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怪物退治のデジャヴ
「マルスティア様はこちらの馬車に…」
オレフィスは私を上等な馬車へと案内しようとした。非常事態って言いながら慌ててくるほどの事態なのに、馬車になんて乗ってる余裕なんてないでしょう。
「場所はどこなの?」
「ですから、馬車で…」
「瞬間移動の方が早いでしょう。場所を教えて?」
「し、瞬間移動ですか!?」
え?私何か変なこと言った?
あまりにもオレフィスが驚くものだから、私までびっくりしてしまう。
瞬間移動の方が馬車よりも何倍も早い。いや、倍どころの早さじゃないわ。一瞬よ、一瞬。
ただ、欠点としては予想できる場所にしか行けないこと。行ったことがない場所は地図を見て正確に場所を感知する必要があるので、結構魔力を使う。
気を遣って馬車で行こうとしてくれるのはありがたいんだけれど、どう考えても時間がもったいないし、移動している間にも負傷者が出ているのだからそんな余裕もないはず。
「えぇ。だから場所を教えて。地図で場所を教えてもらえると助かるんだけど」
「ここです。ここの付近で今数名の騎士たちだけで戦っています」
オレフィスは地図を取り出し、バツのついた箇所を指差した。少し前に怪物退治をしていた場所とかなり近い。ここなら何度も行っているから大丈夫でしょう。
「じゃあオレフィス、行くわよ」
「あ、あの!マルスティア様、瞬間移動とは一体…」
ん?この反応もしかして…
「瞬間移動、できないの?」
「今まで瞬間移動に成功した者など見たことがありません」
えええー
何それ、私すぐにできたんだけど。
怪物退治の魔法といい、瞬間移動といい、私はこの物語の中で何か特別な存在なのかもしれない。脇役だと思って油断してたんだけれど、どうやら私の知っている脇役の役割だけではなさそうだ。
それより、どうしよう。
オレフィスがいないと私もどう動いていいのかわからない。しかも他の騎士たちもいる中で突然令嬢の私が登場したらみんな驚くだろうし…
「オレフィス」
「マルスティア様…なっ!?」
私はオレフィスに抱きついた。オレフィスは突然の出来事に顔を真っ赤にさせている。
ふと何かの漫画で、瞬間移動する際に抱き合って移動していたシーンがあったのを思い出したのだ。もしかしたら、これで行けるかも。
「ちょっと我慢してね。じゃあ、行くわよっ」
私はそう言いながらも、内心は心臓がバクバクだった。落ち着け。これはあくまでも瞬間移動するために必要なんだから。落ち着け、私。
オレフィスの困惑したような、どうしたらいいのかわからないようなこんな表情がチラッと視界に入ってくる。可愛いなおい。…じゃなくって!
私は精神を落ち着かせ、目的の場所を頭の中に思い浮かべた。すぐに行けるはずだ。
シュッ
一瞬にして、私とオレフィスは宮殿の前から姿を消した。
***
「すごい…」
「ここで合ってるかしら?」
目的の場所に到着すると、オレフィスは信じられないと言った表情で辺りを見渡している。良かった、二人できちんと移動できたわ。
「くるぞーーっ!」
すると近くでドーンっという凄まじい音がして、戦っている騎士たちの姿が見えた。
あらあら結構これは大きい怪物ね。
「みんな、無事か!?」
「オレフィス団長!…え?」
騎士たちは私の姿を見るなりポカンとした表情になる。
まぁ、そりゃそうよね。こんな場所に令嬢がいること自体おかしいもの。しかもオレフィスは助けを求めてルカのもとに行ったはずなのに何で令嬢を連れて戻ってきたんだよ!?ってなってるはず。
そのまんまの表情をした数名の騎士たちは、怪訝そうな顔でオレフィスと私を交互に見た。
「あの、こちらの令嬢は…」
「話は後だ。みんな、少し下がってくれ。マルスティア様、こちらの部隊は魔法が使えるものがほとんどおりません。ひとまず私が補助を…」
「大丈夫よ」
私は怪物の方へと手を向ける。
徐々にわかってきたことだが、手を向けると相手がどれくらいの魔力を持っていてどれだけの強さなのかが分かるようになってきたのだ。
うん、これくらいなら大丈夫そう。見かけによらずそこまで強くはなさそうね。
「マルスティア様?」
「少し黙って」
私はスッと目を閉じて、呼吸を整えた。
「オレフィス団長!怪物がもうそこまで迫ってます。一旦何をしているんですか!?」
「少し静かにしろ!」
「誰ですかあの令嬢は!?」
……あ、ここだ。
スパッ
「ギェーーーっ」
あら。意外としぶといわね。
もう一回かな。
私はもう一度呼吸を整えて、スッと手を怪物の方へと向ける。
スパパッ
何かが裂ける音がして、はっと息を吐くと、地響きのような音を立てて怪物が倒れ込んだ。
「よしっ」
私がガッツポーズをしてふっとオレフィスと騎士の方を見ると、全員がポカンとした表情をして立ち尽くしていた。
なんかこの光景デジャヴだわ。
「オレフィス、終わりました」
「……」
「オレフィス?」
「あ…あぁ。は、い」
呆然とした表情でオレフィスが私の声に応える。何よ、手伝ってくれって言われたから倒したのに。
そんなに驚くことなのかしら?
私は、自分の魔力の強さがMAXレベルに到達しているという自覚がなかったのだ。
他の騎士たちは何が起きたのか理解できない様子で、まだ目を見開いて倒れた怪物を見つめている。
「みんな、怪物の後処理を頼む。この話は…私も整理してからにしよう」
オレフィスは私を上等な馬車へと案内しようとした。非常事態って言いながら慌ててくるほどの事態なのに、馬車になんて乗ってる余裕なんてないでしょう。
「場所はどこなの?」
「ですから、馬車で…」
「瞬間移動の方が早いでしょう。場所を教えて?」
「し、瞬間移動ですか!?」
え?私何か変なこと言った?
あまりにもオレフィスが驚くものだから、私までびっくりしてしまう。
瞬間移動の方が馬車よりも何倍も早い。いや、倍どころの早さじゃないわ。一瞬よ、一瞬。
ただ、欠点としては予想できる場所にしか行けないこと。行ったことがない場所は地図を見て正確に場所を感知する必要があるので、結構魔力を使う。
気を遣って馬車で行こうとしてくれるのはありがたいんだけれど、どう考えても時間がもったいないし、移動している間にも負傷者が出ているのだからそんな余裕もないはず。
「えぇ。だから場所を教えて。地図で場所を教えてもらえると助かるんだけど」
「ここです。ここの付近で今数名の騎士たちだけで戦っています」
オレフィスは地図を取り出し、バツのついた箇所を指差した。少し前に怪物退治をしていた場所とかなり近い。ここなら何度も行っているから大丈夫でしょう。
「じゃあオレフィス、行くわよ」
「あ、あの!マルスティア様、瞬間移動とは一体…」
ん?この反応もしかして…
「瞬間移動、できないの?」
「今まで瞬間移動に成功した者など見たことがありません」
えええー
何それ、私すぐにできたんだけど。
怪物退治の魔法といい、瞬間移動といい、私はこの物語の中で何か特別な存在なのかもしれない。脇役だと思って油断してたんだけれど、どうやら私の知っている脇役の役割だけではなさそうだ。
それより、どうしよう。
オレフィスがいないと私もどう動いていいのかわからない。しかも他の騎士たちもいる中で突然令嬢の私が登場したらみんな驚くだろうし…
「オレフィス」
「マルスティア様…なっ!?」
私はオレフィスに抱きついた。オレフィスは突然の出来事に顔を真っ赤にさせている。
ふと何かの漫画で、瞬間移動する際に抱き合って移動していたシーンがあったのを思い出したのだ。もしかしたら、これで行けるかも。
「ちょっと我慢してね。じゃあ、行くわよっ」
私はそう言いながらも、内心は心臓がバクバクだった。落ち着け。これはあくまでも瞬間移動するために必要なんだから。落ち着け、私。
オレフィスの困惑したような、どうしたらいいのかわからないようなこんな表情がチラッと視界に入ってくる。可愛いなおい。…じゃなくって!
私は精神を落ち着かせ、目的の場所を頭の中に思い浮かべた。すぐに行けるはずだ。
シュッ
一瞬にして、私とオレフィスは宮殿の前から姿を消した。
***
「すごい…」
「ここで合ってるかしら?」
目的の場所に到着すると、オレフィスは信じられないと言った表情で辺りを見渡している。良かった、二人できちんと移動できたわ。
「くるぞーーっ!」
すると近くでドーンっという凄まじい音がして、戦っている騎士たちの姿が見えた。
あらあら結構これは大きい怪物ね。
「みんな、無事か!?」
「オレフィス団長!…え?」
騎士たちは私の姿を見るなりポカンとした表情になる。
まぁ、そりゃそうよね。こんな場所に令嬢がいること自体おかしいもの。しかもオレフィスは助けを求めてルカのもとに行ったはずなのに何で令嬢を連れて戻ってきたんだよ!?ってなってるはず。
そのまんまの表情をした数名の騎士たちは、怪訝そうな顔でオレフィスと私を交互に見た。
「あの、こちらの令嬢は…」
「話は後だ。みんな、少し下がってくれ。マルスティア様、こちらの部隊は魔法が使えるものがほとんどおりません。ひとまず私が補助を…」
「大丈夫よ」
私は怪物の方へと手を向ける。
徐々にわかってきたことだが、手を向けると相手がどれくらいの魔力を持っていてどれだけの強さなのかが分かるようになってきたのだ。
うん、これくらいなら大丈夫そう。見かけによらずそこまで強くはなさそうね。
「マルスティア様?」
「少し黙って」
私はスッと目を閉じて、呼吸を整えた。
「オレフィス団長!怪物がもうそこまで迫ってます。一旦何をしているんですか!?」
「少し静かにしろ!」
「誰ですかあの令嬢は!?」
……あ、ここだ。
スパッ
「ギェーーーっ」
あら。意外としぶといわね。
もう一回かな。
私はもう一度呼吸を整えて、スッと手を怪物の方へと向ける。
スパパッ
何かが裂ける音がして、はっと息を吐くと、地響きのような音を立てて怪物が倒れ込んだ。
「よしっ」
私がガッツポーズをしてふっとオレフィスと騎士の方を見ると、全員がポカンとした表情をして立ち尽くしていた。
なんかこの光景デジャヴだわ。
「オレフィス、終わりました」
「……」
「オレフィス?」
「あ…あぁ。は、い」
呆然とした表情でオレフィスが私の声に応える。何よ、手伝ってくれって言われたから倒したのに。
そんなに驚くことなのかしら?
私は、自分の魔力の強さがMAXレベルに到達しているという自覚がなかったのだ。
他の騎士たちは何が起きたのか理解できない様子で、まだ目を見開いて倒れた怪物を見つめている。
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