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第10話「銀の剣と黄金の光」
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「な、生意気なオメガめ……! 皆の者、かかれ! あの二人を生け捕りにするのです!」
エレオノーラがヒステリックに叫び、兵士たちが一斉に僕たちへと襲いかかってきた。
剣を構えたアシュレイ公爵が僕の前に立ちはだかる。
「リアム、俺の後ろに!」
「はい!」
僕は彼の背中に隠れるようにしながら、浄化の力を最大限に高めた。僕の体から放たれる黄金の光は、邪な意図を持って近づく者たちを怯ませ、その動きを鈍らせる効果があるようだった。
「くっ……何だ、この光は……!」
兵士たちが目に見えない壁に阻まれたように、なかなか僕たちに近づけない。
その隙をアシュレイ公爵が見逃すはずがなかった。
「はあっ!」
彼の振るう銀の剣が閃光のようにきらめく。
その剣筋はまるで舞いを踊るように美しく、それでいて恐ろしいほどの正確さで兵士たちの武器だけを弾き飛ばしていった。彼は無駄な殺生を好まないのだ。
「強い……」
僕は初めて見る彼の戦う姿に、思わず見惚れてしまった。
呪いに苦しんでいたとは思えないほど彼の動きには一切の無駄がない。それどころか僕の浄化の光が、彼の力をも増幅させているようだった。
彼の魔力と僕の浄化の力。
二つの力が共鳴し合い、相乗効果を生んでいるのだ。
「アシュレイ様が、こんなに強いなんて……!」
「おのれ、おのれ……!」
次々と兵士たちが無力化されていくのを見て、エレオノーラは悔しそうに歯ぎしりした。
そして彼女は懐から一つの小さな小瓶を取り出した。
「こうなれば、やむを得ませんわ……!」
彼女が小瓶の蓋を開けた瞬間、どす黒い瘴気が辺りに立ち込めた。
「あれは……魔力を増幅させる禁薬か! リアム、息を吸うな!」
アシュレイ公爵が叫ぶが、もう遅い。
瘴気を吸い込んだエレオノーラの体が禍々しいオーラに包まれる。彼女の翠の瞳は赤く染まり、その口元は狂気の笑みに歪んでいた。
「アシュレイ様は私のもの……誰にも渡しはしない!」
正気を失った彼女が僕に向かって一直線に突っ込んでくる。その手には黒い炎をまとった短剣が握られていた。
「リアム!」
アシュレイ公爵が僕をかばおうとするが、他の兵士たちに阻まれて間に合わない。
まずい、やられる!
僕が死を覚悟した、その瞬間だった。
僕の胸にかけていた母親の形見のペンダントが、まばゆい光を放った。
光は僕の全身を包み込むバリアとなり、エレオノーラの凶刃を寸前で防いだのだ。
「きゃあっ!」
エレオノーラは聖なる光のバリアに弾き飛ばされ、地面に倒れ込んだ。
ペンダントが僕を守ってくれたんだ。
「……信じられない。リンドベル家の秘宝、『聖鳥の護り』だと……」
アシュレイ公爵が驚愕の声を上げる。
どうやらこのペンダントはただの形見ではなく、持ち主を危険から守る強力な魔法具だったらしい。
「まだだ……まだ終わらせない……!」
エレオノーラはふらつきながらも立ち上がろうとする。禁薬の副作用で彼女の体はもう限界のはずだった。それでも彼女を突き動かしているのは、アシュレイ公爵への異常なまでの執着心だった。
「もうやめるんだ、エレオノーラ!」
アシュレイ公爵が叫ぶ。
「お前のその想いはただの独りよがりだ。愛ではない」
「うるさい、うるさい! 私の何が、あのオメガに劣るというのですか!」
「お前が劣っているのではない。ただ俺の運命の番がリアムだった。それだけのことだ」
彼のきっぱりとした言葉にエレオノーラの動きが止まった。
その隙に僕は彼女に向かって、そっと手を差し伸べた。
「エレオノーラさん。あなたの苦しみは分かります。でも憎しみは何も生み出しません」
僕の体から温かい浄化の光が彼女に向かって流れ込んでいく。それは敵意を払うための光ではなく、ただ彼女の心の傷を癒すための優しい光だった。
光に包まれたエレオノーラの瞳から、すっと赤い光が消えていった。彼女の体から力が抜け、その場にへなへなと座り込んだ。
「……わたくし……何を……」
正気を取り戻した彼女は自分のしでかしたことを思い出し、呆然としている。
その時、教会の入り口に新たな人影が現れた。
「……見事なものだね。まさかエレオノーラがこうも簡単に出し抜かれるとは」
金色の髪をなびかせ、拍手をしながら現れたのは全ての黒幕、クロヴィス王子だった。
彼は何人かの屈強な近衛兵を従えている。
「クロヴィス……!」
アシュレイ公爵が憎しみを込めて彼の名を呼んだ。
「やあ、アシュレイ。それにリンドベル家の最後の生き残り。ようやく会えたね」
クロヴィス王子はにこやかな笑みを浮かべている。だがその瞳の奥は一切笑っていなかった。
「君のその力、ぜひとも我が物とさせてもらおうか」
彼の言葉を合図に近衛兵たちが一斉に剣を抜いた。先ほどの兵士たちとは比べ物にならない精鋭たちだ。
アシュレイ公爵は連戦でかなり体力を消耗している。僕の浄化の力ももう残り少ない。
絶体絶命のピンチ。
僕たちが追い詰められた、その時だった。
「そこまでです、クロヴィス王子」
凛とした声と共に教会に現れたのは、国王陛下に仕える近衛騎士団だった。彼らはあっという間にクロヴィス王子の兵士たちを取り囲む。
「なっ……なぜ近衛騎士団がここに……!?」
クロヴィス王子が狼狽の声を上げる。
騎士団の先頭に立つ団長が厳かに言った。
「ヴァインベルク公爵からの密書を受け、国王陛下の名において、クロヴィス王子を国家反逆罪の容疑で逮捕する」
アシュレイ公爵が不敵に笑う。
「お前が何か企んでいることなどお見通しだ。俺が何の対策もしていないとでも思ったか?」
彼は僕を連れて村へ向かう前にギルバートに密書を託し、王城へ届けさせていたのだ。
全ては彼の描いた筋書き通りだった。
観念したクロヴィス王子は憎々しげに僕たちを睨みつけた。
「……覚えていろ。このままでは、終わらんぞ……!」
その捨て台詞を最後に、彼は騎士団に連行されていった。
こうして僕たちの長く激しい戦いは、ようやく終わりを告げた。
エレオノーラがヒステリックに叫び、兵士たちが一斉に僕たちへと襲いかかってきた。
剣を構えたアシュレイ公爵が僕の前に立ちはだかる。
「リアム、俺の後ろに!」
「はい!」
僕は彼の背中に隠れるようにしながら、浄化の力を最大限に高めた。僕の体から放たれる黄金の光は、邪な意図を持って近づく者たちを怯ませ、その動きを鈍らせる効果があるようだった。
「くっ……何だ、この光は……!」
兵士たちが目に見えない壁に阻まれたように、なかなか僕たちに近づけない。
その隙をアシュレイ公爵が見逃すはずがなかった。
「はあっ!」
彼の振るう銀の剣が閃光のようにきらめく。
その剣筋はまるで舞いを踊るように美しく、それでいて恐ろしいほどの正確さで兵士たちの武器だけを弾き飛ばしていった。彼は無駄な殺生を好まないのだ。
「強い……」
僕は初めて見る彼の戦う姿に、思わず見惚れてしまった。
呪いに苦しんでいたとは思えないほど彼の動きには一切の無駄がない。それどころか僕の浄化の光が、彼の力をも増幅させているようだった。
彼の魔力と僕の浄化の力。
二つの力が共鳴し合い、相乗効果を生んでいるのだ。
「アシュレイ様が、こんなに強いなんて……!」
「おのれ、おのれ……!」
次々と兵士たちが無力化されていくのを見て、エレオノーラは悔しそうに歯ぎしりした。
そして彼女は懐から一つの小さな小瓶を取り出した。
「こうなれば、やむを得ませんわ……!」
彼女が小瓶の蓋を開けた瞬間、どす黒い瘴気が辺りに立ち込めた。
「あれは……魔力を増幅させる禁薬か! リアム、息を吸うな!」
アシュレイ公爵が叫ぶが、もう遅い。
瘴気を吸い込んだエレオノーラの体が禍々しいオーラに包まれる。彼女の翠の瞳は赤く染まり、その口元は狂気の笑みに歪んでいた。
「アシュレイ様は私のもの……誰にも渡しはしない!」
正気を失った彼女が僕に向かって一直線に突っ込んでくる。その手には黒い炎をまとった短剣が握られていた。
「リアム!」
アシュレイ公爵が僕をかばおうとするが、他の兵士たちに阻まれて間に合わない。
まずい、やられる!
僕が死を覚悟した、その瞬間だった。
僕の胸にかけていた母親の形見のペンダントが、まばゆい光を放った。
光は僕の全身を包み込むバリアとなり、エレオノーラの凶刃を寸前で防いだのだ。
「きゃあっ!」
エレオノーラは聖なる光のバリアに弾き飛ばされ、地面に倒れ込んだ。
ペンダントが僕を守ってくれたんだ。
「……信じられない。リンドベル家の秘宝、『聖鳥の護り』だと……」
アシュレイ公爵が驚愕の声を上げる。
どうやらこのペンダントはただの形見ではなく、持ち主を危険から守る強力な魔法具だったらしい。
「まだだ……まだ終わらせない……!」
エレオノーラはふらつきながらも立ち上がろうとする。禁薬の副作用で彼女の体はもう限界のはずだった。それでも彼女を突き動かしているのは、アシュレイ公爵への異常なまでの執着心だった。
「もうやめるんだ、エレオノーラ!」
アシュレイ公爵が叫ぶ。
「お前のその想いはただの独りよがりだ。愛ではない」
「うるさい、うるさい! 私の何が、あのオメガに劣るというのですか!」
「お前が劣っているのではない。ただ俺の運命の番がリアムだった。それだけのことだ」
彼のきっぱりとした言葉にエレオノーラの動きが止まった。
その隙に僕は彼女に向かって、そっと手を差し伸べた。
「エレオノーラさん。あなたの苦しみは分かります。でも憎しみは何も生み出しません」
僕の体から温かい浄化の光が彼女に向かって流れ込んでいく。それは敵意を払うための光ではなく、ただ彼女の心の傷を癒すための優しい光だった。
光に包まれたエレオノーラの瞳から、すっと赤い光が消えていった。彼女の体から力が抜け、その場にへなへなと座り込んだ。
「……わたくし……何を……」
正気を取り戻した彼女は自分のしでかしたことを思い出し、呆然としている。
その時、教会の入り口に新たな人影が現れた。
「……見事なものだね。まさかエレオノーラがこうも簡単に出し抜かれるとは」
金色の髪をなびかせ、拍手をしながら現れたのは全ての黒幕、クロヴィス王子だった。
彼は何人かの屈強な近衛兵を従えている。
「クロヴィス……!」
アシュレイ公爵が憎しみを込めて彼の名を呼んだ。
「やあ、アシュレイ。それにリンドベル家の最後の生き残り。ようやく会えたね」
クロヴィス王子はにこやかな笑みを浮かべている。だがその瞳の奥は一切笑っていなかった。
「君のその力、ぜひとも我が物とさせてもらおうか」
彼の言葉を合図に近衛兵たちが一斉に剣を抜いた。先ほどの兵士たちとは比べ物にならない精鋭たちだ。
アシュレイ公爵は連戦でかなり体力を消耗している。僕の浄化の力ももう残り少ない。
絶体絶命のピンチ。
僕たちが追い詰められた、その時だった。
「そこまでです、クロヴィス王子」
凛とした声と共に教会に現れたのは、国王陛下に仕える近衛騎士団だった。彼らはあっという間にクロヴィス王子の兵士たちを取り囲む。
「なっ……なぜ近衛騎士団がここに……!?」
クロヴィス王子が狼狽の声を上げる。
騎士団の先頭に立つ団長が厳かに言った。
「ヴァインベルク公爵からの密書を受け、国王陛下の名において、クロヴィス王子を国家反逆罪の容疑で逮捕する」
アシュレイ公爵が不敵に笑う。
「お前が何か企んでいることなどお見通しだ。俺が何の対策もしていないとでも思ったか?」
彼は僕を連れて村へ向かう前にギルバートに密書を託し、王城へ届けさせていたのだ。
全ては彼の描いた筋書き通りだった。
観念したクロヴィス王子は憎々しげに僕たちを睨みつけた。
「……覚えていろ。このままでは、終わらんぞ……!」
その捨て台詞を最後に、彼は騎士団に連行されていった。
こうして僕たちの長く激しい戦いは、ようやく終わりを告げた。
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