸板をあらわにした。その肌にはまるで黒い茨のような痣が幾筋も浮かび上がっている。あれが魔力暴走の痕跡、彼の言う『呪い』なのだろうか。見ているだけで痛々しい。
「……ここに、触れろ」
彼は自分の心臓の辺りを指さした。
僕は緊張で震える手をゆっくりと彼の胸に近づけていく。彼の肌に指先が触れた瞬間、びくりと彼の肩が揺れた。ひんやりとしているのに、内側からはとてつもない熱を感じる。これが暴走する魔力。
『大丈夫、大丈夫……』
僕は心の中で自分に言い聞かせながら、目を閉じて祈りに集中した。
僕の『浄化』の力が金色の光となって彼の中へと流れ込んでいく。
すると僕の脳裏に、彼の苦しみが映像となって流れ込んできた。
激しい痛み。終わらない孤独。誰にも理解されない絶望。幼い頃からたった一人でこの呪いと戦ってきた彼の記憶。そのあまりの辛さに僕の胸まで締め付けられる。
「っ……!」
思わず呻き声が漏れた。同時にアシュレイ公爵も苦しげに息を吐く。
僕が慌てて目を開けると、彼は額に汗を浮かべ、きつく目を閉じていた。
「だ、大丈夫ですか!?」
「……続けろ」
彼の声はかすかに震えていた。
僕はもう一度、彼の苦しみを和らげることだけを考えて力を注ぎ続けた。
どれくらいの時間が経っただろうか。
僕の力が尽きかける寸前、アシュレイ公爵の体からふっと力が抜けた。彼がゆっくりと目を開ける。その紫水晶の瞳はさっきよりも少しだけ穏やかな色をしていた。
「……楽に、なった」
ぽつりと彼が呟く。
「こんなに体が軽いのは、何年ぶりだろうか……」
その言葉に僕は心の底からほっとした。役に立てたことが素直に嬉しい。
だけど僕の体は限界だった。急に目の前がぐにゃりと歪み、意識が遠のいていく。
「あっ……」
倒れそうになった僕の体を、力強い腕がぐいっと引き寄せ支えてくれた。
気づけば僕はアシュレイ公爵の腕の中にすっぽりと収まっていた。彼の胸に顔を埋める形になり、とくん、とくん、という穏やかな心臓の音が聞こえる。
そしてさっきまで感じていた冷たい薔薇の香りとは違う、少しだけ甘く優しい彼の本当のフェロモンが、僕の鼻腔をくすぐった。
「っ、す、すみません……!」
僕は慌てて身を離そうとしたが、彼の腕は僕を解放してくれなかった。
それどころか彼は僕の髪に顔を埋めるようにして、深く息を吸い込んだ。
「……お前、いい匂いがするな」
耳元で囁かれた低い声に、僕の心臓が大きく跳ねた。
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